※本記事は、アークスの有価証券報告書(第65期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アークスってどんな会社?
アークスは、北海道や東北地方を中心にスーパーマーケットをチェーン展開する地域密着型の小売流通グループです。
■(1) 会社概要
1961年に設立され、同年札幌市に第一号店を開店しました。1989年の合併を経て、2002年に持株会社体制へ移行し現在のアークスとなりました。2004年に東京証券取引所市場第二部、2005年に同市場第一部へ上場し、2022年にプライム市場へ移行しています。事業統合やM&Aを重ね、北海道から北関東まで事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で5,464名、単体で125名です。筆頭株主は創業者の横山清氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は地方銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 横山 清 | 5.71% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.61% |
| 北海道銀行 | 4.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長・CEOは横山清氏、代表取締役社長・COOは猫宮一久氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横山 清 | 代表取締役会長・CEO | 1961年同社入社。1985年代表取締役社長、2002年ラルズ代表取締役社長を経て、2007年同社代表取締役会長・CEOに就任。2024年より現職。 |
| 猫宮 一久 | 代表取締役社長・COO | 1983年同社入社。ラルズの取締役や代表取締役社長・COO等を経て、2016年同社取締役執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 古川 公一 | 取締役副会長・CFO | 1980年北海道銀行入行。1998年同社入社。ラルズ取締役や同社取締役専務執行役員等を経て、2021年取締役副社長執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 三浦 建彦 | 取締役執行役員 | 2005年ユニバース入社。同社取締役営業企画部長や代表取締役COOを経て、2020年同社取締役執行役員に就任。2021年よりユニバース代表取締役社長を務める。 |
| 福原 郁治 | 取締役執行役員 | 1995年福原入社。2006年同社取締役、2009年常務取締役等を経て、2013年より福原の代表取締役社長および同社取締役執行役員を務める。 |
社外取締役は、佐々木亮子(元北海道副知事)、富樫豊子(北海道人材バンク代表取締役会長兼社長)、小池明夫(元北海道旅客鉄道代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■小売関連事業
アークスは、北海道、東北、北関東において食料品を中心としたスーパーマーケットを展開しています。地域のライフラインとして、新鮮で安全な食品や日用雑貨を低価格で提供しており、ホームセンター事業や医薬品小売、パンや惣菜の製造販売なども手がけ、地域顧客の多様なニーズに応えています。
収益の柱は、スーパーマーケットの店舗およびオンラインショップにおける商品の販売代金です。事業の運営は、持株会社である同社の傘下にあるラルズ、ユニバース、ベルジョイス、福原、道北アークス、東光ストアなどの子会社群が、地域ごとのドミナントエリアを形成しながら行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、インフレによるコスト増などの影響を受けつつも、既存店舗の改装や新規出店、商品政策の見直しにより、売上高は増加基調で推移しています。経常利益も底堅く推移しており、直近の事業年度においては増収増益を達成し、堅調な成長を続けています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,776億円 | 5,662億円 | 5,916億円 | 6,083億円 | 6,270億円 |
| 経常利益 | 173億円 | 164億円 | 184億円 | 175億円 | 192億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 2.9% | 3.1% | 2.9% | 3.1% |
| 当期利益 | 29億円 | 38億円 | 31億円 | 35億円 | 127億円 |
■(2) 損益計算書
物価高による消費者の節約志向に対応した価格政策や、生鮮惣菜の強化などの施策が奏功し、売上高および売上総利益はともに増加しています。人件費などの経費増はありましたが、生産性の向上により営業利益も増加し、収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,083億円 | 6,270億円 |
| 売上総利益 | 1,529億円 | 1,578億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.1% | 25.2% |
| 営業利益 | 159億円 | 176億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 2.8% |
販売費及び一般管理費(単体)のうち、減価償却費が27.2億円(構成比47.0%)、業務委託費が11.3億円(同19.5%)、給料及び手当が7.9億円(同13.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は小売関連事業の単一セグメントであるため、セグメント売上および利益は連結業績と一致しています。積極的な店舗改装や商品政策の見直しにより、売上、利益ともに増加しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益(2026年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売関連事業 | 6,083億円 | 6,270億円 | 159億円 | 176億円 | 2.8% |
| 連結(合計) | 6,083億円 | 6,270億円 | 159億円 | 176億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 194億円 | 263億円 |
| 投資CF | -115億円 | -73億円 |
| 財務CF | -26億円 | -79億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
アークスは、「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献」することをグループ理念として掲げています。また、コーポレートステートメントとして「豊かな大地に輝く懸け橋(Bridge on the Rich Land for Your Life)」を定め、生産地と顧客、そして地域企業同士を結ぶ懸け橋となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「八ヶ岳連峰経営」を標榜し、高い一つの企業を目指すのではなく、同じような規模の山々が横に連なることで、企業と顧客の距離を短く保ち続けることを重視しています。グループ名「ARCS」が示す通り、各企業が強い弧(Arc)となり、地域社会に奉仕(Service)する精神を共有し、顧客志向に基づいた経営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、設立30周年となる2033年2月期に向けて中長期的な目標を掲げており、持続的な企業価値の向上を目指しています。
* 連結売上高1兆円以上
* ROE(自己資本利益率)8.0%以上
* PBR(株価純資産倍率)1倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
目標達成のため、「成長投資計画及びキャッシュアロケーションを柱とした成長戦略」を策定しています。新規出店や既存店舗の活性化に加え、同じ志を持つ企業とのM&Aを積極的に推進します。また、商品調達や物流のグループ統合、次期基幹システム構築などのDXを通じた生産性向上にも注力し、グループ全体の収益力強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「アークス人材育成理念」に基づき、人間力、常識力、基礎的技能、変化対応力、自律力を持つ人材の育成を行っています。また、「全ての人がイキイキと自分らしく活躍できる魅力ある職場をつくる」という社内環境整備方針を掲げ、多様な人材が能力を発揮できるダイバーシティ&インクルージョンや、健康経営の推進を通じたワークライフバランスの実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 47.4歳 | 15.5年 | 6,240,495円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 49.4% |
また、同社は「人的資本の強化」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用比率(3.3%)、正社員一人あたりの研修時間(15.8時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保と育成
少子高齢化の進行による労働人口の減少や、企業間における人材獲得競争の激化により、優秀な人材の確保や定着が困難になるリスクがあります。同社は、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や社内環境整備方針の徹底、採用方法の多様化、教育研修制度の充実などにより、人材確保に向けた取り組みを強化しています。
■(2) 商品および食品の安全性
食品スーパーマーケットを主力とする同社にとって、食品表示の誤りや食中毒の発生、それに伴う風評被害や損害賠償は、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。対策として、HACCP基準に基づく衛生管理指導の徹底や、品質保証推進ニュース等を通じた啓発活動、表示ルールの定期チェックを継続して行っています。
■(3) 事業環境の変化と競争激化
小売業界における業種や業態を超えた競争の激化や、物価高に伴う顧客の消費動向の変化は、同社の売上や収益に影響を与えるリスクがあります。同社は、エリアドミナント戦略による地域シェアの確保や、顧客情報を活用したマーケティングの推進、独自の価格政策等により、環境変化への対応と競争力の強化に努めています。



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