※本記事は、TSIホールディングスの有価証券報告書(第15期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TSIホールディングスってどんな会社?
TSIホールディングスは、国内外で多様なアパレルブランドを展開し、新たなライフスタイルを提案する企業です。
■(1) 会社概要
2011年に東京スタイルとサンエー・インターナショナルの共同持株会社として設立され、東京証券取引所に上場しました。その後、国内外の企業の子会社化を積極的に進め、2021年にはグループ組織再編により中核子会社の商号をTSIへ変更しました。2025年にはデイトナ・インターナショナルを新たに子会社化しています。
同社グループの従業員数は連結で4,108名、単体で12名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社であるアルペン、第3位には日本生命保険が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.70% |
| アルペン | 6.09% |
| 日本生命保険(相) | 5.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長CEOは下地毅氏が務めています。社外取締役の比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下地毅 | 代表取締役社長CEO | 1997年上野商会入社。商品本部長や社長を経て、2021年TSI代表取締役社長。2025年より現職。 |
| 前川正典 | 取締役COO | 1999年サンエー・インターナショナル入社。ナチュラルビューティーベーシック事業部長や子会社社長を歴任。2025年より現職。 |
| 内藤満 | 取締役CFO | 2008ってみずほ銀行市川支店長。2014年TSIグルーヴアンドスポーツ入社、財務経理部門を歴任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、市川奈緒子(元ノバルティスファーマ事業部長)、田邊るみ子(元HOYA財務部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレル関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■アパレル関連事業
主に衣料品の企画、製造、販売、ライセンスブランド事業及び生産・物流事業を行っています。百貨店やファッションビル等の実店舗に加え、自社ECサイト等を通じて多様な顧客層に向けてファッション・アパレル商品を提供しています。
一般消費者からの商品販売代金や卸売先からの商品代金が主な収益源です。事業運営は中核子会社であるTSIを中心に、デイトナ・インターナショナルやアルページュなどのグループ各社が事業を展開しています。
■その他の事業
アパレル関連事業に付帯する業務や、新たなライフスタイルを提案する事業を展開しています。具体的には、傘の企画・製造・卸売、販売代行、人材派遣事業、店舗設計管理事業、飲食事業、化粧品等の仕入販売が含まれます。
サービスの提供先からの手数料や商品販売代金が収益源です。傘事業はウォーターフロント、販売代行はエス・グルーヴ、店舗設計はプラックス、求人サービスはREADY TO FASHION等、各専門子会社が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は概ね増加傾向にあり、堅調に推移しています。経常利益は一時的に落ち込みが見られたものの、収益構造改革の成果やグループ会社の寄与により、直近では大きく回復しました。親会社所有者帰属の当期利益は、特別利益や特別損失の計上により年度ごとに変動が見られます。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1404億円 | 1545億円 | 1554億円 | 1566億円 | 1671億円 |
| 経常利益 | 58億円 | 39億円 | 38億円 | 21億円 | 54億円 |
| 利益率(%) | 4.2% | 2.5% | 2.4% | 1.3% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | -14億円 | 12億円 | 138億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高、利益ともに前期から増加しました。特に、仕入原価率の低減や過年度在庫の整理による適正価格販売の徹底など、収益構造改革が奏功したことで売上総利益率が改善しています。さらに、販管費のコントロールも徹底され、営業利益率は大きく向上しました。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1566億円 | 1671億円 |
| 売上総利益 | 840億円 | 915億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.6% | 54.7% |
| 営業利益 | 16億円 | 43億円 |
| 営業利益率(%) | 1.0% | 2.6% |
販売費及び一般管理費のうち、賃借料が177億円(構成比20%)、給与手当が167億円(同19%)、販売手数料が98億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のアパレル関連事業は、メンズブランドやアウトドアブランドの好調に加え、新たに連結対象となった子会社の寄与もあり、増収増益となりました。一方、その他の事業は、事業ポートフォリオの入れ替え等の影響もあり、減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益(2026年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アパレル関連事業 | 1506億円 | 1621億円 | 45億円 | 69億円 | 4.3% |
| その他 | 60億円 | 50億円 | 4億円 | 3億円 | 6.0% |
| 連結(合計) | 1566億円 | 1671億円 | 16億円 | 43億円 | 2.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
勝負型:本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 57億円 | -77億円 |
| 投資CF | 283億円 | -274億円 |
| 財務CF | -151億円 | 170億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「私たちは、ファッションを通じて、人々の心を輝かせる価値を創造し、明日を生きていく歓びを、社会と共に分かち合います。」という経営理念のもと、「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す。」をパーパスとして掲げています。健全な地球環境と人権が尊重される社会を事業の礎としています。
■(2) 企業文化
サステナビリティ経営を事業活動の核とし、ダイバーシティを重視しています。「The 6 Values and Promises(6つの価値観と約束)」として、「共創」「挑戦とイノベーション」「多様性と包括性」「フェア&ウェルネス」「学びと成長」「社会への貢献」を掲げ、多様な人材がパーパスのもとに挑戦できる組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「TSI Innovation Program 2027 (TIP27)」を策定し、構造改革による「筋肉質な収益体質への転換」と「経営基盤の再整備」に注力しています。最終年度となる本年度は、これまでの施策を確実に成果へと結びつけることを目標としています。
* 営業利益75億円
■(4) 成長戦略と重点施策
収益構造改革の仕組みを定着させ、外部環境の変化に左右されない高収益体質を確立します。原価低減と需給管理の高度化、店舗運営の効率化を進め、売上総利益率の向上を図ります。さらに、経営資源を成長領域へ重点配分し、新規子会社とのシナジー創出や既存ブランドの重点領域への投資集中により、売上高の再成長を加速させます。デジタル領域では自社ECの会員基盤を活用した顧客生涯価値の向上にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
価値創造の根幹をなす人間を最重要な経営資源と位置づけています。「グループ人権方針」や「人事ポリシー」に基づき、多様性を尊重し、すべての従業員が精神的・物質的な幸福を確保し、創造性を高められる環境整備に努めています。また、次代を担うリーダーの育成に向けて、階層別研修や多様なテーマの教育プログラムを提供し、自律的なキャリア形成を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 56.7歳 | 18.7年 | 14,964,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.8% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 70.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員における女性比率(65.0%)、障がい者雇用率(2.88%)、育児休業復職率(女性)(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ファッション商品の流行変動リスク
同社の主力商品であるファッション・アパレル商品は、流行に左右されやすい特性があります。消費者ニーズに柔軟に対応すべく市場情報の収集や商品企画力の向上に努めていますが、急激な流行の変化が生じた場合、売上や在庫に悪影響を及ぼし、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 気象状況の変化による影響
アパレル商品の売れ行きは、長梅雨、冷夏、暖冬、台風といった予測不能な気象状況の変化に大きく影響を受けます。天候不順による売上の低迷や過剰在庫の処分が発生するほか、集中豪雨などの自然災害によって店舗や物流拠点が被害を受け、休業を余儀なくされるリスクがあります。
■(3) 店舗開発と出店政策のリスク
同社は周辺の商圏環境や立地条件、店舗損益予測を分析した上で店舗の出店を進めていますが、計画通りに出店が行えなかった場合や、ブランド閉鎖・不採算店舗の整理により多数の退店が発生する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 気候変動とサステナビリティに関するリスク
気候変動をはじめとする地球環境の変化は、人々の生活や経済活動に変化をもたらし、事業運営や経営戦略に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はTCFDの提言に賛同し、温室効果ガスの排出削減目標を設定するなど、サステナビリティ全般の取り組みを強化して対応を進めています。



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