※本記事は、株式会社ライフコーポレーション の有価証券報告書(第70期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ライフコーポレーションってどんな会社?
首都圏と近畿圏の二大商圏にドミナント展開する、食品スーパーマーケット業界のリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
1956年に清水實業として創業し、1961年にスーパーマーケット形式での営業を開始しました。1971年には首都圏へ進出し、1984年には大証および東証の市場第一部へ上場を果たしました。その後、物流センターやプロセスセンターの開設を進めて基盤を強化し、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は7,391名、単体従業員数は7,385名です。大株主の構成は、筆頭株主が総合商社の三菱商事、第2位が創業者である故清水信次氏の個人的持株会社である清信興産、第3位が創業者一族に関連する公益財団法人ライフスポーツ財団となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 24.37% |
| 清信興産 | 12.42% |
| 公益財団法人ライフスポーツ財団 | 7.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長執行役員開発統括は岩崎高治氏が務めています。取締役11名のうち、社外取締役は3名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩 崎 高 治 | 代表取締役社長執行役員開発統括 | 1989年三菱商事入社。英国勤務等を経て1999年同社取締役就任。営業・首都圏事業・開発統括等を歴任し、2006年社長兼COO、2019年より現職。 |
| 森 下 留 寿 | 取締役専務執行役員インフラ統括 | 1982年同社入社。衣料品部長、経営企画本部長、新規事業開発本部長等を歴任。2020年専務執行役員コーポレート統括を経て2025年より現職。 |
| 角 野 喬 | 取締役専務執行役員コーポレート統括 | 1980年同社入社。近畿圏物流部長、近畿圏営業本部長等を歴任。2019年常務執行役員インフラ統括を経て2025年より現職。 |
| 足 立 純 | 取締役執行役員 | 2004年三菱商事入社。欧州勤務、リスクマネジメント部等を経て2022年同社入社。経営企画部長を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、河野宏子(元キャピタル・グループ・カンパニーズ)、片山隆(元寺岡精工代表取締役社長兼CEO)、多田明弘(元経済産業事務次官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 小売事業
首都圏および近畿圏において、食料品を中心に衣料品、生活関連用品などを販売する総合スーパーマーケット「ライフ」を運営しています。一般消費者を主な顧客とし、地域密着型の店舗展開を行っています。近年ではオーガニック・ローカル・ヘルシー・サステナブルをコンセプトとした「BIO-RAL(ビオラル)」店舗やコーナーの展開も強化しています。
収益は、来店客への商品販売による対価が中心です。運営は主に同社(ライフコーポレーション)が行っています。ネットスーパー事業や来店宅配事業については、関連会社のライフホームデリバリーが配送業務等を担当し、シームレスな買い物体験の提供を図っています。
■(2) その他
小売事業を補完する関連事業を展開しています。具体的には、クレジットカードおよび電子マネーの発行・運営業務、保険代理業などが含まれます。顧客は主に同社の店舗利用者やグループ会社です。
収益は、クレジットカード会員からの年会費や手数料、加盟店手数料、保険代理店手数料などから構成されます。運営は、クレジットカード事業については連結子会社のライフフィナンシャルサービスが、損害保険代理業については非連結子会社のライフ興産がそれぞれ行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は7,500億円台から8,500億円規模へと順調に拡大しており、増収傾向が続いています。経常利益も200億円台で安定して推移しており、特に直近では増益基調にあります。利益率も安定しており、堅実な成長を続けています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 7,591億円 | 7,683億円 | 7,654億円 | 8,097億円 | 8,505億円 |
| 経常利益 | 282億円 | 237億円 | 200億円 | 249億円 | 262億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 3.1% | 2.6% | 3.1% | 3.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 178億円 | 152億円 | 133億円 | 169億円 | 177億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸長しており、売上総利益率は約30%の水準を維持しています。営業利益も前期比で増加しており、収益性が維持・向上されていることがわかります。増収効果がコスト増を吸収し、利益拡大につながっています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,800億円 | 8,189億円 |
| 売上総利益 | 2,447億円 | 2,549億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.4% | 31.1% |
| 営業利益 | 241億円 | 253億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が1,028億円(構成比39%)、賃借料が341億円(同13%)を占めています。売上原価の構成比は売上高に対して69%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の小売事業は、新規出店や「BIO-RAL」商品の強化、ネットスーパーの拡大などにより、売上・利益ともに前期を上回りました。その他セグメント(クレジットカード事業等)も、営業収益・利益ともに増加し、安定して収益に貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売事業 | 8,095億円 | 8,502億円 | 246億円 | 258億円 | 3.0% |
| その他 | 27億円 | 29億円 | 4億円 | 4億円 | 13.4% |
| 連結(合計) | 8,122億円 | 8,531億円 | 249億円 | 262億円 | 3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、新規出店や既存店舗の改装といった積極的な投資計画に対し、営業活動による資金創出を基本とし、不足分を借入で調達する財務方針を掲げています。
当期は、営業活動により資金を得ましたが、前期比では減少しました。これは、利益はあったものの、売上債権や未収入金の増加、税金等の支払いが影響したためです。一方、投資活動では、新規店舗や改装のための設備投資により、多額の資金を使用しました。財務活動では、借入れによる収入があったものの、自己株式の取得や借入金の返済、配当金の支払いなどにより、資金の流出もありました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 417億円 | 223億円 |
| 投資CF | -174億円 | -227億円 |
| 財務CF | -255億円 | 5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、『「志の高い信頼の経営」を通じて持続可能で豊かな社会の実現に貢献する』ことを経営理念としています。創業精神である「私利、私欲、私権におぼれることなく“人々の幸せ”を願い続ける」という高い使命感を持ち、コンプライアンスを徹底し、全てのステークホルダーから信頼されるスーパーマーケットとして社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「ライフ全店舗がお客様から最も信頼される地域一番店になる。お客様からも社会からも従業員からも信頼される日本一のスーパーマーケットを目指す」というビジョンを掲げています。また、人手不足等の環境下でも計画を完遂するための効率化推進として、『「カイゼン」の輪をつなぐ』をスローガンに、全従業員が自ら業務改善活動に取り組む風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けた長期ビジョンとして、地域密着のスーパーマーケットとして地域の皆様に「わたしのスーパーマーケット」と言っていただける会社になることを目指し、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高1兆円
* 経常利益350億円
* 当期純利益220億円
* 店舗数400店舗
■(4) 成長戦略と重点施策
「第七次中期経営計画」のもと、以下の3つの主要テーマに取り組んでいます。
* **人への投資**:従業員の成長と満足度向上によるモチベーションアップを図る。
* **同質化競争からの脱却**:ライフ独自の「商品」「サービス」を磨き、「ネット事業」を拡大して快適な買い物体験を提供する。
* **持続可能で豊かな社会の実現への貢献**:「地域のライフライン」として環境負荷低減や地域貢献に取り組む。
また、2025年度の業績見通しとして以下の目標を設定しています。
* 営業収益8,850億円
* 営業利益257億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人への投資」を掲げ、従業員が持てる力を発揮し、やりがいを持って働ける環境を目指しています。新卒・中途を問わず即戦力を採用し多様性を確保するとともに、パートタイマーへの等級・昇給制度や正社員登用制度を導入しています。また、社内公募制や社長による経営塾などを通じ、自律的に学び成長できる環境整備と次世代リーダー育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 41.0歳 | 15.5年 | 5,570,648円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 77.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 106.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職数(221人)、中途採用者管理職数(595人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内市場の動向と競合激化
景気動向や個人消費、商品相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。また、ドラッグストアやディスカウント店、ネット通販など異業種を含む競争が激化しており、競合店の出店が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は「第七次中期経営計画」に基づき、独自性のある商品・サービスの提供やドミナント戦略の強化で対応しています。
■(2) 店舗展開とコスト上昇
資材価格や地価の高騰により、建築コストや賃料が上昇するリスクがあります。また、人手不足の深刻化に伴う人件費の高騰も懸念されます。同社はAIを含めたシステムの活用や業務改善活動(カイゼン)を通じて生産性を向上させ、コスト上昇に耐えうる利益構造の構築を図っています。
■(3) 食品の安全性と感染症
食中毒などの食品事故や、伝染病による商品供給の停止が発生した場合、信頼性の低下や対応費用が発生する可能性があります。また、感染症の流行による営業制約のリスクもあります。同社は品質保証部を中心とした厳格な品質・衛生管理体制を構築し、HACCPに準じた管理やトレーサビリティの確保に努めています。



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