大和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダードに上場し、金沢と富山で百貨店事業を展開する企業グループです。百貨店業を中核に、ホテル、出版、飲食、印刷などの事業も手掛けています。直近の決算では、総額売上高は堅調でしたが、収益認識基準適用後の売上高は微減となり、システム投資等の影響で減益となりました。


※本記事は、株式会社大和 の有価証券報告書(第109期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大和ってどんな会社?


石川県金沢市と富山県富山市に拠点を置く老舗百貨店です。地域密着型の営業を強みとし、多角的な事業を展開しています。

(1) 会社概要


1923年に店祖井村徳三郎氏が宮市百貨店を創設したことに始まります。1943年に丸越と合併して大和を設立し、北陸地方を中心に店舗網を拡大しました。1986年には香林坊店を開設して本店機能を移転し、2007年には富山店を再開発ビルへ移転するなど、地域の商業拠点としての基盤を強化してきました。

同社グループの従業員数は連結で682名、単体で392名です。筆頭株主は社長の宮二朗氏で、第2位は繊維製品の製造販売を行う事業会社、第3位は損害保険会社です。地域に根差した安定株主と事業パートナーによって支えられています。

氏名 持株比率
宮 二朗 9.34%
倉敷紡績 5.22%
東京海上日動火災保険 4.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は宮二朗氏が務めています。社外取締役比率は約27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宮 二朗 取締役社長(代表取締役) 1981年入社。営業本部副本部長、経営戦略室長などを経て1999年5月より現職。
寺口 時弘 専務取締役(代表取締役) 1978年入社。業務開発本部長、業務本部長などを歴任し2015年5月より現職。
岡本 志郎 常務取締役営業本部長 1986年入社。富山店長、香林坊店長を経て2024年2月より現職。大和マネージメントサービス社長を兼務。
坂本 哲治 取締役業務本部長 1988年入社。業務本部副本部長を経て2018年2月より現職。
藪内 信昭 取締役経営戦略本部長 1984年入社。経営戦略室副室長を経て2020年3月より現職。
中嶋 智 取締役香林坊店長 1989年入社。営業本部副本部長・MD推進部長を経て2024年2月より現職。
吉澤 勉 取締役富山店長 1987年入社。営業本部MD推進部MD担当部長などを経て2024年2月より現職。
北村 秀明 取締役(常勤監査等委員) 1968年入社。新潟店長、常勤監査役などを経て2016年5月より現職。


社外取締役は、中村太郎(中村酒造社長)、浅田英郎(北陸興業社長)、菊澤智彦(CCイノベーション社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「百貨店業」「ホテル業」「出版業」「飲食業」「印刷業」および「その他」事業を展開しています。

百貨店業

金沢市と富山市において百貨店2店舗を運営し、衣料品、身の回り品、家庭用品、食料品などを販売しています。また、友の会の運営も行っています。
主な収益は一般顧客への商品販売による対価です。運営は主に同社が行い、友の会運営は大和カーネーションサークルが担当しています。

ホテル業

金沢市内においてホテル事業を展開し、宿泊、宴会、レストランなどのサービスを提供しています。
収益源は宿泊料、宴会場利用料、飲食代などです。運営は金沢ニューグランドホテルが行っています。

出版業

学術書や教養書を中心とした書籍の出版・販売を行っています。
主な収益は、書店や取次会社を通じた書籍販売による売上です。運営は勁草書房が行っています。

飲食業

百貨店内でのレストランや喫茶の運営、社員食堂の受託などを行っています。
顧客からの飲食代金が主な収益源です。運営はレストランダイワが行っています。

印刷業

商業印刷物や事務用印刷物の製造・販売を行っています。
顧客からの印刷受注による売上が収益となります。運営は大和印刷社が行っています。

その他

人材派遣業、ビル管理業などを展開しています。
主な収益は、人材派遣料や業務請負料、ビル管理料などです。運営は大和マネージメントサービスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は収益認識基準の適用により変動がありますが、実質的なビジネス規模を示す総額売上高は堅調に推移しています。直近では黒字を維持しているものの、投資コストの増加等により利益率は低水準となっており、利益水準の向上が課題となっています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 339億円 377億円 159億円 165億円 164億円
経常利益 -6.2億円 -2.8億円 1.4億円 2.8億円 1.4億円
利益率(%) -1.8% -0.8% 0.9% 1.7% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.1億円 -3.0億円 0.7億円 6.5億円 1.9億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいで推移していますが、売上総利益率は50%を超えており、百貨店業特有の高い粗利率を維持しています。一方で販管費の負担が重く、営業利益率は1%台と低水準に留まっています。コストコントロールが収益性改善の鍵となります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 165億円 164億円
売上総利益 85億円 86億円
売上総利益率(%) 51.2% 52.5%
営業利益 2.2億円 2.0億円
営業利益率(%) 1.3% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が19億円(構成比23%)、賃借料が10億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の百貨店業は、システム投資に伴う償却費増などにより減益となりました。一方、ホテル業は赤字幅が縮小し、その他事業(人材サービス等)が増収増益となるなど、多角化事業の一部で改善が見られます。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
百貨店業 142億円 140億円 3.2億円 1.2億円 0.8%
ホテル業 10億円 11億円 -1.3億円 -0.4億円 -3.2%
出版業 7.2億円 7.1億円 0.4億円 0.2億円 3.5%
飲食業 3.5億円 3.4億円 0.3億円 0.1億円 3.6%
印刷業 2.0億円 2.2億円 0.2億円 0.2億円 8.5%
その他 0.1億円 0.3億円 0.0億円 0.1億円 33.5%
調整額 -2.9億円 -5.0億円 0.0億円 0.0億円 -
連結(合計) 165億円 164億円 2.8億円 1.4億円 0.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 4.1億円 6.7億円
投資CF -2.0億円 -2.7億円
財務CF -2.3億円 -8.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、百貨店事業を中核とし「地域の交流拠点として賑わいを創出し、市場顧客の生活文化向上に寄与する」ことを経営理念としています。地域に根差す百貨店として、同社にしかできない品揃えと魅力ある企画により顧客の期待に応えることを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、店祖遺訓である「正しきを履んで恐れず真剣たれ」を企業活動の信条および従業員の行動指針として掲げています。また、社是として「感謝に明けて奉仕に暮れる」を掲げ、顧客、株主、取引先、従業員、そして社会公共に対する使命を果たすことを重視する風土があります。

(3) 経営計画・目標


2025年度の経営目標数値として、以下の指標を掲げています。
* 連結売上高:165億円
* 連結営業利益:3億2千万円

(4) 成長戦略と重点施策


主力の百貨店業では、重点顧客層の深掘りと次世代顧客の獲得を図るため、新しい商品と企画の開発に注力しています。また、グループ各社は営業力強化とローコスト経営により「自主自立経営」の確立を目指しています。

* 地域独自の商品・ブランド導入や文化性の高い催事の開催
* Webビジネスを中心としたデジタル戦略の推進
* 人材派遣・販売代行業などの活動領域拡大による成長戦略の推進
* デジタル化促進による効率運営とローコスト運営の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員と会社が「仕事/成果」を通じて「貢献/処遇」し、ともに「成長する」」を基本理念としています。自らの成長のために努力する人を支援し、高い成果を上げた人を公正に処遇することを方針としています。階層別研修や専門知識習得のための勉強会、資格取得支援などを通じ、従業員の能力開発を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 46.9歳 18.3年 3,960,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 10.1%
男性労働者の育児休業取得率 0.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 64.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 67.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 74.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境について

百貨店業を取り巻く環境は、国内景気や消費動向、競合他社との競争激化、デジタル社会の進展による顧客ニーズの多様化などの影響を受けます。これらが業績に悪影響を与える可能性があります。同社は差別化された商品・企画の推進やデジタル戦略により対応を図っています。

(2) 法的規制等

大規模小売店舗立地法、独占禁止法、食品安全、消費者保護、環境関連など多岐にわたる法的規制を受けています。法令違反等の事態が生じた場合、企業活動の制限やコスト増加のリスクがあります。コンプライアンス委員会等を通じて法令遵守の徹底に取り組んでいます。

(3) 自然災害等

店舗による事業展開を行っているため、地震等の自然災害、事故、感染症の拡大などが店舗営業に悪影響を及ぼす可能性があります。これらが発生した場合、営業活動に支障が生じ、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。緊急時の社内体制整備や教育を行っています。

(4) 商品取引と品質管理

消費者に対して商品を販売しているため、欠陥商品や食中毒等の問題が発生した場合、公的規制や損害賠償、信用失墜による売上減少のリスクがあります。品質管理・衛生管理については、第三者機関による調査や指導、定期的な研修を実施して対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。