IDOM 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IDOM 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IDOMは東京証券取引所プライム市場に上場し、一般消費者向けを主力とする中古車販売事業を展開しています。直近の業績は、大型店の新規出店や既存大型店の堅調な小売台数推移などにより、売上高は5,628億円と増収、営業利益は202億円と増益を達成した一方、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社IDOMの有価証券報告書(第32期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. IDOMってどんな会社?


同社は中古車販売事業を中心に、新車販売や自動車リース・レンタル、整備などの付帯事業を幅広く展開しています。

(1) 会社概要


同社は1994年にガリバーインターナショナル・コーポレーションとして設立され、中古車買取業を開始しました。1996年にガリバーインターナショナルへ商号変更し、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2016年に現在のIDOMに商号変更し、自動車流通の領域で事業を拡大し続けています。

現在の同社グループは、連結で4,260名、単体で4,010名の従業員を擁しています。筆頭株主は代表取締役社長の羽鳥貴夫氏が代表を務めるフォワードで、第2位は同じく代表取締役社長の羽鳥由宇介氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
フォワード 27.89%
羽鳥由宇介 5.85%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は羽鳥由宇介氏および羽鳥貴夫氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
羽鳥由宇介 代表取締役社長 1995年同社取締役、1999年常務取締役、2001年専務取締役を経て、2008年より現職。
羽鳥貴夫 代表取締役社長 1995年同社取締役、1996年フォワードを設立し代表取締役。2006年同社専務取締役を経て、2008年より現職。
西端亮 取締役CFO 1982年東亜燃料工業入社。テルモ上席執行役員CAFO等を経て、2020年同社入社しCFO就任。2023年より現職。


社外取締役は、野田公一(弁護士法人平松剛法律事務所人事総務責任者)、伊藤聡子(伊藤聡子事務所代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


一般消費者への小売を主要な販路として、中古車販売事業や新車販売事業を提供しています。また、それに付帯する自動車の整備、リースおよびレンタル、人材紹介、ソフトウェア等の開発など幅広いサービスを展開し、国内の顧客ニーズに応えています。

収益源は、中古車および新車の販売代金、自動車のリースやレンタル利用料、付帯サービスの提供料などです。運営は主に同社が行い、リースやレンタル事業はIDOM CaaS Technology、ソフトウェア開発はIDOM Digital Driveなどが担当しています。

(2) その他


主に米国における一般消費者向けの中古車販売事業を展開しています。海外市場の特性に合わせた中古車の仕入れおよび販売を行い、グローバルでの事業拡大と収益基盤の多様化を推進しています。

収益源は、米国市場における中古車の販売代金です。運営は米国の連結子会社であるGulliver USA, Inc.およびGulliver EAST, Inc.が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、売上高は安定して拡大基調にあり、直近では5,628億円に達しています。経常利益は150億円から190億円程度の水準で推移しており、安定した収益力を維持しています。利益率も堅調に推移しています。

項目 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 4,165億円 4,199億円 4,967億円 5,628億円
経常利益 181億円 158億円 191億円 186億円
利益率(%) 4.4% 3.8% 3.8% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 200億円 119億円 139億円 118億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高が順調に伸長し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約17%台で安定しており、適切な価格設定と仕入れが機能していることがうかがえます。営業利益も微増しており、堅調な本業の稼ぐ力を示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 4,967億円 5,628億円
売上総利益 887億円 963億円
売上総利益率(%) 17.9% 17.1%
営業利益 199億円 202億円
営業利益率(%) 4.0% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が197億円(構成比26%)、地代家賃が143億円(同19%)、広告宣伝費が96億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である日本事業が全体の売上を牽引しています。大型店の新規出店や稼働により小売台数が堅調に推移し、前期間から大きく増収を果たしました。また、その他セグメントも米国の事業拡大などにより売上が大幅に伸長しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
日本 4,929億円 5,537億円
その他 38億円 90億円
連結(合計) 4,967億円 5,628億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動による収入に加えて、資金調達も行いながら積極的な投資活動を継続する「積極型」の傾向を示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF -200億円 111億円
投資CF -88億円 -115億円
財務CF 136億円 125億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念として「Growing Together」を掲げ、共存共栄の思想を原点に、株主や顧客、社員、パートナー、社会といったステークホルダーと共に成長し続けることを目指しています。また、自動車流通という循環型経済の一端を担う社会的価値を認識し、「自動車の流通革命」を起こすことをビジョンに掲げています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念である「Growing Together」を基盤とし、多様性を尊重する文化を育んでいます。性別や国籍、年齢などの属性に関わらず、従業員それぞれの能力を十分に発揮し活躍できる環境の構築を推進しています。また、自己成長や自己研鑽を促すための様々な制度や研修を設け、挑戦を歓迎する風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営指標として着実な増益となる営業利益や、資本コストを意識した水準のROIC、中長期的な拡大を見据えたフリー・キャッシュ・フローを重視しています。中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。

・直営店小売台数:17~19万台
・営業利益:300億円
・ROIC:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ブランド力による集客力や蓄積されたノウハウを武器に、資本効率を見極めながら大型店の新規出店を加速する方針です。また、顧客との取引循環サイクルを拡大し、生涯顧客として囲い込むために整備工場の展開を進めていきます。さらに、豪州や米国を中心にグローバル展開を行うなど、新たな事業領域の拡大にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業拡大や多様化する消費者ニーズに対応するため、人材教育の強化や専門性のある人材の採用を推進しています。従業員が働き甲斐や自己成長を感じられる魅力的な職場環境の実現に取り組み、定期的なエンゲージメント状態の可視化を通じて組織課題の解決を図るなど、優秀な人材の安定的な確保と育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 34.3歳 6.3年 5,635,000円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.6%
男性育児休業取得率 22.6%
男女賃金差異(全労働者) 51.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 68.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 96.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) オートオークション相場の変動


オークション相場は需要と供給により日々変動しており、急騰や急落などの予期せぬ変動が発生した場合、適正な価格での仕入れや販売が困難になるおそれがあります。これにより、適切な粗利が確保できず、同社グループの業績に短期的な影響を与える可能性があります。

(2) 競合他社との競争激化


中古車市場は事業者の裾野が広く寡占化が進んでいないものの、同業他社との競争が激化した場合、販売価格の低下や仕入環境の変化、在庫の過不足が生じるリスクがあります。結果として適正利潤の確保が困難となり、同社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 店舗資産の価値低下と環境変化


大型店の出店において、周辺地域の動態や競合状況を勘案し機動的な退店が可能な契約を結んでいますが、環境変化による収益性の悪化が生じるリスクがあります。市場価値の低減などにより保有資産の減損処理が必要となった場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 優秀な人材の確保難航


事業運営には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。同社は働きがいのある職場環境の整備に取り組んでいますが、人材獲得競争が激化し、期待する人材の確保が困難になる、あるいは採用コストが増加した場合、事業運営に必要な人員が不足し業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。