※本記事は、株式会社TSIホールディングス の有価証券報告書(第14期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TSIホールディングスってどんな会社?
複数の有名アパレルブランドを擁し、企画から製造、販売までを一貫して手がけるファッション企業グループです。
■(1) 会社概要
2011年6月、東京スタイルとサンエー・インターナショナルが共同株式移転により設立し、上場しました。2014年に事業を子会社へ移管して持株会社体制を強化し、2021年にはグループ再編として事業子会社を統合し、中核事業会社であるTSIを発足させました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は3,837名(単体8名)です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は英国の資産運用会社が管理するファンド、第3位はスポーツ用品販売を行うアルペンとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.66% |
| AVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLC | 5.23% |
| アルペン | 5.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長CEOは下地 毅氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下地 毅 | 代表取締役社長CEO | 1997年上野商会入社。取締役商品部長などを経て、2019年よりTSIホールディングス執行役員。営業本部長などを歴任し、2025年3月より現職。 |
| 前川 正典 | 取締役COO | 1999年サンエー・インターナショナル入社。執行役員などを経て、ナノ・ユニバース代表取締役社長などを歴任。2025年3月より現職。 |
| 内藤 満 | 取締役CFO | 2008年みずほ銀行市川支店長。2014年TSIホールディングス入社。財務経理部長、コーポレート本部長などを経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、市川 奈緒子(元産業革新機構マネージングディレクター)、田邊 るみ子(公認会計士・元HOYA財務部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレル関連事業」および「その他の事業」事業を展開しています。
■(1) アパレル関連事業
「マーガレット・ハウエル」「パーリーゲイツ」「ナノ・ユニバース」「アヴィレックス」など、多岐にわたるブランドの婦人服、紳士服等の企画、製造、輸入、販売を行っています。百貨店、ファッションビル、駅ビル、アウトレット等の実店舗およびECサイトを通じて、一般消費者に商品を提供しています。
主な収益源は、消費者への商品販売による売上です。運営は、中核事業会社のTSIをはじめ、アルページュ、ジャック、アンドワンダーなどの連結子会社に加え、米国や英国などの海外子会社が各ブランドの特性に合わせて事業を展開しています。
■(2) その他の事業
アパレル事業に付帯する販売代行および人材派遣、合成樹脂製品の製造販売、店舗設計監理、飲食事業、化粧品・香水・石鹸等の仕入販売など、多角的なサービスを提供しています。
収益源は、人材派遣料、製品販売代金、設計監理料、飲食代金などです。運営は、販売代行等を行うエス・グルーヴ、店舗設計のプラックス、化粧品販売のLaline JAPAN、合成樹脂製品を扱うトスカバノック(2025年6月譲渡予定)などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はコロナ禍の影響からの回復基調にあり、直近では1,500億円台で推移しています。利益面では、前期までは経常利益率が数%程度で推移していましたが、当期は投資有価証券や不動産の売却などにより、当期利益が大きく跳ね上がりました。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,341億円 | 1,404億円 | 1,545億円 | 1,554億円 | 1,566億円 |
| 経常利益 | -104億円 | 58億円 | 39億円 | 38億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | -7.7% | 4.2% | 2.5% | 2.4% | 1.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 39億円 | 10億円 | 31億円 | 48億円 | 152億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増しましたが、売上原価率の上昇等により売上総利益は減少しました。販管費は抑制傾向にありますが、営業利益は減少しています。一方、当期は固定資産売却益などの特別利益を計上したため、最終的な当期純利益は大幅に増加しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,554億円 | 1,566億円 |
| 売上総利益 | 847億円 | 840億円 |
| 売上総利益率(%) | 54.5% | 53.6% |
| 営業利益 | 18億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 1.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が165億円(構成比20.0%)、賃借料が146億円(同17.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
アパレル関連事業は、インバウンド需要の取り込みや一部ブランドの好調により売上高は微増しましたが、利益面では収益構造改革の効果等により大幅な増益となりました。その他の事業も増収増益となり、全体として利益率の改善が見られます。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アパレル関連事業 | 1,500億円 | 1,506億円 | 32億円 | 45億円 | 3.0% |
| その他 | 54億円 | 60億円 | 3億円 | 4億円 | 6.7% |
| 調整額 | -8億円 | -8億円 | -17億円 | -33億円 | - |
| 連結(合計) | 1,554億円 | 1,566億円 | 18億円 | 16億円 | 1.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、不動産売却益の計上等により、営業活動によるキャッシュ・フローは大幅な収入に転じました。投資活動では、不動産等の売却が取得を大きく上回り、多額の収入を生み出しました。一方、財務活動では、借入金の返済や自己株式の取得、配当金の支払い等により、支出が増加しました。これらの結果、現金及び現金同等物の残高は大きく増加しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -5億円 | 57億円 |
| 投資CF | 35億円 | 283億円 |
| 財務CF | -73億円 | -151億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す。」をパーパス(存在意義)として掲げています。ファッションを通じて人々の心を輝かせる価値を創造し、明日を生きていく歓びを社会と共に分かち合うことを目指しています。
■(2) 企業文化
サステナビリティ経営を事業活動の礎とし、財務価値と非財務価値の両輪での成長を重視しています。また、多様性を尊重し、すべての従業員が活躍できる環境づくりを推進しており、ダイバーシティ&インクルージョン(DE&I)を経営戦略の一部と位置づけています。
■(3) 経営計画・目標
2027年に向けた中期経営計画「TSI Innovation Program 2027(TIP27)」を策定し、収益体質の筋肉質化と成長基盤の整備を進めています。低収益事業からの撤退や在庫適正化を進める一方、成長性と収益性の高いブランドへの経営資源集中を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
抜本的な収益構造改革として、仕入原価低減、需給管理の適正化、店舗収益構造見直し、システム効率化、販管コスト削減の5つのテーマに取り組んでいます。また、成長回帰に向けてECサイト「mix.tokyo」のリニューアルや新規ブランド開発、M&Aによる事業拡大を積極的に推進していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Focus on Purpose!」をスローガンに、「学びと成長」「フェア&ウェルネス」など6つの価値観と約束を掲げています。多様な人材が自律的にキャリアを築けるよう、OJTに加えe-ラーニング等の研修プログラムを提供し、ワークライフバランスの推進や健康経営にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 56.6歳 | 19.6年 | 14,973,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
※同社は持株会社であり、従業員数が少ないため、平均給与が高くなる傾向があります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.9% |
| 男性育児休業取得率 | 41.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 79.1% |
※上記は連結子会社である株式会社TSIのデータです(提出会社は公表義務対象外のため)。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.7%)、中途採用者採用割合(52.0%)、管理職の女性比率(31.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ファッション・アパレル商品の特性
主力商品は流行に左右されやすい特性があります。消費者ニーズに対応すべく情報収集や企画力向上に努めていますが、急激なトレンドの変化があった場合、売上や在庫評価に影響し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 経済状況や気象状況
商品の売れ行きは個人の可処分所得や購買意欲などの景気動向に影響を受けます。また、長梅雨や暖冬などの予測不能な気象条件は、季節商品の販売不振や在庫処分を通じた損失を招き、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 品質管理
商品の品質管理には万全を期していますが、予期せぬ品質トラブルや製造物責任に関わる事故が発生した場合、ブランドイメージの毀損や回収コストの発生などにより、業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。



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