スタジオアリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタジオアリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場上場のスタジオアリスは、こども専門写真館を中心に写真事業と衣装製造卸売事業を展開しています。直近の業績は、売上高329億円、経常利益22億円といずれも前期比で減収減益となりました。少子化や競争激化の事業環境下で、成人振袖レンタル事業や出張撮影などに注力し変革を図っています。


スタジオアリス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社スタジオアリスの有価証券報告書(第52期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スタジオアリスってどんな会社?


こども専門写真スタジオを中心に、家族の記念日を彩る写真撮影と衣装の製造・卸売を展開する企業です。

(1) 会社概要


1974年に商業写真事業を目的として設立され、1992年にこども専門写真スタジオ事業へ進出しました。1999年に現在のスタジオアリスへ商号変更し、2001年にはディズニーキャラクターの使用に関する包括契約を締結しました。2004年の東証一部上場を経て、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

従業員数は連結で1,257名、単体で938名です。筆頭株主は不動産の賃貸・管理などを行うトーランス・ジャパンで、第2位は資本業務提携先である事業会社の富士フイルム、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
トーランス・ジャパン 23.33%
富士フイルム 20.28%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は牧野俊介氏が務めています。取締役8名中、社外取締役は6名で、高い社外取締役比率となっています。

氏名 役職 主な経歴
牧野俊介 代表取締役社長 1985年4月同社入社。1998年11月執行役員、2005年3月常務取締役等を経て2018年10月代表取締役社長に就任。2019年2月より現職。
宗岡直彦 取締役副社長 1979年4月イズミヤ入社。2001年5月同社入社。2010年1月常務取締役、2018年10月専務取締役等を経て2026年3月より現職。


社外取締役は、百瀬裕規(元野村證券専務)、山元正人(現富士フイルム副社長)、淵郁子(現マムプロジェクト社長)、増田明彦(元新日本有限責任監査法人シニアパートナー)、雨宮沙耶花(現弁護士法人淀屋橋・山上合同弁護士)、原田雅俊(元パナソニックホールディングス常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「写真事業」および「衣装製造卸売事業」を展開しています。

(1) 写真事業


スタジオ写真の撮影・制作・加工、ディスプレイ制作、印刷等を提供しており、主なお客様は記念撮影を行う家族やこどもです。

顧客から写真撮影料や商品販売料を受け取る収益モデルです。運営は主にスタジオアリスが行い、子会社のJVISが写真制作・加工等を担っています。

(2) 衣装製造卸売事業


写真事業向けの撮影用衣装や成人式用振袖の製造・販売およびメンテナンスを提供しており、写真事業部門や一般顧客が主な対象です。

自社グループ内への衣装供給やレンタルサービスからの料金を収益源としています。運営は主に子会社の京都豊匠および上海豊匠服飾有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績推移を見ると、売上高は386億円から329億円へと減少傾向にあります。経常利益も40億円から22億円へ減少しており、利益率も低下傾向にあります。少子化や競争激化による事業環境の変化が影響していると考えられます。

項目 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 386億円 364億円 356億円 329億円
経常利益 40億円 23億円 31億円 22億円
利益率(%) 10.4% 6.4% 8.6% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 9億円 11億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も減少しており、売上総利益率は23.4%から21.9%へと低下しています。これにともない営業利益も減少し、収益性がやや低下する結果となりました。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 356億円 329億円
売上総利益 83億円 72億円
売上総利益率(%) 23.4% 21.9%
営業利益 30億円 21億円
営業利益率(%) 8.5% 6.4%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が20億円(構成比40%)、給料手当が12億円(同23%)を占めています。売上原価の内訳としては、経費が118億円(同49%)、労務費が84億円(同35%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の写真事業は前期比で減収となりました。少子化の影響や競争激化に加え、店舗統廃合の推進などが背景にあると考えられます。衣装製造卸売事業についても、生産コストの低減に努めたものの減収となっています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
写真事業 354億円 328億円
衣装製造卸売事業 2億円 1億円
連結(合計) 356億円 329億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金を用いて、借入金の返済や設備投資などを手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 63億円 49億円
投資CF -25億円 -24億円
財務CF -27億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社員のヒューマンな生涯設計の達成とその基盤である企業の安定と発展を図り、視聴覚文化関連事業を通じて「暮らしの豊かさ」に貢献するという経営理念を掲げています。企業は地域社会や人類への貢献のためにあるとし、社員一人一人が誇りを持ち、社会から支持される会社となることを目指しています。

(2) 企業文化


経営の基本方針として「サッカー型経営の確立」を掲げています。これは、すべてのことは店で始まり店で終わるという現場主義に基づき、上司の指示を待つのではなく、社員一人一人が経営方針に従い、主体的な状況判断により業務を遂行し目標達成に向かうという独自の経営スタイルです。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、重視すべき経営指標として「連結総資本経常利益率(ROA)」を掲げて資本効率の向上に取り組んでいます。

* 連結総資本経常利益率(ROA):20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「今を革新し、未来へ」を方針とし、社会環境の変化を踏まえお客様視点で新たな価値を生み出す変革を進めます。成長基盤である成人振袖レンタル事業「ふりホ」や、今後の成長基盤となるスクールフォト事業へ経営資源を投入するほか、店舗統廃合の推進等による費用構造の適正化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自ら考え、自ら判断する」サッカー型経営の理解と共鳴により、従業員の主体的な技術習得や業務への取り組みを促し、モチベーションと生産性の向上を目指しています。また、多様な人材が活躍できるよう、女性や障がい者の就労機会の創出など、働きやすい環境とコミュニケーションを重視した職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 35.1歳 11.2年 4,451,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 86.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 37.6%
男女賃金差異(正規雇用) 69.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(90%以上)、障がい者の法定雇用率(2.6%)、有給休暇取得率(81.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 店内事故の発生


写真スタジオという事業の性質上、店舗内でお子様に事故や怪我などが発生した場合、同社の信用低下や事業運営に大きな影響を与える可能性があります。安全管理マニュアルの常備や毎日の確認等により事故防止に努めています。

(2) 売上高の季節変動


七五三の記念撮影が10月~11月に集中し、年間売上高の約4分の1を占めるため、この時期に営業が困難になる事態が発生すると業績に影響が及びます。対策として「早撮り七五三」やお宮参り・百日撮影などを推進し、営業の平準化を図っています。

(3) キャラクターのライセンス契約


写真撮影においてディズニーキャラクターを使用するため、ウォルト・ディズニー・ジャパンと包括契約を締結しています。万一、契約が更新されずキャラクターが使用できなくなった場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(4) 出生率の低下


同社の主要な顧客層である新生児の出生率が長期的に低下傾向にあるため、今後さらに出生率が低下した場合は、市場規模の縮小を通じて同社の事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。