エバラ食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エバラ食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エバラ食品工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、家庭用・業務用の調味料などを提供する食品事業と物流事業を展開しています。直近の業績は売上高500億円、経常利益27億円で、鍋物調味料の伸長や海外事業の寄与などにより増収増益を達成し、堅調なトップラインの拡大と収益性の改善を見せています。


※本記事は、エバラ食品工業株式会社の有価証券報告書(第68期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エバラ食品工業ってどんな会社?


同社は家庭用および業務用調味料などの食品事業と、それに伴う物流事業を主力として展開する食品メーカーです。

(1) 会社概要


1958年に設立され、ソースやケチャップの製造を開始しました。1968年にブランド名をエバラに変更し、現在の社名となっています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2005年には中国の上海に子会社を設立して海外展開を本格化し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で861名、単体で517名です。筆頭株主はKMST HOLDINGSで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は金融機関である横浜銀行となっています。

氏名 持株比率
KMST HOLDINGS 35.91%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.84%
横浜銀行 3.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は森村剛士氏が務めており、取締役8名のうち2名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
森村剛士 取締役社長(代表取締役) 2005年同社入社。開発部門担当や海外事業部門担当などを経て、2020年代表取締役社長に就任。2022年よりエバラビジネス・マネジメント代表取締役会長を務め、現在に至る。
吉田泰弘 専務取締役社長補佐、クリエイティブ部門担当 1982年同社入社。人事部長や管理本部長などを歴任。2021年に専務取締役に就任し、2026年より社長補佐およびクリエイティブ部門を担当し、現在に至る。
近藤康弘 常務取締役営業部門担当 兼営業統括本部長 1988年同社入社。営業本部名古屋支店長などを経て2012年に取締役就任。家庭用営業本部長などを歴任し、2023年に常務取締役に就任。2024年より営業統括本部長も務め、現在に至る。
今田勝久 取締役長期ビジョン「構造変革、新領域開拓」担当 兼 Core Lab、品質保証部担当 1991年同社入社。人事室長などを経て、2021年執行役員クリエイティブ本部長に就任。2022年に取締役となり、2026年より長期ビジョン担当などを務め、現在に至る。
関進 取締役経営企画部、新規事業推進室担当 1991年同社入社。上海や香港など海外子会社の役員を歴任。2023年エバラビジネス・マネジメント代表取締役社長に就任し、同社取締役として新規事業推進などを担当し、現在に至る。
粟野裕 取締役コーポレート部門担当 兼コーポレート統括本部長 1988年横浜銀行入行。リスク管理部担当などを歴任し常務執行役員を務める。2022年同社入社。2023年に取締役となり、2024年よりコーポレート部門担当などを務め、現在に至る。


社外取締役は、赤堀博美氏(赤堀料理学園校長)、菅野豊氏(双葉監査法人統括代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」「物流事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品事業


家庭用および業務用の調味料などを製造・販売しています。家庭用商品では「黄金の味」などの肉まわり調味料や「プチッと鍋」などの鍋物調味料、野菜まわり調味料などを提供しています。業務用商品では、肉まわり調味料のほかにラーメンスープなどのスープ群を展開し、幅広い顧客の食生活に貢献しています。

主に消費者や飲食店などに対する調味料の販売代金が収益源となっています。事業の運営は、同社を中心に、丸二や海外のシンガポール、上海、香港、台湾、タイ、マレーシアに拠点を置く各子会社が連携して行い、国内外で製造・販売活動を展開しています。

(2) 物流事業


同社グループの製品等に関する物流全般を担い、国内の倉庫事業や貨物運送取扱事業に関するサービスを提供しています。主にグループ内の物流機能として機能し、製品の保管や効率的な輸送をサポートしています。

倉庫での保管サービスについては期間や保管量に応じた利用料を、貨物運送取扱サービスについては役務提供の完了時に運送取扱手数料を受け取ることで収益を上げています。事業の運営はエバラ物流が行っています。

(3) その他


同社グループの広告宣伝や販売促進活動の支援、および人材派遣に関するサービスを提供しています。グループ内の円滑な事業運営をサポートする役割を担っています。

広告宣伝事業ではメディアへの広告出稿や制作物の納品による対価を、人材派遣事業では人材の派遣に伴う手数料を受け取ることで収益を上げています。事業の運営は横浜エージェンシー&コミュニケーションズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は安定して成長を続けており、順調な拡大を見せています。経常利益は一時的に減少傾向にありましたが、直近の事業年度では回復に転じ、利益率も改善しました。堅調なトップラインの伸びと収益性の向上が両立している状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 433億円 434億円 452億円 480億円 500億円
経常利益 37億円 32億円 26億円 21億円 27億円
利益率(%) 8.5% 7.3% 5.8% 4.4% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 20億円 17億円 14億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率はほぼ同水準を維持しつつ、営業利益は増加に転じており、営業利益率も向上しました。効果的な費用の運用管理により、本業の収益性が高まっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 480億円 500億円
売上総利益 165億円 170億円
売上総利益率(%) 34.4% 34.0%
営業利益 20億円 24億円
営業利益率(%) 4.2% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が32億円(構成比22%)、運搬費が23億円(同16%)、広告宣伝費が23億円(同16%)を占めています。また、売上原価は330億円であり、売上高に対する構成比は66%となっています。

(3) セグメント収益


食品事業は、鍋物調味料群の販売促進や商品ラインアップの拡充、さらに海外事業の寄与により売上が増加し、全体の成長を牽引しています。一方、物流事業は既存顧客との取引量の減少によりわずかに減収となりました。その他の事業は堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食品事業 404億円 424億円
物流事業 70億円 68億円
その他 6億円 8億円
連結(合計) 480億円 500億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 45億円 40億円
投資CF -33億円 -24億円
財務CF -6億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「こころ、はずむ、おいしさ。」の提供を経営理念に掲げています。顧客への情熱とチャレンジ精神を力に、「人を惹きつける、新しいおいしさ」と「期待で胸が膨らむ、ワクワクするおいしさ」を通じて、人と人との絆づくりの機会を広げていくことを使命としています。

(2) 企業文化


「顧客満足を最優先」に行動し、「冒険、反論、失敗の自由」を重んじています。自由な議論を通じた創造を大切にし、失敗を恐れず常にチャレンジを続けることで独自のオリジナリティを追求します。また、「信頼される企業行動」として透明性を高め、安全・安心と品質を追求する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2033年度に向けた長期ビジョンにおいて、10年後のありたい姿を「おいしさ、たのしさ、あたらしさで食カテゴリーを創造する企業」と定めています。中期経営計画「Ebara Reboot 2026」の最終年度である2026年度において以下の数値目標を掲げています。

* EBITDA:40億円
* 海外売上高比率:5%以上
* 総還元性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業を磨き上げ、ポーション調味料などの基幹商品のシェア拡大と収益力強化を図ります。また、製造体制の変革により多品種少量生産の対応力を高め、健康分野などの新たなビジネス領域や海外事業の拡大を目指します。さらに、データ活用型経営などの経営基盤改革を深化させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


次代の中核を成す多様な人材の育成・登用を進め、自発的成長支援制度や社内公募制度を通じて、主体的に学び行動できる「自律型人材」の育成を目指しています。また、柔軟な働き方の推進や健康経営など、従業員が意欲を持って働きがいを実感できる職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 16.1年 6,703,302円


※平均年間給与には、基本給・超過労働に対する報酬・賞与・各種手当等が含まれています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.9%
男性育児休業取得率 105.3%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規) 75.8%
男女賃金差異(非正規) 83.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全性に関するリスク


消費者の安全性に対する関心が高まる中、異物混入や表示の誤りなどに伴う健康被害が発生した場合、ブランド価値が毀損される可能性があります。同社は品質管理委員会を設置し、独自の自主基準や国際規格の取得を通じて、製造工程や流通における厳密な品質管理体制を整備してリスク低減に努めています。

(2) 国内市場の縮小と消費動向の変化


人口減少や少子高齢化を背景に国内市場が縮小し、競争が激化しています。また、天候不順や食材の価格変動により消費が鈍化するリスクもあります。これに対し、同社は基幹商品の収益拡大や新価値創造に向けた商品開発を進めるとともに、海外事業の成長や製造体制の再編による機動的な対応を図っています。

(3) 原材料価格の変動と調達リスク


国内外の気候変動や地政学的要因、為替の変動により、農畜産物などの原材料や包装材料の価格高騰、調達困難が生じるリスクがあります。同社は複数企業からの購買や計画的な調達、産地の分散化を図るとともに、コスト上昇分については商品価格の改定などを行うことで収益性の維持・改善に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。