※本記事は、イオン九州株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イオン九州ってどんな会社?
同社は九州地区を拠点に、スーパーマーケットや総合スーパーなどの小売事業を幅広く展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1972年に福岡ジャスコとして設立され、九州での事業を開始しました。2000年に株式を店頭登録(現スタンダード市場)し、2003年にはホームワイドと合併して現在のイオン九州へと商号を変更しました。近年では2020年にマックスバリュ九州などと合併し、2026年にはトキハインダストリーを完全子会社化するなど、事業規模の拡大を推進しています。
現在、連結従業員数は5,431名、単体では5,316名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は親会社のイオンで、第2位はイオン九州社員持株会、第3位はイオン九州共栄会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオン | 69.90% |
| イオン九州社員持株会 | 2.50% |
| イオン九州共栄会 | 2.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は中川伊正氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中川 伊正 | 代表取締役社長 | 1990年ジャスコ(現イオン)入社。同社マックスバリュ事業本部北陸事業部長等を経て、2021年イオン中国本社取締役社長。2024年5月より現職。 |
| 奥田 晴彦 | 取締役専務執行役員ディベロッパー事業担当(兼)ディベロッパー事業本部長 | 1984年ダイエー入社。同社執行役員不動産企画本部長、キャナルシティ・オーパ代表取締役社長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 赤木 正彦 | 取締役常務執行役員管理担当(兼)経営管理本部長(兼)企業倫理担当 | 1988年ますや(後、マックスバリュ九州)入社。同社取締役経営管理本部長等を経て、2021年同社執行役員。2025年3月より現職。 |
| 椎名 孝夫 | 取締役常務執行役員営業担当 | 1991年信州ジャスコ(現イオンリテール)入社。北京イオン取締役社長等を経て、2021年同社執行役員。2025年5月より現職。 |
| 古澤 康之 | 取締役 | 1995年ジャスコ(現イオン)入社。まいばすけっと代表取締役社長、イオンリテール代表取締役社長等を歴任し、2025年5月より現職。 |
社外取締役は、黒須綾希子(cotta代表取締役社長)、柚木和代(元大丸松坂屋百貨店執行役員)、青柳俊彦(元九州旅客鉄道代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「SM・DS、GMS」「HC」「ドラッグ&フード」および「その他」事業を展開しています。
■(1) SM・DS、GMS
衣料品、食品、日用雑貨品、ホームファッション等の住居余暇商品を一般消費者向けに販売しています。多彩な商品ラインナップで幅広い顧客の日常生活を支えています。
店舗での商品販売代金を主な収益源としています。事業の運営は主にイオン九州が行っています。
■(2) HC(ホームセンター)
建材や木材、補修材をはじめ、家庭用品、ペット用品、園芸用品などを一般消費者および専門業者向けに販売しています。
各店舗における商品販売を通じた代金を収益源としています。本事業の運営はイオン九州が行っています。
■(3) ドラッグ&フード
医薬品、食品、化粧品、家庭用雑貨品の販売および調剤薬局の運営を行っています。地域の健康と食を支える顧客層を対象としています。
商品販売代金や調剤報酬を主な収益源としています。本事業は連結子会社であるイオンウエルシア九州が運営しています。
■(4) その他
食品や自転車関連商品の販売、飲食サービスの提供、店舗内のテナント管理・運営、保育所などの経営を行っています。
商品販売代金や飲食提供代金、テナント賃貸料などを収益源としています。運営はイオン九州および子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績を見ると、店舗網の拡大や既存店の活性化により売上高は順調に増加しています。経常利益も毎年着実な成長を続けており、安定した利益率を維持しながら事業規模の拡大を実現していることが伺えます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,847億円 | 5,055億円 | 5,206億円 |
| 経常利益 | 105億円 | 110億円 | 115億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 2.2% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 73億円 | 60億円 | 60億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も前年から堅調に拡大しています。売上総利益率および営業利益率は前年と同水準で推移しており、収益基盤の安定性が確認できます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,055億円 | 5,206億円 |
| 売上総利益 | 1,303億円 | 1,333億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.8% | 25.6% |
| 営業利益 | 105億円 | 107億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が577億円(構成比39%)、地代家賃が205億円(同14%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.2%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 144億円 | 237億円 |
| 投資CF | -174億円 | -288億円 |
| 財務CF | 51億円 | 100億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」というイオンの基本理念のもと、「すべてはお客さまのために」を原点としています。九州の成長とくらしの豊かさに貢献することを基本方針として掲げ、地域のライフラインとして持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
企業文化として、お客さま満足と従業員の自己実現のため、絶えず「変革」と「挑戦」を続けることを重視しています。現場主義による価値創造や、最大の経営資源である人間の尊重を基本姿勢とし、変化に即応しながら革新し続ける企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
キャッシュ・フローの創出による自己資本の増強を財務上の課題と認識し、営業利益、営業キャッシュ・フロー、ROE(自己資本当期純利益率)を重要経営指標としています。現行の中期経営計画では、健全な成長による企業価値の向上に努めています。
* ROE:10%(2026年度目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
地域密着型スーパーマーケットとのシナジーを発揮し、同じ九州を基盤とする企業とのアライアンスを通じてマーケットシェアの拡大を進めています。中期経営計画で掲げる重点施策を通じて、経営環境の変化に対応した事業成長を加速させています。
* 成長領域へのシフト
* 商品改革
* 既存資産の魅力度向上
* 生産性・経営効率の向上
* サステナブル経営の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人事の基本理念として「人間尊重の経営」を志向し、従業員の「志」を聴き、従業員を活かすことを掲げています。「会社・家庭・地域」生活の充実を目指し、多様な働き方の実現や自律的なキャリアデザインの支援、必要スキルを持つ人材の適材適所への配置など、企業価値向上に向けた人的資本投資を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 47.2歳 | 11.7年 | 4,811,193円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.2% |
| 男性育休取得率 | 67.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 96.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(51.1)、障がい者雇用率(2.72%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 九州地域における市場競争と消費動向
九州地域での人口減少による市場縮小や個人消費の落ち込み、さらに業種や業態を超えた競争の激化により、同社の小売事業における業績や財政状態が影響を受ける可能性があります。
■(2) 店舗拡大に向けた人材の確保・育成
積極的な出店ペースに対応するための人材確保や育成に支障が生じた場合、事業成長が減速する可能性があります。また、ドラッグストア展開に不可欠な薬剤師や登録販売者の確保状況も業績に影響を及ぼす課題となります。
■(3) 商品や原材料の価格変動
為替相場や原油などの市況変動により、商品や原材料、店舗資材などの調達価格が上昇するリスクがあります。さらに、光熱費などの店舗運営コストの増加が同社の業績に影響を与える可能性があります。



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