※本記事は、魚喜の有価証券報告書(第41期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 魚喜ってどんな会社?
鮮魚販売や回転寿司店の経営、不動産賃貸管理を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1971年4月に横浜市南区で個人鮮魚店として創業し、1985年に有限会社魚喜水産を設立しました。1990年に魚喜へ商号変更し、1995年にスーパーマーケット運営のためビッグパワーに出資しました。2002年4月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2022年4月の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数はグループ全体で290名、単体で279名です。筆頭株主は有吉和枝氏で、第2位は資産管理等を行うフォー・エム、第3位は代表取締役社長の有吉美和氏となっており、創業者一族や役員、関連法人が大株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有吉 和枝 | 15.56% |
| フォー・エム | 13.54% |
| 有吉 美和 | 4.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性3名の計6名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長執行役員東日本営業本部長を有吉美和氏が務めています。監査等委員である社外取締役が2名在籍しており、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 有吉 美和 | 代表取締役社長執行役員東日本営業本部長 | ビッグパワー入社、同社取締役を経て、2016年3月同社入社。2018年3月代表取締役社長執行役員、2023年5月より現職。 |
| 島谷 勝司 | 取締役執行役員西日本営業本部長 | 1997年12月同社入社。関西統括部長などを経て、2019年3月取締役執行役員西日本営業本部長兼関西支社長。2025年9月より現職。 |
| 中里 瑛 | 取締役相談役 | 三菱商事入社。エム・エス・ケー農業機械専務などを経て、2010年5月同社取締役専務執行役員。2023年5月より現職。 |
| 三冨 秀雄 | 取締役(監査等委員) | 1998年11月同社入社。人事総務部長などを経て、2019年3月執行役員管理本部長。2024年5月より現職。 |
社外取締役は、粕谷まり子(粕谷公認会計士事務所代表)、鈴木みき(光和総合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鮮魚事業」「飲食事業」「不動産事業」を展開しています。
■鮮魚事業
鮮魚、寿司、惣菜を小売販売しています。一般消費者を顧客とし、関東地方から中国・四国地方に至るまで広範囲に店舗を展開しており、専門部署の食品衛生部による巡回指導等を通じて食の安全・安心を追求した売場づくりを行っています。
収益は、店舗で販売する鮮魚や寿司、惣菜などの商品代金から得ています。また、市場や商社等との共同仕入れを活用した価格競争力のある商品を提供しており、運営は主に魚喜が行っています。
■飲食事業
回転寿司店などの飲食店を経営しています。鮮魚専門店としてのノウハウと技術を活かし、一般消費者を対象に高品質な食材とサービスを提供しており、競合との差別化を図っています。
収益は、店舗での飲食提供による代金から得ています。メニューの見直しやサービス向上により顧客満足度を高めており、運営は主に魚喜が行っています。
■不動産事業
スーパーマーケットの管理運営事業を行っており、施設内のテナントに対する賃貸管理などを主たる業務としています。
収益は、スーパーマーケットに出店しているテナントからの賃貸料等から得ています。運営は連結子会社のビッグパワーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は99億円前後で推移していましたが、直近では店舗閉鎖等の影響もあり減収となっています。利益面でもエネルギー資源の物価上昇や配送費の増加など厳しい事業環境を背景に、経常利益は減少傾向にあります。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 110億円 | 99億円 | 99億円 | 99億円 | 95億円 |
| 経常利益 | 3.4億円 | 0.4億円 | 0.7億円 | 1.1億円 | 0.9億円 |
| 利益率(%) | 3.1% | 0.5% | 0.8% | 1.1% | 0.9% |
| 当期純利益 | 2.1億円 | 0.1億円 | 0.4億円 | 0.2億円 | 0.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は店舗閉鎖などの影響を受けて減少しましたが、経費の見直し・削減を積極的に実施した結果、営業利益は前期と同水準を維持しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 99億円 | 95億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 43億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.8% | 45.5% |
| 営業利益 | 0.9億円 | 0.9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が18億円(構成比42%)、店舗使用料が9億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である鮮魚事業は店舗閉鎖などの影響で減収となりましたが、飲食事業はメニューの見直し等により増収となりました。不動産事業も堅調に増収で推移しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 鮮魚事業 | 87億円 | 82億円 |
| 飲食事業 | 8.6億円 | 8.9億円 |
| 不動産事業 | 3.7億円 | 4.0億円 |
| 連結(合計) | 99億円 | 95億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を元手に、さらに借入等による資金調達を行って積極的な投資を継続している状態です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.9億円 | 4.2億円 |
| 投資CF | -3.5億円 | -3.4億円 |
| 財務CF | 2.0億円 | 2.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も29.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「私達は、自然の恵みに感謝すると共に、より高品質の食材とサービスをお客様に提供することを喜びとし、良き企業市民として社会の発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。この理念に基づき、ステークホルダーとの信頼関係を築き、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「自然の恵みへの感謝・環境への配慮」「高品質の商品とサービス・お客様満足」「社会貢献・地域貢献」「多様性・従業員満足」をサステナビリティに関する方針として明確にしています。働き方改革によるローコストオペレーションの実現や、多様な人材が活躍できる環境構築を重視する組織文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「魚喜ビジョン2025」において、財務目標としての売上高営業利益率の向上に加え、サステナビリティに関する目標を設定して事業運営を行っています。
* 労働生産性の向上(5%向上)
* 女性役職者率(20.0%)
■(4) 成長戦略と重点施策
既存店の強化やPB商品の開発等による新たな収益基盤の拡大、厳格な出店基準に基づく堅実な店舗展開を重点施策としています。また、鮮魚小売業・飲食業を主軸にシナジー効果が期待できる業務提携を検討し、HACCPに沿った衛生管理体制を徹底して「鮮度・技術」の追求による差別化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員の成長と会社の成長をともに目指す」人事方針を掲げています。主体的に行動し成果を出す人を評価する公平な評価制度を整備し、教育・研修制度の強化やe-learning制度の導入を通じて人材育成を推進しています。子育て世代の短時間勤務の拡大や雇用年限の75歳への引き上げ等、多様な人材が活躍できる環境構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 44.0歳 | 15.8年 | 4,350,000円 |
※平均年間給与には、賞与及び基準外賃金が含まれています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 68.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者率(25.4%)、労働生産性の向上率(10.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内景気や天候による消費動向の変動
同社グループは一般消費者を対象とする鮮魚小売業及び飲食業を営んでいるため、国内景気、個人消費の動向、天候などの気象条件、競合他社との店舗間競争の状況といった要因が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 食品の安全性に関するリスク
外国産食品の安全性や放射能汚染問題など、食の安全を脅かす事態が発生し、社会全体で魚介類や生鮮食品に対する敬遠ムードが高まった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 魚食文化の後退や魚価の高騰
一般消費者の生鮮魚介類の購入額の減少や、世界的な需要増加に伴う魚介類の漁獲制限、魚価の高騰などが見られます。これらの傾向が持続、あるいは急激に変化した場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 法的規制や環境関連法令の変更
同社グループは、大規模小売店舗立地法、食品衛生法、その他の食品の安全管理や環境、リサイクルに関する様々な法的規制を受けています。これらの規制が強化または新設された場合、対応コストの増加等により業績に影響を及ぼす可能性があります。



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