横浜魚類 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横浜魚類 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横浜魚類は東京証券取引所 スタンダード市場に上場する企業で、水産物の卸売業と不動産賃貸業を展開しています。直近の決算では売上高が202億円(前期比0.5%増)、当期純利益が1.8億円(同11.3%増)となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、横浜魚類株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 横浜魚類ってどんな会社?


横浜市および川崎市の中央卸売市場を拠点に、水産物の卸売業を展開する企業です。不動産賃貸業も手掛けています。

(1) 会社概要


1947年に横浜魚として設立され、翌年横浜魚類へ商号変更しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2013年には東証JASDAQ(スタンダード)へ上場しました。2022年の東証市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。2023年には横浜南部市場内に食品加工施設を新設しました。

同社(単体)の従業員数は79名です。筆頭株主は事業会社のニッスイで、第2位は金融機関の横浜銀行、第3位は事業会社の横浜冷凍です。

氏名 持株比率
ニッスイ 19.80%
横浜銀行 4.90%
横浜冷凍 3.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は松尾 英俊氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
松尾 英俊 取締役社長(代表取締役) 1988年同社入社。南部支社副支社長、取締役本場営業部部長などを経て、2024年6月より現職。
塚本 秋宏 常務取締役管理部部長 1986年同社入社。管理部部長などを経て、2020年6月より現職。
加藤 裕 常務取締役南部支社支社長 1983年同社入社。南部支社営業一部部長、取締役南部支社副支社長などを経て、2023年6月より現職。
岩澤 利治 取締役川崎北部支社支社長 1990年同社入社。川崎北部支社営業一部部長などを経て、2023年6月より現職。
松野 直紀 取締役本場営業部部長 1991年同社入社。本場営業部営業一部部長などを経て、2024年6月より現職。
小林 義幸 取締役南部支社営業二部部長 1991年同社入社。南部支社営業二部部長を経て、2024年6月より現職。
柏原 直樹 取締役 1974年日本水産入社。同社専務取締役社長補佐、取締役副社長などを経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、国井 重雄(元横浜市経済局担当部長)、前迫 静美(元横浜銀行取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「水産物卸売業」および「不動産等賃貸業」を展開しています。

水産物卸売業


横浜市中央卸売市場および川崎市中央卸売市場北部市場において、水産物の卸売を行っています。生鮮魚介類だけでなく、冷凍・塩干魚介類や加工水産物も取り扱っています。

主な収益源は水産物の販売代金です。運営は同社に加え、子会社のサカエ食品や関連会社の横浜食品サービスなどが水産物関連商品の卸売や加工を行っています。

不動産等賃貸業


同社グループが所有する不動産の有効活用として、食品加工施設等の賃貸事業を行っています。

主な収益源は、テナントからの賃貸料収入です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は200億円前後で推移しています。直近の2025年3月期は売上高202億円、経常利益1.8億円となりました。利益率は0.9%と低水準ながらも黒字を維持しており、当期純利益も前期比で増加傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 318億円 199億円 210億円 201億円 202億円
経常利益 0.9億円 0.2億円 0.8億円 1.8億円 1.8億円
利益率(%) 0.3% 0.1% 0.4% 0.9% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.6億円 0.1億円 0.5億円 1.6億円 1.8億円

(2) 損益計算書


売上高は微増し、売上総利益も増加傾向にあります。売上総利益率は約9.0%で安定しています。営業利益は前期よりわずかに減少しましたが、黒字を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 201億円 202億円
売上総利益 17.6億円 18.2億円
売上総利益率(%) 8.8% 9.0%
営業利益 1.6億円 1.6億円
営業利益率(%) 0.8% 0.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が5.2億円(構成比31%)、運賃及び荷造費が3.1億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


水産物卸売業は、量販店の統廃合による影響を受けつつも、食品加工場の売上寄与により増収増益となりました。不動産等賃貸業は、売上高は前年並みでしたが、固定資産税の増加などにより減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
水産物卸売業 199億円 200億円 1.7億円 1.8億円 0.9%
不動産等賃貸業 1.8億円 1.8億円 0.4億円 0.3億円 18.1%
連結(合計) 201億円 202億円 1.6億円 1.6億円 0.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8.9億円 1.3億円
投資CF -0.8億円 -3.0億円
財務CF -2.7億円 -1.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


市場の特長である高鮮度な商品を低価格で安定的に消費者に提供することを基本としています。また、消費者のニーズに合わせて水産物等を加工し、便利で安全な商品をローコストで提供することで、豊かで健康的な食生活に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


水産物の供給に欠かせない水産資源の環境保護と有効利用に取り組むことを基本方針としています。また、多様な人材がモチベーションを高めて働くことができるよう、従業員の要望を考慮した働きやすい職場づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


企業の発展のための安定的な営業利益の目標として、当面の数値目標を掲げています。

* 売上高営業利益率:0.5%

(4) 成長戦略と重点施策


主要顧客である仲卸店への売上減少という課題に対し、スーパーマーケット等の量販店や鮮魚専門店、通販事業者への販売を積極的に拡大する方針です。また、横浜南部市場に設置した低温加工物流設備や食品加工施設を活用し、利便性のある加工済商品の販売を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が活躍できる職場づくりを目指しており、特に女性社員の業務拡大や管理職登用に向けた研修実施を掲げています。また、仕事の見える化による業務継承の円滑化や、高齢者の再雇用制度を通じた雇用の確保にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 18.7年 5,585,130円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.1%
男女賃金差異(正規雇用) 68.8%
男女賃金差異(非正規) 68.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 販売先の状況について


販売先である仲卸業者の業績低下が懸念されています。量販店の増加による街の鮮魚店の減少や市場外流通の拡大等が背景にあります。これらが拡大すれば同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制について


卸売市場法や各市の条例等の規制を受けて事業を行っています。今後、これらの法規制の改廃や新たな規制が設けられた場合、業績に影響が出る可能性があります。また、財産状況が悪化した場合には行政からの改善命令等の措置を受ける可能性があります。

(3) 水産物の価格について


水産物流通業界は、生産面・消費面ともに変化が激しく、需給バランスの崩れによる魚価変動のリスクがあります。これにより同社の業績が影響を受ける可能性があります。対応として販売チャネルの多様化と取扱数量の拡大に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。