きょくとう 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

きょくとう 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

きょくとうは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、直営店や取次店等を通じたホームクリーニング事業を主力としています。消費者の節約意識の高まりや天候不順等の影響を受け、直近の業績は売上高52億円で減収となり、人件費やシステム関連費用の増加により経常利益も1億円と減益傾向にあります。


※本記事は、株式会社きょくとうの有価証券報告書(第47期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. きょくとうってどんな会社?


ホームクリーニング事業を主力とし、西日本や関東を中心に多店舗展開を行う企業です。

(1) 会社概要


同社は1964年に福岡ベビーランドリー企業組合として設立され、1980年にグループ統括を目的にきょくとうへと改組されました。1992年に19の有限会社を吸収合併して規模を拡大し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2022年の市場再編に伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

同社単体の従業員数は141名です。筆頭株主は創業者の牧平年廣氏であり、第2位は従業員で構成される社員持株会、第3位は地場の金融機関である西日本シティ銀行となっています。安定した経営基盤を背景に、地域に根ざした事業を展開しています。

氏名 持株比率
牧平年廣 30.30%
きょくとう社員持株会 5.10%
西日本シティ銀行 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は井上和美氏が務め、取締役8名のうち25%が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
牧平年廣 代表取締役会長 1964年福岡ベビーランドリー企業組合設立。極東化学ドライ代表取締役社長を経て、1980年きょくとう代表取締役社長。2026年3月より現職。
井上和美 代表取締役社長 1985年同社入社。業務本部長や九州本部地区部長などを歴任。常務取締役業務統括、取締役副社長を経て2026年3月より現職。
丸林凡和 取締役管理本部長 1980年西日本相互銀行(現・西日本シティ銀行)入行。九州カードや西日本信用保証の代表取締役専務、同社常勤監査役を経て2024年5月より現職。
齊藤博 取締役営業開発部担当 1984年同社入社。中国地区本部長や営業部長、開発本部長などを歴任。取締役業務本部長を経て2026年3月より現職。
村上忍 取締役営業開発部長 1978年東洋製罐入社。1980年同社入社。広島地区本部長、取締役九州地区副本部長などを経て2024年3月より現職。
山口強志 取締役経営企画室長 1974年西広入社。大洋の営業部長や専務取締役を経て、2023年6月に大洋代表取締役社長に就任。同時に同社取締役に復帰し現職。


社外取締役は、重松史郎(司法書士事務所代表)、池田早織(法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、単一セグメントであるホームクリーニング事業を展開しています。

一般家庭向けの衣類等を対象としたドライクリーニングおよびランドリーサービスを提供しています。直営店、準直営店、取次店の3つの経営形態で、全国に478店舗を展開しています。会員特典が付く「ペリカンズ」や低価格帯の「コインズ」といった営業形態を用意し、顧客の多様なニーズに応えるサービスを展開しています。

収益は一般顧客からのクリーニング代金や、特別会員の年会費、店舗網への販促品等の販売から得ています。運営は同社が単体で行っており、自社工場での即受注・即生産を基本としています。広域店舗網を活用した安定的なサービス提供と、スニーカークリーニング等の新たな収益機会の創出に取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は回復傾向にあったものの直近では減収に転じています。経常利益は赤字から黒字へ回復し安定推移していますが、直近ではコスト上昇の影響により利益率が低下しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 46億円 47億円 49億円 54億円 52億円
経常利益 -4億円 -0.9億円 2億円 2億円 1億円
利益率(%) -8.1% -2.0% 3.3% 3.4% 1.8%
当期純利益 -8億円 -2億円 1億円 0.8億円 0.5億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益はわずかに減少しており、売上総利益率も概ね横ばいで推移していますが、販管費の増加により営業利益は大きく減少しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 54億円 52億円
売上総利益 39億円 38億円
売上総利益率(%) 72.0% 71.7%
営業利益 1億円 0.0億円
営業利益率(%) 1.8% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、決済システム等に係る支払手数料が13億円(構成比35.9%)、給料及び手当が5億円(同12.8%)を占めています。また、クリーニング売上原価では労務費が7億円(同46.4%)、経費が5億円(同31.3%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 4億円 1億円
投資CF -0.9億円 -0.4億円
財務CF -3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「融和」「変革」「貢献」の3つを理念として掲げ、「お客様第一主義」を基本的な経営方針としています。お客様や社員との強い信頼関係を築き、自己変革を通じて業界全体の変革を目指すとともに、知識と技術で顧客のクリーニングライフを支え、社会に貢献することを存在意義としています。

(2) 企業文化


「品質の追求」「サービスの追求」「清潔さの追求」「存在価値の追求」を実践し、収益性を重視した企業活動を行っています。常に生産性の向上と販売管理費の統制に努め、付加価値の高いサービスを提供することで、株主の期待に応える企業を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中短期の数値目標として、売上高伸長率5%および売上高経常利益率8%を目指し、常に収益基盤の改善に努めています。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹事業であるホームクリーニングの収益回復を最重要課題と位置づけ、サービスの向上と新規事業の検討を推進しています。特別会員の拡充に向けたデジタル活用や、シミ抜き・撥水加工などの高付加価値サービスの充実を図るほか、スニーカークリーニングや衣類リフォーム等、閑散期にも安定した需要が見込める品目の開拓に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の多様性を尊重し、すべての社員に合った柔軟な働き方や働きやすい環境を整備する方針です。研修等の教育機会を継続的に提供することで社員のスキルと意欲を高め、組織全体の生産性向上につなげています。特に女性活躍や、育児・介護等の仕事と家事の両立支援策の拡充に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 49.5歳 15.3年 4,258,775円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 52.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規労働者) -
男女賃金差異(非正規労働者) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性取締役・執行役員の割合(11.1%)、正社員男性の平均勤続年数(16.3年)、正社員女性の平均勤続年数(14.3年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 季節変動に伴う業績偏重

冬物から夏物への衣替え時期にあたる上半期が、ホームクリーニングの最需要期となります。そのため、同社の売上高や利益は上半期に偏重する傾向があり、この最需要期における天候等の結果が通期の業績に大きく影響する可能性があります。

(2) クリーニング需要の構造的減少

消費者の節約志向や少子高齢化を背景に、一般家庭のクリーニング需要は1993年をピークに減少傾向が続いています。同社は顧客第一主義に徹し、品質とカウンターサービスの向上に努めることで、家庭内の洗濯物を店舗へ引き出す取り組みを継続しています。

(3) 建築基準法等の法的規制対応

クリーニング工場やプラントにおいては、建築基準法により商業地域や住居地域での引火性石油溶剤の使用が禁止されています。関係省庁の基本方針に基づき設備の改善を早急に推進する必要があり、これに伴う対応が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。