NIPPON EXPRESSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NIPPON EXPRESSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するNIPPON EXPRESSホールディングスは、国内外での貨物自動車運送、鉄道利用運送、航空利用運送等を行うロジスティクス事業を主軸とし、警備輸送や重量品建設事業などを展開しています。直近の業績は前期比で減収減益となり、事業構造の変革を通じた収益性改善に取り組んでいます。


※本記事は、NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社の有価証券報告書(第4期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. NIPPON EXPRESSホールディングスってどんな会社?


同社グループは、国内外でのロジスティクス事業を主軸に、警備輸送や重量品建設などを展開する総合物流企業です。

(1) 会社概要


同社グループの中核である日本通運は1937年に創立され、1950年に東京証券取引所へ上場しました。2022年に持株会社体制へ移行し、完全親会社として同社が設立されました。近年はグローバル市場での成長を加速させるため、海外物流企業のM&Aを積極的に行い、欧州などのロジスティクス基盤を拡大しています。

従業員数は連結で77,925名、単体で296名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は生命保険会社、第3位も信託銀行となっており、主に金融機関が上位株主を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.70%
朝日生命保険相互会社 6.90%
日本カストディ銀行(信託口) 5.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.0%です。代表取締役社長社長執行役員CEOは堀切智氏が務めています。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
堀切智 代表取締役社長社長執行役員CEO 1983年日本通運入社。同社代表取締役副社長等を経て、2022年同社代表取締役副社長。2024年3月より現職。
齋藤充 代表取締役会長 1978年日本通運入社。同社代表取締役社長等を経て、2022年同社代表取締役社長。2024年1月より現職。
赤石衛 取締役常務執行役員 1993年日本通運入社。同社事業開発部専任部長、同社執行役員等を経て、2026年1月より現職。
阿部幸子 取締役執行役員 1988年日本通運入社。日通東京流通サービス代表取締役社長等を経て、2024年3月より現職。
中本孝 取締役監査等委員 1986年日本通運入社。同社財務企画部長、同社内部監査室長等を経て、2024年3月より現職。


社外取締役は、柴洋二郎(元アミューズ社長)、伊藤ゆみ子(元シャープ常務執行役員)、塚原月子(カレイディスト社長)、青木良夫(元監査法人トーマツ経営監査室長)、讃井暢子(元日本経済団体連合会常務理事)、桝野龍二(元国土交通審議官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「東アジア」「南アジア・オセアニア」「警備輸送」「重量品建設」および「物流サポート」事業を展開しています。

日本(ロジスティクス)


日本各地において、鉄道利用運送、貨物自動車運送、倉庫業、利用航空運送、海上運送、港湾運送および付随するサービスを提供しています。また、情報資産管理業も展開しており、幅広い顧客の国内物流ニーズに対応しています。

収益は顧客からの運送料や倉庫保管料、情報資産管理料として受け取ります。運営は主に日本通運やNXワンビシアーカイブズなどの子会社が行っています。

米州(ロジスティクス)


米州の各都市において、利用航空運送、海上運送、倉庫業などのロジスティクスサービスを提供しています。現地の顧客に対して、グローバルサプライチェーンを支える輸送および保管サービスを展開しています。

収益は顧客からの運送料や倉庫保管料として受け取ります。運営は主にNXアメリカなどの子会社が行っています。

欧州(ロジスティクス)


欧州の各都市において、利用航空運送、海上運送、倉庫業などを提供しています。M&Aにより獲得した企業を含め、幅広い地域で産業ごとの専門的なロジスティクスサービスを展開しています。

収益は顧客からの運送料や倉庫保管料として受け取ります。運営はNX UK、カーゴパートナーホールディングス、シーモン・ヘーゲレホールディングスなどの子会社が行っています。

東アジア(ロジスティクス)


東アジアの各都市において、利用航空運送、海上運送、倉庫業などのサービスを提供しています。現地の製造拠点や消費市場をつなぐ物流ネットワークを構築し、多様な企業の輸送ニーズに応えています。

収益は顧客からの運送料や倉庫保管料として受け取ります。運営はNX国際物流(中国)有限公司、NX香港、NX台湾国際物流などの子会社が行っています。

南アジア・オセアニア(ロジスティクス)


南アジアやオセアニアの各都市において、利用航空運送、海上運送、倉庫業に加え、重量品建設事業などを提供しています。新興地域における生産拠点や消費市場の変化に対応する物流サービスを展開しています。

収益は顧客からの運送料や倉庫保管料、建設請負料として受け取ります。運営はNXシンガポール、NXタイなどの子会社が行っています。

警備輸送


現金や有価証券などの貴重品を安全かつ確実に輸送する警備業および付随するサービスを提供しています。金融機関や小売店などを対象に、厳格なセキュリティ管理のもとで輸送を行っています。

収益は顧客からの警備輸送手数料として受け取ります。運営はNXキャッシュ・ロジスティクスが行っています。

重量品建設


プラント設備などの重量物の運搬、架設、設置および付随するサービスを提供しています。高度な技術と専用機材を活用し、建設現場や工場などにおける特殊な輸送・設置作業を担っています。

収益は顧客からの重量物運搬および建設請負料として受け取ります。運営はNXエンジニアリングなどの関連会社が行っています。

物流サポート


物流機器、包装資材、梱包資材、車両、石油などの各種商品の販売をはじめ、車両整備、保険代理店業務、不動産業、ロジスティクスファイナンス事業や労働者派遣業などを幅広く提供しています。

収益は商品の販売代金や各種サービスの手数料、賃貸収入として受け取ります。運営はNX商事、NX総合研究所、NXキャピタル、NXキャリアロードなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の連結業績を見ると、売上収益は2兆2,000億円から2兆6,000億円規模で推移していますが、税引前利益は減少傾向が続いています。2025年12月期は、グローバルでの荷動きの低調や運賃相場の下落、コスト上昇などの影響を受け、売上収益は前期比で微減となり、税引前利益および当期利益も大幅な減益となりました。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 26,187億円 22,390億円 25,776億円 25,748億円
税引前利益 1,602億円 612億円 519億円 418億円
利益率(%) 6.1% 2.7% 2.0% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,083億円 370億円 317億円 27億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比でほぼ横ばいですが、売上原価の減少により売上総利益は増加しています。また、その他の収益として固定資産売却益を計上した一方で、減損損失や事業再編に係る損失などの費用も増加し、営業利益は前期比で微増となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 25,776億円 25,748億円
売上総利益 2,217億円 2,407億円
売上総利益率(%) 8.6% 9.3%
営業利益 491億円 515億円
営業利益率(%) 1.9% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が989億円(構成比57%)、減価償却費及び償却費が195億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である日本のロジスティクス事業は各種コスト削減効果により増益となりました。欧州はM&A効果により増収となったもののコスト増で減益となり、東アジアは事業再編によるコスト削減で増益となっています。物流サポート事業は不動産や各種販売が堅調で増収増益に貢献しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
日本 12,620億円 12,604億円 405億円 445億円 3.5%
米州 1,531億円 1,380億円 54億円 58億円 4.2%
欧州 5,018億円 5,279億円 112億円 48億円 0.9%
東アジア 1,739億円 1,658億円 45億円 57億円 3.4%
南アジア・オセアニア 1,577億円 1,554億円 55億円 33億円 2.1%
警備輸送 685億円 695億円 24億円 25億円 3.6%
重量品建設 501億円 486億円 53億円 53億円 10.9%
物流サポート 4,205億円 4,467億円 122億円 161億円 3.6%
連結(合計) 25,776億円 25,748億円 491億円 515億円 2.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金、借入及び社債発行等により資金需要に対応しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額増加等により、前年同期比で収入が減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却収入増加等により、前年同期比で支出が大幅に減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の返済増加等により、前年同期比で支出が増加しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2,279億円 2,087億円
投資CF -1,407億円 -32億円
財務CF -1,641億円 -1,739億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会発展の原動力であり、物流から新たな価値を創り、信頼される存在であること」を企業理念として掲げています。創業以来、ものを運ぶことを通して人、企業、地域を結び、社会の発展を支えてきた使命を果たすため、社会の変化をとらえて自らを進化させ続けることを重視しています。安全に徹し、環境に配慮しながら世界を舞台に全ての力を結集し、ロジスティクスを通じた新たな価値創造に挑戦しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「安全・コンプライアンス・品質」に対する強いこだわりを基本とした現場力と、企業メッセージである「We Find the Way」に象徴されるお客様第一の姿勢を大切にしています。これらを徹底的に追求するとともに、グローバル市場での成長を加速させるため、全体最適の視点や長期ビジョンからのバックキャスト思考を持ち、社員一人ひとりが自律的で挑戦的な価値観を醸成する企業風土への変革を進めています。

(3) 経営計画・目標


創立100周年となる2037年に「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」となる長期ビジョンを掲げています。これに向けた中期計画「NXグループ経営計画2028」では、以下の数値目標を設定し、事業の成長と企業価値の向上を目指しています。

・売上収益:3兆円
・事業利益:1,500億円
・ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として「グローバル市場での事業成長の加速」「日本事業の再構築」「サステナビリティ経営の推進」に注力しています。海外ではM&Aを活用した顧客基盤の獲得とシナジー創出を図り、国内では社内カンパニー制の導入を通じた経営資源の再配置や組織統合による効率化を進めています。また、低収益資産の売却などアセット戦略の見直しを行い、高収益事業へのシフトを推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、社員を「人財」と位置づけ、社員と会社が対等で尊重し合いながら持続的に成長することを目指し、「NXグループ人財ポリシー」を制定しています。「優秀な人財の確保・育成」「Well-beingの充実」「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進」を軸に、多様な人財が最大限のパフォーマンスを発揮できるインクルーシブな職場風土の醸成に取り組み、企業価値向上につなげています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 47.5歳 22.2年 8,331,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 47.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(63.2%)、グローバル人財育成関連研修の参加者数(1,223名)、障がい者雇用率(2.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と需要減少


地政学リスクや経済の不確実性により世界経済が後退した場合、顧客企業の輸送需要に影響を与え、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、国内では少子高齢化等による輸送需要の減少が想定されるため、成長領域である海外市場への投資や新規需要の取り込みを進めています。

(2) デジタル化などテクノロジーの進化


物流業界においてAI技術による自動化や異業種からの新規参入が進み、競争優位性の低下や価格競争の激化を招くリスクがあります。同社は自動搬送機や需要予測モデルの導入など、デジタル化を取り込んだサービス創出による効率化や事業成長に努めています。

(3) M&Aおよび事業投資の成果未達


グローバル成長に向けたM&Aを実施する際、デューデリジェンスで把握しきれないリスクや買収後の予期せぬ事業環境の変化が発生する可能性があります。これにより事業計画通りの成果が得られない場合、対象企業の業績悪化やのれんの減損損失などが発生するおそれがあります。

(4) 優秀な人財の確保・育成の困難化


高度な物流ソリューションの提供や労働力不足に対応するため、優秀なプロフェッショナル人財の確保や労働環境の改善が不可欠です。必要な人財を確保できない場合、事業運営や経営計画の遂行に支障をきたし、企業価値や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。