アークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場および札幌証券取引所に上場する、北海道・東北・北関東を地盤とする食品スーパーマーケットチェーンの持株会社です。2025年2月期の連結業績は、売上高6083億円(前期比増)と過去最高を更新しましたが、コスト増等の影響で経常利益は175億円(前期比減)となり増収減益でした。


※本記事は、株式会社アークス の有価証券報告書(第64期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アークスってどんな会社?


北海道・東北・北関東を主要エリアとし、スーパーマーケット事業を展開する食品流通グループの純粋持株会社です。

(1) 会社概要


1961年にダイマルスーパー(現アークス)として設立されました。2002年に会社分割により純粋持株会社へ移行し、商号をアークスに変更するとともにラルズを設立、福原を完全子会社化しました。2004年に東証二部に上場し、2005年に一部へ指定替えとなりました。その後、ユニバース、ジョイス(現ベルジョイス)、伊藤チェーン、オータニなどを相次いで子会社化し、2018年にはバローホールディングス、リテールパートナーズと「新日本スーパーマーケット同盟」を結成しました。

2025年2月28日時点で、連結従業員数は5,663名、単体従業員数は128名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社創業者で会長の横山清氏、第3位は取引金融機関である北海道銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.04%
横山 清 5.64%
北海道銀行 4.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表者は代表取締役会長・CEOの横山 清氏です。社外取締役比率は約23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
横山 清 代表取締役会長・CEO 1961年同社入社。1985年代表取締役社長を経て、2024年5月より現職。ラルズ代表取締役会長・CEOを兼任。
猫宮 一久 代表取締役社長・COO 1983年同社入社。ラルズ代表取締役社長・COOなどを経て、2024年5月より現職。
古川 公一 取締役副会長・CFO 1980年北海道銀行入行。同社入社後、取締役副社長執行役員などを経て、2024年5月より現職。
三浦 建彦 取締役執行役員 2005年ユニバース入社。同社代表取締役COOなどを経て、2020年5月より現職。ユニバース代表取締役社長を兼任。
福原 郁治 取締役執行役員 1995年福原入社。同社常務取締役などを経て、2013年5月より現職。福原代表取締役社長を兼任。
六車 亮 取締役執行役員 1981年ふじ(現道北アークス)入社。同社代表取締役社長などを経て、2023年5月より現職。


社外取締役は、佐々木 亮子(元北海道副知事)、富樫 豊子(北海道人材バンク代表取締役会長兼社長)、小池 明夫(元北海道旅客鉄道代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 小売事業


ラルズ、ユニバース、ベルジョイス、福原、道北アークス、東光ストア、道南ラルズ、道東アークス、伊藤チェーン、オータニなどが運営する食料品中心のスーパーマーケット事業や、ホームセンター、ドラッグストア等を展開しています。また、パンや惣菜の製造販売、生花・農作物の生産販売なども行っています。

収益は一般消費者への商品販売による対価が中心です。運営はラルズ、ユニバース、ベルジョイス、福原、道北アークス、東光ストア、道南ラルズ、道東アークス、伊藤チェーン、オータニ、エルディ、サンドラッグエース、ふっくら工房、ハピネス・デリカ、梶尾フラワー、ナイス.フーズ、オータニ農場などが行っています。

(2) その他


小売事業を補完する事業として、旅行代理店業務、施設の清掃・保守管理等のビルメンテナンス、不動産賃貸、損害保険・生命保険代理店、食品卸売、産業廃棄物収集運搬、建築物の設計・施工などを行っています。

収益は各サービス利用者からの利用料、手数料、賃貸料、商品販売代金などです。運営はエルディ(旅行、ビルメン、保険、産廃、建設)、ラルズ等のグループ各社(不動産賃貸)、北海道シジシーおよび東北シジシー(卸売)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年2月期から2025年2月期までの業績推移です。売上高は6000億円規模で推移しており、直近では増加傾向にあります。利益面では安定して黒字を計上していますが、利益率は2%台後半から3%台前半で推移しており、やや低下傾向が見られます。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 5,569億円 5,776億円 5,662億円 5,916億円 6,083億円
経常利益 195億円 173億円 164億円 184億円 175億円
利益率(%) 3.5% 3.0% 2.9% 3.1% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 130億円 103億円 99億円 118億円 111億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は増加し6000億円台に到達しましたが、売上総利益率の低下や販管費の増加により、営業利益および営業利益率は低下しています。増収ながらもコスト増の影響を受けていることが分かります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 5,916億円 6,083億円
売上総利益 1,494億円 1,529億円
売上総利益率(%) 25.3% 25.1%
営業利益 168億円 159億円
営業利益率(%) 2.8% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が602億円(構成比44.0%)、その他が328億円(同23.9%)を占めています。売上原価は4,553億円で、売上高に対する構成比は74.9%です。

(3) セグメント収益


同社グループは小売関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な増減分析はありませんが、連結全体として既存店の改装や新規出店などの営業基盤拡充により売上高が増加しました。一方で、人件費や電気代等のコスト増加により利益は減少しました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
小売関連事業 5,916億円 6,083億円 168億円 159億円 2.6%
連結(合計) 5,916億円 6,083億円 168億円 159億円 2.6%


※単一セグメントのため、連結数値を記載しています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:本業である営業活動でキャッシュを稼ぎ出し(プラス)、それを将来のための投資(マイナス)と借入金の返済や株主還元(マイナス)に充てている、財務的に健全な状態です。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 241億円 194億円
投資CF -106億円 -115億円
財務CF -113億円 -26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.1%で市場平均(24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、小売業界の再編が進む中、企業存続に必要な規模を確保し、経営資源の成長を図ることが地域ライフラインの維持に繋がると考えています。グループ理念として「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献」することを掲げ、コーポレートステートメント「豊かな大地に輝く懸け橋(Bridge on the Rich Land for Your Life)」のもと、生産地と顧客、および地域企業同士を結ぶ役割を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ARCS(Always, Rising, Community, Service)」という社名に、常に上昇し地域社会に奉仕する企業グループでありたいという意思を込めています。また、「八ヶ岳連峰経営」を標榜し、特定の巨大企業を目指すのではなく、同規模の地域企業が連帯することで、顧客との距離を短く保ちながら強固なグループを形成するスタイルを重視しています。顧客志向と奉仕の精神を持ち続け、将来の大同団結に向けた母体企業としての役割を認識しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、主要経営指標としてROE(自己資本利益率)およびROA(総資産経常利益率)を重視し、毎期継続した利益成長と資本の効率的運用、積極的な株主還元を目指しています。中長期的な目標数値として以下を掲げています。

* ROE:8.0%以上
* ROA:10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「八ヶ岳連峰経営」のもと、持株会社がシンクタンク機能を担い、グループ全体の業務改革を推進しています。具体的には、基幹システムの活用による生産性向上、デジタル技術(RPA、電子棚札等)の導入、商流・物流の統一による効率化を強化しています。また、「新日本スーパーマーケット同盟」を通じた業界再編への対応や、M&Aによる規模拡大を見据えたシステム基盤の拡充も進めています。

* 生産性向上:電子棚札の横展開、RPAによる業務自動化、自動発注システムの強化
* 営業力強化:価格政策の徹底、商品品揃えの拡充、アプリ機能の強化(チャージ機能追加等)
* サステナビリティ:健康経営の推進、脱炭素への取り組み(省エネ機器導入、再エネ活用)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「アークス人材育成理念」に基づき、豊かな人間性と共育の精神を持つ人材、変化に対応し自律的に行動できる人材の育成を目指しています。また、グループ統一の人事制度によりキャリア形成を一元化し、階層別研修を実施しています。社内環境整備方針として「全ての人がイキイキと自分らしく活躍できる魅力ある職場をつくる」を掲げ、多様な人材が能力を発揮できる環境整備やワークライフバランスの推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 47.3歳 15.9年 6,062,960円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 57.7%
男女賃金差異(正規雇用) 72.7%
男女賃金差異(非正規) 44.8%


※男性の育児休業取得対象者がいなかったため、男性育児休業取得率は記載していません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員一人あたりの研修時間(13.0時間)、障がい者雇用比率(3.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害、事故・事件


地震、津波、台風等の大規模災害や、店舗での火災・事故・事件が発生した場合、店舗運営や商品調達が阻害され、建物・設備の損害が発生する可能性があります。これに対し、事業継続計画(BCP)の策定、防災マニュアルの整備、避難訓練の実施、緊急物資の確保等の対策を講じています。

(2) 人材確保


少子高齢化による労働人口の減少や企業間の人材獲得競争の激化により、優秀な人材の確保・育成が困難になるリスクがあります。これに対し、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、採用方法の多様化、教育研修制度の充実、社内環境の整備などを通じて、人材の定着と確保に努めています。

(3) 地政学リスク


テロや戦争等の政治的不安による世界経済の不況、エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱等は、コスト上昇や消費マインドの冷え込みを招く恐れがあります。これに対し、独自の商品調達枠の確保、省エネ設備の導入、グループ各社間の情報共有とスケールメリットの活用等によりリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。