スタジオアリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタジオアリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタジオアリスはスタンダード市場に上場する、こども専門写真館の最大手企業です。写真事業と衣装製造卸売事業を展開し、全国にチェーン店を持っています。直近の決算では、売上高は356億円で前期比減収となりましたが、経常利益は31億円で増益となり、利益率の改善が見られます。


※本記事は、株式会社スタジオアリス の有価証券報告書(第51期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スタジオアリスってどんな会社?


こども専門写真館「スタジオアリス」を全国展開し、記念写真撮影や衣装レンタルサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1974年に商業写真事業を行う日峰写真工芸として設立され、1992年にこども専門写真館の1号店を出店しました。2001年にはディズニーキャラクターの使用に関する包括契約を締結し、差別化を図っています。2002年に株式上場を果たし、2020年には成人式振袖レンタル事業「ふりホ」を開始するなど、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で1,347名、単体で1,011名です。筆頭株主は不動産の賃貸及び管理を行うトーランス・ジャパンで、第2位は写真関連分野で業務提携関係にある富士フイルムとなっています。

氏名 持株比率
トーランス・ジャパン 23.33%
富士フイルム 20.28%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は牧野俊介氏が務めています。社外取締役比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
牧野 俊介 代表取締役社長 1985年同社入社。商品本部長、営業本部長などを歴任し、2019年2月より現職。
宗岡 直彦 取締役副社長業務一部ゼネラルマネージャー 1979年イズミヤ入社。2001年同社入社後、管理本部長や人事部長を歴任。2021年5月より現職。


社外取締役は、百瀬裕規(元野村證券専務)、山元正人(富士フイルム取締役専務執行役員)、淵郁子(マムプロジェクト代表取締役社長)、増田明彦(元日本公認会計士協会常務理事)、雨宮沙耶花(弁護士)、原田雅俊(元パナソニック常務役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「写真事業」「衣装製造卸売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 写真事業

「スタジオアリス」等の店舗において、こどもや家族の記念写真撮影、着付け、ヘアセットなどのサービスを提供しています。主な顧客は七五三や宮参り、誕生日などの記念日を迎えるファミリー層です。また、成人式振袖レンタルと前撮りをセットにした「ふりホ」やスクールフォト事業も展開しています。

収益は、顧客からの撮影料、プリント代、アルバム代、衣装レンタル料などから得ています。運営は主に同社が行い、連結子会社のJVISが写真のプリント加工やアルバム製本などを担っています。

(2) 衣装製造卸売事業

写真館で使用する撮影用衣装や、成人式用の振袖などの製造および卸売を行っています。中国や京都府京丹後市の工場で生産を行い、品質維持とコストダウンを図っています。

収益は、同社写真事業への衣装販売によるグループ内取引が主ですが、グループ外への販売拡大も進めています。運営は連結子会社の京都豊匠およびその子会社である上海豊匠服飾有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で推移していましたが、直近では350億円台となり減少傾向にあります。一方、利益面では第50期に利益率が低下しましたが、第51期には経常利益が増加し、利益率は8.6%へと回復しました。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 364億円 407億円 386億円 364億円 356億円
経常利益 50億円 60億円 40億円 23億円 31億円
利益率(%) 13.7% 14.8% 10.4% 6.4% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 32億円 23億円 9億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価の低減により売上総利益は微増となり、売上総利益率は改善しました。営業利益は前期の23億円から30億円へと増加し、営業利益率は6.3%から8.5%へ上昇しています。コストコントロールによる収益性の向上が見られます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 364億円 356億円
売上総利益 83億円 83億円
売上総利益率(%) 22.9% 23.4%
営業利益 23億円 30億円
営業利益率(%) 6.3% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が22億円(構成比42%)、給料手当が11億円(同21%)を占めています。売上原価については、労務費や経費が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


写真事業は売上高が減少したものの、店舗統廃合や労働生産性の向上により利益は大幅に増加しました。衣装製造卸売事業は売上高が増加しましたが、利益は減少しています。写真事業が全社利益の大部分を稼ぎ出している構造です。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
写真事業 363億円 354億円 22億円 29億円 8.1%
衣装製造卸売事業 1億円 2億円 1億円 0.1億円 6.1%
連結(合計) 364億円 356億円 23億円 30億円 8.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

スタジオアリスは、写真事業を主軸に、堅調な営業活動により資金を生み出しています。写真スタジオの移転や改装、設備投資などには資金を使用していますが、前年度と比較すると投資額は減少しています。また、セール・アンド・リースバックによる収入がある一方、ファイナンス・リース債務の返済や配当金の支払いにより、財務活動では資金が使用されています。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加し、期末には潤沢な資金を確保しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 57億円 63億円
投資CF -36億円 -25億円
財務CF -16億円 -27億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、『社員のヒューマンな生涯設計の達成とその基盤である企業の安定と発展を図り、視聴覚文化関連事業を通じて「暮らしの豊かさ」に貢献する』という経営理念を掲げています。企業は社会貢献のために存在し、社員が誇りを持って働ける環境を作ることで、長期的な繁栄を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「サッカー型経営の確立」を基本方針としています。これは、監督(経営層)が戦略を決めた後は、選手(社員一人一人)が自ら状況判断を行い、主体的に業務を遂行するという考え方です。現場主義に基づき、すべての社員が経営方針に従いつつ自律的に動く組織風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、資本効率の向上を重視し、以下の経営指標を目標として掲げています。

* 連結総資本経常利益率:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


写真事業における「選択と集中」を進め、マタニティ・赤ちゃん撮影や七五三撮影の推進、単価向上による売上確保を目指しています。また、成長基盤である成人振袖レンタル事業「ふりホ」やスクールフォト事業へ経営資源を積極的に投入し、成長を加速させる方針です。これらに加え、店舗統廃合や人時生産性の向上による費用構造の適正化にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自ら考え、自ら判断する」サッカー型経営を浸透させるため、徹底した教育研修を行い、専門知識と主体性を備えたプロフェッショナルな人材の育成を目指しています。また、WEB自己申告書制度を通じて従業員のやりがいや満足度を測定し、適材適所の配置や職場環境の改善につなげるなど、人的資本への投資を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 34.3歳 10.7年 4,292,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 87.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 42.1%
男女賃金差異(正規雇用) 70.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、仕事のやりがい(90%)、仕事の満足度(82%)、障害者雇用率(2.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 店内事故について

大切な子供の撮影を行う店舗において、万が一事故や怪我が発生した場合、事業運営に多大な影響を及ぼす可能性があります。このため、安全管理マニュアルの常備や毎日の朝礼での確認などを通じ、事故防止に努めています。

(2) 売上高の季節変動

七五三撮影が行われる10月から11月に年間売上の約4分の1が集中しており、この時期に営業困難な状況が発生すると業績に大きな影響が出ます。リスク緩和のため、誕生日撮影や早期の七五三撮影キャンペーンなどを推進し、平準化を図っています。

(3) 少子化と七五三慣習の変化

少子化の進行に加え、社会の価値観の変化により七五三の慣習が希薄化する可能性があります。これに対処するため、成人式振袖レンタル事業「ふりホ」や、お宮参り・百日記念などの赤ちゃん撮影を強化し、収益機会の拡大に取り組んでいます。

(4) ウォルト・ディズニー・ジャパンとの契約

ディズニーキャラクターを使用するためにウォルト・ディズニー・ジャパンと包括契約を締結しています。何らかの理由で契約が更新されずキャラクターが使用できなくなった場合、他社との差別化が困難になり、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。