大和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、金沢市や富山市で百貨店を展開する企業です。主力事業に加え、ホテルや出版、印刷、人材サービス等も手掛けています。直近の業績では、高級時計や化粧品は堅調だったものの、インバウンド関連売上の減少などにより減収となり、減損損失の計上で最終赤字を計上しています。


※本記事は、大和の有価証券報告書(第110期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大和ってどんな会社?


同社は、石川県や富山県を中心に地域密着型の百貨店を展開し、地域の生活文化向上に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1923年に宮市百貨店を創設し、1930年に宮市大丸を設立。1943年に丸越と合併して大和を設立しました。1949年に新潟証券取引所に上場し、その後東京証券取引所市場第二部への上場を経て、2022年にスタンダード市場へ移行しました。香林坊店や富山店を中心に北陸地方で事業を展開しています。

従業員数は連結で694名、単体で388名です。筆頭株主は創業家出身で代表取締役社長を務める宮二朗氏であり、第2位は事業会社の倉敷紡績、第3位は個人の伍嶋憲一氏となっています。

氏名 持株比率
宮二朗 9.35%
倉敷紡績 5.22%
伍嶋憲一 3.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長の宮二朗氏をはじめとする体制で、社外取締役比率は27.2%となっています。

氏名 役職 主な経歴
宮二朗 取締役社長(代表取締役) 1981年10月同社入社。営業本部副本部長、取締役、常務、経営戦略室長、専務、代表取締役副社長を経て、1999年5月より現職。
寺口時弘 専務取締役(代表取締役) 1978年4月同社入社。業務開発本部長、取締役、業務本部長、常務を経て、2015年5月より現職。
坂本哲治 取締役業務本部長 1988年4月同社入社。業務本部副本部長を経て、2018年2月に業務本部長、同年5月より現職。
藪内信昭 取締役経営戦略本部長 1984年4月同社入社。経営戦略室副室長を経て、2020年3月に経営戦略本部長、同年5月より現職。
近藤寛純 取締役営業本部長 1995年4月同社入社。香林坊店営業第1部長などを経て、2025年11月に営業本部長、2026年5月より現職。
中嶋智 取締役香林坊店長 1989年4月同社入社。営業本部副本部長などを経て、2024年2月に香林坊店長、同年5月より現職。
吉澤勉 取締役富山店長 1987年4月同社入社。営業本部MD推進部MD担当部長などを経て、2024年2月に富山店長、同年5月より現職。
北村秀明 取締役(常勤監査等委員) 1968年4月同社入社。新潟店長、取締役、常勤監査役を経て、2016年5月より現職。


社外取締役は、中村太郎(中村酒造代表取締役社長)、浅田英郎(北陸興業代表取締役社長)、菊澤智彦(CCイノベーション代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「百貨店業」「ホテル業」「出版業」「印刷業」「人材サービス業」および「その他」事業を展開しています。

百貨店業


金沢市や富山市において百貨店を運営し、地域のお客様に対して上質で専門性のある商品やデイリー商品を販売しています。重点顧客層から次世代顧客層まで幅広い顧客層をターゲットとしています。

商品の販売による収益が主な収益源であり、消化仕入などの場合は純額で営業収入を計上しています。また、ポイント制度や友の会運営も行っています。運営は同社および大和カーネーションサークルが行っています。

ホテル業


宿泊、宴会、レストランおよびそれらに付帯するサービスを提供しています。地域の顧客や観光客に対して、快適な滞在と飲食体験を提供しています。

宿泊料や宴会利用料、飲食代金が主な収益源となっており、サービス提供が完了した時点で収益を認識しています。運営は金沢ニューグランドホテルが行っています。

出版業


取次販売会社を介して各書店に向けた出版物の販売事業を展開しています。専門的な書籍や一般向けの出版物などを提供しています。

取次販売会社への出荷による販売代金が主な収益源となります。出版業界の慣行に従い、返品負債の見積りを考慮した上で収益を認識しています。運営は勁草書房が行っています。

印刷業


一般印刷やデジタルコンテンツの制作物、印刷に関する消耗品などの販売を行っています。主に企業や団体などの法人顧客を対象としています。

顧客に対する制作物の納品および検収による販売代金が主な収益源となります。運営は大和印刷社が行っています。

人材サービス業


顧客企業から業務委託、人材派遣、人材紹介という形態で案件を受注し、登録者の中から適した人材を選定してサポートを提供しています。

顧客に対する人材サービス提供の対価が主な収益源であり、派遣サービスなどの提供期間にわたって収益を認識しています。運営は大和マネージメントサービスが行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、店舗内での飲食業やプロパティマネジメントなどの事業を展開しています。

飲食代金や不動産賃貸料などが主な収益源となります。運営はレストランダイワや関連会社のプロパティマネジメント片町などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は160億円前後で安定して推移していますが、当期はインバウンド需要の反動減などの影響で減収となりました。利益面では、前期比で経常増益となったものの、固定資産の減損損失を特別損失として計上したため、最終損益は赤字に転じています。

項目 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 159億円 165億円 164億円 160億円
経常利益 1.4億円 2.8億円 1.4億円 1.8億円
利益率(%) 0.9% 1.7% 0.9% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.2億円 6.8億円 1.8億円 -11.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は前期比で微減となりましたが、売上総利益率は高い水準を維持しています。営業利益についても利益率を維持しつつ、利益性を重視した営業活動により安定した水準を確保しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 164億円 160億円
売上総利益 86億円 85億円
売上総利益率(%) 52.5% 53.0%
営業利益 2.0億円 1.9億円
営業利益率(%) 1.2% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が20億円(構成比24%)、賃借料が10億円(同12%)、水道光熱費が9億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である百貨店業は、インバウンド関連売上の減少などにより減収となりました。人材サービス業は業容拡大により大きく増収増益を達成しましたが、ホテル業や印刷業は減益または赤字となるなど、事業ごとの明暗が分かれています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
百貨店業 140億円 134億円 1.2億円 1.6億円 1.2%
ホテル業 11億円 12億円 -0.4億円 -0.3億円 -2.4%
出版業 7.1億円 7.6億円 0.2億円 0.2億円 2.2%
印刷業 2.2億円 2.1億円 0.2億円 0.1億円 4.6%
人材サービス業 0.3億円 0.6億円 0.1億円 0.2億円 29.3%
その他 3.4億円 3.5億円 0.2億円 0.1億円 2.5%
調整額 - - -0.0億円 -0.0億円 -
連結(合計) 164億円 160億円 1.4億円 1.8億円 1.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金を用いて、借入金の返済や設備投資等を健全に賄っている状態です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 6.7億円 10.9億円
投資CF -2.7億円 -1.8億円
財務CF -8.0億円 -2.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-21.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、百貨店事業を中核とし「地域の交流拠点として賑わいを創出し、市場顧客の生活文化向上に寄与する」ことを経営理念として掲げています。地域に根ざす百貨店として、同社にしかできない商品の品揃えと魅力ある営業企画の推進により、地域顧客の期待に応えることを使命としています。

(2) 企業文化


1923年の創業以来、店祖遺訓である「正しきを履んで恐れず真剣たれ」と、社是である「感謝に明けて奉仕に暮れる」を常に企業活動の信条および従業員の行動指針として掲げています。顧客や株主、取引先、従業員、そして社会公共に対する使命を果たすことを重視する文化が定着しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、グループ内各社が自立的に経営効率の向上と利益創出を目指し、収益基盤の強化を推進しています。2026年度に向けた経営目標数値として、以下の指標を掲げています。

* 連結売上高 160億円
* 連結営業利益 2.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は収益構造の改善に向けて、差別化戦略の推進による競争力強化や固定客戦略の推進に注力しています。また、EC事業の業容拡大やSNS活用によるデジタル対応力の強化も図っています。従業員エンゲージメントの向上やコンプライアンス・サステナビリティ経営の推進も重要な施策と位置付けています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は『社員と会社が「仕事/成果」を通じて「貢献/処遇」し、ともに「成長する」』を基本理念とし、自らの成長のために努力し続ける人を支援しています。各階層に必要な知識やスキルの向上を図るため、層別研修や外部教育セミナーへの参加支援、資格取得への支援体制を構築し、人材育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 46.9歳 18.4年 4,020,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 33.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 78.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客ニーズの多様化と競争激化リスク


主力である百貨店業において、景気や消費動向の影響を受けるとともに、業際を超えた競合他社との市場競争が激化しています。また、新しい生活様式の定着やデジタル社会の進展による顧客ニーズの多様化に適切に対応できない場合、同社グループの経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法令違反およびコンプライアンスリスク


同社は大規模小売店舗立地法や独占禁止法、食品安全管理などの法令に留意して営業しています。不測の事態により企業活動が制限されるリスクや、規制対応による経営コスト増加の可能性があります。そのため、コンプライアンスマニュアルの活用や委員会の開催を通じて、法令遵守の意識向上に努めています。

(3) 商品の品質と製造物責任リスク


百貨店業では消費者との商品取引が中心であり、万一欠陥商品や食中毒を引き起こす瑕疵のある商品を販売した場合、公的規制や損害賠償責任が発生するリスクがあります。これによる信用の失墜が売上の減少を招く可能性があるため、定期的に第三者機関による指導や研修を実施し、品質管理を徹底しています。

(4) 顧客情報の漏洩リスク


事業運営において多くの顧客情報を取り扱っており、不測の事態により情報漏洩が生じた場合、損害賠償費用の発生や信用低下による売上減少のリスクがあります。同社は個人情報保護管理規程を遵守し、施錠管理の徹底や定期的な監査、自己点検を実施することで情報管理の徹底を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。