※本記事は、株式会社和田興産の有価証券報告書(第60期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 和田興産ってどんな会社?
同社は「ワコーレ」ブランドの分譲マンション販売を主力とし、戸建て住宅販売や不動産賃貸事業なども手掛ける総合不動産会社です。
■(1) 会社概要
1899年1月に神戸市にて不動産賃貸業として創業し、1966年に有限会社を設立しました。1991年から自社ブランド「ワコーレ」による分譲マンション事業を本格化させ、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、賃貸マンションや戸建て住宅などへと事業領域を拡大し、2022年にスタンダード市場へ移行しています。
2026年2月末現在、単体の従業員数は125名です。筆頭株主は代表取締役会長の和田剛直氏及びその親族が株式を保有する資産管理会社の四三二で、第2位は同社名誉相談役の和田憲昌氏、第3位は和田剛直氏となっており、創業家や経営幹部に関連する株主が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 四三二 | 22.68% |
| 和田憲昌 | 13.50% |
| 和田剛直 | 9.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役会長は和田剛直氏、代表取締役社長は溝本俊哉氏が務めています。社外取締役比率は46.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 和田剛直 | 代表取締役会長 | 1996年同社入社。取締役、常務取締役、専務取締役、取締役副社長を経て、2022年5月より現職。 |
| 溝本俊哉 | 代表取締役社長 | 1983年大阪銀行入行。2005年同社入社。執行役員企画部長、常務取締役等を経て、2022年5月より現職。 |
| 濱本聡 | 専務取締役 | 1995年同社入社。執行役員分譲事業第二部長、取締役、常務取締役を経て、2022年5月より現職。 |
| 黒川宏行 | 取締役 | 2002年同社入社。執行役員事業開発部長、執行役員賃貸事業部長、取締役総合企画部長等を経て、2023年4月より現職。 |
| 大槻康成 | 取締役 | 2005年同社入社。執行役員不動産事業部長、執行役員賃貸事業部長、取締役賃貸事業部長を経て、2024年3月より現職。 |
| 早野勝久 | 取締役 | 2003年同社入社。分譲マンション事業第一部長、執行役員分譲マンション事業第一部長を経て、2025年5月より現職。 |
| 三木伸司 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年兵庫相互銀行入行。2020年同社入社、内部監査室長を経て、2023年5月より現職。 |
社外取締役は、齋藤富雄(元兵庫県副知事)、谷口時寛(生活協同組合コープこうべ理事)、大髙裕司(京阪神興業代表取締役社長)、角南忠昭(角南商事取締役会長)、薗田統(薗田公認会計士事務所開設)、中務尚子(山善社外取締役監査等委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「分譲マンション販売」「戸建て住宅販売」「その他不動産販売」「不動産賃貸収入」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 分譲マンション販売
「ワコーレ」ブランドにより、主に神戸・明石地区、阪神地区および大阪府などで中規模マンションの開発、企画、販売を行っています。機能性や利便性、快適性に特化したデザイン性の高い住まいづくりを推進し、資産性と安全性を重視した品質重視のマンション開発を提供しています。
同事業は分譲マンションを市場の一般消費者に提供し、販売代金を主な収益源としています。自社で販売部門を持たず、販売はすべて外部に委託する戦略をとっており、開発・運営は同社が行っています。
■(2) 戸建て住宅販売
神戸市や明石市などの主要事業エリアにおいて、デザイン性や企画力など付加価値を重視した戸建て住宅の開発および販売を行っています。小規模な開発であっても街並みづくりを基本とし、分譲マンション事業で培ったノウハウを活かして他社との差別化を図っています。
同事業は戸建て住宅を顧客に提供し、販売代金を主な収益源としています。運営は同社が行っています。
■(3) その他不動産販売
主に小型収益物件や宅地などの販売を行うとともに、保有不動産の有効活用を推進する過程において、価値増大が見込める場合には保有不動産の販売も行っています。
同事業は収益物件や宅地などの購入者から販売代金を受け取る収益モデルとなっており、運営は同社が行っています。
■(4) 不動産賃貸収入
神戸市や阪神エリアを中心に、交通利便性を重視した賃貸マンションの開発および賃貸を行っています。ペット対応型やデザイナーズ・マンションなどの独自性ある物件に加え、既存物件のバリューアップ方式による不動産再生も手掛けています。
同事業は住居、店舗、事務所、駐車場等の賃借人から受け取る賃料を主な収益源としており、安定的な収益基盤として同社が運営を行っています。
■(5) その他
同社の事業に関連して附随的に発生する収入として、系統用蓄電所による売電収入、分譲マンションの解約に伴う手付金放棄による解約手付金収入、保険代理店としての手数料収入、仲介手数料などを得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は380億円から420億円台で概ね安定して推移しており、当期には421億円まで増加しました。一方で、経常利益や当期純利益は建築コストの高止まりによる売上原価の増加などの影響を受け、当期は減益となっています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 418億円 | 427億円 | 388億円 | 401億円 | 421億円 |
| 経常利益 | 32億円 | 36億円 | 38億円 | 45億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | 7.6% | 8.4% | 9.8% | 11.2% | 9.4% |
| 当期純利益 | 23億円 | 24億円 | 26億円 | 31億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
当期は販売物件の戸当り単価上昇により売上高が増加したものの、売上原価の増加率がそれを上回り、売上総利益率は24.3%から22.7%へ低下しました。結果として営業利益も減少し、利益率が低下する構造となっています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 401億円 | 421億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 96億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.3% | 22.7% |
| 営業利益 | 53億円 | 50億円 |
| 営業利益率(%) | 13.2% | 11.8% |
販売費及び一般管理費(合計46億円)のうち、広告宣伝費が11億円(構成比23.3%)、租税公課が9億円(同19.9%)、給料及び手当が9億円(同19.7%)を占めています。また、売上原価(合計326億円)のうち、不動産売上原価が306億円(構成比93.8%)、不動産賃貸原価が20億円(同6.2%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力の分譲マンション販売は新規発売物件の販売活動により増収となりましたが、利益は前期並みにとどまりました。その他不動産販売は販売物件数の減少により大幅な減収減益となっています。不動産賃貸収入は高稼働率を維持し、安定して推移しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益(2026年2月期) | 利益率(2026年2月期) |
|---|---|---|---|---|---|
| 分譲マンション販売 | 306億円 | 342億円 | 44億円 | 44億円 | 12.8% |
| 戸建て住宅販売 | 19億円 | 18億円 | 1億円 | 0.7億円 | 3.7% |
| その他不動産販売 | 43億円 | 27億円 | 9億円 | 5億円 | 19.3% |
| 不動産賃貸収入 | 33億円 | 33億円 | 10億円 | 10億円 | 31.7% |
| その他 | 0.8億円 | 2億円 | 0.7億円 | 1.7億円 | 72.1% |
| 調整額 | - | - | -12億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 401億円 | 421億円 | 53億円 | 50億円 | 11.8% |
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業はマイナスですが将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の状態です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -19億円 | -90億円 |
| 投資CF | -21億円 | -28億円 |
| 財務CF | 39億円 | 73億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、自らを生かしながら他のあらゆるものを生かす生き方、すなわち自分の生き方が他の人の幸せにつながる「共生(ともいき)」を企業理念として掲げています。お客様や株主をはじめ、地域社会を含めたすべてのステークホルダーとの共生を目指し、地域に根差した住まいづくりや快適な街づくりを通じて、地域と社会の発展に寄与することを社会的使命としています。
■(2) 企業文化
組織体制の充実と組織力の結集を図るため、行動指針(Wada-Way)を策定しています。主体的に物事を捉えて行動する「自主自律」、一人ひとりの個性を活かして地域を彩る「唯一無二」、スピード感を持った事業への取り組みを促す「迅速果断」、チームワークを促す「相互信頼」の4つの指針のもと、住まう方にとってオンリーワンとなる住まいづくりを目指す文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
経営の健全性や安全性を高め、株主価値の持続的な向上を図るためのKPIとして、ROEとD/Eレシオを定めています。また、将来の売上および利益確保につなげるため、期末時点での契約済未引渡戸数を一定レベルに引き上げることを事業分野における経営上の目標としています。
* ROEの維持水準:8%
* D/Eレシオの目標:2倍以内
■(4) 成長戦略と重点施策
地域密着の有利性を活かした好立地での展開を基本としつつ、周辺地域への事業エリア拡大に努め、近畿圏で確固たる地位を築く方針です。また、小型収益物件や高齢者向け住宅施設の開発など出口戦略の多様化を図るとともに、新規事業として系統用蓄電所の開発や、リフォーム・転売仲介等のノンアセットビジネスへの取り組みを強化し、さらなる収益機会の創造を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
新しい価値を生み出せる人材の育成に取り組むとともに、多様な人材が活躍・挑戦できる環境を整備し、組織風土を醸成する方針です。国籍や職歴に関係なく個人の能力や実績を重視した人物本位の登用を実施しており、女性管理職比率の向上や、男性社員が子育てに関わりやすい新たな制度の導入など、仕事と生活の調和を図る雇用環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 42.7歳 | 12.3年 | 8,587,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異について、公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気・金利動向による販売遅延リスク
分譲マンション販売は景気動向や金利動向、不動産価格の変動等の影響を受けやすく、住宅需要の減退や大幅な金利上昇が発生した場合、マンション購入者の購入意欲が低下し、売上高の計上時期が遅延して同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資金調達及び有利子負債への依存リスク
事業用地の取得や賃貸不動産の建設資金を主に金融機関からの借入金により調達しています。資金調達に障害が生じた場合や、現行の金利水準が変動した場合、また財務制限条項に抵触して期限の利益を喪失した場合には、資金繰りや事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制や免許取消のリスク
不動産業として宅地建物取引業法などの法的規制を受けており、法改正や新たな法的規制が設けられた場合には業績に影響が生じる可能性があります。また、何らかの事由により宅地建物取引業者の免許が取消された場合や更新ができなかった場合には、事業の継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 競合激化による収益圧迫リスク
同社が主要事業エリアとする神戸・明石地区や阪神地区、大阪府などは住宅購入者の人気が高く、競合他社も多く存在します。参入状況によって競争が激化した場合、用地の仕入力やマンションの販売力が低下し、販売価格の変動を招いて同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。