横浜魚類 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横浜魚類 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態


記事タイトル:横浜魚類転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、横浜魚類株式会社の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

0. まとめ
横浜魚類は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、水産物卸売業や不動産等賃貸業を展開する企業です。直近の業績は、顧客ニーズにあった商品の積極的な販売や横浜南部市場内の食品加工場による売上の増加等により増収となりました。売上総利益の増加や不良債権処理費用の減少により各利益段階で増益を達成しています。

1. 横浜魚類ってどんな会社?
水産物の販売・加工を中心に事業を展開し、食卓に安全で新鮮な水産物を届ける企業です。

(1) 会社概要
1947年に設立され、1948年に神奈川県における水産物の公認荷受機関となりました。1973年には横浜市中央卸売市場南部市場の開場に伴い南部支社を新設し、1981年の川崎市中央卸売市場北部市場の開場に備えて川崎魚市場を設立しました。2004年にジャスダックに上場しています。

従業員数は単体76名です。筆頭株主は事業会社のニッスイで19.80%を保有しており、第2位は横浜銀行で4.90%、第3位は横浜冷凍で3.08%となっています。

氏名 持株比率
ニッスイ 19.80%
横浜銀行 4.90%
横浜冷凍 3.08%


(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は松尾英俊氏が務めており、社外取締役の比率は22.2%(取締役9名中2名)となっています。

氏名 役職 主な経歴
松尾英俊 代表取締役社長 1988年同社入社。南部支社冷塩部部長、南部支社副支社長等を経て、2020年専務取締役就任。2024年より現職。
加藤裕 常務取締役南部支社支社長 1983年同社入社。南部支社営業一部部長、取締役南部支社副支社長兼南部支社営業一部部長等を経て、2023年より現職。
塚本秋宏 常務取締役管理部部長 1986年同社入社。管理部部長、取締役管理部部長を経て、2020年より現職。
岩澤利治 取締役川崎北部支社支社長 1990年同社入社。川崎北部支社営業一部部長を経て、2023年より現職。
松野直紀 取締役本場営業部部長 1991年同社入社。本場営業部営業一部部長を経て、2024年より現職。
小林義幸 取締役南部支社副支社長 1991年同社入社。南部支社営業二部部長を経て、2026年より現職。
柏原直樹 取締役 1974年日本水産(現ニッスイ)入社。1994年同社入社。常務、専務、副社長を経て、2020年より現職。


社外取締役は、国井重雄(元横浜港湾福利厚生協会常務理事)、的埜明世(元ニッスイ代表取締役社長)です。

2. 事業内容
同社グループは、「水産物卸売業」および「不動産等賃貸業」を展開しています。

(1) 水産物卸売業
横浜市中央卸売市場および川崎市中央卸売市場北部市場等において、生鮮水産物や冷凍・塩干・加工水産物の卸売を行っています。スーパーマーケット等の量販店、鮮魚専門店、水産物の通販事業者などを主な販売先として事業を展開しています。

収益源は仲卸業者や売買参加業者、量販店などへの水産物の販売代金です。同社が横浜市や川崎市において卸売を担うほか、関連会社の横浜食品サービスなどが水産物関連商品の卸売や加工業を行っています。

(2) 不動産等賃貸業
所有している食品加工施設などの不動産等の賃貸を行っています。横浜南部市場内にある低温加工物流設備や食品加工施設などの設備が含まれます。

収益源は該当不動産の賃貸借契約に基づく賃貸料です。運営は同社が行っており、関連会社の横浜食品サービスや食品加工業者などに対して賃貸しています。

3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移
売上高は200億円前後で安定して推移しており、直近の2026年3月期には210億円まで増加しています。経常利益は2022年3月期の0.2億円から2026年3月期には2.4億円へと着実に増加し、利益率も0.1%から1.1%へと継続的に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 199億円 210億円 201億円 202億円 210億円
経常利益 0.2億円 0.8億円 1.8億円 1.8億円 2.4億円
利益率(%) 0.1% 0.4% 0.9% 0.9% 1.1%
当期利益 0.1億円 0.5億円 1.6億円 1.8億円 1.9億円


(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も同水準を維持しつつ、営業利益は1.6億円から2.1億円へと拡大しています。営業利益率も0.8%から1.0%へと向上し、本業の収益性が高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 202億円 210億円
売上総利益 18億円 18億円
売上総利益率(%) 9.0% 8.8%
営業利益 1.6億円 2.1億円
営業利益率(%) 0.8% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が5億円(構成比33%)、運賃及び荷造費が3億円(同20%)を占めています。売上原価は当期商品仕入高等の買付品売上原価を中心に構成され、売上原価合計の99%以上を占めています。

(3) セグメント収益
水産物卸売業は横浜南部市場内の食品加工場による売上の増加などにより増収となりました。不動産等賃貸業は売上高が前年並みで推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
水産物卸売業 200億円 208億円
不動産等賃貸業 2億円 2億円
連結(合計) 202億円 210億円


(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1億円 2億円
投資CF -3億円 -1億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROEは7.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.7%であり、いずれもスタンダード市場の平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念
同社は横浜市中央卸売市場および川崎市中央卸売市場北部市場で水産物の卸売を行う企業として、市場の持つ特長である高鮮度な商品を低価格で安定的に提供することを基本方針としています。また、消費者のニーズに合わせて水産物等を加工し、便利で安全な商品をローコストで提供することで豊かな食生活への貢献を目指しています。

(2) 企業文化
同社は水産資源の環境保護と有効利用に取り組むことを基本方針としています。水産物の漁獲から消費者の販売までの全ての面において関係者との協働の下、法令等を遵守した漁獲物の仕入販売やフードロス削減などを実践し、安全で安心な商品を安定的に供給することを企業価値と位置づけて事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標
同社は企業の発展のための安定的な営業利益の目標として、当面は売上高営業利益率0.5%を客観的な指標として掲げています。本業の拡大や効率化を進めることで、この経営目標の安定的かつ継続的な達成を目指しています。

・売上高営業利益率 0.5%

(4) 成長戦略と重点施策
同社は、主要顧客である仲卸店への売上減少という課題を解消するため、スーパーマーケットなどの量販店や鮮魚専門店、急激に拡大している水産物の通販事業者への販売を積極的に拡大する方針です。量販店対応力のすぐれたグループ会社等と連携し、低温加工物流設備や食品加工施設を活用した商品展開を推進します。

5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材がモチベーションを高めて働くために働きやすい職場環境の整備が重要と考えています。従業員の意識調査や面談を通じて要望を取り入れた職場作りを行うとともに、水産物の専門性とコミュニケーション能力の向上のため、仕入先や販売先への出張や社外研修会への参加による育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 17.8年 6,090,067円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 52.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 67.4%


6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 販売先の状況に関するリスク
量販店の増加により仲卸業者の販売先である街の鮮魚店などが減少したことや、市場外流通の拡大など販売競争の激化により、同社の主要な販売先である仲卸業者の業績低下が懸念されています。このような状況が拡大した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制に関するリスク
同社は横浜市や川崎市の許可を得て卸売を行っており、卸売市場法等の法的規制を受けています。自己資本比率10%未満、流動比率100%未満、3期以上連続して経常損失が生じた場合などには改善措置を命じられる可能性があり、規制の改廃等を含めて同社の業績に影響を与える可能性があります。

(3) 水産物の価格変動リスク
水産物流通業界は供給側である生産面と需要側である消費面ともに変化が激しい特徴があります。需給バランスが崩れることによる水産物の価格変動が生じた場合、同社の業績が影響を受ける可能性があります。同社は販売チャネルの多様化を図り、取扱数量の拡大に努めることで対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。