※本記事は、株式会社市進ホールディングス の有価証券報告書(第51期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 市進ホールディングスってどんな会社?
教育サービスと介護福祉サービスを2本柱とする企業グループです。学研ホールディングスの連結子会社でもあります。
■(1) 会社概要
1965年に創業者が千葉県市川市で「真間進学会」を開始し、1975年に会社設立、1984年に「市進学院」へ名称変更しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2010年に持株会社体制へ移行して現商号となりました。2011年に株式会社学研ホールディングスと資本提携を行い、介護福祉事業へも参入。2023年には学研ホールディングスの連結子会社となっています。
2025年2月28日現在、グループ全体の従業員数は942名、単体では60名です。筆頭株主は親会社であり教育事業大手の株式会社学研ホールディングスで49.03%を保有しています。第2位は創業者の梅田威男氏、第3位は教育サービス事業において業務提携を行っている株式会社ウィザスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 学研ホールディングス | 49.03% |
| 梅田威男 | 4.42% |
| ウィザス | 3.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役会長は下屋俊裕氏、代表取締役社長は福住一彦氏です。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下屋俊裕 | 代表取締役会長 | 1977年入社。ウイングネット社長、市進社長などを経て2020年より現職。学研教育ホールディングス会長も兼務。 |
| 福住一彦 | 代表取締役社長 | 学研エデュケーショナル社長、学研ホールディングス取締役などを経て2020年より現職。学研ホールディングス取締役副社長も兼務。 |
| 荻原俊平 | 取締役副社長 | ウイングネット社長、ジャパンライム社長などを歴任。学研ホールディングス上席執行役員を経て2025年より現職。 |
| 土坂恭司 | 専務取締役 | 1988年入社。市進社長、茨進社長などを歴任。TOKYO GLOBAL GATEWAY社長を経て2022年より現職。 |
| 原園明宏 | 常務取締役 | 1988年入社。市進社長などを経て2022年より現職。市進会長も兼務。 |
| 尾和保弘 | 取締役統括本部本部長 | 財務部長、統括本部副本部長などを経て2022年より現職。 |
| 小野有紀子 | 取締役 | 学研ホールディングス広報室長、学研スマイルハート社長などを経て2022年より現職。学研教育ホールディングス取締役も兼務。 |
社外取締役は、小幡績(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「教育サービス事業」および「介護福祉サービス事業」を展開しています。
■(1) 教育サービス事業
「市進学院」「個太郎塾」「茨進」等の学習塾運営を中心に、小学校受験の「桐杏学園」、学童保育の「ナナカラ」、日本語学校、映像授業コンテンツ「ウイングネット」の販売などを行っています。主な顧客は幼児から高校生までの児童・生徒およびその保護者、ならびに全国の学習塾等の教育機関です。
収益は主に、学習塾や学童保育の生徒・保護者から受け取る授業料や入会金、映像授業コンテンツの販売先からの利用料等から構成されています。運営は主に株式会社市進、株式会社茨進ホールディングス、株式会社ウイングネット等の連結子会社が行っています。
■(2) 介護福祉サービス事業
「NIWA」「ふくろうの家」等のデイサービス、認知症グループホーム、小規模多機能型居宅介護施設、有料老人ホーム、訪問介護事業所等を運営しています。また、介護職初任者研修等の研修事業も実施しています。主な顧客は要介護認定を受けた高齢者およびその家族です。
収益は主に、介護保険法に基づく介護給付費収入および利用者からの自己負担金等から構成されています。運営は主に株式会社いちしんウエルフェア等の連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に当期は過去最高の売上高を記録しました。一方で、経常利益については第49期以降7億円台で推移しており、当期は前期比で減益となっています。当期利益は黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 160億円 | 173億円 | 173億円 | 179億円 | 185億円 |
| 経常利益 | 2.7億円 | 6.9億円 | 7.3億円 | 7.6億円 | 7.2億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | 4.0% | 4.2% | 4.2% | 3.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4.0億円 | 4.2億円 | 3.7億円 | 3.6億円 | 3.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は前期に比べて減少しました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、営業利益率はわずかに低下しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 179億円 | 185億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 31億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.1% | 16.7% |
| 営業利益 | 9.4億円 | 9.2億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 5.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が4.9億円(構成比22.9%)、給料及び手当が4.9億円(同22.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
教育サービス事業は堅調な在籍生徒数を維持し、増収増益(セグメント利益ベース)となりました。介護福祉サービス事業は新規連結子会社の影響もあり大幅な増収となりましたが、利益面では減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 教育サービス事業 | 154億円 | 155億円 | 6.7億円 | 6.8億円 | 4.4% |
| 介護福祉サービス事業 | 25億円 | 29億円 | 2.7億円 | 2.4億円 | 8.0% |
| 連結(合計) | 179億円 | 185億円 | 9.4億円 | 9.2億円 | 5.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
市進ホールディングスは、運転資金と戦略的投資資金を、内部留保資金および金融機関からの借入により調達しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは大幅な収入超過となりました。これは、主に利益の計上と減価償却費の計上が要因です。投資活動によるキャッシュ・フローは、新規教室開校等に伴う有形固定資産の取得や、子会社株式・投資有価証券の取得による支出が主な要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や自己株式の取得、リース債務の返済による支出が主な要因となりました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.6億円 | 12億円 |
| 投資CF | -2.6億円 | -7.6億円 |
| 財務CF | -2.3億円 | -3.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「人を創る、ともに創る」をビジョンに掲げています。学びの場や生活支援の場を通じて豊かな人生、笑顔あふれる社会の実現を目指しており、教育サービス事業と介護福祉サービス事業を主要なビジネスセグメントとして事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「マーケティング」「イノベーション」「人材育成」を重点テーマとしています。特に学習塾事業においては、「教え込む」「鍛える」「結果を出す」という3つの要素の循環を強化し、その定着を図るという、塾の本来価値への原点回帰に取り組む姿勢を重視しています。また、生徒や保護者への「1対1対応」を基本とし、顧客満足度の向上に努める文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、継続的な教育サービス、介護福祉サービスの提供とサービス向上を図るため、中期的には新規投資と既存事業の成長を両立させながら、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高営業利益率:5%を維持
* 介護福祉サービス事業の合計売上高:グループ全体の20%
■(4) 成長戦略と重点施策
教育サービス事業では、「1対1対応」の徹底、小学校低学年専門教室の運営、高校生向け予備校の強化、BX(ビジネストランスフォーメーション)によるサービス向上に取り組んでいます。また、2025年の創立60周年に向けて合格実績と合格率の向上を最重要テーマとしています。
介護福祉サービス事業では、地域のニーズに応じたサービス展開やM&Aによる対象地域の拡大を進めています。特に人材の採用と育成を最重要課題と位置づけ、「グループ介護事業推進本部」の設置や資格取得支援制度の充実に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは「人材育成」を重点テーマの一つとしています。採用面では手法・ツールの見直しや内部リクルートを強化し、育成面ではHRD本部による社員研修の充実を図っています。多様性の確保においては、性別や国籍等を問わず潜在能力の高い人材を採用・登用し、特例子会社での障害者雇用や高年齢者の活用も推進しています。従業員に対する「1対1対応」も重要テーマとして掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 44.0歳 | 17.8年 | 5,625,690円 |
※平均年間給与は正社員の平均であり賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務に基づく項目について、連結子会社のデータを公表しています。提出会社(市進ホールディングス)については公表義務に基づく公表項目として選択しておらず記載がありません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合(市進) | 8.4% |
| 管理職に占める女性労働者の割合(茨進HD) | 9.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率(市進) | - |
| 男性労働者の育児休業取得率(茨進HD) | 25.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者・市進) | 37.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者・茨進HD) | 66.4% |
※株式会社市進の男性労働者の育児休業取得率は対象者がいないため「-」となっています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100%)、男性の育児休業取得率目標(50%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化と教育サービス事業の動向
教育サービス事業においては、少子化や教育ニーズの多様化により競争が激化しています。首都圏を中心とした事業エリアでも少子化が進行しており、入試の平易化による通塾率の低下や業界再編の動きへの対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保・育成
質の高いサービス提供には人材が不可欠ですが、経済・雇用情勢の変化により必要な要員を確保できない場合や、育成が計画通り進まない場合、教育サービスでの生徒数減少や介護福祉サービスでの拠点展開の遅れなどにつながり、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規則等に関する影響
教育制度や入試制度の変更、学習指導要領の改訂、介護保険制度の改正など、事業に関連する制度変更があった場合、これらに早期かつ適切に対応できなければ、生徒数の減少や収益への影響が生じる可能性があります。



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