アンドエスティHD 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アンドエスティHD 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するアンドエスティHDは、グローバルワーク等のアパレル・雑貨事業と飲食事業を展開しています。直近の業績では、国内外の店舗展開や自社ECの成長により増収、ならびに営業増益を達成しました。一方で、特別損失の計上等により親会社株主に帰属する当期純利益は減益となっています。


※本記事は、株式会社アンドエスティHDの有価証券報告書(第76期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アンドエスティHDってどんな会社?


同社はアパレル・雑貨事業と飲食事業をグローバルに展開し、マルチブランドと自社ECを強みとする企業です。

(1) 会社概要


同社は1953年に紳士服小売業として設立され、1993年に社名をポイントに変更しました。その後、2000年に株式を店頭上場し、2004年には東証第一部に上場を果たしています。2015年にアダストリアへ商号変更し、2025年に持株会社体制へ移行して現在のアンドエスティHDへと社名を変更しました。

現在の同社グループは、連結従業員数6,936名、単体従業員数506名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は資産管理会社とみられるフクゾウで、第2位は信託業務を行う信託銀行、第3位は繊維専門商社などの事業を展開する豊島です。

氏名 持株比率
フクゾウ 36.62%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.71%
豊島 4.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は福田泰生氏が務めています。社外取締役は6名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
福田泰生 代表取締役社長 2004年イムズ入社。2005年ポイント(現 同社)入社。同社海外事業本部長などを経て2026年3月より現職。
福田三千男 取締役会長 1971年福田屋洋服店(現 同社)入社。同社代表取締役社長や代表取締役会長兼社長などを経て2026年3月より現職。
木村治 取締役 2011年トリニティアーツ(現 同社)代表取締役社長。同社代表取締役社長などを経て2026年3月より現職。
遠藤洋一 取締役常勤監査等委員 1985年福田屋洋服店(現 同社)入社。同社代表取締役社長などを経て2024年5月より現職。


社外取締役は、水留浩一(FOOD & LIFE COMPANIES代表取締役)、松岡竜大(ライズ・コンサルティング・グループ代表取締役社長COO)、シェイクスピア悦子(EG Globe Partners代表社員)、リュウシーチャウ(サニーサイドアップ代表取締役社長)、海老原和彦(元JPモルガン証券)、茂木香子(サウスゲイト法律事務所・外国法共同事業)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アパレル・雑貨関連事業」および「その他(飲食事業)」を展開しています。

アパレル・雑貨関連事業


国内外において、カジュアルファッションブランドやライフスタイル提案型ブランドの衣料品および雑貨の企画・販売を行っています。主な顧客は若年層から大人まで幅広く、自社ECサイトを通じた商品の販売や、アジアを中心とした海外での店舗展開も積極的に進めています。

収益源は、直営店および自社ECサイトでの商品販売による売上です。国内では中核事業会社であるアダストリアをはじめ、BUZZWITやエレメントルールなどがブランドを展開しています。また、自社ECサイトの運営はアンドエスティが担い、海外販売は各現地法人が行っています。

その他(飲食事業)


魅力あるコンテンツで街を活性化させるという思想のもと、国内外においてカフェやレストランなどの飲食店を展開しています。「アロハテーブル」などの人気ブランドを擁し、店舗空間を通じた様々な街づくりを進め、幅広い層の顧客に飲食と体験のサービスを提供しています。

収益源は、運営する各飲食店舗における飲食代金やサービス料による売上です。本事業の運営は、主にグループ会社であるゼットンが行っており、同社が中心となって独自性のあるブランド開発や店舗展開を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、店舗網の拡大や自社ECの成長が牽引し、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益も売上の拡大に伴い安定的に推移していますが、直近ではM&A等に伴う特別損失の計上により当期利益が減少する結果となりました。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 2,016億円 2,426億円 2,756億円 2,931億円 3,044億円
経常利益 82億円 120億円 184億円 160億円 168億円
利益率(%) 4.1% 5.0% 6.7% 5.4% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 44億円 66億円 88億円 108億円 55億円

(2) 損益計算書


直近2期間の収益構造を見ると、売上高の成長に伴い売上総利益および営業利益ともに増加しています。継続的な原価低減やプロモーションの効率化などにより、売上総利益率と営業利益率は概ね同水準を維持し、安定した収益基盤を確保しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 2,931億円 3,044億円
売上総利益 1,603億円 1,661億円
売上総利益率(%) 54.7% 54.6%
営業利益 155億円 165億円
営業利益率(%) 5.3% 5.4%


販売費及び一般管理費等のうち、地代家賃が197億円、給料及び賞与が173億円と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の「アパレル・雑貨関連事業」は国内外での積極的な店舗展開や自社ECサイトの伸長により好調に推移しています。「その他(飲食事業)」についても、既存店の堅調な推移や新店舗の貢献によって売上が増加しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
アパレル・雑貨関連事業 2,786億円 2,897億円
その他(飲食事業) 145億円 147億円
連結(合計) 2,931億円 3,044億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てる「健全型」の推移を示しています。本業で安定して現金を創出しながら財務の健全性を高めつつ、将来に向けた店舗展開やシステム投資を自己資金で賄う優良な状態です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 214億円 206億円
投資CF -170億円 -95億円
財務CF -71億円 -74億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も58.3%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「なくてはならぬ人となれ なくてはならぬ企業であれ」という企業理念を掲げ、「Play fashion!」をミッションとしています。ファッションを通じて人々の心を豊かにし、幸せにすることを使命とし、顧客一人ひとりの毎日を楽しくする選択肢を提供することで社会の課題解決に貢献する方針です。

(2) 企業文化


現場起点・現場力を重視し、店頭スタッフが捉えた顧客のライフスタイルの変化を迅速に事業へ反映する文化が根付いています。多様な価値観や専門性を持つ個人の経験をチームで融合させることを大切にし、従業員とその家族も参加できるイベントを開催するなど、風通しの良さやファミリー感を重んじる組織風土です。

(3) 経営計画・目標


2030年2月期を最終年度とする「中期経営計画2030」を策定し、自社ECを「Play fashion!プラットフォーマー」へ進化させることを目指しています。定量的な目標として、IDとLTVの拡大を通じた流通総額の最大化などを掲げています。

* プラットフォーム事業の流通総額:1,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2030」のもと、3つの事業を軸に成長戦略を推進しています。自社ECをモール化し外部企業の出店を加速する「プラットフォーム事業」、東南アジアや中華圏での店舗展開を強化する「グローバル事業」、そしてマルチブランド戦略と大型店化で収益向上を図る「ブランドリテール事業」を展開しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な個性の成長を支援し、なくてはならぬ人として輝かせる」ことを人事戦略に掲げています。社員一人ひとりの強みや専門性を活かし、年齢や性別に関係なく多様な人材が融合して活躍できる環境を整備しています。失敗を恐れず挑戦を続け、自律的なキャリア開発を後押しすることで組織の力を最大化する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 38.4歳 10.7年 4,331,636円


※平均年間給与には、給与及び賞与のほか、福利厚生費の一部を含めています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 34.5%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 64.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※パート・有期労働者の男女賃金差異については、対象者が無く差異が算出できないため「-」としています。

また、同社は「人的資本に関する取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(94.7%)、ストレスチェック受検率(87.9%)、従業員総合満足度スコア(3.89)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内アパレル市場の縮小


同社グループは事業の約9割を国内で展開しており、少子高齢化に伴う国内市場の縮小が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、アジア圏を中心とした海外展開の強化や、自社ECサイトを通じたプラットフォーム事業の推進により顧客基盤の拡大を図っています。

(2) 店舗運営と敷金・保証金のリスク


全国のファッションビルやショッピングセンター内に多数の店舗を展開しており、出店に伴う多額の敷金や保証金を差し入れています。デベロッパーの倒産や店舗収益性の低下による減損処理が発生した場合、同社の財務状況や経営成績に影響を与えるリスクがあります。

(3) サプライチェーンの寸断


商品の大半をアジア各国の外部工場に委託生産しているため、自然災害や政情不安、物流コストの高騰などが商品供給に支障をきたす可能性があります。同社は生産地の分散化や複数の輸送ルートの確保、物流拠点の整備等により、サプライチェーンの強靭化に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。