IDOM 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IDOM 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の中古車販売大手。中古車買取・販売店「ガリバー」を全国展開しています。2025年2月期は、大型店の新規出店や在庫投資の効果により直営店小売台数が過去最高を記録。売上高4,967億円(前期比18.3%増)、営業利益199億円(同23.4%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社IDOM の有価証券報告書(第31期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. IDOMってどんな会社?


中古車買取・販売の「ガリバー」ブランドで知られる業界大手。大型店の出店加速により小売事業を拡大しています。

(1) 会社概要


1994年に福島県郡山市で中古車買取業を目的にガリバーインターナショナル・コーポレーションを設立。1998年にドルフィネットシステムの本格運営を開始し、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2003年には同市場第一部へ指定替えとなり、2016年に現在のIDOMへ商号変更しています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

連結従業員数は4,023名(単体3,812名)です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であるフォワードで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は代表取締役社長の羽鳥由宇介氏です。

氏名 持株比率
フォワード 27.89%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.40%
羽鳥 由宇介 5.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名、計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。兄弟である羽鳥由宇介氏と羽鳥貴夫氏が共に代表取締役社長を務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
羽鳥 由宇介 取締役社長(代表取締役社長) 1995年同社取締役就任。常務、専務を経て2008年より現職。
羽鳥 貴夫 取締役社長(代表取締役社長) 1995年同社取締役就任。フォワード代表取締役。常務、専務を経て2008年より現職。
西端 亮 取締役(取締役CFO) 東亜燃料工業、テルモ上席執行役員CAFOを経て2020年同社入社。2023年より現職。
野田 公一 取締役 三菱銀行、楽天執行役員、ウォルマート・ジャパン・HD最高人財責任者等を経て2018年より現職。
伊藤 聡子 取締役 キャスター、事業創造大学院大学客員教授、積水樹脂社外取締役等を経て2025年より現職。


社外取締役は、野田公一(元楽天執行役員)、伊藤聡子(事業創造大学院大学客員教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


国内において中古車販売事業「ガリバー」およびこれらに付帯する事業を行っています。一般消費者への小売を主要販路としつつ、卸売や新車販売も手掛けています。また、付帯事業として自動車の整備、板金、保険代理店業務なども展開しています。

主な収益は、一般消費者や業者への中古車販売代金、整備・保証等のサービス料収入です。運営は主にIDOMが行っており、子会社の東京マイカー販売が中古車売買、IDOM CaaS Technologyが自動車リース・レンタル事業、IDOM Digital Driveがソフトウェア開発を担っています。

(2) その他


米国において中古車販売事業を展開しています。日本国内と同様に、中古車の買取および販売を行っており、グローバル展開の一翼を担っています。

収益は、米国市場における中古車の販売代金等が中心です。運営は、米国現地法人であるGulliver USA, Inc.およびGulliver EAST, Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大傾向にあり、特に当期は前期比で大幅な増収となりました。経常利益も前期の落ち込みから回復し、高水準を維持しています。利益率は3〜4%台で推移しており、当期純利益も安定して黒字を確保しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 3,806億円 4,595億円 4,165億円 4,199億円 4,967億円
経常利益 96億円 176億円 181億円 158億円 191億円
利益率(%) 2.5% 3.8% 4.4% 3.8% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 108億円 142億円 114億円 134億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約17%台で安定的に推移しています。販管費も増加していますが、増収効果が上回り、営業利益率は4.0%へ改善しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 4,199億円 4,967億円
売上総利益 733億円 887億円
売上総利益率(%) 17.5% 17.9%
営業利益 161億円 199億円
営業利益率(%) 3.8% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が181億円(構成比26.4%)、地代家賃が125億円(同18.1%)を占めています。売上原価は売上高の82.1%を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは、オートオークション相場の上昇による単価増や小売台数の増加により、大幅な増収増益となりました。その他(米国)セグメントも増収となりましたが、営業損益は赤字に転じています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
日本 4,170億円 4,929億円 161億円 200億円 4.1%
その他 28億円 38億円 0億円 -1億円 -2.3%
調整額 - - -0億円 -0億円 -
連結(合計) 4,199億円 4,967億円 161億円 199億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 96億円 -200億円
投資CF -84億円 -88億円
財務CF -82億円 136億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念として「Growing Together」を掲げ、共存共栄の思想を原点に、株主、顧客、社員、パートナー、社会といったステークホルダーと共に成長し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


1994年の創業以来、「自動車の流通革命」を起こすことをビジョンとして掲げ、業界の変革を志向しています。自動車流通という循環型経済の一端を担うことを社会的価値と認識し、日本および海外での事業拡大を通じてビジョン実現に向けて邁進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、2027年2月期に向けた連結経営目標を設定し、小売ビジネスを中心とした事業拡大を図っています。重視する経営指標として、営業利益の着実な増益、資本コストを意識したROIC、フリー・キャッシュ・フローの中長期的な拡大を掲げています。

* 直営店小売台数:17~19万台
* 営業利益:300億円
* ROIC:8%以上
* フリー・キャッシュ・フロー:黒字

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、大型店の新規出店を資本効率を見極めながら加速させる方針です。また、顧客との取引循環サイクル拡大を狙い、整備工場の展開を進めることでリピート顧客の囲い込みを図ります。さらに、人材教育体制の整備やIT投資も積極的に行います。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大に対応するため、人材教育の強化や、多様化する消費者ニーズに応えるサービス開発力・マーケティング活動の進化を図っています。そのために、人材教育体制の整備、専門性のある人材の採用、新しいIT技術を取り入れたIT投資を積極的に推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 34.0歳 5.8年 5,663,000円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.8%
男性労働者の育児休業取得率 14.6%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 61.3%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 65.7%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 93.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) オートオークション相場の変動


中古車価格は需要と供給により決定され、日々変動しています。同社は適正な価格での仕入・販売体制を構築していますが、急騰や急落などの予期せぬ相場変動が生じた場合、適正な粗利が確保できなくなり、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 競合他社との競争激化


中古車市場は事業者の裾野が広く、大手による寡占化が進んでいないため、同社はシェア拡大の余地があると考えています。しかし、競争激化による仕入環境の変化や在庫の過不足等の要因により適正利潤の確保が困難となった場合、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 景気動向の悪化による需要変動


中古車は嗜好品ではなく必需品としての側面があり、景気動向に左右されにくい傾向がありますが、景気悪化により販売台数が低下した場合は、一時的に需要が先延ばしされる可能性があります。これにより、短期的には業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 大型店出店後の周辺環境変化


出店にあたっては周辺地域の人口動態や競合状況等を勘案していますが、収益性の悪化や市場価値の低減により、店舗等の保有資産について減損処理が必要となる場合があります。これにより、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。