※本記事は、株式会社南都銀行の有価証券報告書(第138期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 南都銀行ってどんな会社?
奈良県を地盤に預金や貸出などの銀行業務を中心とし、総合的な金融サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1934年、六十八銀行、吉野銀行、八木銀行、御所銀行が合併し設立されました。1974年に大阪証券取引所第二部に上場し、1987年には東京証券取引所第一部へ上場しました。その後、クレジットカード業務や証券業務などの関連会社を設立し、2017年には信託業務の取扱を開始するなど、総合金融サービスを拡充しています。
現在の従業員数は連結で2,352名、単体で2,169名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっており、第3位には事業会社の日本生命保険が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.74% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.20% |
| 日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) | 3.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役頭取は石田諭氏です。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋本隆史 | 取締役会長(代表取締役) | 1977年南都銀行入行。人事部長、営業統括部長、大阪地区本部長等を経て、2015年より取締役頭取。2025年4月より現職。 |
| 石田諭 | 取締役頭取(代表取締役) | 1997年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。金融庁の各種室長や経営共創基盤ディレクター等を経て、2025年4月より現職。 |
| 杉浦剛 | 取締役専務執行役員(代表取締役) | 1986年南都銀行入行。桜井支店長や東京支店長、営業推進本部長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 本多浩治 | 取締役常務執行役員 | 1987年南都銀行入行。大阪中央営業部長や各ブロック本部長を歴任。2025年4月より営業推進本部長として現職。 |
| 角谷晴行 | 取締役常務執行役員 | 1988年南都銀行入行。桜井支店長や人事総務部長等を歴任し、2024年6月より現職。 |
| 藏東義典 | 取締役常務執行役員 | 1990年南都銀行入行。大阪中央営業部長や経営企画部長、営業サポート部長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 岡本耕誌 | 取締役監査等委員(常勤) | 1987年南都銀行入行。審査部長兼事業活性化支援室部内室長等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中山こずゑ(多摩大学大学院客員教授)、西村隆至(近鉄・都ホテルズ取締役会長)、田原祐子(ベーシック代表取締役)、粕谷吉彦(チノー監査役)、福本智之(三井ハイテック取締役監査等委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業務」および「リース業務」の報告セグメントと、「その他」事業を展開しています。
■銀行業務
奈良県を中心とする地域において、個人や法人の顧客向けに預金、貸出、国内為替、外国為替などの銀行本来の業務を提供しています。また、投資信託や保険商品の窓口販売、確定拠出年金業務、信託業務なども行い、顧客の多様な金融ニーズに応えています。
主な収益源は、貸出金に伴う資金運用収益や、各種サービス提供に対する役務取引等収益(手数料)です。運営は南都銀行が主体となって行っており、地域経済の活性化に向けた資金供給や金融サービスの提供を担っています。
■リース業務
奈良県および大阪府を中心に、法人顧客向けのリース業務を展開しています。銀行業務との連携によりグループの総合力を活かし、設備投資や情報化投資など、顧客の様々な事業ニーズに対応したリースソリューションを提供しています。
顧客からのリース料が主な収益源となります。運営は南都リースが行っており、地域企業への設備導入支援を通じて、取引基盤の拡大と収益の増強に努めています。
■その他
信用保証業務、ソフトウエア開発等業務、クレジットカード業務、コンサルティング業務、証券業務などを展開しています。人材紹介などの非金融サービスも提供し、顧客の幅広い課題解決を支援しています。
各業務に応じた手数料や保証料、売上高が収益源です。運営は南都信用保証、南都コンピュータサービス、南都ディーシーカード、南都カードサービス、南都コンサルティング、南都まほろば証券などがそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、経常収益は安定的な成長を続けており、特に直近2年間は貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により大きく伸長しています。経常利益は2023年3月期に一時落ち込みましたが、その後は回復傾向にあり、2026年3月期には最高益水準に達するなど、力強い利益成長を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 775億円 | 777億円 | 857億円 | 1031億円 | 1157億円 |
| 経常利益 | 180億円 | 63億円 | 166億円 | 197億円 | 248億円 |
| 経常利益率(%) | 23.2% | 8.1% | 19.4% | 19.1% | 21.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 119億円 | 47億円 | 120億円 | 135億円 | 171億円 |
■(2) セグメント収益
主力の銀行業務は、貸出金残高の増加に伴う貸出金利息の拡大などを背景に経常収益が順調に伸びています。リース業務も有力なマーケットでの営業活動が奏功し増収となりました。また、その他事業においても証券業務の売上高が増加するなど、グループ全体の総合力を活かした事業展開により各セグメントで堅調な推移を見せています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業務 | 884億円 | 999億円 |
| リース業務 | 113億円 | 119億円 |
| その他 | 33億円 | 37億円 |
| 連結(合計) | 1031億円 | 1157億円 |
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.5%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「健全かつ効率的な経営に努めます」「優れた総合金融サービスを提供します」「地域の発展に尽くします」「信頼され親しまれる、魅力的な銀行を目指します」という4つの経営理念を掲げています。また、「活力創造銀行」を経営ビジョンとし、地域と顧客の成長・発展に貢献することで、新たな価値を生み出し選ばれる銀行グループを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、サステナビリティへの取り組みを経営戦略の根幹に組み込み、「地域とともに発展するサステナブル経営」の実現を重視しています。経営理念の底流をサステナビリティと位置づけ、環境問題や社会課題の解決を通じて持続可能な地域社会に貢献するとともに、自ら考え行動する多様な人材が活躍できる企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2020年度から10年間の経営計画「なんとミッションと10年後に目指すゴール」を推進し、奈良県のGDPを2016年度比で10%増加させることを目指しています。また、2027年度までの中期目標として以下の数値を設定しています。
* ROE(連結)8.5%以上
* 自己資本比率(連結)ターゲットレンジ11%〜12%
* 当期純利益(連結)300億円以上
* OHR(連結)55%未満
■(4) 成長戦略と重点施策
ポートフォリオの再構築による収益力の最大化を実現するため、「基盤」「投資」「人財」を中心としたアクションプランに取り組んでいます。顧客自身では解決できない業界やサプライチェーン単位の課題に主体的に関わり、新たな収益機会を創出します。あわせて、脱炭素化の支援やDXの推進を通じた非対面チャネルの充実など、社会の変化に対応したサービス拡充を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自ら考え行動し、地域の課題を解決する人財」の創出を基本方針としています。新卒採用に加え、専門性を有する人材のキャリア採用を積極的に行い、人材の多様化を推進しています。また、副業制度の導入や資格取得支援、外部出向の拡大など、従業員の自律的なキャリア形成を支援するとともに、健康経営にも注力し、働きがいのある職場環境の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.1歳 | 16.5年 | 7,215,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.4% |
| 男性育児休業取得率 | 95.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 43.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 58.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 63.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者数(180名)、キャリア採用者に占める管理職比率(18.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
国内外の景気動向や地価、株価、為替の変動により、貸出先の経営状況が悪化した場合、不良債権および与信関連費用が増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、不動産価格等の下落により、担保権を設定した不動産や有価証券の換金が困難になるリスクも存在します。
■(2) 市場リスク
預金や貸出金、有価証券などの資産・負債を保有しているため、金利、有価証券価格、為替相場の変動により、資産価値が下落するリスクがあります。予期せぬ相場変動によって評価損や売却損が発生し、財務状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 流動性リスク
運用と調達の期間ミスマッチや予期せぬ資金流出により、必要な資金の確保が困難になるリスクや、通常より高い金利での資金調達を余儀なくされるリスクがあります。また、市場の混乱により有価証券の取引が不利な価格となる可能性もあります。
■(4) サイバーセキュリティおよびシステムリスク
コンピュータシステムのダウンや誤作動、不正侵入、サイバー攻撃による顧客情報の漏洩などが発生した場合、社会的な信用を失墜し、事業運営に深刻な影響を与えるリスクがあります。これに備え、バックアップ体制やセキュリティ対策の強化を進めています。



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