和田興産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

和田興産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する神戸発の総合不動産会社。「ワコーレ」ブランドによる分譲マンション販売を主軸に、戸建て住宅や不動産賃貸事業を展開しています。直近の業績は、マンションの引渡戸数増加や採算性向上により、売上高401億円、経常利益45億円、当期純利益31億円と増収増益を達成しています。


※本記事は、和田興産株式会社 の有価証券報告書(第59期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 和田興産ってどんな会社?


神戸・阪神間を地盤に「ワコーレ」ブランドのマンション開発を行う地域密着型の総合不動産デベロッパーです。

(1) 会社概要


1899年に神戸市で不動産賃貸業として創業し、1966年に有限会社を設立。1979年の株式会社改組を経て、1991年に「ワコーレ」ブランドによる分譲マンション事業を本格化させました。2004年にジャスダック証券取引所(現・東証スタンダード)への上場を果たし、近年は大阪府下への進出や戸建て事業の強化も進めています。

同社(単体)の従業員数は123名です。筆頭株主は会長の資産管理会社である四三二、第2位は同社名誉相談役の和田憲昌氏、第3位は代表取締役会長の和田剛直氏となっており、創業家が主要株主として名を連ねるオーナー系企業の特徴を持っています。

氏名 持株比率
四三二 22.68%
和田憲昌 13.50%
和田剛直 9.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は溝本俊哉氏が務めています。社外取締役比率は約46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
和田剛直 代表取締役会長 1996年入社。取締役、常務、専務、副社長を経て、2022年5月より現職。
溝本俊哉 代表取締役社長 1983年大阪銀行(現関西みらい銀行)入行。2005年同社入社。企画部門を統括し常務等を経て、2022年5月より現職。
濱本聡 専務取締役 1995年入社。執行役員分譲事業第二部長、取締役、常務等を経て、2022年5月より現職。
黒川宏行 取締役 2002年入社。執行役員事業開発部長、賃貸事業部長、総合企画部長等を歴任し、2023年4月より現職。
大槻康成 取締役 2005年入社。執行役員不動産事業部長、賃貸事業部長を経て、2024年3月より現職。
早野勝久 取締役 2003年入社。分譲マンション事業第一部長、執行役員を経て、2025年5月より現職。
三木伸司 取締役(常勤監査等委員) 1986年兵庫相互銀行(現みなと銀行)入行。2020年同社入社、内部監査室長を経て2023年5月より現職。


社外取締役は、齋藤富雄(元兵庫県副知事)、谷口時寛(元神戸市環境局長)、大髙裕司(元京阪神興業社長)、角南忠昭(角南商事会長)、薗田統(公認会計士)、中務尚子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「分譲マンション販売」「戸建て住宅販売」「その他不動産販売」「不動産賃貸収入」および「その他」事業を展開しています。

(1) 分譲マンション販売


「ワコーレ」ブランドにより、主に神戸・明石・阪神間および大阪府下で中規模マンションの開発を行っています。デザイナーズマンションの開発や「先進的な住まいづくり」に特化し、地域密着型の展開を進めています。

一般消費者であるマンション購入者から受け取る販売代金が主な収益源です。事業の運営は主に和田興産が行っており、販売業務はすべて外部に委託する戦略をとっています。

(2) 戸建て住宅販売


神戸市・明石市をはじめとする主要エリアにおいて、マンション事業で培ったデザイン性や企画力を活かした戸建て住宅の開発・販売を行っています。10戸程度の小規模開発であっても街並みづくりを重視しています。

一般消費者である住宅購入者から受け取る販売代金が収益源です。運営は和田興産が行っています。

(3) その他不動産販売


主に小型収益物件や宅地等の販売を行っています。また、保有不動産の有効活用を推進する過程で、販売によって価値増大が見込める場合には保有不動産の販売も実施しています。

法人や個人投資家等への不動産売却代金が主な収益源となります。運営は和田興産が行っています。

(4) 不動産賃貸収入


神戸市・阪神エリアを中心に、交通利便性を重視した賃貸マンション「ワコーレ」シリーズ等の開発・保有を行っています。住居系マンションのほか、店舗、事務所、駐車場等も提供しています。

入居者やテナントから受け取る賃料収入が収益源です。運営は和田興産が行っています。

(5) その他


本業に付随して発生する保険代理店業務や不動産仲介業務などを行っています。

保険契約の締結に伴う代理店手数料や、不動産取引に伴う仲介手数料などが収益源です。運営は和田興産が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で安定的に推移しています。直近の2025年2月期は増収となり、経常利益も3期連続で増加するなど、利益面での成長が顕著です。利益率も向上傾向にあり、収益性の改善が進んでいます。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 398億円 418億円 427億円 388億円 401億円
経常利益 19億円 32億円 36億円 38億円 45億円
利益率(%) 4.8% 7.6% 8.4% 9.8% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 23億円 24億円 26億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、利益率も改善しています。販管費も増加していますが、増収効果により営業利益は2桁成長を達成しました。全体として、収益力が強化されていることが読み取れます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 388億円 401億円
売上総利益 85億円 98億円
売上総利益率(%) 21.9% 24.3%
営業利益 45億円 53億円
営業利益率(%) 11.7% 13.2%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が11億円(構成比24.2%)、租税公課が9億円(同19.6%)、給料及び手当が9億円(同19.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の分譲マンション販売は引渡戸数こそ減少しましたが、価格転嫁等により増収増益を確保しました。その他不動産販売は収益物件等の販売が好調で大幅な増収増益となりました。一方、戸建て住宅販売はやや軟調に推移しています。不動産賃貸収入は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
分譲マンション販売 299億円 306億円 42億円 44億円 14.3%
戸建て住宅販売 20億円 19億円 1.5億円 1.3億円 7.3%
その他不動産販売 37億円 43億円 1.3億円 9.1億円 21.2%
不動産賃貸収入 32億円 33億円 11億円 10億円 31.5%
その他 0.4億円 0.8億円 0.4億円 0.7億円 84.7%
調整額 - - -11億円 -12億円 -
連結(合計) 388億円 401億円 45億円 53億円 13.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

和田興産は、分譲マンション用地購入等の資金調達による長期借入金の増加を主な要因として、財務活動により資金を増加させています。営業活動では、税引前当期純利益の計上等により資金が増加したものの、事業用地取得等による棚卸資産の増加により、結果として資金は減少しました。また、投資活動では、賃貸物件取得などの設備投資により資金が減少しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF -12億円 -19億円
投資CF -5億円 -21億円
財務CF 75億円 39億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「共生(ともいき)」を企業理念として掲げています。これは「自らを生かしながら他のあらゆるものを生かす生き方、すなわち、自分の生き方が、他の人の幸せにつながる」ことを意味し、顧客や株主をはじめ、地域社会を含めた全てのステークホルダーとの共生を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Wada-Way」と呼ばれる行動指針を策定しています。これには、主体的に責任感を持って行動する「自主自律」、個性を活かし地域を彩る「唯一無二」、スピード感を持って取り組む「迅速果断」、チームワークを重視する「相互信頼」の4つが含まれ、地域密着型の不動産業としてオンリーワンの住まいづくりを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画(2024年2月期~2026年2月期)において、「将来を展望し、『地域に根差した総合不動産業』への道筋を創る」ことをVISIONとして掲げています。経営の健全性や株主価値向上の観点から、KPIとして以下の指標を設定しています。

* ROE(自己資本利益率):8%以上
* D/Eレシオ:2倍以内

(4) 成長戦略と重点施策


主力の分譲マンション販売事業では、神戸・明石・阪神間の地域密着の強みを活かしつつ、周辺地域へのエリア拡大を図ります。また、コスト適正化と品質向上を両立させ、付加価値の高い住宅開発を推進します。

さらに、出口戦略の多様化として小型収益物件や高齢者施設の開発・販売、行政による再開発事業への参画を進めるほか、戸建て事業における用地仕入れの強化、賃貸事業のパフォーマンス向上、新規事業(蓄電施設開発等)にも取り組み、収益機会の拡大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員が能力を発揮し、仕事と生活を調和できる環境整備を進めています。女性活躍推進のため公平な評価による女性管理職比率の向上を図るとともに、男性社員の子育て支援を強化する新たな制度導入を計画しています。また、持続的成長のために国籍や職歴に関係なく個人の能力を重視した人物本位の登用を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 42.0歳 12.1年 8,079,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.1%


なお、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については、公表項目として選択しておらず、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 売上高等の変動及び四半期業績


主力の分譲マンション販売は、景気、金利、販売価格動向などの影響を受けやすく、購入意欲の減退により売上計上が遅延する可能性があります。また、引渡し時期が特定の四半期に集中することで、四半期ごとの業績に偏りが生じる傾向があります。

(2) 資金調達及び有利子負債への依存度


用地取得や建設資金を主に金融機関からの借入金で調達しているため、金利変動が業績に影響を与える可能性があります。また、一部の借入金には財務制限条項が付されており、抵触した場合は期限の利益を喪失し、資金繰りに影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 法的規制等


不動産業界は宅地建物取引業法や建築基準法など多くの法的規制を受けており、これらの規制変更や新たな規制導入が業績に影響する可能性があります。また、宅地建物取引業者の免許取り消し事由が発生した場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競合等の影響


主要エリアである神戸・阪神間や大阪府下は住宅需要が高く競合他社も多いため、競争激化により用地仕入力や販売力が低下し、業績に悪影響を与える可能性があります。また、設計・建築・販売業務を外部委託しているため、委託先の業務水準低下がリスクとなる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。