井筒屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

井筒屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場および福岡証券取引所に上場し、北九州市を地盤とする百貨店事業を展開しています。2025年2月期の連結業績は、売上高が前期比で減少したものの、営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益は増加し、減収増益となりました。


※本記事は、株式会社井筒屋 の有価証券報告書(第130期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 井筒屋ってどんな会社?


北九州市に本店を構える老舗百貨店グループです。地域密着型の百貨店運営と友の会事業などを展開しています。

(1) 会社概要


1935年に井筒屋百貨店として設立され、翌年に現在の本店を開店しました。1961年に福岡証券取引所、1972年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌年同第一部へ指定替えとなりました。その後、各地への店舗展開や子会社化を経て、2008年には株式会社山口井筒屋が山口店を開店しています。近年では2020年に黒崎店を閉店するなど事業再編を進め、創業90周年に向けた体制構築を行っています。

連結従業員数は669名、単体では561名です。筆頭株主は個人株主の青柳和洋氏で、第2位は井筒屋共栄持株会、第3位は西日本鉄道となっています。西日本鉄道は同社グループの法人顧客であり、同社役員に西日本鉄道の出身者が就任するなど、取引関係を有しています。

氏名 持株比率
青柳 和洋 11.80%
井筒屋共栄持株会 9.40%
西日本鉄道 9.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は松本圭氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
影 山 英 雄 取締役会長執行役員 1975年同社入社。営業本部長、社長執行役員などを歴任し、2010年代表取締役社長執行役員に就任。2019年より現職。
松 本  圭 代表取締役社長執行役員営業本部長 1991年同社入社。食品MDグループ長、山口井筒屋社長、本店長などを経て、2025年5月より現職。
吉 田  功 取締役常務執行役員営業副本部長(株)井筒屋商事    代表取締役社長 2003年同社入社。経営企画グループ長、黒崎店長、本店長などを経て、2023年3月より現職。
大 森 俊 介 取締役        執行役員管理本部長兼内部統制室長 1988年同社入社。人事部長、経営企画部長などを歴任し、2025年5月より現職。


社外取締役は、窪田弥生(清和法律事務所所長弁護士)、吉田透(西日本鉄道執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「百貨店業」「友の会事業」および「その他」事業を展開しています。

百貨店業

衣料品、身回品、雑貨、家庭用品および食料品などの販売を行っており、一般個人顧客を主な対象としています。また、店舗内での食堂・喫茶の経営や慶弔ギフトの販売なども手掛けています。

収益は、顧客への商品販売代金や飲食代金等から得ています。運営は、同社および連結子会社の株式会社山口井筒屋が百貨店事業を展開し、連結子会社の株式会社レストラン井筒屋がレストラン部門を、株式会社井筒屋商事がギフト販売や卸売を行っています。

友の会事業

百貨店での買い物に利用できる積立式の「友の会」運営を行っており、会員に対して前払式の商品販売の取次サービスを提供しています。

収益は、百貨店各社からの手数料等を主な源泉としています。運営は、連結子会社の株式会社井筒屋友の会が行っています。

その他

上記報告セグメントに含まれない事業として、情報処理サービス業を行っています。

収益は、情報処理サービスの提供対価として顧客から得ています。運営は、関連会社の株式会社ニシコンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は会計基準の適用変更の影響等により変動が見られますが、直近では220億円台で推移しています。利益面では、経常利益が黒字を維持しており、当期純利益も安定的に確保されています。直近の2025年2月期は減収となったものの、最終利益は増益となりました。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上収益(または売上高) 505億円 531億円 226億円 225億円 222億円
経常利益 -1.7億円 10億円 11億円 9億円 7億円
利益率(%) -0.3% 2.0% 4.8% 4.2% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 10億円 10億円 9億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上原価率は約50%で推移しています。販売費及び一般管理費は微減しており、コストコントロールが進められています。営業利益率は4%台後半へ向上しており、本業の収益性は改善傾向にあります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 225億円 222億円
売上総利益 113億円 112億円
売上総利益率(%) 50.2% 50.4%
営業利益 10億円 10億円
営業利益率(%) 4.4% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が32億円(構成比32.1%)、減価償却費が14億円(同13.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


百貨店業は微減収となりましたが、引き続きグループ売上の大半を占めています。友の会事業も減収となりました。全体として売上高は減少しましたが、営業利益ベースでは百貨店業を中心に収益性が確保されています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
百貨店業 225億円 221億円
友の会事業 0.4億円 0.4億円
その他 - -
調整額 - -
連結(合計) 225億円 222億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 19億円 14億円
投資CF -6億円 -4億円
財務CF -16億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.8%で市場平均(スタンダード市場非製造業48.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、「秩序のうえに立つ創造的繁栄」を経営理念として掲げています。お客様・お取引先・株主・従業員に対し適正な利益配分を行い、地域経済・社会の発展に貢献することを目指しています。また、将来像として「地域小売業のリーディングカンパニーとして発展していく」というビジョンを描いています。

(2) 企業文化


「奉仕こそ繁栄の基」という精神を日常の実践的心構えとして重視しています。また、不変のテーマである「百貨店らしさの追求」を掲げ、お客様第一主義を基本とした営業戦略を展開しています。地域に根ざす百貨店として、地域のお客様に満足いただける品揃えやサービスを提供し続ける姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


創業100周年を迎える2035年に向けて、「地域唯一の百貨店として、地域経済・社会の発展に貢献する」姿を目指し、「井筒屋グループ 中期3ヵ年経営計画(2025年度~2027年度)」を策定しています。2027年度(最終年度)の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:227億円
* 営業利益:11億円
* 営業利益率:5.0%
* 経常利益:9億円
* 経常利益率:3.9%

(4) 成長戦略と重点施策


「百貨店らしさの追求」「デジタルを基軸とした営業施策の強化」「収益基盤の多様化」「経営基盤の強化」を戦略の方向性としています。店舗におけるMDや外商施策の強化、アプリ等のデジタル活用による顧客接点の拡大、新規事業の検討などを進め、収益基盤の確立と財務体質の健全化を図ります。

* デジタルを基軸とした営業施策の強化:アプリ会員拡大、情報配信、ネットショッピング強化
* 百貨店らしさの追求:好調カテゴリー強化、売場活性化、店舗価値向上
* 経営基盤強化:人的資本投資による生産性向上、財務・資本戦略

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「百貨店らしさの追求」を実現する重要な要素を「人」と捉え、人的資本への投資を通じて人材を育み、企業の発展を目指しています。具体的には「人財活性化」「人財育成」「働きやすい環境整備」を方針とし、女性や若手社員の活躍推進、次世代幹部の育成、デジタル人材の育成、健康管理体制の強化などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 51.0歳 18.3年 3,953,068円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 29.6%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 66.2%
男女賃金差異(正規雇用) 69.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.7%


※男性育児休業取得率について、同社は育児休業等取得の対象となる男性従業員がいないため、有報には「-」と記載されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用比率(3.11%)、監督職(係長)に占める30代以下の割合(15.62%)、1人当たり年間総労働時間(1984時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 商圏動向に関するリスク

同社グループは北部九州・山口地域を中心に活動しており、地域の気候、景気、消費動向、競合他社(新規大型商業施設の参入等)の状況や地域再開発の影響を受ける可能性があります。これらの要因により業績に影響が及ぶリスクがあります。これに対し、本店や山口店の魅力向上、売場改装、商品力・サービス力の強化を通じて対応しています。

(2) 営業基盤に関するリスク

グループ業績の中で同社(提出会社)の割合が高いため、同社の業績動向がグループ全体に大きな影響を与える可能性があります。このため、地域密着型の営業施策や店舗ネットワークを活かした収益向上に努めています。

(3) 商品取引に関するリスク

食品の安全性に対する不安や、販売商品に契約不適合があった場合、公的規制や損害賠償、信用失墜により業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、食品検品デーの実施や表示確認の徹底、自主衛生管理マニュアルに基づく衛生管理を行い、リスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。