フジ住宅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジ住宅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジ住宅は東京証券取引所プライム市場に上場し、大阪府を地盤として分譲住宅や中古住宅販売、土地有効活用、賃貸・管理などを展開する地域密着型の不動産会社です。直近の業績では、賃貸及び管理事業などが牽引し、全セグメントで増収を達成、売上高および経常利益の増加を実現して安定した収益基盤を維持しています。


※本記事は、フジ住宅の有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジ住宅ってどんな会社?


大阪府を中心に、分譲住宅の販売から賃貸管理まで幅広い不動産事業を展開する地域密着型企業です。

(1) 会社概要


1974年に不動産販売業を目的として設立され、1986年に分譲マンション販売、1987年に不動産賃貸事業、1991年に土地有効活用事業を開始し事業領域を拡大してきました。1990年に上場を果たし、2020年には建設業を手掛ける雄健建設などを子会社化してグループの事業基盤をさらに強化しています。

現在の従業員数は連結で931名、単体で761名です。筆頭株主は創業者関連の一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会で、第2位にはフジ住宅取引先持株会、第3位にも創業者関連の一般社団法人が名を連ねています。

氏名 持株比率
一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会 16.78%
フジ住宅取引先持株会 8.98%
一般社団法人今井光郎幼児教育会 7.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長 社長執行役員は宮脇宣綱氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮脇 宣綱 代表取締役社長 社長執行役員 1989年同社入社。アメニティサービス部長や土地有効活用事業部各営業部長を歴任。2002年取締役、2008年専務取締役を経て2009年より代表取締役社長に就任。
今井 光郎 代表取締役会長 人財開発室担当 1973年フジ住宅を個人創業。1974年同社設立、代表取締役社長に就任。関連会社の設立等を経て事業を拡大し、2009年より代表取締役会長に就任。
山田 光次郎 取締役専務執行役員 大阪支社支社長 事業企画本部長 1987年大倉建設入社、1991年同社入社。マンション事業部長等を経て2006年取締役。常務を経て2013年専務取締役、2024年より現職。
松山 陽一 取締役専務執行役員 土地有効活用事業部長 1988年同社入社。土地有効活用事業部営業部長を経て2008年執行役員。2010年取締役、2019年専務取締役を経て、2024年より現職。
石本 賢一 取締役常務執行役員 経営企画担当 システム担当 1976年プロクター・アンド・ギャンブル・サンホーム入社。1987年同社入社。経理部長等を経て1993年取締役。財務部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、岩井伸太郎氏(岩井伸太郎公認会計士・税理士事務所開業)、中村慶子氏(税理士法人木戸&パートナーズ代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「分譲住宅事業」「住宅流通事業」「土地有効活用事業」「賃貸及び管理事業」「建設関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 分譲住宅事業


自由設計の新築戸建住宅、分譲マンションおよび土地の販売を行っています。独自の換気システム「炭の家」や耐震性に優れた住まいを提供し、都市生活向けのマンション供給など幅広い顧客ニーズに対応しています。

顧客への住宅・土地販売代金が主な収益源です。運営は同社が行っています。

(2) 住宅流通事業


中古住宅の販売および不動産の仲介を行っています。中古住宅を仕入れてリフォーム後に再販する買取再販事業と、賃貸入居者付きの中古住宅を取得し退去後に再販する中古住宅アセット事業を展開しています。

顧客への物件販売代金や仲介手数料が主な収益源です。在庫回転率を意識した効率的な販売により収益を確保しており、運営は同社が行っています。

(3) 土地有効活用事業


遊休地等の有効利用を図るため、賃貸マンション・アパート、サービス付き高齢者向け住宅等を建築する提案受注による請負工事や、個人投資家向け一棟売賃貸アパートの販売を行っています。

顧客からの建築請負代金や個人投資家からの物件販売代金が主な収益源です。運営は同社が行っています。

(4) 賃貸及び管理事業


不動産の建築請負・販売に付随した一括借上による賃貸事業や、自社保有のサービス付き高齢者向け住宅の運営、中古住宅アセットの賃貸事業、分譲マンションの管理事業を行っています。

入居者やオーナーからの賃貸料収入、管理手数料、高齢者向け住宅事業収入が主な収益源です。運営は同社およびフジ・アメニティサービスが行っています。

(5) 建設関連事業


大阪府下および周辺地域を営業地盤として、民間工事や公共工事などの建築請負工事およびその関連工事、リフォームや解体工事などを行っています。

顧客からの建築工事請負代金が主な収益源です。運営は雄健建設が行っています。

(6) その他事業


上記の報告セグメントに含まれない事業として、保険代理店事業を行っています。

保険契約の締結に伴う代理店手数料が主な収益源です。運営は同社およびフジ・アメニティサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時的な減少を挟みつつも直近数年間で順調に拡大しており、安定した成長基調にあります。経常利益および当期利益についても着実な増加傾向を示しており、収益力の向上が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1189億円 1147億円 1204億円 1239億円 1383億円
経常利益 56億円 57億円 66億円 70億円 70億円
利益率(%) 4.7% 5.0% 5.5% 5.6% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 38億円 46億円 48億円 48億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。利益率に関してはやや低下傾向が見られるものの、全体として安定した収益構造を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1239億円 1383億円
売上総利益 196億円 210億円
売上総利益率(%) 15.8% 15.2%
営業利益 79億円 83億円
営業利益率(%) 6.4% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が34億円(構成比27%)、販売手数料が18億円(同14%)、広告宣伝費が11億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


住宅流通事業が中古住宅の需要に支えられ大幅な増収増益を達成しました。また、安定収益源である賃貸及び管理事業も順調に伸び、全体の業績を牽引しています。一方、分譲住宅事業は増収ながらも減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
分譲住宅 347億円 367億円 23億円 16億円 4.3%
住宅流通 267億円 351億円 9億円 12億円 3.5%
土地有効活用 301億円 310億円 28億円 31億円 10.0%
賃貸及び管理 310億円 339億円 39億円 45億円 13.1%
建設関連 13億円 14億円 0.9億円 0.1億円 0.7%
その他 2億円 2億円 1億円 2億円 73.6%
連結(合計) 1239億円 1383億円 79億円 83億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で生み出した資金と借入を活用して事業拡大に向けた積極的な投資を行っている「積極型(事業拡大に伴う資産増加)」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27億円 89億円
投資CF -163億円 -135億円
財務CF 114億円 42億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「幸せはこぶ住まいづくり」、「買っていただいたお客様に幸せになっていただくこと」を事業目的とし、「富士山のように日本一愛される会社」を目指しています。また、「社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する」という経営理念を掲げています。

(2) 企業文化


「我々はフジ住宅の社員である」から始まる5カ条の社訓を掲げています。社員と家族の幸せが顧客へのより良いサービスに繋がると考え、全社員が感謝や誇りを持てる環境づくりを重視しています。また、一時的な利益拡大よりも「長期的な安定経営によるつぶれない会社づくり」を重んじる文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


企業価値の向上と継続的な成長を図るため、自己資本当期純利益率(ROE)10%以上、自己資本比率25%以上を重要な経営指標として設定しています。また、中期経営計画において、2028年3月期の業績目標を掲げています。

* 連結売上高:1,319億円
* 連結営業利益:82億円
* 連結経常利益:62億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:41億円

(4) 成長戦略と重点施策


長期的な安定経営を目指し、不動産事業内の多角化と賃貸収入を生むストック型ビジネスの拡大により収益基盤の維持・強化を図ります。また、健康経営の推進による優秀な人財の確保・育成、DXによる業務効率化および生成AIの活用、環境に配慮した「炭の家」等の提供や植林活動を通じた気候変動対応を重点施策として推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人は財産である」という考えから「人材」ではなく「人財」と表現し、見識・胆識・洞察力に優れたリーダーの育成を掲げています。経営トップと社員の直接対話や360度評価制度による実力主義の登用を実施するほか、健康経営銘柄に選定されるなど、多様性を尊重し健康を維持できる就業環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 10.5年 6,092,415円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 29.4%
男女賃金差異(全労働者) 52.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 59.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 42.1%


※「女性管理職比率」は、規定により公表していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(100.0%)、特定保健指導等の受診率(74.8%)、定着率(93.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制や法改正への対応

不動産業界は宅地建物取引業法や建築基準法など多様な法的規制を受けます。同社はコンプライアンス監査等で体制を強化していますが、今後の法改正や新たな規制強化、許認可の取り消し等が発生した場合、事業活動が制限され業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 災害等の発生と気候変動リスク

大阪府など近畿地方を中心とした事業展開のため、南海トラフ地震等の大規模災害が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に伴う環境問題への法令強化や社会環境の変化による不動産需要の低下も、中長期的なリスク要因として認識されています。

(3) 有利子負債と金利上昇リスク

事業の用地取得や開発費用の調達を主に金融機関からの借入金で賄っており、総資産に対する有利子負債の比率が比較的高くなっています。将来的な市場金利の急激な上昇や、金融引き締めによる資金調達環境の悪化が生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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