クオンタムソリューションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クオンタムソリューションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。GPUサーバー販売やAIゲーム開発などのAIソリューション事業と、まつげエクステサロン等のアイラッシュケア事業を展開。2025年2月期はAI関連の売上が寄与し大幅な増収となるも、先行投資等により各利益段階で赤字が継続しています。


※本記事は、クオンタムソリューションズ株式会社の有価証券報告書(第26期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クオンタムソリューションズってどんな会社?


AIソリューション事業とアイラッシュケア事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1999年に有限会社ザイオンとして設立され、2002年に東証マザーズへ上場しました。その後、2012年にファステップスへ商号変更し、2021年に現在のクオンタムソリューションズへ商号変更しています。近年では事業ポートフォリオの転換を進めており、2023年よりAI関連事業を本格化させ、GPUサーバーの販売やAIゲーム開発などの領域に注力しています。

2025年2月28日現在、連結従業員数は53名、単体従業員数は10名です。大株主構成は、筆頭株主が香港上海銀行の顧客口座(KGI ASIA LIMITED-CLIENT ACCOUNT)、第2位が岡三証券の顧客口座(OKASAN INTERNATIONAL)となっており、海外の機関投資家や顧客口座が上位を占めています。

氏名 持株比率
KGI ASIA LIMITED-CLIENT ACCOUNT 24.70%
OKASAN INTERNATIONAL(ASIA)LIMITED A/C CLIENT 20.60%
FUTU SECURITIES INTERNATIONAL (HONGKONG) LIMITED 9.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長はFrancis Bing Rong Zhou氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
Francis Bing Rong Zhou 代表取締役社長 Silk Road Energy President、Madison Holdings CEOなどを経て、2024年3月より同社副社長。2024年5月より現職。
PENG LINYUAN 取締役 湘財証券国際業務部、正大グループ戦略開発部ディレクター等を経て、OrangeStar株式会社設立。2024年2月より同社副社長。2024年5月より現職。
TUNG CHUN FAI 取締役 DBS Bank、Piper Jaffrayなどを経て、Quantum Solutions Asia Limited Director。2021年5月より現職。


社外取締役は、福田祐士(タキロンシーアイ代表取締役社長)、荒井裕樹(Wealth Management代表取締役)、日笠真木哉(ベリーベスト法律事務所)、福島昇(タキロンシーアイ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AIソリューション事業」、「アイラッシュケア事業」および「その他」事業を展開しています。

AIソリューション事業


AI技術を活用した多様なサービスを展開しており、GPUサーバーの販売等を行う「AIインフラ」、ゲーム配信や開発を行う「AIゲーム」、法人向けの「企業向けAIソリューション」の3領域に注力しています。生成AIの普及に伴う計算能力需要の高まりに対応しています。

収益は、主にGPUサーバーなどの機器販売による代金や、配信ゲームにおける課金収益等から得ています。運営は、同社および連結子会社のコンパスクラウドAIジャパン、FASTEPS SINGAPORE PTE. LTD.、Quantum Solutions Asia Limitedなどが行っています。

アイラッシュケア事業


まつげエクステンションサロンの運営、まつげエクステンションスクールの運営、および関連する化粧品の販売を行っています。「Wellness事業」への転換を見据え、構造改革を進めています。

収益は、サロンにおける施術料やスクール受講料、化粧品等の商品販売代金から得ています。運営は、主に連結子会社のプロケアラボが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年2月期から2025年2月期までの業績推移を見ると、売上高は2億円台で推移していましたが、2025年2月期に約7億円へと大幅に増加しました。一方、利益面では経常損失が続いており、赤字幅の変動はあるものの、依然として損失計上が継続しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 2.5億円 2.6億円 2.6億円 2.1億円 7.0億円
経常利益 -3.8億円 -3.1億円 -1.6億円 -7.8億円 -4.6億円
利益率(%) -153.7% -121.5% -59.2% -381.5% -66.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.9億円 -2.8億円 -9.5億円 -9.0億円 -3.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期間の約3.4倍に急増しました。これに伴い売上総利益も大幅に増加していますが、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回る水準で推移しており、営業損失の状態が続いています。ただし、営業損失の額は前期間と比較して縮小しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 2.1億円 7.0億円
売上総利益 1.4億円 6.4億円
売上総利益率(%) 67.9% 91.8%
営業利益 -9.4億円 -4.8億円
営業利益率(%) -459.0% -68.4%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が6.2億円(構成比56%)、給与手当が2.0億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


AIソリューション事業は、GPUサーバーの大口取引完了やゲーム配信権取得により、売上が前期比で飛躍的に増加しました。アイラッシュケア事業は、不採算店舗の整理を行った影響などにより減収となりましたが、赤字幅は縮小しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
AIソリューション事業 0.3億円 5.4億円
アイラッシュケア事業 1.8億円 1.6億円
連結(合計) 2.1億円 7.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**勝負型**
本業の営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスですが、新株予約権の行使等による財務活動で資金を調達しています。成長分野であるAIソリューション事業への転換期にあり、先行投資的なフェーズにあると言えます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF -6.6億円 -5.2億円
投資CF -1.3億円 -0.1億円
財務CF 6.8億円 5.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.9%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、グローバルな観点で「最先端のAIソリューションでよりよい明日の実現」、「革新技術で今日を変え未来を彩る」を掲げています。常に最新のサービスを提供し続け、国際社会に貢献していく企業であることを目指して経営を行っています。

(2) 企業文化


同社グループは、グローバル市場におけるAI関連事業の展開と収益力強化を両立させることを基本方針とし、成長分野への重点的な経営資源投入を行っています。事業全体の黒字化早期実現と企業価値向上を目指し、構造改革や新規事業の確立に積極的に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業全体の黒字化の早期実現と企業価値の向上を目標としています。短期的にはAI関連3事業の確立とアイラッシュケア事業の構造改革を進め、中長期的にはグローバル市場での事業展開と収益力強化の両立を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


AIソリューション事業を中核とし、AIインフラ、AIゲーム、企業向けAIソリューションの3領域での事業確立を推進しています。AIインフラではAIDC(AIデータセンター)事業への転換、AIゲームでは有力IPの取得や研究開発の強化を進めます。アイラッシュケア事業は「Wellness事業」への拡張を視野に入れています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人材の多様性の永続的な確保が、多様な視点や様々な価値観を取り入れ、グループの成長に必要かつ重要な要素となると考えています。そのため、多様な人材が継続して勤務できるような環境作りの整備に積極的に取り組む方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 40.5歳 1.4年 5,255,000円


※平均年間給与は、平均年俸額を表示しています。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合関係等


AIインフラ事業では既存業者による参入障壁や政府規制強化のリスク、AIゲーム事業ではIP取得競争の激化や契約条件の厳格化、ユーザーニーズ変化への対応遅れのリスクがあります。アイラッシュケア事業では、美容師資格を持つスタッフの確保難や顧客の嗜好変化による市場縮小の可能性があります。これらにより競争力が低下した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 外部環境に関わるリスク


AIソリューション事業のAIインフラ領域やAIDC事業において、米中関係の緊張に起因するサプライチェーンの分断化のリスクがあります。特に米国政府による規制が強化された場合、同社グループの設備や部材の調達に関する優位性が損なわれる可能性があります。

(3) 顧客情報に関するリスク


通信販売や対面販売において個人顧客情報を取り扱っており、情報漏洩による被害防止が重要です。万一、外部からの不正アクセス等により個人情報が社外に漏洩した場合、損害賠償請求や社会的な信用失墜により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。