昴 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昴 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、鹿児島県を中心に九州・沖縄エリアで学習塾の企画・運営を行う企業です。幼児から高校卒業生までを対象とし、受験指導に強みを持ちます。直近の決算では、売上高35億円(前期比2.3%減)、経常利益1.1億円(同33.2%減)と減収減益となりましたが、最終利益は増益を確保しました。


※本記事は、株式会社昴 の有価証券報告書(第67期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 昴ってどんな会社?


鹿児島県を地盤に、九州・沖縄で幼児から高卒生向けの学習塾を展開する教育企業です。

(1) 会社概要


同社は1972年に有限会社教学社鶴丸予備校として法人化され、1991年に昴と合併しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、地域の有力な教育企業としての地位を確立しました。2020年にはタケジヒューマンマインドの全株式を取得し、その後吸収合併を行っています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は305名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の有限会社学友社で、第2位は信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位は地元金融機関の鹿児島銀行です。地域に根ざした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社学友社 40.99%
株式会社日本カストディ銀行(信託E口) 5.65%
株式会社鹿児島銀行 4.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は西村秋氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西村秋 代表取締役社長 2001年学友社取締役を経て、2005年同社入社。内部監査室長、人事総務部長、副社長などを歴任し、2021年5月より現職。
西村道子 取締役会長 1973年教学社鶴丸予備校取締役就任。常務、専務を経て2006年社長就任。2021年代表取締役会長を経て、2025年5月より現職。
松葉口哲 取締役教務本部長兼沖縄統括部長 1984年鶴丸予備校入社。教務部教務指導担当部長、情報システム・教務事務担当部長などを歴任し、2023年5月より現職。


社外取締役は、厚地実(元南日本銀行業務監査部指導役)、前田義人(元南日本新聞社取締役)、本木順也(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「学習塾事業」および「その他」事業を展開しています。

学習塾事業


同社は、幼児、小学生、中学生、高校生および高校卒業生を対象とした学習指導サービスを提供しています。鹿児島県をはじめ、宮崎県、熊本県、福岡県、沖縄県において教室を展開し、受験指導を中心としたクラス指導や個別指導を行っています。顧客は生徒およびその保護者です。

収益は、生徒・保護者から受け取る入学金、授業料(学費)、講習会費(特訓収入)、テスト料などが主な柱です。また、オリジナル教材の販売による収益も含まれます。運営は主に昴が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、合宿による学習指導などを行っています。これらは通常の教室運営とは異なる形態で提供される教育サービスであり、特定の時期や目的に合わせた集中的な学習機会を提供しています。収益は参加者からの参加費等が主となります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台半ばで推移しています。2022年2月期に売上高38億円台を記録しましたが、その後は少子化や競争激化の影響もあり、売上高は横ばいから微減傾向にあります。利益面では黒字を維持していますが、利益率は1%から9%の間で変動しており、安定的な収益性の確保が課題となっています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 37億円 38億円 35億円 35億円 35億円
経常利益 1.8億円 3.5億円 3.0億円 1.6億円 1.1億円
利益率(%) 5.0% 9.1% 8.5% 4.6% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.6億円 1.4億円 2.2億円 0.4億円 0.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を見ると、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が縮小しています。売上原価の減少幅が売上高の減少幅よりも小さかったため、利益率が低下しました。特に営業利益は前期の1.4億円から0.9億円へと減少し、本業での収益力が弱含んでいます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 35億円 35億円
売上総利益 7億円 6億円
売上総利益率(%) 20.0% 18.5%
営業利益 1.4億円 0.9億円
営業利益率(%) 4.1% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が1.5億円(構成比28%)、役員報酬が1.1億円(同19%)、給料及び手当が0.9億円(同16%)を占めています。売上原価においては、人件費が18億円で売上原価全体の63%を占め、教育産業特有の労働集約的なコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、部門別の売上動向を見ると、主力の「中学部」および「幼児・小学部」が減少傾向にあります。「高等部」や「個別指導」も微減となりましたが、「その他」部門(合宿収入等)は増加しており、対面イベント等の回復が見られます。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
幼児・小学部 9億円 9億円
中学部 18億円 18億円
高等部 5億円 5億円
個別指導 2億円 2億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 35億円 35億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、学習塾事業を主軸とし、幼児・小学部から高等部、個別指導まで幅広く展開しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主な収入と支出のバランスから、前年同期比で減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や不動産取得等により、前年同期比で増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払い等により、資金の使用となりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 3億円 2億円
投資CF -1億円 -1億円
財務CF 3億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「日日是決戦」の精神のもと、「我が子、我が事と思い、厳しく指導する」「学力、気力、体力を養成する」「責任をもって一人残らず第一志望校に合格させる」を指導理念として掲げています。子供たちの無限の可能性を信じ、豊かな人間性と創造力、逞しい意志を持った人材の育成に努めることで、目標に向かって挑戦するエネルギーを持って成長していくことを願っています。

(2) 企業文化


同社は、生徒の興味とやる気を引き出す指導者を理想とし、「師 心に灯をともす人」という言葉を掲げています。講師の成長が生徒の未来を創り、会社の発展につながるという考えのもと、人材こそが最も重要な経営資源であるとしています。性別や年齢に関わらず多様な人材が活躍できる環境づくりや、生徒・保護者のニーズに応える誠実な姿勢を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営指標として「総資産経常利益率」および「自己資本当期純利益率」の向上を目標としています。長期的にこれらの指標を引き上げるとともに、有利子負債の圧縮を進め、財務体質の改善と充実を図ることを目指しています。また、株主に対する安定的かつ継続的な利益還元の実現も重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、九州全域への展開を視野に入れつつ、人口増加県である沖縄への進出と地元鹿児島の基盤強化を進めています。重点施策として、AIやデジタル技術を活用したDXの推進(AI搭載LMSやライブ配信授業)、少子化と学力二極化への対応として高校入試の先を見据えた啓蒙活動、そして採用活動の強化に取り組んでいます。特に採用難に対応するため、インターンシップやイベント参画、アルバイトからの社員登用強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「師 心に灯をともす人」を講師の理想像とし、人材の確保と育成を最重要課題としています。アルバイト講師からの社員登用強化、リクルーター制度による採用率向上、社内ライセンス制度による指導力強化を実施しています。また、プロコーチ制度の導入や多様な研修を通じて講師の質を高めるとともに、残業削減や休暇取得の推進により働きやすい環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 42.9歳 13.5年 4,425,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 4.3%
男性労働者の育児休業取得率 71.4%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 45.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 82.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 77.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化の影響


学習塾業界は出生率の低下による学齢人口の減少という構造的な問題に直面しています。生徒数の絶対数が減少することで、入試の平易化による通塾動機の低下や、生徒獲得競争の激化が引き起こされており、こうした状況が継続した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 調達金利の上昇


同社は自社物件を多く保有していることから、2025年2月末時点での有利子負債総額は約17億円となっています。今後の金融情勢の変化により市場金利が上昇した場合、支払利息の増加などを通じて経営成績にマイナスの影響を与える可能性があります。

(3) 個人情報の管理


学習指導や生徒募集活動を通じて、生徒や保護者の個人情報を多数保有しています。情報管理には十分な注意を払っていますが、万が一情報の漏洩が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償の発生などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。