エバラ食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エバラ食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する食品メーカーです。「黄金の味」や「プチッと鍋」などの調味料を主力とする食品事業と、倉庫・運送を担う物流事業等を展開しています。直近の業績は、価格改定や商品ラインアップ拡充により増収となりましたが、原材料価格高騰等の影響で経常利益は減益となりました。


※本記事は、エバラ食品工業株式会社 の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エバラ食品工業ってどんな会社?


家庭用・業務用の調味料製造販売を主力とし、「黄金の味」などで高い知名度を誇る食品メーカーです。

(1) 会社概要


1958年に設立され、1968年に「焼肉のたれ」を発売し現在のブランド基盤を築きました。2004年にジャスダック証券取引所に上場し、2014年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えを果たしました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。近年では海外子会社の設立や関連会社のグループ化を進め、事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結870名、単体516名です。筆頭株主は資産管理会社とみられるKMST HOLDINGSで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社と取引関係のある地方銀行です。

氏名 持株比率
KMST HOLDINGS 35.79%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.50%
横浜銀行 3.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は森村剛士氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森村剛士 取締役社長(代表取締役) 2005年同社入社。開発本部長、業務用・海外事業担当などを歴任し、2020年より代表取締役社長。2022年よりエバラビジネス・マネジメント代表取締役会長を兼務し現職。
吉田泰弘 専務取締役 1982年同社入社。経営企画部長、人事部長、管理本部長などを経て、2024年より社長補佐、グループ経営企画部及び品質保証部担当として現職。
近藤康弘 常務取締役 1988年同社入社。マーケティング本部長、家庭用営業本部長などを経て、2024年より営業部門担当兼営業統括本部長として現職。
今田勝久 取締役 1991年同社入社。人事室長、研究開発本部長、クリエイティブ本部長などを経て、2025年よりクリエイティブ部門担当として現職。
関進 取締役 1991年同社入社。上海や台湾など海外現地法人の代表を歴任。事業戦略部長等を経て、2024年より新規事業推進部担当として現職。
粟野裕 取締役 横浜銀行出身。同行常務執行役員などを経て2022年同社入社。経営企画部門担当等を経て、2024年よりコーポレート部門担当兼コーポレート統括本部長として現職。


社外取締役は、赤堀博美(赤堀料理学園校長)、菅野豊(菅野公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」、「物流事業」および「その他」事業を展開しています。

食品事業

家庭用および業務用の調味料等を製造・販売しています。家庭用では「黄金の味」「プチッと鍋」「浅漬けの素」、業務用では焼肉のたれやラーメンスープ等を展開しています。顧客は一般消費者や飲食店等です。

収益は製品の販売代金です。国内ではエバラ食品工業が製造販売を行うほか、丸二等の子会社も製造販売を行っています。海外では香港、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア等の現地法人が販売を担い、タイでは製造も行っています。

物流事業

主に同社グループの製品配送や保管業務を担っています。倉庫業および貨物運送取扱業を展開し、物流の効率化と安定供給を支えています。

収益は倉庫保管料や運送料等です。運営は主に株式会社エバラ物流が行っています。

その他

広告宣伝事業および人材派遣事業を行っています。グループ内の広告活動や人材派遣ニーズに対応しています。

収益は広告制作費や派遣料等です。運営は主に株式会社横浜エージェンシー&コミュニケーションズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は緩やかな増加傾向にあり、直近では480億円規模に達しています。一方、経常利益および当期純利益は、原材料価格の高騰などの影響を受け、減少傾向が見られます。利益率は低下していますが、黒字経営を継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 513億円 433億円 434億円 452億円 480億円
経常利益 37億円 37億円 32億円 26億円 21億円
利益率(%) 7.3% 8.5% 7.3% 5.8% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 24億円 20億円 17億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の伸びを上回ったため、売上総利益の伸びは限定的でした。さらに販売費及び一般管理費も増加した結果、営業利益率は低下しました。コスト増への対応が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 452億円 480億円
売上総利益 164億円 165億円
売上総利益率(%) 36.2% 34.4%
営業利益 24億円 20億円
営業利益率(%) 5.3% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が32億円(構成比22%)、広告宣伝費が24億円(同17%)、運搬費が22億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の食品事業は、価格改定や商品ラインアップ拡充により増収となりましたが、原材料価格高騰の影響で減益となりました。物流事業は、運送取引の拡大等により増収となりましたが、利益は微減しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食品事業 379億円 404億円 30億円 27億円 6.6%
物流事業 66億円 70億円 0.9億円 0.8億円 1.1%
その他 6億円 6億円 -1億円 -0.1億円 -1.3%
調整額 - - -6億円 -7億円 -
連結(合計) 452億円 480億円 24億円 20億円 4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8億円 45億円
投資CF -36億円 -33億円
財務CF -5億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「こころ、はずむ、おいしさ。」の提供を経営理念としています。顧客への情熱とチャレンジ精神を原動力に、「人を惹きつける、新しいおいしさ」と「期待で胸が膨らむ、ワクワクするおいしさ」を通じて、人と人との絆づくりの機会を広げていくことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「冒険、反論、失敗の自由」を行動指針の一つに掲げています。自由な議論を通じた創造を重んじ、失敗を恐れずに常にチャレンジを続ける姿勢や、他に先駆けた面白さ、オリジナリティを大切にする文化があります。また、顧客満足を最優先し、社会に信頼され貢献できる企業となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期ビジョンの実現に向け、中期経営計画「Ebara Reboot 2026」を推進しています。適正な経営資源投下による売上形成・利益最大化に取り組み、2026年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

* EBITDA:40億円
* 海外売上高比率:5%以上
* 総還元性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「構造変革」と「成長投資」を軸に、既存事業の高収益化と新市場創造による成長軌道の確立を目指しています。具体的には、ポーション調味料等の基幹商品のシェア拡大、業務用事業の収益性改善、国内外でのマーケティング強化、新ブランド展開、モノづくりにおけるグループ連携強化等を重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織と人材の活性化」を重要課題とし、主体的に学び行動できる「自律型人材」の育成を目指しています。社内提案制度や公募制度、自発的成長支援制度などを通じて挑戦を促すとともに、多様な人材の登用を進めています。また、在宅勤務やフレックス制の導入など、働きやすい環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 16.8年 6,729,322円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.7%
男性育児休業取得率 70.6%
男女賃金差異(全労働者) 70.6%
男女賃金差異(正規) 74.0%
男女賃金差異(非正規) 81.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、自発的成長支援制度利用件数(226件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全性について

異物混入や表示ミスなどの品質問題が発生した場合、製品回収コストの発生やブランド価値の毀損により、経営成績に影響を与える可能性があります。同社は品質管理委員会を設置し、国際規格FSSC22000の取得や監査体制の整備など、安全確保に努めています。

(2) 原材料の価格変動及び調達について

気候変動や地政学的要因による原材料価格の高騰や調達難は、コスト増につながり業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は調達先の分散や計画的な購買を進めるとともに、コスト上昇に対しては商品価格の改定などで対応しています。

(3) 市場動向について

国内の人口減少や競合激化、消費者の節約志向により市場シェアが低下するリスクがあります。また、天候不順による消費鈍化も懸念されます。同社は商品開発や業務用・海外事業の強化を進めるほか、汎用メニューの訴求などで需要変動への対応を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。