市進ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

市進ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

市進ホールディングスは東証スタンダード上場の企業で、学習塾などの教育サービス事業と、訪問介護等の介護福祉サービス事業を展開しています。直近の業績は売上高187億円で増収、経常利益は8億円で増益となり、投資有価証券売却益の計上等により当期純利益は6億円と大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社市進ホールディングスの有価証券報告書(第52期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 市進ホールディングスってどんな会社?


学習塾などの教育サービスと、訪問介護やデイサービスなどの介護福祉サービスを展開しています。

(1) 会社概要


1965年5月に「真間進学会」として創業し、中学・高校受験指導を開始したのが始まりです。1984年に「市進学院」へ名称を変更して市進へ商号変更し、2004年にはジャスダックに上場しました。2010年に現在の市進ホールディングスへ商号変更して持株会社化し、2011年には介護福祉サービス事業へ参入するとともに、学研ホールディングスとの業務資本提携を実施しています。

同社グループの従業員数は連結で924名、単体で56名です。筆頭株主は事業会社であり提携先の学研ホールディングスで、第2位は創業者の梅田威男氏、第3位は市進グループ社員持株会となっています。

氏名 持株比率
学研ホールディングス 49.66%
梅田威男 4.47%
市進グループ社員持株会 2.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役会長は下屋俊裕氏、代表取締役社長は福住一彦氏が務めており、社外取締役の比率は9.1%となっています。

氏名 役職 主な経歴
下屋俊裕 代表取締役会長 1977年入社。教育本部長やウイングネット社長などを歴任し、2011年社長就任。2020年学研教育ホールディングス会長に就任。同年より現職。
福住一彦 代表取締役社長 学研エデュケーショナル社長などを経て2014年学研教育ホールディングス社長に就任。学研ホールディングス副社長などを歴任し、2020年より現職。
荻原俊平 取締役副社長 ウイングネット社長、ジャパンライム社長などを歴任。学研ホールディングス上席執行役員等を経て、2023年常務取締役に就任し、2025年より現職。
土坂恭司 専務取締役 1988年入社。運営管理本部本部長などを経て、2013年市進社長、2017年茨進社長に就任。2019年常務取締役を経て、2022年より現職。
原園明宏 常務取締役 1988年入社。市進教育本部長や執行役員を務め、2020年市進社長および市進東京社長に就任。2023年市進代表取締役会長に就任。2022年より現職。
尾和保弘 取締役統括本部本部長 2012年経営企画室室長、2017年財務部部長を経てアイウイングトラベル取締役等に就任。市進アシスト社長等を経て、2022年より現職。
小野有紀子 取締役 学研ホールディングス広報室長等を経て、2020年学研教育ホールディングス取締役に就任。2022年同社顧問を経て、同年より現職。


社外取締役は、小幡績氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育サービス事業」および「介護福祉サービス事業」を展開しています。

教育サービス事業


小学生から高校生までを対象とした「市進学院」「個太郎塾」「茨進」等の学習塾のほか、小学校受験の「桐杏学園」、学童保育の「ナナカラ」、日本語学校などを運営し、顧客に教育サービスを提供しています。また、映像授業コンテンツ「ウイングネット」の外部販売による塾事業のトータルサポート等も行っています。

主な収益源は、学習塾での授業料や講習会費用、映像授業コンテンツのシステム・サービス利用料などです。運営は親会社ではなく、市進、個学舎、茨進ホールディングス、ウイングネットなどの子会社各社がそれぞれ担当し、地域の顧客ニーズに合わせたサービスを展開しています。

介護福祉サービス事業


高齢者や障がい者を対象に、訪問介護、居宅介護支援、デイサービス、認知症グループホーム、小規模多機能型居宅介護、サービス付高齢者専用住宅、有料老人ホームなどの様々な介護サービスや、介護研修を顧客に提供しています。

収益モデルは、介護保険制度などの公的制度の利用に基づく介護報酬や、利用者からのサービス利用料が主な収益源です。運営は、いちしんウエルフェア、ゆい、ライブコアサポートなどの子会社が担当し、地域包括ケアの一環として在宅介護ニーズなどに対応しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は安定的に推移し、直近では187億円に到達しています。経常利益も概ね7億円から8億円台で堅調に推移しており、約4%の利益率を維持しています。当期利益は変動がありますが、直近の2026年2月期には投資有価証券売却益の計上などもあり、大きく利益を伸ばしています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 173億円 173億円 179億円 185億円 187億円
経常利益 7億円 7億円 8億円 7億円 8億円
利益率(%) 4.0% 4.2% 4.2% 3.9% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 4億円 4億円 3億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から微増して187億円となり、売上総利益も31億円と安定した水準を維持しています。営業利益についても9億円と底堅く推移しており、営業利益率は前期とほぼ同水準を保ち、安定した事業運営が行われていることが伺えます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 185億円 187億円
売上総利益 31億円 31億円
売上総利益率(%) 16.7% 16.5%
営業利益 9億円 9億円
営業利益率(%) 4.9% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が5億円(構成比24.2%)、給料及び手当が5億円(同23.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


教育サービス事業は、各教室の新規開校やオンライン授業の充実により在籍生徒数が堅調に推移し、売上高は156億円となりました。介護福祉サービス事業は、施設の順調な稼働により売上高30億円と増収となり、利益面でも増益を達成して全体の業績を下支えしています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
教育サービス 155億円 156億円 7億円 6億円 4.1%
介護福祉サービス 29億円 30億円 2億円 3億円 8.4%
連結(合計) 185億円 187億円 9億円 9億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益と投資有価証券の売却等による資産売却で得たキャッシュを借入金の返済にあてており、財務体質の改善を進める改善局面にあると判定できます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 12億円 14億円
投資CF -8億円 3億円
財務CF -4億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は18.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人を創る、ともに創る」をビジョンに掲げ、学びの場、生活支援の場を通じて豊かな人生、笑顔あふれる社会の実現をめざしています。「一生涯を通じた幅広い『学び』の機会を提供することで、ともに人間力を高め、笑顔あふれる社会を実現する」ことをグループの基本理念とし、顧客一人ひとりに寄り添うサービスの提供に努めています。

(2) 企業文化


組織目標として、「教育水準の向上という社会からの信託に応え、社会貢献のための自負を持って行動する」「常に生徒・保護者・顧客の立場に立ち、顧客満足の向上を実現する」などを掲げています。また、「マーケティング」「イノベーション」「人材育成」を重点テーマに設定し、社員一人ひとりが主体的にキャリアを形成する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


継続的な教育サービスと介護福祉サービスの提供を図るため、中期的には新規の投資と既存事業の成長を両立させながら、売上高営業利益率5%以上を維持することを目標としています。また、介護福祉サービス事業の合計売上高がグループ全体の20%となることを当面の目標に掲げています。

* 売上高営業利益率:5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


教育サービス事業では、生徒や保護者への丁寧な「1対1対応」の徹底、小学校低学年専門教室の拡充、生成AIなどを活用したBX(ビジネストランスフォーメーション)の推進を掲げています。介護福祉サービス事業では、地域のニーズに応じたサービスの展開と、M&Aによる対象地域の拡大および有資格者の獲得を重点施策として成長を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の採用・育成を最重要課題と捉え、HRD(Human Resource Development)本部を中心に、自律的・主体的なキャリア形成支援やグループ横断の育成施策を実施しています。多様性の確保として、年齢や性別などを問わない能力本位の採用を行うとともに、障がい者雇用や高年齢者の活用も推進し、働きやすい環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 45.0歳 18.7年 5,531,371円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 0.0%
男女の賃金の差異(全労働者) 56.5%
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 88.4%
男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 59.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100%)、男性の育児休業取得率(40%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 教育・介護制度の変更による法的リスク

教育制度や入試制度の変更、学習指導要領の改訂などに早期に対応できなかった場合や、介護福祉サービス事業における介護保険制度などの法改正があった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 労働力不足に伴う人材確保リスク

質の高いサービスを提供し継続的に成長するためには人材の採用・育成が重要ですが、経済情勢や雇用情勢の急激な変化により必要な要員が確保できない場合や、人材育成が計画通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 顧客データの漏洩による信用低下リスク

同社グループは多数の顧客や従業員の個人情報を保有しており、情報セキュリティマネジメントシステム等の対策を強化していますが、万一外部に個人情報が漏洩した場合は社会的信用の失墜や損害賠償請求等につながるリスクがあります。

(4) 少子化および業界再編に伴う競争激化リスク

教育サービス事業において、少子化による学齢人口の減少や入塾動機の希薄化が進展した場合や、オンライン教育等の新たなサービスの需要の高まり、同業他社との競争激化、業界再編への対応が遅れた場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。