髙島屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

髙島屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

髙島屋は東京証券取引所プライム市場に上場し、国内外での百貨店業を中核に、商業開発業や金融業、建装業などを幅広く展開しています。直近の業績トレンドは、売上高が約4,020億円、営業利益が約535億円となり、インバウンド需要の反動減等の影響により前年度と比較して減収減益となっています。


※本記事は、髙島屋の有価証券報告書(第160期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 髙島屋ってどんな会社?


国内外で百貨店業を中核とし、商業開発や金融事業も展開する老舗小売企業です。

(1) 会社概要


1831年に京都で古着木綿商として創業しました。1919年に髙島屋呉服店を設立し、1930年に現在の社名に変更しました。1949年に株式を上場し、現在はシンガポールや上海など海外にも店舗を展開しています。直近では2020年に金融子会社を合併し、金融事業を強化しています。

同社グループは、連結従業員数6,518名、単体従業員数3,463名の体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行となっており、機関投資家が多く名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.49%
日本カストディ銀行(信託口) 4.45%
シティインデックスイレブンス 3.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性5名の計16名で構成され、女性役員比率は31.3%です。代表取締役取締役社長は村田善郎が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
村田善郎 代表取締役取締役社長業務監査室担当 1985年同社入社。営業本部柏店長、企画本部長などを経て2019年3月より現職。
牧野考一 代表取締役専務取締役営業本部長ライフデザインオフィス担当 1985年同社入社。ジェイアール東海髙島屋常務取締役などを経て2026年3月より現職。
杉山智子 代表取締役常務取締役総務本部長秘書室担当 1990年同社入社。総務本部総務部法務・リスクマネジメント室長などを経て2025年5月より現職。
難波斉 常務取締役営業本部大阪店長 1988年同社入社。高崎髙島屋代表取締役社長などを経て2025年5月より現職。
横山和久 取締役 1988年同社入社。ジェイアール東海髙島屋営業本部長などを経て2026年3月より現職。
園田篤弘 取締役 1988年同社入社。企画本部財務部長などを経て2026年3月より現職。
青木和宏 取締役 1987年同社入社。セレクトスクエア代表取締役社長などを経て2026年3月より現職。
清瀨雅幸 取締役 1992年東神開発入社。東神開発代表取締役会長などを経て2024年3月より現職。


社外取締役は、後藤晃(元公正取引委員会委員)、横尾敬介(産業革新投資機構代表取締役社長CEO)、有馬充美(商工組合中央金庫社外取締役)、海老澤美幸(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内百貨店業」「海外百貨店業」「国内商業開発業」「海外商業開発業」「金融業」「建装業」および「その他」事業を展開しています。

国内百貨店業


衣料品、身回品、雑貨、家庭用品、食料品などの販売を行っています。また、東西の大型店舗を軸に独自の売場づくりや通信販売を展開しています。

収益源は店舗や通信販売等における顧客からの商品代金です。運営は同社のほか、岡山髙島屋や高崎髙島屋などの子会社が行っています。

海外百貨店業


シンガポール、上海、ホーチミン、バンコクなどで百貨店を運営し、現地の市場動向に合わせた商品やサービスを提供しています。

収益源は現地店舗での商品販売代金です。運営はタカシマヤシンガポールなどの海外子会社が行っています。

国内商業開発業


百貨店とのシナジー効果を発揮する商業施設の開発および資産・施設の管理運営を行っています。玉川などのショッピングセンターが主な対象です。

収益源はテナントからの不動産賃貸収入や施設運営に伴う各種手数料です。運営は東神開発が中心となって行っています。

海外商業開発業


ベトナムを中心に、住宅・オフィス・商業の複合開発事業や学校不動産賃貸事業などを展開しています。

収益源は海外の商業施設やオフィスビルなどにおける不動産賃貸収入です。運営はトーシンディベロップメントシンガポールなどの子会社が行っています。

金融業


クレジットカード事業やファイナンシャルカウンター事業、保険事業、投融資事業など、総合的な金融サービスを提供しています。

収益源はカード会員からの年会費や加盟店からの決済手数料、金融商品仲介手数料などです。運営は髙島屋ファイナンシャル・パートナーズなどが行っています。

建装業


ホテルなどの大型物件やラグジュアリーブランドを中心とした商業施設の内装工事の受注や施工を行っています。

収益源は顧客からの工事代金です。運営は髙島屋スペースクリエイツなどの子会社が行っています。

その他事業


通信販売業、飲食業、広告宣伝業、人材派遣業など、グループ各社の事業を支援し、補完する多様なサービスを提供しています。

収益源は各事業におけるサービス提供対価です。運営はアール・ティー・コーポレーションやセンチュリーアンドカンパニーなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が新型コロナウイルスの影響を受けた後に回復傾向を示しましたが、直近では減収に転じています。利益面では経常利益が安定して黒字を計上してきたものの、当期は特別損失の計上等により最終赤字となっています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 6,957億円 3,689億円 3,858億円 4,128億円 4,020億円
経常利益 69億円 345億円 492億円 604億円 569億円
利益率(%) 1.0% 9.4% 12.8% 14.6% 14.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 69億円 170億円 250億円 316億円 -197億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益も減少しています。営業利益率に関しても前期から低下しており、収益性の確保が課題となっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 4,128億円 4,020億円
売上総利益 2,137億円 2,092億円
売上総利益率(%) 51.8% 52.0%
営業利益 575億円 535億円
営業利益率(%) 13.9% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が406億円(構成比17%)、配送費及び作業費が323億円(同13%)、不動産及び機械賃借料が212億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメントごとの増減要因をみると、国内百貨店業はインバウンド需要の反動で減収減益となりました。一方、建装業はホテル関連の需要を取り込み大幅な増収増益を達成し、金融業もクレジットカード事業の拡大により好調に推移しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
国内百貨店業 3,182億円 3,039億円 285億円 249億円 8.2%
海外百貨店業 343億円 343億円 84億円 85億円 24.8%
国内商業開発業 408億円 418億円 69億円 66億円 15.7%
海外商業開発業 154億円 157億円 59億円 58億円 37.1%
金融業 189億円 207億円 48億円 56億円 26.9%
建装業 300億円 332億円 22億円 25億円 7.6%
その他事業 409億円 428億円 20億円 20億円 4.7%
連結(合計) 4,985億円 4,924億円 575億円 535億円 10.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に分類されます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 725億円 538億円
投資CF -397億円 -349億円
財務CF -418億円 -318億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「いつも、人から。」を経営理念として掲げています。「人を信じ、人を愛し、人につくす」こころを大切にし、社会に貢献し続ける企業グループを目指しています。すべての人々が21世紀の豊かさを実感できる社会の実現に貢献することを目標としています。

(2) 企業文化


同社は、創業の精神である商いの行動規範「店是」において「顧客の待遇を平等にし、いやしくも貧富貴賤に依りて差等を附すべからず」を掲げ、人権を尊重する価値観を受け継いでいます。また、個人と組織が能動的かつ迅速に行動する風土や、誰もが新たなチャレンジを後押しされる環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする中期経営計画において、グループ総合力の発揮とグランドデザイン実現に向けた基礎固めを推進しています。

* 営業利益:575億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「次世代型SCへの転換」「海外事業(ベトナム)」「金融事業」を新たな成長の柱と位置づけ、集中的な投資を進めています。百貨店と専門店をシームレスに掛け合わせて多様な来店動機を生み出す施設づくりを進めるとともに、金融事業では顧客の生涯価値の最大化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、専門性や多様な価値観を持つすべての人の価値を最大限引き出し、従業員が主体的に生き生きと成果発揮できる企業を目指し、人的資本経営を推進しています。OJTを基本としつつ、自律的なキャリア形成を支援する各種研修やオープンエントリー制度などの人材育成の仕組みを整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 49.3歳 25.3年 7,920,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 34.8%
男性育児休業取得率 229.2%
男女賃金差異(全労働者) 59.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 61.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(72.6%)、人当生産性(8.2百万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバー攻撃によるシステム障害・情報漏洩リスク


外部からの不正アクセスによるシステム障害や機微な個人情報の漏洩は、営業機会の逸失や社会的信用の失墜につながるリスクがあります。同社はサイバーセキュリティフレームワークに基づき、外部サービス事業者を含めた網羅的な対策やレジリエンスの強化を進めています。

(2) 事業活動における人権問題発生リスク


接客時の差別的対応やサプライチェーン上でのハラスメント・不当労働は、レピュテーションの低下や不買運動につながるリスクがあります。同社は「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デューデリジェンスを実施し、リスクの防止・軽減に努めています。

(3) 海外事業展開におけるカントリーリスク


シンガポールやベトナムなどの海外事業展開においては、政治・経済情勢の変化や為替変動、現地の法規制の変更が事業に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はアジア統括駐在員事務所を通じたグローバルガバナンスの徹底や、現地人材の登用による安定運営を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。