※本記事は、株式会社タカキュー の有価証券報告書(第76期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. タカキューってどんな会社?
1947年に新宿で創業し、全国に紳士・婦人服専門店を展開する老舗アパレル企業です。かつてはイオンと資本提携していましたが、現在はグロースパートナーズの支援を受け事業再生に取り組んでいます。
■(1) 会社概要
1950年に株式会社高久として設立し、1969年よりチェーン展開を開始しました。1984年に店頭登録、1986年に東証二部、1989年に東証一部へ上場。1992年にジャスコ(現イオン)と業務・資本提携を締結(2024年解消)。2024年にグロースパートナーズと事業提携し、金融支援を含む事業再生計画を開始しました。
同社(単体)の従業員数は276名です。大株主は、筆頭株主が元提携先の流通大手、第2位が資産管理会社等と見られる法人、第3位が取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオン | 33.23% |
| エムツウ | 10.26% |
| タカキュー取引先持株会 | 1.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員兼事業本部長は伊藤健治氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 健治 | 代表取締役社長執行役員兼事業本部長 | ファイブフォックス取締役副社長、ジャパンブルーを経て2024年5月同社入社。同年9月より現職。 |
| 林 宏夫 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1982年同社入社。経営企画部長、人事総務部長、営業本部長等を歴任。2024年5月より現職。 |
社外取締役は、岸本雄介(弁護士)、古川徳厚(グロースパートナーズ代表取締役)、河手優美(グロースパートナーズアソシエイト)です。
2. 事業内容
同社グループは、「衣料品販売」の単一セグメントで事業を展開しています。
**(1) 衣料品販売事業**
紳士服、婦人服、および関連雑貨の企画・販売を行っています。主なターゲットはビジネスパーソンで、ショッピングセンターや駅ビル、路面店などに店舗を出店しています。主要ブランドには、トータルコーディネートを提案する「TAKA-Q」、30代・40代向けの高感度ブランド「m.f.editorial」、大きいサイズの専門店「GRAND-BACK」などがあります。
一般消費者への商品販売代金が主な収益源です。また、自社ECサイトを通じた販売も行っています。運営は主に同社が行い、子会社のテイエムエムサービス株式会社が衣料品の修理・加工業務を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向にあります。特に2024年2月期にかけて大きく落ち込みましたが、当期は店舗整理等の影響で微減にとどまりました。利益面では、長らく赤字が続いていましたが、当期はコスト削減効果や債務免除益により、営業利益、経常利益、当期純利益ともに黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 146億円 | 121億円 | 120億円 | 100億円 | 97億円 |
| 経常利益 | -31.1億円 | -19.2億円 | -7.1億円 | 0.5億円 | 3.6億円 |
| 利益率(%) | -21.3% | -15.8% | -5.9% | 0.5% | 3.7% |
| 当期純利益(親会社所有者帰属) | -31.4億円 | -21.5億円 | -10.5億円 | -1.0億円 | 19.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、売上総利益率は改善傾向にはありません。しかし、販売費及び一般管理費の大幅な削減により、営業利益は黒字化しました。当期は特別利益として巨額の債務免除益を計上し、最終利益を押し上げています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 97億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 59億円 |
| 売上総利益率(%) | 61.4% | 61.0% |
| 営業利益 | -0.4億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | -0.4% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が15億円(構成比27%)、賃借料が15億円(同26%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は衣料品販売の単一セグメントであるため、セグメントごとの数値はありません。商品区分別の売上実績では、主力の「重衣料(スーツ等)」や「軽衣料(シャツ等)」を含め、全体的に前期比で減少しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| 衣料品販売 | 100億円 | 97億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2.6億円 | -1.0億円 |
| 投資CF | 0.7億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | -1.7億円 | 4.1億円 |
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータなしですが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は18.7%で市場平均(48.5%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
服を通してお客様を幸せにし、自信と喜びを提供することを使命としています。服を通じて顧客と深い信頼関係を築き、持続可能なファッションを推進することで、社会と環境に貢献する企業になることを目指しています。
■(2) 企業文化
詳細な明文化された企業文化規定は確認できませんが、事業再生計画において「実行力のある組織づくり」「風通しの良い組織」「真のリーダーが率いる組織」を目指す姿勢が示されています。また、顧客に対して「ありがとうをいただけるサービス」を目指す顧客志向や、美意識を重視した店作りを推進する姿勢が見られます。
■(3) 経営計画・目標
2024年3月に公表した事業再生計画に基づき、債務超過の解消と上場維持、収益改善を目指しています。2025年2月期の実績は計画を上回る利益を達成しました。中期的な数値目標として以下を掲げています。
* 2026年2月期:売上高99億円、営業利益0.2億円
* 2027年2月期:売上高99億円、営業利益0.6億円
* 2029年2月期:売上高99億円、営業利益1.3億円
■(4) 成長戦略と重点施策
事業再生計画の完遂に向け、商品力・生産力の強化、在庫コントロールの徹底、マネジメント改革、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)改革など12の重点施策に取り組んでいます。特に、グロースパートナーズ株式会社との提携を活用し、MD改革やOMO(オンラインとオフラインの融合)推進、顧客囲い込みなどを強化しています。
* 商品力の強化:中核商品(スーツ等)の確立と改良、雑貨強化
* 生産力の強化:QRシステム導入による短納期対応
* マーケットの再定義:ECや新規事業(駅ビル等)への参入
* ブランディングの刷新:既存ブランドのリブランディング、新規ECブランド立ち上げ
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員の成長を企業の成長につなげるため、「教育チャンネル」を通じた動画配信や衛生委員会による環境整備を行っています。また、成果に基づく人事評価・報酬制度の導入、若手人材の登用と成長支援、組織の壁をなくし意思決定スピードを向上させる組織改革を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 47.1歳 | 21.2年 | 3,754,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 80.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 68.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 97.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員における女性比率(23.6%)、離職率(9.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ファッショントレンド及び顧客嗜好の変化
取扱商品はトレンドや顧客の嗜好変化の影響を受けやすく、的確な商品企画・仕入ができない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はニーズを反映した開発や店舗タイプ別の品揃えで対応しています。
■(2) 商品の生産体制と調達リスク
商品は中国やアセアン諸国等で生産しているため、各国の政情変化や輸入手続きの問題により供給に支障が出る可能性があります。また、原材料費や人件費、運賃等のコスト上昇も収益を圧迫するリスクがあります。
■(3) 経営環境と消費動向の影響
ファッション衣料は嗜好品的要素が強く、経済情勢悪化による消費抑制の影響を受けやすい特性があります。また、天候不順による季節商品の販売低迷や、自然災害による店舗休業なども業績変動の要因となります。
■(4) 株式の希薄化に関するリスク
事業再生の一環として新株予約権を発行しており、これらが行使された場合、株式価値の希薄化や需給への影響が生じ、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。



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