※本記事は、株式会社髙島屋 の有価証券報告書(第159期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 髙島屋ってどんな会社?
1831年創業の老舗百貨店。「まちづくり」戦略を掲げ、百貨店を核とした商業施設開発や金融事業も展開しています。
■(1) 会社概要
1831年に京都で創業し、1919年に株式会社髙島屋呉服店を設立。1949年に東証へ上場しました。1963年には商業開発を担う東神開発を設立し、ショッピングセンター開発に着手。1993年のシンガポール髙島屋開設など海外展開も進めています。2024年には創業200周年に向けた「グランドデザイン」を発表しました。
連結従業員数は6,574名、単体では3,621名です。大株主は、信託銀行や生命保険会社などの機関投資家が上位を占めています。第2位の日本カストディ銀行や第3位の日本生命保険など、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.22% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.48% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性5名の計16名で構成され、女性役員比率は31.3%です。代表取締役社長は村田善郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村田善郎 | 代表取締役取締役社長 | 1985年入社。企画本部長や総務本部長などを歴任し、2019年より現職。 |
| 横山和久 | 代表取締役専務取締役 | 1988年入社。企画本部副本部長や財務部長を経て、営業本部長、ライフデザインオフィス担当を務める。 |
| 園田篤弘 | 代表取締役専務取締役 | 1988年入社。企画本部財務部長などを経て、2024年より企画本部長、史料館担当。 |
| 杉山智子 | 代表取締役常務取締役 | 1990年入社。総務本部総務部長などを経て、2025年より総務本部長、秘書室担当。 |
| 牧野考一 | 常務取締役 | 1985年入社。ジェイアール東海髙島屋常務取締役などを経て、2025年より日本橋店長。 |
| 難波斉 | 常務取締役 | 1988年入社。ジェイアール東海髙島屋常務取締役などを経て、2025年より大阪店長。 |
| 青木和宏 | 常務取締役 | 1987年入社。横浜店長などを経て、2025年より営業本部副本部長、営業企画部長。 |
| 清瀨雅幸 | 取締役 | 1992年東神開発入社。同社社長や髙島屋企画本部長などを歴任。現在は東神開発代表取締役会長。 |
社外取締役は、後藤晃(元公正取引委員会委員)、横尾敬介(産業革新投資機構社長)、有馬充美(西武ホールディングス社外取締役)、海老澤美幸(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内百貨店業」「海外百貨店業」および「商業開発業」などを展開しています。
■国内百貨店業
日本国内において、衣料品、身の回り品、雑貨、家庭用品、食料品などの販売を行っています。全国の主要都市に店舗を構え、ラグジュアリーブランドから食料品まで幅広い商品を提供しています。
顧客への商品販売による対価を主な収益としています。自社ポイントや商品券の発行・管理も行っています。運営は髙島屋および岡山髙島屋、高崎髙島屋などの連結子会社が行っています。
■海外百貨店業
シンガポール、中国(上海)、ベトナム(ホーチミン)、タイ(バンコク)において百貨店を運営し、商品を販売しています。日本の百貨店同様、多様な商品を現地の顧客や観光客に提供しています。
商品販売による対価を収益源としています。運営はタカシマヤ・シンガポールLTD.、上海高島屋百貨有限公司、タカシマヤ・ベトナムLTD.、サイアム・タカシマヤ(タイランド)CO.,LTD.などの現地法人が行っています。
■国内商業開発業
日本国内において、ショッピングセンター(SC)の開発・運営および不動産管理を行っています。百貨店とのシナジー効果を発揮する商業施設の開発や、資産価値の向上を図る管理運営を手掛けています。
テナントからの賃貸収益や不動産管理収益を得ています。運営は主に東神開発が担っており、玉川髙島屋S・Cや柏髙島屋ステーションモールなどを展開しています。
■海外商業開発業
シンガポールやベトナムにおいて、住宅・オフィス・商業の複合開発や不動産賃貸事業を行っています。学校不動産賃貸など、現地のニーズに合わせた多様な開発を進めています。
不動産賃貸収益や開発事業からの収益を得ています。運営はトーシン・ディベロップメント・シンガポールPTE.LTD.やベトナムの現地法人などが担当しています。
■金融業
クレジットカードの発行・運営、保険代理店業務、金融商品仲介などを行っています。百貨店顧客基盤を活かしたファイナンシャルカウンター事業を展開し、決済サービスや資産形成の提案を行っています。
カード会員からの年会費や加盟店からの手数料、金融商品の仲介手数料などを収益としています。運営は髙島屋ファイナンシャル・パートナーズなどが担当しています。
■建装業
商業施設やホテル、オフィスなどの内装工事の企画・設計・施工を行っています。百貨店で培った空間づくりのノウハウを活かし、質の高い内装工事を提供しています。
顧客からの工事請負代金を収益源としています。運営は髙島屋スペースクリエイツが担当しています。
■その他
飲食業、広告宣伝業、通信販売業、人材派遣業などを行っています。グループの事業活動を多角的にサポートするとともに、外部顧客へのサービス提供も行っています。
サービスの提供対価や商品販売代金を収益としています。運営はアール・ティー・コーポレーション(飲食)、エー・ティ・エー(広告)、センチュリーアンドカンパニー(人材)などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、コロナ禍の影響を受けた2021年2月期以降、売上高・利益ともに回復傾向にあります。特に直近の2025年2月期は、国内百貨店の好調やインバウンド需要の回復により、売上高、各段階利益ともに大きく伸長し、当期純利益も増加傾向を維持しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,209億円 | 6,957億円 | 3,689億円 | 3,858億円 | 4,128億円 |
| 経常利益 | -136億円 | 69億円 | 345億円 | 492億円 | 604億円 |
| 利益率(%) | -2.2% | 1.0% | 9.4% | 12.8% | 14.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -336億円 | 69億円 | 170億円 | 250億円 | 316億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は50%を超える高い水準を維持しています。営業利益も増益となっており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,858億円 | 4,128億円 |
| 売上総利益 | 1,983億円 | 2,137億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.4% | 51.8% |
| 営業利益 | 459億円 | 575億円 |
| 営業利益率(%) | 11.9% | 13.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当などの人件費関連が約402億円(構成比約16.6%)、配送費及び作業費が約322億円(同13.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりました。特に主力の国内百貨店業はインバウンドや高額品需要が牽引し、大幅な増益を達成しました。海外商業開発業もベトナム事業等が好調で大幅増益です。一方、国内商業開発業は改装工事等の影響で減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内百貨店業 | 2,943億円 | 3,182億円 | 211億円 | 285億円 | 9.0% |
| 海外百貨店業 | 326億円 | 343億円 | 80億円 | 84億円 | 24.4% |
| 国内商業開発業 | 384億円 | 408億円 | 79億円 | 69億円 | 16.8% |
| 海外商業開発業 | 135億円 | 154億円 | 41億円 | 59億円 | 38.3% |
| 金融業 | 174億円 | 189億円 | 46億円 | 48億円 | 25.6% |
| 建装業 | 279億円 | 300億円 | -7億円 | 22億円 | 7.2% |
| その他 | 419億円 | 409億円 | 21億円 | 20億円 | 4.8% |
| 調整額 | -586億円 | -530億円 | -11億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 4,661億円 | 4,985億円 | 459億円 | 575億円 | 11.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、運転資金等の必要資金を内部資金や外部調達により調達し、国内金融機関からの借入枠やTMSを活用して資金効率を高めています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加などにより、前年同期を上回る収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却収入が増加したものの、短期貸付金の増加などにより、前年同期を上回る支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出が増加したことにより、前年同期を大きく上回る支出となりました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 595億円 | 725億円 |
| 投資CF | -385億円 | -397億円 |
| 財務CF | -206億円 | -418億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「いつも、人から。」を経営理念として掲げています。「人を信じ、人を愛し、人につくす」というこころを大切にし、すべての人々が21世紀の豊かさを実感できる社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来の精神である「店是」を大切にし、誠実で公正な商いを通じて社会に貢献する文化があります。「確実なる品を廉価に販売し、正札掛値なし」「顧客の待遇を平等にし、貧富貴賤による差等をつけない」といった顧客第一主義の精神が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2031年の創業200周年に向けた「グランドデザイン」の実現を目指し、2026年度を最終年度とする中期経営計画を推進しています。資本コストを意識したROIC経営を導入し、以下の目標を掲げています。
* 営業利益:600億円
* 自己資本比率:40.0%
* ROE:8.2%
* ROIC:6.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
「まちづくり」をグループ総合戦略とし、百貨店を核とした「次世代型SC」への転換を進めています。また、海外事業や金融事業を成長領域と位置づけ、ベトナムでの開発や金融サービスの拡大に注力します。さらに、グループ各事業の「シームレス化」を推進し、顧客体験の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人が主役」の経営を掲げ、多様な人材の活躍支援や育成に取り組んでいます。従業員一人ひとりの自立と成長を促すため、ジョブローテーションや公募制度、リスキリングなどの機会を提供し、エンゲージメントと生産性の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 49.4歳 | 25.5年 | 7,777,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 34.4% |
| 男性育児休業取得率 | 292.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 60.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.4% |
※男性労働者の育児休業取得率は、配偶者が出産した従業員数に対する取得者数の割合であり、過年度出産者の取得を含むため100%を超える場合があります。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サイバー攻撃によるシステム障害・情報漏洩発生リスク
外部からの不正アクセスによる改ざんや破壊によりシステム障害が発生し、営業機会を逸失するリスクがあります。また、個人情報等の機微な情報が漏洩した場合、社会的信用の失墜につながる恐れがあります。
■(2) 事業活動における人権問題発生リスク
接客や広告表現における差別的対応、従業員へのハラスメント対策不足、サプライチェーン上での人権侵害などが生じた場合、レピュテーションの低下や不買運動などによる損失が発生する可能性があります。
■(3) ESG経営への取組遅れのリスク
環境・社会・ガバナンスへの対応が遅れた場合、ステークホルダーからの信用喪失やブランド価値の毀損を招くリスクがあります。特に脱炭素化などの環境課題への対応遅れは、競争力低下につながる可能性があります。



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