フジ住宅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジ住宅 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はプライム市場に上場する、大阪府を地盤とした地域密着型の総合不動産会社です。分譲住宅、中古住宅、土地活用、賃貸管理など住まいに関する事業を多角的に展開しています。当連結会計年度の業績は、売上高が前期比2.3%減の減収となったものの、営業利益は47.3%増の大幅な増益を達成しました。


※本記事は、フジ住宅株式会社 の有価証券報告書(第49期、自 2021年4月1日 至 2022年3月31日、2022年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジ住宅ってどんな会社?


大阪府を中心に、新築・中古住宅の販売から土地活用、賃貸管理までを行う地域密着型の総合不動産企業です。

(1) 会社概要


1974年にフジ住宅として設立され、戸建住宅販売を開始しました。1990年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2005年には東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部銘柄となりました。2005年に賃貸管理を行うフジ・アメニティサービスを設立したほか、2020年には雄健建設および関西電設工業を子会社化し、建設関連事業を強化しています。

連結従業員数は818名、単体では694名です。筆頭株主は創業者の資産管理団体と推察される一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会で、第2位は日本マスタートラスト信託銀行です。第3位にも創業家関連の一般社団法人が名を連ねており、創業家関連の影響力が強い株主構成となっています。

氏名 持株比率
一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会 16.80%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.77%
一般社団法人今井光郎幼児教育会 7.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は宮脇宣綱氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
今井 光郎 代表取締役会長人財開発室担当 1973年1月フジ住宅を個人創業。1974年4月同社代表取締役社長。2009年6月より現職。
宮脇 宣綱 代表取締役社長 1989年6月同社入社。2005年3月常務取締役土地有効活用事業部長。2008年6月専務取締役を経て2009年6月より現職。
山田 光次郎 専務取締役大阪支社支社長事業企画本部長 1991年5月同社入社。2001年8月大阪支社支社長。2011年6月常務取締役を経て2013年10月より現職。
松山 陽一 専務取締役土地有効活用事業部長 1988年9月同社入社。2012年4月土地有効活用事業部長。2015年6月常務取締役を経て2019年3月より現職。
石本 賢一 取締役経営企画担当システム担当 1987年7月同社入社。2010年6月財務部長、IR室長。2014年6月経営企画部長を経て2020年11月より現職。


社外取締役は、岩井伸太郎(公認会計士・税理士)、中村慶子(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「分譲住宅事業」、「住宅流通事業」、「土地有効活用事業」、「賃貸及び管理事業」及び「建設関連事業」を展開しています。

(1) 分譲住宅事業


大阪府下及び周辺地域を営業地盤として、自由設計の新築戸建住宅や分譲マンションの販売、一戸建注文住宅の建築請負工事を行っています。主な顧客は住宅一次取得者層です。独自の換気システム「炭の家」や高耐震工法を採用した住宅を提供しています。

収益は、顧客への住宅・土地の販売代金や建築請負代金から得ています。事業の運営は主にフジ住宅が行っており、地域密着型の営業展開により顧客ニーズに対応しています。

(2) 住宅流通事業


大阪府下及び周辺地域において、中古住宅の販売および不動産の仲介を行っています。中古住宅を買い取り、リフォームを施した上で、独自のアフターサービス保証を付けて販売する再販事業が主体です。

収益は、リフォーム済み中古住宅の販売代金および不動産仲介手数料から得ています。運営はフジ住宅が行っており、在庫回転率を意識した効率的な販売活動を展開しています。

(3) 土地有効活用事業


土地所有者に対して、賃貸マンション・アパート、サ高住(サービス付き高齢者向け賃貸住宅)等の建築を提案し請け負うほか、個人投資家向けに一棟売賃貸アパートの販売を行っています。遊休土地の有効活用や資産継承対策としての需要に応えています。

収益は、土地オーナーからの建築請負代金や個人投資家からのアパート販売代金から得ています。運営はフジ住宅が行っており、紹介営業を中心とした事業展開を行っています。

(4) 賃貸及び管理事業


大阪府下及び周辺地域において、自社保有物件の賃貸や、建築請負したアパート等の一括借上による賃貸事業を展開しています。また、分譲マンションや賃貸住宅の管理業務も行っています。

収益は、入居者からの賃貸料収入や、不動産オーナーからの管理委託手数料から得ています。運営は連結子会社のフジ・アメニティサービスが行っており、土地有効活用事業と連携したストック型ビジネスとして安定収益を確保しています。

(5) 建設関連事業


大阪府下及び周辺地域において、建築請負工事およびその関連工事を行っています。民間工事や公共工事、建築物の給排水工事、外構工事、リフォーム、解体工事など多種多様な施工を手掛けています。

収益は、施主からの工事請負代金から得ています。運営は連結子会社の雄健建設および関西電設工業が行っており、グループ内でのシナジー効果も追求しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円から1,200億円前後で推移しています。当期は前期比で減収となりましたが、利益面では経常利益が大きく伸長し、利益率も改善傾向にあります。当期利益についても前期から大幅に増加しており、収益性が高まっていることが分かります。

項目 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
売上高 1,039億円 1,157億円 1,104億円 1,215億円 1,187億円
経常利益 61億円 64億円 46億円 36億円 56億円
利益率(%) 5.9% 5.6% 4.2% 2.9% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 37億円 36億円 20億円 11億円 26億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少していますが、売上総利益および営業利益は増加しています。特に営業利益率は3.3%から4.9%へと大きく改善しました。これは、利益率の高い事業への注力やコストコントロールが進んだ結果と考えられます。

項目 2021年3月期 2022年3月期
売上高 1,215億円 1,187億円
売上総利益 159億円 167億円
売上総利益率(%) 13.0% 14.1%
営業利益 40億円 59億円
営業利益率(%) 3.3% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が29億円(構成比26.5%)、販売手数料が15億円(同13.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


分譲住宅事業は増収となり、主力事業として堅調です。一方、住宅流通事業は在庫調整等の影響で減収となりましたが、利益面では収益性の改善が見られます。建設関連事業は規模は小さいものの売上を伸ばしています。全体として事業ポートフォリオのバランスを取りながら経営されていることが分かります。

区分 売上(2021年3月期) 売上(2022年3月期)
分譲住宅 402億円 454億円
住宅流通 328億円 239億円
土地有効活用 244億円 238億円
賃貸及び管理 217億円 238億円
建設関連 24億円 18億円
連結(合計) 1,215億円 1,187億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金の範囲内で投資を行い、借入金の返済も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期
営業CF 280億円 63億円
投資CF -51億円 -63億円
財務CF -173億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「幸せはこぶ住まいづくり」「買っていただいたお客様に幸せになっていただくこと」を事業目的とし、「富士山のように日本一愛される会社」を目指しています。経営理念として「社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する」を掲げています。

(2) 企業文化


「人材」ではなく「人財」と表現し、人は財産であるという考えを持っています。社訓として「熱意と誠意をもって仕事に接しよう」「自己の仕事の責任と重要性を認識しよう」「感謝と奉仕の精神をもって仕事をしよう」等を掲げ、全社員が感謝の気持ちや誇りを持って働くことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)において、最終年度である2025年3月期の数値目標を設定しています。また、継続的な経営指標としてROE10%以上、自己資本比率25%以上を目標としています。

* 連結売上高:1,218億円
* 連結営業利益:70億円
* 連結経常利益:66億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:44億円

(4) 成長戦略と重点施策


地域密着型経営を深耕しつつ、大阪市内や北摂・兵庫エリアへの地域拡大を図ります。また、安定収益確保のため、土地有効活用事業や賃貸管理事業などのストック型ビジネスの比率を高め、景気変動に強い経営体質を構築します。さらに、DX推進による業務効率化や顧客対応の迅速化を進め、企業価値の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


長期的な安定経営には優秀な「人財」が不可欠と考え、経営理念や価値観に共感する人材の採用と育成に注力しています。360度評価による公平な人事評価や資格取得支援を行い、年齢・性別に関わらず実力に応じた登用を行っています。また、健康経営を推進し、社員が長く安心して働ける環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2022年3月期 40.9歳 9.6年 5,560,713円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制について


不動産業界は宅地建物取引業法や建築基準法など多くの法的規制を受けています。法令遵守体制を強化していますが、将来的な法改正や規制強化、あるいは万が一の法令違反による免許・許可の取り消し等が発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 棚卸不動産の評価について


事業用地の仕入れから販売完了まで期間を要するため、その間の市況悪化や工事の遅延等により、当初計画通りの販売が進まない可能性があります。期末ごとの評価において、正味売却価額が簿価を下回った場合には評価損を計上する必要があり、業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 有利子負債について


分譲住宅事業等のプロジェクト推進資金として金融機関からの借入を行っており、有利子負債残高は比較的高い水準にあります。金利上昇や金融引き締めにより資金調達環境が悪化した場合、金利負担の増加や資金繰りへの影響が生じ、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 災害等によるリスクについて


大阪府全域および周辺地域を主たる営業地盤としているため、南海トラフ地震等の大規模災害が発生した場合、保有資産の毀損や事業活動の停止により、業績及び財政状態に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の流行による経済活動の停滞もリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。