カルラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カルラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するカルラは、和風ファミリーレストラン「まるまつ」をはじめとした飲食店舗を東北および北関東地区で広く展開しています。直近の業績では、売上高が75億円と堅調な増収を記録した一方で、原材料費や人件費の高騰といった影響を受けて経常利益は3億円の減益となりました。


※本記事は、株式会社カルラの有価証券報告書(第54期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カルラってどんな会社?


同社は、和風ファミリーレストラン「まるまつ」を中心に東北・北関東で飲食店を展開する企業です。

(1) 会社概要


カルラは1910年に丸松そば店として創業し、1982年に和風ファミリーレストラン「まるまつ」の1号店を開店しました。その後、東北地方を中心に多店舗展開を積極的に進め、2004年にはジャスダック証券取引所に株式を上場しました。2022年には東京証券取引所の市場再編に伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社グループは連結で250名、単体でも250名の従業員を擁しています。筆頭株主は代表取締役社長の井上純子氏が代表を務める資産管理会社のアセットシステムであり、第2位株主は井上純子氏本人、第3位にはカルラ従業員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
アセットシステム 36.97%
井上純子 6.24%
カルラ従業員持株会 3.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は井上純子氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
井上純子 代表取締役社長 2013年アセットシステム代表取締役社長就任。2022年同社取締役、2023年代表取締役副社長を経て、2026年より現職。
菊池公利 常務取締役 1978年同社入社。2007年執行役員供給本部長、2016年取締役などを経て、2024年常務取締役商品本部長。2026年より現職。
三浦祐介 常務取締役 2004年同社入社。2019年第1営業部長、2022年執行役員、2024年取締役第1営業本部長を経て、2026年より現職。
櫻井昌彦 取締役 2000年同社入社。2015年寿松庵本町店支配人、2022年執行役員、2024年取締役第2営業本部長を経て、2026年より現職。
伊藤真市 取締役 2004年同社入社。2007年執行役員総務部長、2017年専務取締役管理本部長などを歴任し、退任後の2026年より現職。
井上奈奈美 取締役 2021年同社に入社し、営業部に配属。2026年に取締役に就任し、現在に至る。


社外取締役は、花舘達(花舘公認会計士事務所代表)、齋藤信一(齋藤経営取締役会長)、大友史祥(海祥代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、レストラン事業を中心とした単一セグメントで事業を展開しています。

(1) レストラン事業


同社グループは、すしや天ぷら、そば等を提供する和風ファミリーレストラン「まるまつ」を中心とした店舗展開を行っています。その他にも、かに料理の「かに政宗」、とんかつ店の「かつグルメ」、日本そばの「丸松」、和食の「寿松庵」、低価格の丼や定食を提供する「らら亭」などの飲食店を運営し、幅広い世代の顧客に食事を提供しています。

顧客から飲食代金を受け取ることで収益を得るモデルです。和食を中心としたメニュー構成で、家庭での日常食を基本とする価値ある価格での食事提供を実現しています。これらの店舗運営は主にカルラが行っており、宮城県を中心とした東北地方および北関東地区へのドミナント展開を推進しています。

(2) 食材生産・製造事業


店舗での作業削減や品質の標準化を図るため、そばつゆ等のスープ類や野菜類、魚介類などの製造加工を自社工場で行っています。また、農業生産法人を通じた農産物の生産にも取り組んでおり、ビニールハウス内の水耕栽培によるレタスや水菜などを生産してグループの店舗へ供給しています。

自社工場で厳選された素材を加工し、自家製豆腐などのヘルシーで高品質な食材を店舗に提供することで、原価の安定と提供価値の向上に貢献しています。食材の製造加工と物流はカルラが担い、農産物の生産事業については子会社の亘理ファームが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は継続的な増収トレンドを描いており、着実な事業規模の拡大がうかがえます。一方で経常利益は黒字転換後に安定して推移していましたが、直近ではコスト上昇の影響などから減少に転じており、利益率も微減となっています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 52.0億円 60.4億円 68.4億円 72.6億円 75.4億円
経常利益 -1.0億円 0.1億円 3.4億円 3.6億円 3.0億円
利益率(%) -1.9% 0.2% 5.0% 5.0% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.6億円 0.0億円 4.2億円 3.4億円 2.3億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上総利益率は前年からやや低下しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も減少しており、売上成長に対して利益の確保が追いついていない状況が見て取れます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 72.6億円 75.4億円
売上総利益 51.1億円 52.3億円
売上総利益率(%) 70.3% 69.3%
営業利益 3.7億円 3.1億円
営業利益率(%) 5.0% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が23.4億円(構成比48%)、賃借料が6.5億円(同13%)、水道光熱費が5.1億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はレストラン事業の単一セグメントで事業を展開しており、主力の和風ファミリーレストランなどが堅調に推移した結果、グループ全体の売上高は増加しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
レストラン事業 72.6億円 75.4億円
連結(合計) 72.6億円 75.4億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出しながら借入等によって積極投資を行う「積極型」のパターンを示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.3%で市場平均を下回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 3.8億円 4.4億円
投資CF -0.6億円 -3.5億円
財務CF -8.7億円 1.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「飲食とは、人間の生命を支え、明日への喜びを作り出す最も基本的なことである」との考えのもと、「生産から販売までの一貫体制」で事業を実現することを使命としています。人々に安全で安心な、健康的で美味しい食事をより価値ある価格で提供し続けることで、豊かな生活の実現と社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「顧客満足の充足」「働く人の生活向上」「マス・マーチャンダイジングの構築」をモットーに掲げています。顧客第一主義を貫き、清潔感のある店舗でスピーディーかつ安価に食事を提供する文化があります。また、企業の成長には優秀な人材の確保と能力向上が不可欠であると考え、働く人の生活向上を重視する価値観が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中長期的には「店舗数1,000店舗の全国展開」を目指して事業を推進しています。また、サステナビリティに関する明確な指標も設定しており、以下のような具体的な数値目標を掲げて経営に取り組んでいます。

* 店舗数1,000店舗
* 食品ロスの割合0.2%以下
* 2028年3月末までに女性管理職比率20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存店の収益力向上として、産地直送食材を活用した商品設計や外部ブランドとのコラボメニューの開発を推進しています。また、モバイルオーダーの全店導入などのDX戦略により、対面接客の価値を高める店舗体制を構築します。出店戦略においては、老朽化店舗のリニューアルとともにロードサイド需要に対応した新規出店を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が活躍できる職場環境の整備を経営の最重要課題の一つと位置づけ、処遇改善と柔軟なワークスタイルの確立に向けた投資を継続しています。人手不足への対応として、店舗作業の標準化やDX活用を通じた労働時間の削減を推進するほか、積極的な女性の採用・役職登用や、ライフイベントに対応する両立支援制度の拡充に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 45.5歳 13.0年 4,211,587円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 70.8%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 101.6%


※男性育児休業取得率については、公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合店および中食事業者との競争激化


主力業態である「まるまつ」はロードサイドに出店しており、他の外食業者に加えてコンビニや宅配、中食事業者とも競合しています。競争激化により相対的な競争力が低下した場合、調達コストの上昇などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 物価・人件費高騰による出店計画への影響


建築資材や人件費の高騰を踏まえた採算重視の基準で出店地を選定しています。条件に合致する物件がなく計画通りに出店できない場合や、既存店舗の立地環境が変化した際には、成長計画や業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 金利変動による資金調達コストの上昇


店舗用地や工場の取得資金を金融機関からの借入で調達しており、負債割合が高くなる傾向にあります。今後は固定金利を活用する方針ですが、金利動向や融資姿勢の変化によって新たな借入コストが増加し、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 物流および生産機能の集中リスク


食品の製造加工を行う工場と全店舗へ配送する物流センターが宮城県に集中しています。当該地域で地震や火災などの不測の事態が発生した場合、物流および生産機能の低下により、グループ全体の事業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。