東和フードサービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東和フードサービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東和フードサービスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、高級喫茶「椿屋珈琲」やパスタ店等の飲食事業を首都圏で直営展開する企業です。直近の業績は、個人消費の持ち直しやインバウンド需要等を背景に、売上高128億円、当期純利益7.2億円と増収増益を達成しています。


※本記事は、東和フードサービス株式会社 の有価証券報告書(第26期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東和フードサービスってどんな会社?


同社は「椿屋珈琲」などの喫茶業態やパスタ・ケーキ等のレストラン業態を首都圏で展開するフードサービス企業です。

(1) 会社概要


同社は、パチンコ店等を運営する東和産業のフードサービス部門を前身とし、1999年に営業譲受により事業を開始しました。2004年にはジャスダック証券取引所へ株式を上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2024年には本社ビル内に研修センターを設立するなど、人材育成環境の整備も進めています。

現在、同社は単体で204名の従業員を抱える組織体制です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は創業者の岸野秀英氏であり、第2位は個人株主、第3位は資産管理会社と見られる株式会社誠香となっています。安定的な株主構成のもと、地域密着型の店舗運営を行っています。

氏名 持株比率
岸野 秀英 19.58%
柏野 雄二 18.34%
誠香 10.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは岸野誠人氏が務めています。なお、社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
岸野 誠人 代表取締役社長CEO 東和産業社長、誠香インベストメント社長などを歴任。2016年に同社取締役となり、2019年より現職。
菅野 政彦 代表取締役副社長 1985年東和産業入社。同社人事担当部長、営業本部長、成果推進本部長などを経て2020年より現職。
長谷川 研二 取締役 1998年東和産業入社。同社総務人事グループ部長、管理本部長などを歴任し2020年より現職。
上村 達也 取締役 1997年東和産業入社。椿屋珈琲各店長、チーフスーパーバイザー、執行役員を経て2024年より現職。
根本 勇也 取締役(常勤監査等委員) 1999年東和産業入社。各店長、監査室チームリーダーを経て2022年より現職。


社外取締役は、二宮類四郎(元あおぞら証券営業・企画共同本部長)、輿石正博(元合同酒精監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「椿屋珈琲」「ダッキーダック」「イタリアンダイニング ドナ」「こてがえし・ぱすたかん」「プロント」「その他」事業を展開しています。

椿屋珈琲


高級感のある内装と「大正ロマン」をテーマにした制服や内装が特徴の喫茶業態です。自社焙煎のスペシャルティ珈琲や手作りケーキ、カレーなどを提供し、脱日常的な空間を演出しています。都内の好立地を中心に出店しており、高単価でゆったりとした時間を提供することを強みとしています。

収益は、来店客からの飲食代金および物販収入によって構成されています。すべての店舗は同社による直営で運営されており、高いサービス品質の維持に努めています。また、ショッピングセンター内店舗ではファミリー層に対応したメニューも展開しています。

ダッキーダック


幅広い年代の女性をターゲットとしたホームメイドケーキとパスタのレストランです。自社ケーキ工房や店内のケーキスタジオで作られるフレッシュなケーキと、トレンドを押さえた食事メニューを提供しています。

収益は、顧客からの飲食代金およびテイクアウト販売による収入です。運営は同社が行っており、季節ごとの限定スイーツや食事メニューの開発に注力しています。

イタリアンダイニング ドナ


自社製の生パスタとピッツァ、ワインなどを提供するカジュアルなイタリアンダイニングです。リーズナブルな価格設定で、一人客からグループ客まで幅広い利用動機に対応しています。

収益は、顧客からの飲食代金です。運営は同社が行っており、自社工場(戸塚カミサリー)で製造された生麺やソースを使用することで、高品質かつ効率的な店舗運営を実現しています。

こてがえし・ぱすたかん


もんじゃ焼きやお好み焼きを中心とした鉄板焼き業態です。厳選された旬の食材を使用し、ファミリー層やハレの日の利用に対応しています。

収益は、顧客からの飲食代金です。運営は同社が行っており、近年はインバウンド需要や若年層の取り込みも進めています。

プロント


「プロント」のフランチャイジーとして運営しているカフェ&バー業態です。昼はカフェ、夜はバーとして営業し、時間帯に応じたニーズに対応しています。

収益は、顧客からの飲食代金です。運営は同社が行っており、フランチャイズ本部との連携のもと店舗運営を行っています。

その他(生産部門・EC等)


上記の飲食店舗運営に加え、パスタソース、ドレッシング、珈琲豆、ケーキ、焼き菓子などの自社製品を製造・販売する事業です。

収益は、ECサイトでの販売、百貨店や駅ナカでの催事販売、およびOEM供給による売上です。運営は同社が行っており、自社工場(深川センター、戸塚カミサリー等)を活用して製造しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響からの回復基調にあり、第22期の70億円から第26期には128億円へと順調に拡大しています。利益面でも、第22期は赤字でしたが、第23期以降は黒字化し、経常利益は10億円を超える水準で安定しています。利益率も8~10%台を維持しており、収益性の高い事業運営が行われています。

項目 2021年4月期 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期
売上高 70億円 82億円 108億円 124億円 128億円
経常利益 -2.5億円 12.3億円 6.6億円 10.5億円 11.0億円
利益率(%) -3.5% 14.9% 6.1% 8.5% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.6億円 7.0億円 4.3億円 7.0億円 7.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益および営業利益も増加しています。売上総利益率は73%台と高い水準を維持しており、営業利益率も8%台を確保しています。原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、増収効果やコストコントロールにより利益成長を継続しています。

項目 2024年4月期 2025年4月期
売上高 124億円 128億円
売上総利益 90億円 94億円
売上総利益率(%) 72.8% 73.1%
営業利益 10億円 11億円
営業利益率(%) 8.1% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が32億円(構成比38%)、支払家賃が16億円(同20%)を占めています。労働集約的な飲食事業であり、かつ好立地への出店戦略をとっているため、人件費と地代家賃が主なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


部門別の売上高を見ると、主力の「椿屋珈琲」が好調で増収を牽引しています。「イタリアンダイニング ドナ」や「ダッキーダック」も堅調に推移しています。一方で、「ぱすたかん・こてがえし」や「プロント」などは店舗数の増減等の影響もあり、売上が減少または横ばい傾向にあります。

区分 売上(2024年4月期) 売上(2025年4月期)
椿屋珈琲 54億円 57億円
ダッキーダック 24億円 25億円
イタリアンダイニング ドナ 21億円 22億円
ぱすたかん・こてがえし 14億円 14億円
プロント 6億円 5億円
その他(生産・EC等) 5億円 5億円
連結(合計) 124億円 128億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東和フードサービスは、味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供することを目指しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額が増加した影響を受けました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入が減少したことで使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出が減少したことで使用額が減少しました。

項目 2024年4月期 2025年4月期
営業CF 13.2億円 9.4億円
投資CF -4.0億円 -7.4億円
財務CF -7.2億円 -1.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念を掲げています。この理念のもと、都市部での生活において、安全で質の高い食事とホスピタリティあふれるサービスを提供し、顧客に豊かな時間と空間を届けることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「あったら楽しい」「手の届く贅沢」を営業コンセプトとし、「東京圏ベストロケーション」「女性ターゲット」「ライトフード・自社生産」という戦略的方針を重視しています。すべて直営店で展開することで高いブランドコントロールとサービス品質を維持し、脱日常的な時間と空間を提供することを価値観としています。

(3) 経営計画・目標


同社は具体的な数値目標として、メニューエンジニアリングの高度化による客単価の向上などを掲げており、実績として平均客単価の前年比103.8%達成などを報告しています。また、従業員の働き方改革に関連して、有給休暇取得率85%などの具体的な指標を掲げ、労働環境の改善と生産性の向上を両立させる経営を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、食材価格高騰や労働力不足といった課題に対し、構造的な対応を進めています。具体的には、基幹システムの刷新による原価管理の精度向上、高付加価値商品の開発による客単価アップ、人事システムのリプレースによる人材育成と配置の最適化などです。また、椿屋珈琲ブランドにおける体験価値の強化や、直営店の生産性向上にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は労働力不足への構造的対応として、研修センターを活用したスキル評価の一元管理や、適切な人員配置・育成を推進しています。また、独自の「キャストランクアップ制度」を導入し、アルバイトスタッフの育成と定着を図るとともに、エリア内での応援勤務体制を強化することで、柔軟な組織運営を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年4月期 39.0歳 12.0年 4,972,056円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.8%
男女賃金差異(正規) 83.5%
男女賃金差異(非正規) 91.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャスト3ヶ月定着率(79.9%)、正社員年間休日(118.2日)、月間平均時間外勤務(16.9時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食材の調達と安全性に係るリスク


同社は信頼性の高い仕入先から食材を調達していますが、疫病や天候不順、自然災害等により調達不安や価格高騰が発生した場合、メニュー変更を余儀なくされる可能性があります。また、異物混入や食中毒等の品質問題が発生した場合、回収費用や損害賠償、信用の低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) セントラルキッチンおよび店舗での衛生管理


同社はセントラルキッチンで生麺やケーキ等を製造し店舗へ配送していますが、万一店舗や工場で食中毒が発生した場合、営業停止処分などにより業績に重大な影響を与える可能性があります。ISO22000認証取得などで管理を徹底していますが、リスクを完全に排除できるものではありません。

(3) 店舗の賃借物件への依存


同社の店舗の大部分は賃借物件であり、特に定期建物賃貸借契約の場合、契約期間満了後に再契約ができず退店となる可能性があります。また、賃貸人の破綻等により継続使用が困難になった場合や、賃料等の固定費負担が経営を圧迫する場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。