イオン九州 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イオン九州 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の小売企業です。イオングループの九州地区における中核企業として、総合スーパー(GMS)、スーパーマーケット、ホームセンターなどを展開しています。2025年2月期の連結売上高は5055億円、経常利益は110億円で、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、イオン九州株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イオン九州ってどんな会社?


イオングループの九州エリアを統括する中核企業として、GMSやスーパー、ホームセンター等を展開しています。

(1) 会社概要


1972年に福岡ジャスコとして設立され、九州地区での事業基盤を築きました。2000年に店頭登録(現ジャスダック)を果たし、2003年にはホームワイドと合併して現在の社名に変更しました。2020年にはグループ内のマックスバリュ九州およびイオンストア九州と経営統合を行い、事業規模を拡大しました。直近では2022年にウエルシアホールディングスとの合弁でイオンウエルシア九州を設立し、ドラッグストア事業を強化しています。

2025年2月時点の従業員数は連結で5,317名、単体で5,239名です。大株主は、親会社であるイオンが71.5%を保有し、次いでイオン九州社員持株会、イオン九州共栄会と続きます。強固なグループ基盤のもと、地域密着型の経営を展開しています。

氏名 持株比率
イオン 71.50%
イオン九州社員持株会 2.50%
イオン九州共栄会 2.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は中川 伊正氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中川 伊正 代表取締役社長 ジャスコ(現イオン)入社後、マックスバリュ北陸社長、イオン中国本社社長などを歴任。2024年5月より現職。
奥田 晴彦 取締役専務執行役員 ダイエー入社後、同社執行役員、OPA社長、キャナルシティ・オーパ社長などを経て、2025年3月より現職。
赤木 正彦 取締役常務執行役員 ますや(後マックスバリュ九州)入社後、同社取締役、レッドキャベツ専務などを経て、2025年3月より現職。
椎名 孝夫 取締役常務執行役員 信州ジャスコ(現イオンリテール)入社後、北京イオン社長、同社執行役員などを経て、2025年5月より現職。
古澤 康之 取締役 ジャスコ(現イオン)入社後、イオンベトナム社長、イオンリテール社長などを経て、2025年5月より現職。


社外取締役は、黒須 綾希子(cotta社長)、柚木 和代(大丸松坂屋百貨店顧問)、青柳 俊彦(JR九州会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「SM・DS、GMS事業」、「ホームセンター事業」および「ドラッグ&フード事業」等を展開しています。

(1) SM・DS、GMS事業


衣料品、食品、日用雑貨、住居余暇商品などを取り扱うスーパーマーケット(SM)、ディスカウントストア(DS)、総合スーパー(GMS)を運営しています。地域住民の日常生活に必要な商品を幅広く提供し、九州エリアのインフラとしての役割を担っています。

収益は、一般消費者への商品販売による売上が中心です。運営は主に同社が行っています。

(2) ホームセンター事業


建材、木材、補修材から家庭用品、ペット用品、園芸用品までを取り扱うホームセンター(HC)を展開しています。住まいと暮らしに関わる商品を提供し、DIY需要や園芸ニーズに応えています。

収益は、一般消費者への商品販売による売上が中心です。運営は主に同社が行っています。

(3) ドラッグ&フード事業


医薬品、化粧品、日用雑貨に加え、食品も取り扱うドラッグストア業態を展開しています。調剤薬局の運営も行っており、健康と生活を支える店舗づくりを進めています。

収益は、一般消費者への商品販売および調剤報酬等が中心です。運営は子会社のイオンウエルシア九州が行っています。

(4) その他事業


店舗におけるテナントの管理・運営や、飲食サービスの提供、自転車関連商品の販売などを行っています。また、保育所や託児所の経営も手がけています。

収益は、テナントからの賃料収入やサービス利用料などが中心です。運営は同社およびグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績は、売上高、利益ともに増加傾向にあります。2025年2月期の売上高は5055億円に達し、経常利益も110億円と堅調に推移しています。親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で減少しましたが、全体として安定した収益基盤を維持しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 4,847億円 5,055億円
経常利益 105億円 110億円
利益率(%) 2.2% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 70億円 60億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しています。営業利益率は2.1%で安定しており、本業の収益性は維持されています。売上規模の拡大に伴い利益額も増加しており、堅実な経営が続いています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 4,847億円 5,055億円
売上総利益 1,262億円 1,303億円
売上総利益率(%) 26.0% 25.8%
営業利益 104億円 105億円
営業利益率(%) 2.1% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が565億円(構成比39%)、地代家賃が220億円(同15%)を占めています。売上原価は3,752億円で、売上高に対する構成比は74%です。

(3) セグメント収益


食品部門が売上の約8割を占めており、前期比でも増加して全体の成長を牽引しています。衣料品やホームセンター商品は微減または横ばいですが、住居余暇商品や医薬品関連は増加しており、事業ポートフォリオの中で成長分野へのシフトが進んでいることがうかがえます。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
衣料品 423億円 416億円
食品 3,760億円 3,962億円
住居余暇商品 478億円 486億円
ホームセンター商品 180億円 172億円
医薬品、化粧品等 4億円 11億円
その他 8億円 8億円
連結(合計) 4,847億円 5,055億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスで、営業で得た資金に加え借入等で資金を調達し、積極的な投資を行っている「積極型」です。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 146億円 144億円
投資CF -116億円 -174億円
財務CF -38億円 51億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すべてはお客さまのために」を原点とし、顧客満足と従業員の自己実現のために、絶えず「変革」と「挑戦」を続けることを基本方針としています。この理念のもと、九州の成長とくらしの豊かさに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「私たちの『たからもの』 九州をもっと―。」というパーパスを掲げ、地域社会への貢献を重視しています。また、イオンピープルとして「人間尊重」の経営を志向し、従業員の声を聴き、活かすことを基本としています。環境や社会課題の解決にも積極的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


キャッシュ・フローの創出による自己資本の増強を財務上の課題と認識しており、本業の実力を表す営業利益や営業キャッシュ・フロー、ROEを重要指標と位置づけています。中期経営計画の最終年度に向けて、以下の目標を掲げています。

* 2026年度 ROE:10%

(4) 成長戦略と重点施策


九州でNo.1の信頼される企業の実現に向けて、新たな中期経営計画を推進しています。具体的には、「成長領域へのシフト」「商品改革」「既存資産の魅力度向上」「生産性・経営効率の向上」「サステナビリティ経営の推進」の5つの柱に取り組み、企業価値の向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間尊重の経営」を掲げ、従業員の成長を企業の成長につなげることを重視しています。従業員が会社の未来と自身の未来を見据えられるよう、多様な働き方の実現や自律的なキャリア形成を支援しています。また、経営人材や店舗幹部、専門人材の育成に注力し、適材適所の配置を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 47.3歳 11.5年 4,840,238円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 29.0%
男性育児休業取得率 59.5%
男女賃金差異(全労働者) 64.5%
男女賃金差異(正規) 72.8%
男女賃金差異(非正規) 96.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康指数(アブセンティズム)(629名)、特定資格保有者の育成数(2,303名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争激化及び消費動向等の影響


九州地域における人口減少や経済状況の変化、業種・業態を超えた競争の激化がリスク要因です。個人消費の落ち込みや競合他社との競争により、業績や財政状態が影響を受ける可能性があります。

(2) 人材の確保・育成に関するリスク


店舗数の拡大ペースに対応した人材の確保・育成が課題です。特に医薬品販売に必要な有資格者の確保が重要であり、人材不足が生じた場合は出店の減速やサービス低下により業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 商品・原材料等の価格変動


為替や原油等の市況変動による商品・原材料・店舗資材等の調達価格の上昇がリスクです。これに伴う仕入コストや光熱費の増加が、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 災害等に関するリスク


店舗周辺地域における地震や台風等の自然災害、事故等の発生がリスク要因です。店舗の損壊や人的被害、販売・物流活動の阻害が生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。