朝日放送グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

朝日放送グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する朝日放送グループホールディングスは、テレビ・ラジオ放送やコンテンツ制作等の放送・コンテンツ事業、および住宅展示場運営や通販等のライフスタイル事業を展開しています。直近の業績は、主力事業の増収増益や特別利益の計上などにより、増収かつ大幅な増益を達成し好調に推移しています。


※本記事は、朝日放送グループホールディングスの有価証券報告書(第99期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 朝日放送グループホールディングスってどんな会社?


テレビ・ラジオ放送を中核に、アニメ等のコンテンツ制作や住宅展示場運営など多角的に展開するメディアグループです。

(1) 会社概要


1951年に設立されラジオ放送を開始し、その後にテレビ放送へも事業を拡大しました。2018年に認定放送持株会社へ移行し、現在の社名へ変更するとともに放送事業を事業会社へ承継しました。近年はアニメ制作会社の買収や住宅関連子会社の再編など、多角的な事業展開とグループ体制の強化を推進しています。

同社グループは連結で1,724名、単体で104名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業パートナーである朝日新聞社で、第2位も同じく事業提携関係にあるテレビ朝日ホールディングスが名を連ねており、メディア企業を中心とした安定的な資本関係が構築されています。

氏名 持株比率
朝日新聞社 14.90%
テレビ朝日ホールディングス 9.28%
公益財団法人香雪美術館 7.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は西出将之氏が務めています。社外取締役比率は61.5%です。

氏名 役職 主な経歴
西出将之 代表取締役社長全般統括 1989年同社入社。ABCアニメーション代表取締役会長などを経て、2025年6月より現職。
今村俊昭 代表取締役副社長全般統括補佐放送事業担当 1985年同社入社。制作局長や朝日放送テレビ代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。
山本晋也 取締役(取締役会議長)内部監査担当 1979年同社入社。総合ビジネス局長や同社代表取締役副社長などを経て、2025年6月より現職。
胡摩ヶ野洋 取締役執行役員人事、総務、サステナビリティ、コンプライアンス、東京支社担当 1994年三菱商事入社。2023年同社入社。グループ戦略局人事戦略担当局長などを経て、2025年6月より現職。
岡村邦則 取締役(常勤監査等委員) 1985年朝日新聞社入社。同社執行役員人材戦略・働き方改革担当などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、本荘武宏(元大阪瓦斯社長)、黒田章裕(元コクヨ社長)、池坊専好(紫雲山頂法寺副住職)、中村史郎(元朝日新聞社社長)、西新(テレビ朝日ホールディングス取締役副社長)、藤岡実佐子(元帝國製薬社長)、大川順子(元日本航空副会長)、加藤治彦(元国税庁長官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「放送・コンテンツ事業」および「ライフスタイル事業」を展開しています。

放送・コンテンツ事業


テレビ放送、ラジオ放送、CSテレビ放送のほか、番組やアニメ・イベント等のコンテンツの企画・編成・制作・販売を行っています。幅広い年齢層の視聴者やリスナーに対して多様なエンターテインメントや報道情報を提供しています。

主な収益源は、広告主からのテレビ・ラジオのスポット収入やタイム収入、番組連携イベント等の各種コンテンツ収入です。運営は同社のほか、朝日放送テレビ、朝日放送ラジオ、スカイA、ABCアニメーションなどのグループ各社が担当しています。

ライフスタイル事業


住宅展示場およびハウジングデザインセンターの企画・運営、通信販売事業、ゴルフ場の経営を行っています。住まいや暮らしに関する複合的な情報発信拠点の提供や、安全・安心な商品の販売を通じて豊かなライフスタイルを提案しています。

住宅関連企業からの展示場出展料、消費者からの通販購入代金、ゴルフ場の利用料などが主な収益源となっています。運営は主にABCライフィズ、ABCファンライフ、ABCゴルフ倶楽部が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、特に直近の事業年度では過去最高水準の売上を記録しています。一方で利益面は、外部環境の変化や投資の影響により増減を繰り返す傾向にありましたが、直近ではコスト管理や主力事業の好調などにより、経常利益および当期純利益ともに大きく回復し、大幅な増益を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 851億円 870億円 905億円 919億円 960億円
経常利益 48億円 27億円 7億円 25億円 44億円
利益率(%) 5.6% 3.1% 0.8% 2.7% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -63億円 3億円 5億円 15億円 45億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、主力事業である放送・コンテンツ事業およびライフスタイル事業の両方が増収となったことで、売上高全体が拡大しています。これに伴い売上総利益も増加し、利益率も改善しました。営業費用等の増加はありましたが、それを上回る増収効果により、営業利益も大幅な増益となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 919億円 960億円
売上総利益 302億円 325億円
売上総利益率(%) 32.8% 33.9%
営業利益 26億円 48億円
営業利益率(%) 2.8% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、代理店手数料が93億円(構成比34%)、その他(人件費等含む)が92億円(同33%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の収益状況を見ると、放送・コンテンツ事業はテレビ放送のスポット収入やローカルタイム収入、イベント関連収入などが増加し、グループ全体の増収を牽引しました。また、ライフスタイル事業においても、関連子会社の新規連結効果などにより増収となり、全社的な業績の底上げに寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
放送・コンテンツ事業 785億円 822億円
ライフスタイル事業 134億円 138億円
連結(合計) 919億円 960億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 53億円 78億円
投資CF -38億円 -24億円
財務CF 3億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「変化に対応しながら進化を続け、強力な創造集団として社会の発展に寄与する。」を経営理念として掲げています。持続可能な社会実現のための姿勢と決意を表明しており、多岐にわたる事業を通じて、社会や地球環境に関わるあらゆる課題に正しく向き合い、メディアとしての使命と責務を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は創立以来のアイデンティティである「オリジナリティ」を企業文化の原動力として重視しています。領域を越えた連携による相乗効果を高めることで独自の知的財産を生み出し、一人ひとりが尊重され認めあえる多様な組織風土のもと、従業員の能力を最大限に引き出す「COLORFUL化推進取組方針」などを実践しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、グループ全体の中長期的な持続可能性を追求する経営計画において、2040年までの事業環境を見据えたシナリオ分析などを実施し、カーボンニュートラルの実現等にも取り組んでいます。また、財務面の目標としては、株主への適切な利益還元を重視し、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向30%を目途としつつ、中長期的には安定して40%を実現することを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


事業領域ごとの役割強化と連携による知的財産およびサービスの価値最大化を重点施策としています。放送事業では信頼されるメディアとしての存在意義を示しつつ配信展開を拡大し、コンテンツ事業ではアニメや実写を中心に独創的な知的財産を創出して収益の多角化や海外展開を図ります。ライフスタイル事業では住宅展示場を複合ライフスタイル情報発信拠点へと進化させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人的資本を持続的な企業価値向上の源泉と位置づけ、自律した個人と多様な組織による「強力な創造集団」の実現を目指しています。経営戦略と連動し、コンテンツ領域とアニメ領域に人的リソースを戦略的に配置する人材ポートフォリオの構築や、主体的な学びを促す自律的なキャリア・能力開発を進めるとともに、ダイバーシティの推進など多様な人材が活躍できる組織力の強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.7歳 20.8年 14,650,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 57.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、直近3年採用者の離職率(6.4%)、有給休暇取得率(47.0%)、育児休業復帰率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況による広告市場への影響


同社グループの主力である放送事業は広告収入に依存しており、日本の広告市場は国内マクロ経済の動向や企業業績に大きく影響を受けます。景気の下振れや物価上昇などにより企業の広告出稿が減少した場合、同社の経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、事業間の連携深化による収益の多角化を図っています。

(2) 放送事業における番組制作・内容のリスク


視聴者や社会のニーズに応える斬新で魅力ある番組の制作が同社事業の根幹です。ニーズを的確に捉えられない場合や、誤った報道、番組内容による大きな訴訟・賠償が生じた場合、社会的評価が低下し業績に影響する恐れがあります。社内のチェック機関や研修体制を強化し、放送倫理に基づく番組制作体制を確立しています。

(3) 競合メディア台頭による競争激化


技術革新とIT化の普及により、インターネット動画配信サービスなど映像コンテンツの視聴デバイスが多様化しており、放送事業にとって大きな脅威となっています。これらへの対応が遅延した場合、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は地上波放送の価値を維持しつつ、配信サービスの活用等でコンテンツビジネスの拡大を目指しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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