YE DIGITAL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

YE DIGITAL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

YE DIGITALは東証スタンダード市場に上場し、ビジネスおよびIoTソリューション事業を展開する企業です。安川電機グループとして製造業で培った技術力を強みに企業のDXを支援しています。直近の業績は売上高203億円、営業利益16億円と増収増益で推移し、着実な成長を遂げています。


※本記事は、YE DIGITALの有価証券報告書(第49期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. YE DIGITALってどんな会社?


ビジネスシステム構築やIoT・AIを活用したソリューションを提供し、企業のDXを総合的に支援します。

(1) 会社概要


1978年に安川電機製作所(現安川電機)の情報処理機能を分離し、安川情報システムとして設立されました。2003年の東証第二部上場を経て、2019年にYE DIGITALへ商号を変更しています。2020年には工場自動化に関する事業を分割したほか、2024年には物流DXサービスセンターを開設しました。

同社グループは連結で690名、単体で528名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社であり親会社でもある安川電機で、第2位は同社の従業員持株会、第3位は外国法人等となっています。

氏名 持株比率
安川電機 38.93%
YE DIGITAL従業員持株会 5.19%
MSIP CLIENT SECURITIES (常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) 4.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は玉井裕治氏が務めており、社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
玉井裕治 代表取締役社長 1986年同社入社。2014年執行役員、2018年常務執行役員、2021年取締役専務執行役員を経て、2022年より現職。
本松隆之 取締役執行役員管理本部長 1989年安川電機製作所入社。同社事業企画部長等を経て、2022年に同社へ出向し管理本部経理部長。2023年同社へ転籍し現職。
江藤知樹 取締役常勤監査等委員 1993年同社入社。組込ソリューション事業部長や技術開発本部副本部長、サービスビジネス本部長等を歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、下池正一郎(安川電機執行役員ICT本部長)、三浦正道(三浦・奥田・杉原法律事務所パートナー)、金澤美冬(プロティアン代表取締役社長)、相良陽一(安川電機監査部長)、野毛由文(ものづくりデザインラボ代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、情報サービス事業の単一セグメントですが、「ビジネスソリューション事業」および「IoTソリューション事業」の2つの事業を展開しています。

(1) ビジネスソリューション事業


企業向け基幹システム(販売管理、生産管理など)の構築や、移動体通信事業者向けシステムの開発、ネットワークやシステム基盤の設計・開発、システムの運用・保守といったアウトソーシングサービスを総合的に提供し、企業のシステム基盤を支えています。

主な収益源は、システム構築やソフトウエア開発の受託に対する対価、および運用や保守に対するサービス利用料です。事業の運営は同社が主体となりつつ、システムの運用・保守やソフトウエア開発の一部を子会社のYE DIGITAL Kyushuに委託して提供しています。

(2) IoTソリューション事業


物流DXや畜産DX、スマートシティ向けのIoTソリューションの構築をはじめ、AIやビッグデータ分析、セキュリティ関連製品、製品組込ソフトの開発、産業用・公共用の制御系アプリケーションシステムの構築などを幅広く提供しています。

収益源は、IoTプラットフォームやソリューションのシステム構築費用、製品組込ソフト等の受託開発費用のほか、セキュリティ製品等の販売代金です。当事業の運営は主に同社が担い、システム開発の一部を子会社のYE DIGITAL Kyushuや関連会社のアイキューブデジタルに委託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで推移しており、堅調な成長を続けています。経常利益も売上の増加に伴い拡大傾向にあり、利益率も直近では8%台後半にまで上昇するなど、収益性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 137億円 162億円 195億円 199億円 203億円
経常利益 7億円 8億円 16億円 15億円 18億円
利益率(%) 5.3% 5.2% 8.0% 7.7% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 5億円 10億円 10億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、売上高の微増に対して売上総利益が大きく伸びており、売上総利益率は28%台に向上しています。これに伴い営業利益も拡大し、本業の稼ぐ力が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 199億円 203億円
売上総利益 52億円 58億円
売上総利益率(%) 26.3% 28.7%
営業利益 14億円 16億円
営業利益率(%) 7.1% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が20億円(構成比49%)、賃借料が5億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のビジネスソリューション事業は堅調に推移し、前期から微増となりました。一方のIoTソリューション事業は、物流DX分野などでの受注が拡大し、売上高が増加して成長を牽引しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
ビジネスソリューション事業 158億円 159億円
IoTソリューション事業 41億円 44億円
連結(合計) 199億円 203億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業利益で借入返済を行いつつ、投資も手元資金で賄う優良企業の状態にあります。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.8%で、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 13億円 14億円
投資CF -2億円 -5億円
財務CF -3億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「高い技術力とお客様本位の姿勢によって、ITを活用したソリューションを提供し、豊かな社会づくりに貢献するとともに、社員の幸福と永続的な企業の繁栄をめざす」という経営理念を掲げています。技術とサービスを通じてデジタル社会をリードし、明るい未来を創出することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員全員が働きがいを持ち、その能力を最大限に引き出すことを重視しています。さらに、既存事業を拡張する新たな領域へと果敢に挑戦し、イノベーションを生み出す企業文化の形成に注力しており、社員の成長と組織の活力を事業の目標達成に結びつける姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画(2025-2027)において「最高のエクスペリエンスを支援するデジタル・サービス企業」を目指すという方針を掲げています。この計画の中で、以下の数値を目標として設定しています。

・売上高:250億円
・営業利益:30億円
・営業利益率:12.0%
・ROE:25.0%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の重点施策として、顧客起点のマーケティング戦略や、カスタマーサクセスに導くトータル支援の強化を掲げています。新規獲得した重点顧客との接点を最大限に活用して受注拡大を図るとともに、新サービスの早期事業化・収益化を推進します。さらに、生成AIの全社的な活用を加速させ、生産性と収益性の最大化を目指す戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「自主的・自律的でビジネスレジリエンスが高い戦略的人材」の育成に注力し、社員の挑戦と成長を応援しています。人材ポートフォリオマネジメントを強化し、人材価値の最大限の発揮や自己実現を後押しする方針です。また、働きがいのあるオフィス環境やメンタルサポートを整備し、社員のウェルビーイング向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 42.5歳 15.1年 7,980,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 72.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -

※同社のパート・有期労働者の区分には男性の労働者がいないため、男女賃金差異(パート・有期労働者)は該当しません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイスコア(68点)、対売上高研究開発投資率(4.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客への売上依存


同社の売上高のうち、親会社である安川電機およびそのグループ会社向けが約半数を占めています。また、富士通グループ向けも1割程度を占めています。そのため、これらの主要顧客における経営方針の転換や事業展開の大幅な変化、あるいはIT投資動向の変化が生じた場合、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) システム構築におけるプロジェクト管理


システム構築やソフトウエア開発の遂行過程において、予期せぬ事態が発生しプロジェクトの中断や遅延が生じるリスクがあります。これにより採算が悪化し、不採算プロジェクトが発生した場合には、同社グループの経営成績や財務状態に悪影響を与える可能性があります。

(3) 優秀な人材の確保と定着


情報サービス業界において優秀な人材の確保と育成は重要な経営基盤です。人材の流動化が進む中で、計画どおりに新卒や即戦力となるキャリア人材を確保・定着させられない場合、今後の事業拡大が阻害され、同社グループの成長性や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティと機密情報の管理


顧客のシステム構築に伴い、重要な情報資産を預かる機会が多くあります。サイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスへの感染等によって個人情報や機密情報が漏洩した場合、損害賠償請求やIT企業としての社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。