※本記事は、クオンタムソリューションズの有価証券報告書(第27期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クオンタムソリューションズってどんな会社?
AIソリューション事業を中核に据え、ウェルネス事業やデジタルアセット投資事業を多角的に展開しています。
■(1) 会社概要
1999年にインターネットコンサルティングファームとしてザイオンを設立し、2002年に東証マザーズに上場しました。その後、2015年にエムアンドケイ(現・プロケアラボ)を買収してウェルネス事業を開始し、2017年には仮想通貨関連事業にも参入しました。2021年に現在のクオンタムソリューションズに商号を変更し、2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。
同社グループの従業員数は連結で41名、単体で9名です。大株主については、筆頭株主をはじめ、第2位および第3位の株主も証券会社や金融機関の顧客口座(常任代理人)となっており、法人や個人の資産管理口座等が上位を占める構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KGI ASIA LIMITED-CLIENT ACCOUNT | 16.50% |
| OKASAN INTERNATIONAL(ASIA)LIMITED A/C CLIENT | 15.90% |
| FUTU SECURITIES INTERNATIONAL (HONGKONG) LIMITED | 9.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は大澤梅嘉氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大澤 梅嘉 | 代表取締役社長 | EY新日本有限責任監査法人エグゼクティブディレクター、PwC Japan中国業務支援室責任者等を経て現職。 |
| Francis Bing Rong Zhou | 取締役 | Silk Road Energy President等を経て2024年に同社代表取締役社長に就任し、その後現職。 |
| PENG LINYUAN | 取締役 | 三越伊勢丹中国投資等を経て、2024年に同社副社長に就任し現職。 |
| TUNG CHUN FAI | 取締役 | DBS Bank等を経て、同社関連会社のDirector等を歴任し現職。 |
| YE DANDAN | 取締役(監査等委員) | HSBC銀行等を経て、2026年に同社最高事業責任者に就任し現職。 |
社外取締役は、福田祐士(元伊藤忠商事代表取締役副社長執行役員)、荒井裕樹(Wealth Management代表取締役)、福島昇(タキロンシーアイ取締役常務執行役員経営管理本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AIソリューション事業」「ウェルネス事業」および「その他」事業を展開しています。
■AIソリューション事業
AIインフラストラクチャー(GPU設備の調達やデータセンター等)、AIゲーム(既存ゲームの運営および次世代開発)、企業向けAIソリューションの3領域でサービスを提供しています。外部資金やパートナーとの協業を前提に、高性能なAI計算能力やソフトウェアを展開しています。
ゲーム事業におけるユーザーからの課金収入や、GPU関連機器の販売に伴う収入が主な収益源です。事業の運営は、クオンタムソリューションズや子会社のQuantum Solutions Asia Limitedなど複数のグループ会社が担当しています。
■ウェルネス事業
美容や健康に関する高付加価値サービスとして、まつげエクステンションサロンの運営、専門スクールの運営、および関連する化粧品や商材の販売を展開しています。少人数・高付加価値型の店舗展開や教育体制の強化を進めています。
サロンでのサービス提供による顧客からの収入や、インターネット等を通じた商材販売の収入が主な収益源です。事業の運営は、子会社のプロケアラボが行っています。
■その他(デジタルアセット投資及び運用関連事業)
イーサリアムを中心とするデジタルアセット(暗号資産)の取得、保有、および運用に関する事業を展開しています。外部投資家と連携し、AI関連成長領域の資金調達基盤の形成や資産価値の最適化を図っています。
暗号資産の運用やステーキング(DAT Staking等)による収益化を主な収益モデルとしています。事業の運営は、子会社のGPT Pals Studio Limitedが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間を通じて売上高は増減を繰り返しており、経常赤字と当期純損失が継続しています。特に直近では暗号資産の評価損計上等により、赤字幅が大きく拡大する厳しい業績推移となっています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2.6億円 | 2.6億円 | 2.1億円 | 7.0億円 | 2.7億円 |
| 経常利益 | -3.1億円 | -1.6億円 | -7.8億円 | -4.6億円 | -25.3億円 |
| 利益率(%) | -121.5% | -59.2% | -381.5% | -66.5% | -947.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.8億円 | -9.5億円 | -9.0億円 | -3.2億円 | -25.5億円 |
■(2) 損益計算書
大幅な減収に伴い売上総利益も減少しています。営業赤字が継続しており、売上高に対して販売費及び一般管理費が大きく上回るコスト構造となっています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7.0億円 | 2.7億円 |
| 売上総利益 | 6.4億円 | 1.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 91.8% | 70.1% |
| 営業利益 | -4.8億円 | -7.0億円 |
| 営業利益率(%) | -68.4% | -264.0% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が3.5億円(構成比40%)、給与手当が1.8億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高は、AIインフラ事業におけるサーバー関連収益の減少などによりAIソリューション事業が大幅な減収となりました。一方、ウェルネス事業は店舗運営効率の改善等により比較的安定した推移を見せています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| AIソリューション事業 | 5.4億円 | 1.2億円 |
| ウェルネス事業 | 1.6億円 | 1.5億円 |
| 連結(合計) | 7.0億円 | 2.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字ですが将来の成長に向けて借入等の資金調達で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -5.2億円 | -7.0億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -39.9億円 |
| 財務CF | 5.3億円 | 47.5億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率はマイナス22.3%(債務超過)であり、市場平均を大きく下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
グローバルな観点で「最先端のAIソリューションでよりよい明日の実現」「革新技術で今日を変え未来を彩る」を掲げ、常に最新のサービスを提供し続け、国際社会に貢献していく企業であることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、事業の収益改善や財務基盤の安定化を強く意識し、変化の速いAIやデジタルアセット市場において「適切なリスク管理及びガバナンス体制」を重視しています。資本効率を最適化しながら、能動的かつ機動的な事業展開や資産管理を推進する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
資本効率、収益改善、および財務基盤の安定化を重視しています。AIインフラ事業において外部資金等を活用しながら収益化を目指すほか、ウェルネス事業を安定的な収益基盤として育成することを中長期的な目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
AIインフラ(AIDC)事業では、最大2億米ドル規模の資金調達枠組みを活用し、外部パートナーとの協業によるGPU調達やデータセンター拠点の確保を進めます。また、AIゲームやWeb3連動型事業の研究開発、企業向けAIソリューションの構築を行うとともに、デジタルアセットの機動的な運用管理によって資本効率の最適化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性の永続的な確保が、多様な視点や価値観を取り入れ企業の成長に不可欠であると考え、多様な人材が継続して勤務できる環境の整備を積極的に進める方針です。また、ウェルネス事業においては、本社研修体制の整備や勤務・報酬制度の見直しにより定着率向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 41.9歳 | 1.7年 | 5,557,000円 |
※平均年間給与は、平均年俸額を表示しています。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AIインフラ事業に関するリスク
GPU設備や電力の確保、データセンター拠点等の初期設備投資規模が大きく、調達コストの上昇や顧客需要の未達、技術更新の速さによって投資回収期間が長期化し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 外部資金調達及び資本構成に関するリスク
AIやデジタルアセット関連事業の推進において外部資金の調達に依存しており、市場環境等により資金調達が想定通りに実行されないリスクがあります。また、新株発行等により既存株主の株式価値が希薄化する可能性があります。
■(3) デジタルアセット価格及び為替変動リスク
保有するイーサリアム等のデジタルアセットは価格変動が激しく、市場の需給や規制動向等により価値が大きく変動するリスクがあります。また、外貨建て取引による為替変動も財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 継続企業の前提に関するリスク
重要な営業損失の継続と債務超過の状態にあるため、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。収益改善や資金調達手段の多様化等の施策を進めていますが、実現可能性は市場環境や需要動向に左右されます。



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