YE DIGITAL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

YE DIGITAL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場するYE DIGITALは、安川電機の情報処理部門を起源とし、ビジネスシステムやIoTソリューションを提供する企業です。直近の業績は売上高199億円(前期比2.3%増)、経常利益15億円(同1.9%減)と、増収減益で着地しています。


※本記事は、株式会社YE DIGITAL の有価証券報告書(第48期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. YE DIGITALってどんな会社?


安川電機グループ発祥のIT企業で、製造業で培ったノウハウを活かしたIoTやAIソリューションが特徴です。

(1) 会社概要


1978年に安川電機製作所(現安川電機)の情報処理機能を分離し、安川情報システムとして設立されました。2003年に東証二部へ上場し、2019年に現社名へ変更しています。近年では、2020年にIoTソリューション事業の一部を分割してアイキューブデジタルを設立し、安川電機へ一部株式を譲渡するなど、グループ内での事業再編を進めています。

連結従業員数は694名(単体538名)です。筆頭株主は同社の親会社にあたるその他の関係会社である安川電機で、第2位は従業員持株会、第3位は資産管理を行う金融機関の顧客口座となっています。

氏名 持株比率
安川電機 37.89%
YE DIGITAL従業員持株会 5.25%
MSIP CLIENT SECURITIES 4.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は玉井裕治氏です。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
玉井 裕 治 代表取締役社長 1986年同社入社。常務執行役員、専務執行役員IoT事業統括組込・制御システム本部長などを経て、2022年より現職。
本 松 隆 之 取締役執行役員管理本部長 1989年安川電機製作所入社。環境・社会システム事業部事業企画部長などを経て2022年に同社出向。2023年より現職。
江 藤 知 樹 取締役監査等委員 1993年同社入社。ヘルスケア・公共ソリューション本部長、サービスビジネス本部長、管理本部管理担当などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、下池正一郎(安川電機執行役員)、三浦正道(弁護士)、金澤美冬(プロティアン社長)、相良陽一(安川電機監査部長)、野毛由文(ものづくりデザインラボ代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビジネスソリューション事業」および「IoTソリューション事業」を展開しています。

(1) ビジネスソリューション事業


企業向けの基幹システム(ERP)構築や、移動体通信事業者向けシステム開発、健康保険者向けソリューションなどを提供しています。顧客は製造業や通信事業者、公共団体などが中心です。また、ネットワークやシステム基盤の設計・開発、運用・保守のアウトソーシングサービスも行っています。

収益は、システムの受託開発や構築による対価、および運用・保守サービスの提供によるサービス料から得ています。運営は主にYE DIGITALおよび子会社のYE DIGITAL Kyushuが行っており、安川電機グループからの受託業務も本事業に含まれます。

(2) IoTソリューション事業


物流倉庫の自動化を支援する「物流DX」や、飼料タンク残量管理などの「畜産DX」、スマートシティ向けIoTソリューション、AI・ビッグデータ分析などを展開しています。また、セキュリティ関連製品の提供や、産業・公共用の制御系アプリケーション、製品組込ソフトの開発も行っています。

収益は、IoTソリューションや製品の販売、ライセンス料、開発受託費などから得ています。物流DX分野ではソリューション「MMLogiStation」の拡販を進めています。運営はYE DIGITALが主体となり、関連会社のアイキューブデジタルとも連携して事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近5期間で拡大基調が続いています。利益面では、2024年2月期に利益率が大きく改善しましたが、当期はやや低下しました。当期純利益は10億円前後で推移しており、安定した収益力を維持しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 145億円 137億円 162億円 195億円 199億円
経常利益 8億円 7億円 8億円 16億円 15億円
利益率(%) 5.6% 5.3% 5.2% 8.0% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 5億円 5億円 11億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増し、売上総利益も増加しましたが、販管費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率は26%台で横ばいですが、営業利益率は若干低下しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 195億円 199億円
売上総利益 51億円 52億円
売上総利益率(%) 26.4% 26.3%
営業利益 15億円 14億円
営業利益率(%) 7.6% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が16億円(構成比42.6%)と最も大きな割合を占めています。次いで退職給付費用が1.7億円(同4.4%)、研究開発費が1.5億円(同4.0%)となっています。

(3) セグメント収益


ビジネスソリューション事業はERP領域や自動車製造業向けシステム構築の需要により増収となりました。一方、IoTソリューション事業は物流DXの需要は旺盛でしたが、品質問題への対応や畜産DXの成約遅れなどにより減収となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
ビジネスソリューション事業 150億円 158億円
IoTソリューション事業 45億円 41億円
連結(合計) 195億円 199億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

YE DIGITALは、情報サービスの総合的な提供を事業内容としており、当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加しました。これは、税金等調整前当期純利益の増加や仕入債務の増加などが主な要因です。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出があったものの、前連結会計年度より改善しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによりマイナスとなりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 5億円 13億円
投資CF -5億円 -2億円
財務CF -2億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「高い技術力とお客様本位の姿勢によって、ITを活用したソリューションを提供し、豊かな社会づくりに貢献するとともに、社員の幸福と永続的な企業の繁栄をめざす」ことを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、製造業の「ものづくり」のエンジニアリング技術をソフトウエア開発に応用し、生産性と品質を高めてきた歴史があります。また、中期経営計画のスローガンとして「お客様に選ばれるNo.1企業へ」を掲げ、顧客の期待を超える体験や価値を追求する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年2月期を初年度とする新中期経営計画において、2028年2月期までの数値目標を設定しています。

* 売上高:250億円
* 営業利益:30億円
* 営業利益率:12.0%
* ROE:25%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「最高のエクスペリエンスを支援するデジタル・サービス企業」を目指し、プロダクト・サービスの機能的価値から顧客体験価値を軸にした事業モデルへの変革を進めています。具体的には、物流や畜産、スマートシティ分野を中心としたDXソリューションの展開、生成AIの活用による生産性向上、顧客起点のマーケティング戦略などを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、イノベーションをリード・実装できる自主的・自律的な人材の育成に取り組んでいます。具体的には、人材ポートフォリオマネジメントの強化により、人材制度改革やエンゲージメント向上を推進し、人材価値の最大化と社員のウェルビーイングの実現を目指しています。また、働きがいのある社内環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 41.3歳 14.3年 8,042,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.1%
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 68.4%
男女賃金差異(正規) 66.9%
男女賃金差異(非正規) -


※男女賃金差異(非正規)について:同社のパート・有期労働者の区分には男性の労働者がいないため記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の販売先への依存度


親会社である安川電機グループへの売上高が全体の約5割、富士通グループへの売上が約1割を占めています。これらの企業の経営方針や事業展開に大幅な変更があった場合、あるいは取引が縮小された場合、同社グループの業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。

(2) プロジェクト管理


システム構築や開発において、予期せぬ事態によりプロジェクトの中断や遅延、採算悪化を招くリスクがあります。特に大規模プロジェクトでの不採算発生は経営成績に影響を与えるため、プロジェクトマネジメントスキルの向上や見積もりの精査、スケジュールの厳守に取り組んでいます。

(3) 製品・サービスの品質問題


提供する製品やサービスにおいて、バグや不具合などの品質問題が発生した場合、改修コストや損害賠償が発生する可能性があります。また、社会的な信用の失墜につながる恐れもあります。これに対し、品質保証本部を設置し、設計から運用までの各工程で品質管理を徹底しています。

(4) 人材に関するリスク


情報サービス業界では人材の流動化が進んでおり、計画通りに優秀な人材を確保・育成できない場合、経営基盤の維持・拡大に支障をきたす可能性があります。同社は新卒・キャリア採用の強化や、教育環境の充実、働き方改革による満足度向上に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。