エスケーエレクトロニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスケーエレクトロニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、大型フォトマスクの設計・製造・販売を行う専業メーカーです。スマートフォンや車載パネル向けの需要を取り込み、直近の業績は売上高292億円(前期比増収)、経常利益38億円(増益)と好調に推移しています。新規事業としてRFIDやヘルスケア分野も展開しています。


※本記事は、株式会社エスケーエレクトロニクス の有価証券報告書(第24期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エスケーエレクトロニクスってどんな会社?


大型フォトマスクのグローバルリーディングカンパニーとして、エレクトロニクス産業の一翼を担う技術開発型企業です。

(1) 会社概要


2001年、写真化学のエレクトロニクス事業部門が分社独立し設立されました。2002年に台湾子会社を設立するなど早期から海外展開を進め、2004年にJASDAQ市場へ上場を果たしました。その後、韓国や中国にも拠点を拡大し、直近では2025年にアサヒテックを子会社化するなど、事業基盤の強化を続けています。

連結従業員数は437名、単体では238名です。筆頭株主は創業の淵源である写真化学で、第2位は主要取引先でもあるニコン、第3位は金融機関の京都銀行となっており、事業パートナーや金融機関が上位を占める安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
写真化学 6.96%
ニコン 5.39%
京都銀行 3.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は石田昌德氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
石田 昌 德 代表取締役社長 大日本スクリーン製造(現SCREENホールディングス)を経て写真化学入社。2011年より現職。
石田 敬 輔 取締役相談役 石田旭山印刷(現写真化学)入社。同社代表取締役社長、会長を経て2016年より現職。
上野 篤 雄 取締役フォトマスク事業本部担当フォトマスク事業本部長 写真化学入社。エスケーエレクトロニクス営業本部長、執行役員を経て2013年より現職。
向田 泰 久 取締役経営戦略室担当 日本生命保険相互会社入社。同社法人営業部長等を経て2017年より現職。
橋本 昌 典 取締役生産本部担当技術開発本部担当知財グループ担当 写真化学入社。エスケーエレクトロニクス生産本部長、執行役員を経て2022年より現職。
阿部 和 香 取締役新領域創造室担当ソリューション事業部担当 エスケーエレクトロニクス入社。経営戦略室副室長、写真化学取締役等を経て2022年より現職。
奥田 正 男 取締役管理本部担当 京都銀行入行。同行執行役員監査部長等を経て2020年より現職。
前野 隆 一 取締役(常勤監査等委員) 写真化学入社。エスケーエレクトロニクス取締役、清原光学社長等を経て2018年より現職。


社外取締役は、中野雄介(公認会計士)、佐々木真一郎(弁護士)、立石知雄(元オムロン・現キョーエン代表)、神服佐知子(フォーシーズインターナショナル代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「大型フォトマスク事業」、「ソリューション事業」、「スクリーンマスク・メタルマスク事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 大型フォトマスク事業


主にスマートフォンやパソコン、薄型テレビ等に使用される液晶パネルや有機ELパネルの製造過程で必要な原版である「フォトマスク」の設計・製造・販売を行っています。

パネルメーカー等への製品販売により収益を得ています。運営は同社および連結子会社である頂正科技股份有限公司などが担っており、グローバルに事業を展開しています。

(2) ソリューション事業


RFID分野およびヘルスケア分野に取り組んでおり、それぞれの製品の設計・製造・販売を行っています。RFIDとは、ICタグとリーダー間で電磁波や電波を送受信し、非接触で情報を読み書きするシステムです。

RFIDタグや医療機器等の製品販売により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) スクリーンマスク・メタルマスク事業


車載ガラスや電子部品の印刷工程に使用されるスクリーンマスクや、半導体パッケージ製造等に使用されるメタルマスクなどの高精度な製造用原版を提供しています。

電子部品メーカー等への製品販売により収益を得ています。運営は主に連結子会社のアサヒテックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、特に直近では290億円台に達しています。経常利益も高い水準を維持しており、利益率も10%を超える高い収益性を確保しています。全体として業績は拡大基調にあります。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 204億円 249億円 281億円 257億円 292億円
経常利益 14億円 43億円 50億円 31億円 38億円
利益率(%) 6.7% 17.3% 17.9% 11.9% 13.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 42億円 46億円 29億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約23%台で安定しており、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 257億円 292億円
売上総利益 59億円 69億円
売上総利益率(%) 23.1% 23.7%
営業利益 31億円 39億円
営業利益率(%) 11.9% 13.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が9.3億円(構成比30%)、支払手数料が4.8億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


大型フォトマスク事業が売上の大部分を占めており、当期は増収となりました。新たに追加されたスクリーンマスク・メタルマスク事業も売上に寄与しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
大型フォトマスク事業 256億円 288億円
ソリューション事業 0.9億円 0.8億円
スクリーンマスク・メタルマスク事業 - 3.3億円
連結(合計) 257億円 292億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を借入金の返済や設備投資に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 39億円 51億円
投資CF -41億円 -61億円
財務CF -25億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「創造と調和」を経営の基本理念としています。社会、自然、そして人との調和を大切にしながら、社会の求める良い製品を作り出していくことで、物質的にも精神的にも豊かな社会の実現に寄与できる企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


同グループは、「エレクトロニクスとテクノロジーの力で社会に貢献する」をパーパスとして掲げています。成長を続けるエレクトロニクス業界において事業環境の変化に的確に対応し、ファインテクノロジーをベースに社会的存在価値のある技術開発型企業として社会に貢献する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な「企業価値向上」と「株主価値向上」を目指し、中長期的な経営指標の目標を定めています。

* 営業利益率 20%以上
* ROE 15%以上
* 売上高総資産回転率 1.0以上

(4) 成長戦略と重点施策


フラットパネルディスプレー業界の高精細化や高機能化に対応するため、生産能力の向上と高精細対応を目的とした成長投資を行い、既存フォトマスク事業の収益力向上を図ります。また、RFIDやヘルスケアなどの新規事業の早期黒字化、M&Aや関連子会社との連携強化によるグループ力の向上、人材育成やガバナンス強化による経営基盤の強化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長の源泉である人材について、経営を担える人材や専門性を有するプロフェッショナルな人材の獲得・育成に注力しています。個人の多様性を尊重し、女性活躍推進や中途採用の積極化、ハラスメントのない職場環境の整備を通じて、多様な人材が活躍できる環境を整える方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 43.4歳 12.8年 7,538,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 85.1%
男女賃金差異(正規) 81.5%
男女賃金差異(非正規) 68.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(79.0%)、女性採用比率(15.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要動向について


同社グループの製品需要は、顧客であるパネルメーカーの設備投資や生産・開発動向に強く影響されます。国内外の経済情勢や市況の悪化、顧客の経営方針の変更などにより需要が変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競争環境について


大型フォトマスク市場では、パネルメーカー間での技術競争やコストダウン圧力が日常的に発生しています。同社は生産性向上やコスト削減を推進していますが、想定以上に競争環境が厳しくなった場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 設備投資による影響について


事業成長には継続的な設備投資が不可欠ですが、将来の需要を予測して実施するため、予測通りの需要増加が得られない場合には投資回収が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外での事業展開について


海外売上高比率は約9割を占めており、中国、韓国、台湾等の市場拡大が見込まれています。これらの地域における政治的・経済的リスクや関係悪化、税制の変更など、現地での社会的・経済的環境の変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。