朝日放送グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

朝日放送グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の同社グループは、テレビ・ラジオ等の放送・コンテンツ事業と、住宅展示場運営等のライフスタイル事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、主力である放送事業の回復に加え、投資有価証券売却益の計上もあり、売上高が増加し各利益項目も大幅な増益となる増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社朝日放送グループホールディングス の有価証券報告書(第98期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 朝日放送グループホールディングスってどんな会社?


放送事業を中核に、コンテンツ制作やライフスタイル事業も展開する認定放送持株会社です。

(1) 会社概要


同社は1951年に朝日放送として設立され、同年にラジオ本放送を開始しました。1959年には大阪テレビ放送と合併し、テレビ・ラジオ兼営局となりました。2018年には認定放送持株会社体制へ移行し、現社名に変更するとともに、放送事業を朝日放送テレビ、朝日放送ラジオへ承継し、グループ経営体制を確立しました。

現在のグループ連結従業員数は1,692名、単体では108名です。筆頭株主は新聞業を営むその他関係会社の朝日新聞社で、第2位は放送ネットワーク関係にあるテレビ朝日ホールディングス、第3位は公益財団法人香雪美術館となっており、メディア関連企業や創業家関連団体が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
朝日新聞社 14.92%
テレビ朝日ホールディングス 9.29%
公益財団法人香雪美術館 7.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役は山本晋也氏です。社外取締役比率は61.5%です。

氏名 役職 主な経歴
山本晋也 代表取締役(取締役会議長)内部監査担当 1979年入社。編成局長、総合ビジネス局長、常務取締役、副社長を経て、朝日放送テレビ社長・会長を歴任。2024年10月より現職。
今村俊昭 取締役常務執行役員全般統括補佐放送事業担当 1985年入社。制作局長、エー・ビー・シーリブラ社長、執行役員を経て、2024年4月朝日放送テレビ社長に就任。同年6月より現職。
沖中進 非業務執行取締役 1978年入社。経理局長、常務取締役を経て、2018年社長に就任。2024年会長を経て、2025年4月より現職。
中村博信 非業務執行取締役 1985年朝日新聞社入社。同社取締役管理本部長などを経て、2023年同社執行役員、取締役執行役員を歴任。2025年4月より現職。
田中夏人 取締役(常勤監査等委員) 1985年入社。人事局長、朝日放送テレビ監査役を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、本荘武宏(大阪瓦斯会長)、黒田章裕(コクヨ会長)、篠塚浩(テレビ朝日HD社長)、堀越礼子(朝日新聞社取締役)、池坊専好(華道家元池坊次期家元)、藤岡実佐子(帝國製薬社長)、大川順子(元日本航空副会長)、加藤治彦(元国税庁長官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「放送・コンテンツ事業」、「ライフスタイル事業」を展開しています。

(1) 放送・コンテンツ事業


テレビ放送、ラジオ放送、CS放送および、番組やアニメ・イベント等のコンテンツの企画・制作・販売を行っています。地上波放送に加え、動画配信サービスや海外展開、音楽分野にも注力しており、総合コンテンツ事業としての成長を図っています。

収益は主に広告主からの広告料収入や、コンテンツの販売・配信収入などから得ています。運営は、同社のほか、朝日放送テレビ、朝日放送ラジオ、スカイA、ABCアニメーション、ABCフロンティアなどのグループ会社が担っています。

(2) ライフスタイル事業


住宅展示場およびハウジングデザインセンターの企画・運営、テレビ通販等の通信販売事業、ゴルフ場の経営を行っています。住宅展示場事業では顧客にライフスタイルを提案する場への進化を進め、通販事業ではEC市場の拡大に対応した事業強化を図っています。

収益は、住宅メーカー等からの出展料、消費者からの商品売上代金、ゴルフ場利用者からの利用料などから得ています。運営は主に、エー・ビー・シー開発、ABCファンライフ、ABCゴルフ倶楽部などのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 783億円 851億円 870億円 905億円 919億円
経常利益 30億円 48億円 27億円 7億円 25億円
利益率(%) 3.9% 5.6% 3.1% 0.8% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -9億円 27億円 14億円 5億円 25億円


売上高は過去5期間を通じて増加傾向にあり、2025年3月期は919億円に達しました。利益面では、2024年3月期に大きく落ち込みましたが、2025年3月期は放送事業の回復等により経常利益が大幅に改善し、当期利益も前期比で大きく増加しています。

(2) 損益計算書

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 905億円 919億円
売上総利益 275億円 302億円
売上総利益率(%) 30.5% 32.8%
営業利益 8億円 26億円
営業利益率(%) 0.9% 2.8%


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期から大幅に改善しました。特に営業利益は前期の約3倍の水準まで回復しています。売上総利益率も上昇しており、収益性が向上していることが読み取れます。

販売費及び一般管理費のうち、代理店手数料が93億円(構成比34%)、その他の経費が87億円(同31%)を占めています。売上原価については、番組制作費等の売上原価が618億円計上されています。

(3) セグメント収益

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
放送・コンテンツ事業 767億円 785億円 9億円 28億円 3.6%
ライフスタイル事業 138億円 134億円 4億円 2億円 1.8%
その他 - - - - -
調整額 -7億円 -10億円 -5億円 -5億円 -
連結(合計) 905億円 919億円 8億円 26億円 2.8%


放送・コンテンツ事業は、テレビ放送収入や配信収入の増加により増収となり、営業利益も大幅に伸長しました。一方、ライフスタイル事業は、通販事業が回復したものの不動産販売収入の減少等により減収となり、営業利益も減少しました。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

朝日放送グループホールディングスは、営業活動により堅調な収入を確保し、投資活動では計画的な支出を行いました。また、財務活動では借入れ等により資金を調達しました。これらの結果、同社は期末の現金及び現金同等物を増加させました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 57億円 53億円
投資CF -57億円 -38億円
財務CF 11億円 3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「朝日放送グループは、変化に対応しながら進化を続け、強力な創造集団として社会の発展に寄与する。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、社会環境が大きく変化する中で、コンテンツやサービスの価値を最大化し、「総合コンテンツ事業グループ」として成長を続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、一人ひとりが尊重され認めあえる職場環境を創造し、多様な能力を発揮できる企業を目指す「COLORFUL化推進取組方針」を定めています。また、「ABC@Colorful宣言」を掲げ、働き方や働く人の多様性を推進し、お互いに思いやりを持って協働できる職場づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年3月期の業績予想として以下の数値を掲げています。
* 連結売上高:925億円
* 営業利益:27億円
* 経常利益:27億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:31億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「総合コンテンツ事業グループ」としての成長を目指し、3つの事業領域で戦略を推進しています。放送事業では信頼性向上と企画力の強化を図り、コンテンツ事業ではドラマ・アニメ等の海外展開や周辺事業を拡充します。ライフスタイル事業ではハウジング事業を進化させ、EC事業を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


変化に対応できる人材を育成するため、「ABCカレッジ」等の研修や社外派遣を実施し、リーダーシップやイノベーティブな思考を育みます。また、「COLORFUL化推進取組方針」に基づき、テレワークや時短勤務の推進、フリーアドレス化など、多様な人材が活躍できる柔軟な職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.5歳 19.2年 11,578,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.6%
男女賃金差異(正規雇用) 76.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.8%


※上記指標は中核会社である朝日放送テレビの数値を掲載しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(45.4%)、直近3年採用者の離職率(5.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況による影響


主力の放送事業は広告収入に依存しており、国内マクロ経済や広告主の業績動向の影響を受けます。広告市場の変化に対応するため、コンテンツ事業やライフスタイル事業の成長を図り、グループ全体で変化に対応できる体制を構築する方針です。

(2) 放送事業について


視聴者や社会のニーズに応える番組制作ができなければ経営に悪影響を及ぼす可能性があります。また、誤った報道等があった場合の社会的信用の失墜リスクや、インターネット動画配信サービスの台頭による競合リスクも存在します。これらに対し、番組制作体制の強化やコンテンツビジネスの拡大で対応します。

(3) 法的規制について


放送事業は電波法や放送法等の規制を受け、免許の取り消し等が事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、法令改正による設備投資コストの増加リスクもあります。同社グループでは、内部管理体制の強化やコンプライアンス体制の整備に努め、リスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。