スクロール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スクロール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合通販企業。生協向けカタログ通販等の「通販事業」や、物流・決済代行を行う「ソリューション事業」等を展開しています。直近の業績は、ソリューション事業の拡大やEC事業の黒字転換が寄与し、売上高840億円、経常利益64億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社スクロール の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スクロールってどんな会社?


生協向けカタログ通販やEC事業者への物流・決済代行を展開する複合通販企業です。

(1) 会社概要


同社は1943年に静岡布帛工業として設立され、1967年に衣料品総合カタログの発行を開始しました。1986年には東証一部へ指定され、2009年に現在の社名へ商号変更しています。近年はM&Aを積極的に進め、2018年にもしも等を子会社化したほか、2024年にはビーボーンを子会社化し、ソリューション領域を拡大しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結920名、単体305名です。大株主は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業上の提携関係にある大手総合商社、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.15%
丸紅 8.26%
日本カストディ銀行(信託口) 4.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は鶴見知久氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鶴見 知久 代表取締役社長グループオフィサーCEO兼COO 兼務ダイレクト事業本部長 1989年同社入社。ダイレクト事業本部長、健粧品事業PRSなどを経て、2022年4月より現職。
佐藤 浩明 取締役副社長グループオフィサーCSO兼務 eコマース事業PRS 1995年同社入社。キノスラ代表取締役社長、同社eコマース事業統括などを経て、2022年4月より現職。
山崎 正之 取締役グループオフィサーCMO兼務ソリューション事業PRS兼務 M&A戦略室長 大和証券出身。エイチエーシー社長などを経て同社入社。ソリューション事業統括などを歴任し、2024年4月より現職。
杉本 泰宣 取締役グループオフィサーCAO兼務グループ管轄事業PRS兼務 経営統括部長 1988年同社入社。ソリューション事業担当、経営統括部長などを経て、2022年4月より現職。


社外取締役は、村瀨司(元フュージョンズ社長)、宮部貴之(元L&Sコーポレーション社長)、宮城政憲(HRTF代表)、一杉逸朗(元静岡銀行専務)、小野亜希子(公認会計士)、馬場知瀨子(元東急百貨店店長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソリューション事業」「通販事業」「eコマース事業」「グループ管轄事業」を展開しています。

(1) ソリューション事業


通信販売事業者やEC事業者に対し、物流代行、決済代行、マーケティングサポートなどの通販代行サービスを提供しています。BPOサービスを含め、EC・通販事業運営に必要な機能をワンストップで支援します。

収益は、クライアント企業から受け取る物流代行手数料、決済手数料、マーケティング支援料などで構成されます。運営は、スクロール360、キャッチボール、もしも、ビーボーンなどが担っています。

(2) 通販事業


全国の生協組合員などを対象に、アパレル、インナー、雑貨などの通信販売を行っています。カタログ媒体を中心としたダイレクトマーケティングを展開しています。

収益は、顧客に対する商品販売代金です。運営は、同社(スクロール)、スクロールインターナショナル、および海外現地法人が行っています。

(3) eコマース事業


個人顧客向けに、ブランド服飾雑貨、アウトドア用品、化粧品、防災用品、旅行商品などをインターネットを通じて販売しています。

収益は、各ECサイトでの商品販売代金や旅行代金です。運営は、AXES、ナチュラム、ミヨシ、キナリ、トラベックスツアーズなど、各商材に特化したグループ会社が行っています。

(4) グループ管轄事業


グループ全体の物流機能の管理・運営、不動産賃貸、および海外子会社の管理を行っています。

収益は、グループ会社や外部テナントからの賃貸料収入や物流業務受託料などです。運営は主に同社(スクロール)およびスクロールロジスティクスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は800億円台で推移しており、直近は増収基調にあります。利益面では、経常利益率が7〜8%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 852億円 814億円 810億円 798億円 840億円
経常利益 75億円 71億円 62億円 55億円 64億円
利益率(%) 8.8% 8.7% 7.6% 6.9% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 53億円 37億円 37億円 36億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は約41%へ改善しました。営業利益率は7%台まで上昇しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 798億円 840億円
売上総利益 315億円 346億円
売上総利益率(%) 39.4% 41.2%
営業利益 53億円 61億円
営業利益率(%) 6.7% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が107億円(構成比37%)、給与及び手当が34億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


ソリューション事業は大幅な増収となりましたが、貸倒引当金の計上等により減益となりました。通販事業は売上が微減しましたが、利益は概ね横ばいを維持しています。eコマース事業は構造改革により減収となりましたが、黒字転換を果たしました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ソリューション事業 233億円 299億円 12億円 9億円 3.0%
通販事業 392億円 390億円 54億円 52億円 13.3%
eコマース事業 174億円 151億円 -12億円 2億円 1.1%
グループ管轄事業 0.2億円 0.4億円 1億円 2億円 473.0%
連結(合計) 798億円 840億円 55億円 64億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

スクロールは、営業活動で資金を獲得し、投資活動と財務活動で資金を使用する事業運営を行っています。
営業活動では、主に事業活動から得られた利益や未払債務の増加により資金を獲得しました。
投資活動では、定期預金の増加や子会社株式の取得により資金を使用しました。
財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 34億円 61億円
投資CF -3.3億円 -33億円
財務CF -60億円 -46億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会から信頼される企業であること。清く、正しく、美しく、事業を行うこと。」を社是としています。事業の発展と社員の幸福を一致させ、顧客、取引先、株主が共に満足を得られる経営を行い、社会に貢献することを基本理念としています。「100年続く企業」を目指し、持続的な企業価値向上を追求しています。

(2) 企業文化


マテリアリティ(重要課題)の解決に向け、「語る」のではなく「やる」をテーマに、実効性のある取組みを重視する文化があります。「タスク・ダイバーシティ経営」を推進し、多様性を認め合いながら個人の能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。また、環境配慮や脱炭素社会への貢献も重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Marketing Solution 2026」において、「成長軌道への回帰 事業ポートフォリオの修正」と「実効性のあるResponsibility経営の推進」を重点方針に掲げています。

* 売上高:800億円
* 経常利益:62億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:42億円
* ROE:12.1%
(※上記は2025年3月期計画値)

(4) 成長戦略と重点施策


「真のMSC(マーケティングソリューションカンパニー)」を目指し、ソリューション事業を成長ドライバーとして位置づけています。2025年度はLPB(Logistics、Payment、BPO)に経営資源を集中し、独自性を追求した収益力の強化を図ります。通販事業では収益性の確保、EC事業では事業再建と黒字化の定着に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「タスク・ダイバーシティ経営」を推進し、多様なキャリア形成と組織力向上を目指しています。新卒採用はグループ一括で行い、最長6年間のジョブローテーションを実施することで、事業を横断したプロフェッショナル人材を育成する方針です。また、キャリア採用も積極的に行い、即戦力人材の確保にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 12.5年 5,714,331円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.1%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 69.4%
男女賃金差異(正規) 72.8%
男女賃金差異(非正規) -%


※男女賃金差異(非正規)は、男性の非正規雇用労働者がいないため算出されていません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内市場環境の変化


国内の経済状況や少子高齢化、消費者の購買行動の変化が、アパレルや雑貨等の需要に影響を与える可能性があります。同社は事業ポートフォリオの見直しや、通販ソリューション事業の成長戦略推進により、市場環境の変化に対応し収益力の維持向上を図っています。

(2) 物流機能に関するリスク


パンデミックや大規模災害、システムトラブル等により物流業務が停止した場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は物流拠点を関東・東海・関西に分散させるとともに、BCP訓練の実施や感染症対策の徹底により、リスクの最小化に努めています。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


個人情報漏洩やサイバー攻撃によるシステム停止は、社会的信用の失墜や損害賠償コストの発生につながります。同社は外部機関によるセキュリティ評価や社員研修、インシデント対応体制の構築など、人的・物理的・技術的な対策を講じています。

(4) 貸倒引当金に関するリスク(決済代行)


ソリューション事業の決済代行サービスにおいて、加盟店の顧客による不払いや貸倒れが想定以上に発生した場合、貸倒引当金の追加計上が必要となり業績に影響を与える可能性があります。同社は与信精度の向上や加盟店管理の強化によりリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。