※本記事は、株式会社魚喜 の有価証券報告書(第40期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 魚喜ってどんな会社?
鮮魚専門店として創業し、百貨店やスーパーへのテナント出店や回転寿司店の経営を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1971年に横浜市南区で個人鮮魚店として創業し、1985年に有限会社魚喜水産を設立しました。1990年に魚喜へ商号変更し、2002年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場しました。その後、飲食事業や不動産事業へ展開し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
同グループの連結従業員数は318名、提出会社の従業員数は308名です。筆頭株主は有限会社フォー・エムで、第2位は有吉和枝氏、第3位は代表取締役社長の有吉美和氏となっており、創業家やその資産管理会社が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社フォー・エム | 15.89% |
| 有吉 和枝 | 15.35% |
| 有吉 美和 | 4.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長執行役員は有吉美和氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 有吉 美和 | 代表取締役社長執行役員東日本営業本部長 | ビッグパワー取締役等を経て2016年入社。社長室長等を経て2018年より現職。うおや代表取締役社長を兼務。 |
| 島谷 勝司 | 取締役執行役員西日本営業本部長 | 1997年入社。関西統括部長、営業本部長、関西支社長等を歴任。2023年より現職。中四国支社長を兼務。 |
| 中里 瑛 | 取締役相談役 | 三菱商事入社。エム・エス・ケー農業機械専務等を経て2007年顧問就任。専務執行役員等を経て2023年より現職。 |
| 三冨 秀雄 | 取締役(監査等委員) | 1998年入社。人事総務部長、執行役員管理本部長、ビッグパワー取締役等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、安保眞司(元横浜銀行渋沢支店長)、粕谷まり子(公認会計士)、鈴木みき(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鮮魚事業」、「飲食事業」、「不動産事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
**(1) 鮮魚事業**
百貨店やスーパーマーケット等の商業施設内において、鮮魚、寿司および惣菜の小売販売を行っています。一般消費者を主な顧客とし、対面販売による鮮度と品質を重視した商品提供を行っています。
収益は、一般消費者への商品販売代金です。運営は主に魚喜が行っています。
**(2) 飲食事業**
回転寿司店等の飲食店を経営しており、新鮮な魚介類を使用したメニューを提供しています。商業施設内や路面店などに出店し、一般消費者を対象としています。
収益は、来店客からの飲食代金です。運営は主に魚喜が行っています。
**(3) 不動産事業**
連結子会社がスーパーマーケットを管理運営し、テナントへの賃貸等を行っています。
収益は、テナントからの賃貸料収入等です。運営は主にビッグパワーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後で推移していますが、2023年2月期以降はやや減少傾向から横ばいとなっています。経常利益は変動があり、2023年2月期に大きく落ち込みましたが、その後は回復基調にあります。当期純利益は2023年2月期に低迷した後、回復しましたが、直近では特別損失の影響等により再び減少しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 110億円 | 99億円 | 99億円 | 99億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 3.4億円 | 0.4億円 | 0.7億円 | 1.1億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | 3.1% | 0.5% | 0.8% | 1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 2.1億円 | 0.1億円 | 0.4億円 | 0.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増し、原価率の改善により売上総利益が増加しました。販管費も増加しましたが、営業利益率は改善しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 99億円 | 99億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 44億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.2% | 44.8% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 0.9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.7% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が19億円(構成比43%)、店舗使用料が10億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
鮮魚事業は売上が微減しましたが、利益は増加しました。飲食事業は売上が増加しましたが、利益は減少しました。不動産事業は売上、利益ともに増加しました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鮮魚事業 | 87億円 | 87億円 | 4.5億円 | 5.3億円 | 6.1% |
| 飲食事業 | 8億円 | 9億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 3.5% |
| 不動産事業 | 3億円 | 4億円 | 0.2億円 | 0.3億円 | 9.3% |
| 連結(合計) | 99億円 | 99億円 | 0.7億円 | 0.9億円 | 0.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
魚喜のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動では資金を獲得しましたが、前期比では減少しました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出が増加したため、使用した資金は前期比で大きく増加しました。財務活動では、長期借入れによる収入等により、前期の使用から一転して資金を獲得しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.3億円 | 0.9億円 |
| 投資CF | -1.2億円 | -3.5億円 |
| 財務CF | -0.2億円 | 2.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私達は、自然の恵みに感謝すると共に、より高品質の食材とサービスをお客様に提供することを喜びとし、良き企業市民として社会の発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。この理念に基づき、SDGsへの賛同や持続可能な社会の実現への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、新たな企業風土の醸成と企業価値の拡大を目指し、経営理念の刷新と浸透に取り組んでいます。また、食の安全・安心を必須の課題とし、専門部署として食品衛生部を設置し、HACCPに沿った衛生管理を徹底するなど、安全性を重視する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営計画「魚喜ビジョン2025」(2023年度から2025年度)を策定しており、最終年度となる次期において目標達成に向けた施策を実行し、収益性の向上を図るとしています。具体的な数値目標として、売上高営業利益率の向上を重要指標とし、サステナビリティ目標として労働生産性の向上(2026年2月までに5%向上)、女性役職者率(2026年2月までに20.0%)を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「既存店の強化と収益拡大」「新たな収益基盤の拡大」「堅実な店舗展開」「人財の確保と育成」「衛生管理体制の徹底」を重点課題としています。既存店では品揃えの改善やローコストオペレーションによる収益改善を図り、新規事業ではPB商品の開発強化やWeb販売チャネルの追加を進めます。
* 既存店強化:商品共同開発、共同仕入れによる原価低減、労働生産性向上。
* 新規収益基盤:PB商品開発、Web販売、新規事業へのノウハウ応用。
* 店舗展開:出店基準の厳格化、効率的な店舗運営による収益性の高い店舗展開。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員の成長と会社の成長をともに目指す人事方針を掲げ、人事制度改革に取り組んでいます。タスクフォースチームを編成し、IT活用による労働環境整備、教育・研修制度の強化、福利厚生の充実、女性社員の活躍推進、75歳への雇用年限引上げによる高齢者活用など、多様な人材が活躍できる環境構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 45.4歳 | 16.3年 | 4,401,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.5% |
| 男性育児休業取得率 | 83.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 87.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働生産性(4.7%向上)、女性役職者率(19.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の安全性のリスク
同社グループは食の安全性を重要視し、対策を講じていますが、外国産食品の安全性問題や放射能汚染など、食の安全を脅かす事態が発生した場合、消費者の魚介類や生鮮食品への敬遠ムードが高まり、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 消費変動リスク
国内における魚離れや人口減少による生鮮魚介類購入額の減少、あるいは世界的な魚介類消費増加に伴う魚価の高騰などが加速した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制等に関するリスク
大規模小売店舗立地法、食品衛生法、環境・リサイクル関連法令などの法的規制を受けており、これらが変更・強化された場合や新たな規制が設けられた場合、業績に影響を与える可能性があります。



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