ALSOK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ALSOK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するALSOKは、機械警備や常駐警備をはじめとするセキュリティ事業を中核に、FM事業等や介護事業、海外事業を幅広く展開する企業です。直近の業績は、売上高が前年同期比8.2%増の5970億円、経常利益が同15.8%増の499億円と堅調な増収増益を達成しています。


※本記事は、ALSOKの有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ALSOKってどんな会社?


セキュリティ事業を中核としながら、設備管理や介護、海外事業まで安全・安心を支える多様なサービスを提供しています。

(1) 会社概要


同社は1965年に綜合警備保障として設立され、1967年に法人向け機械警備「綜合ガードシステム」を開発・発売しました。2002年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2003年に新コーポレートブランド「ALSOK」を制定しています。2025年7月には商号をALSOKに変更し、さらなるブランド価値の向上を推進しています。

現在の従業員数は連結で6万6949名、単体で1万1741名です。筆頭株主は信託業務を行う金融機関であり、第2位および第3位には事業会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.38%
綜合商事 7.60%
埼玉機器 5.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役グループCEOは村井豪氏、代表取締役グループCOOは栢木伊久二氏が務めています。取締役11名のうち、5名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
村井豪 代表取締役グループCEO 1999年に同社入社。第一地域本部長、常務執行役員等を経て、2022年6月より現職。
栢木伊久二 代表取締役グループCOO 1982年に同社入社。第四地域本部長、常務執行役員等を経て、2022年6月より現職。
鈴木基久 取締役(専務執行役員) 2015年警察庁交通局長。2016年に同社常務執行役員として入社し、2026年4月より現職。


社外取締役は、池永肇恵(元内閣府男女共同参画局長)、三島正彦(元三菱重工業顧問)、岩崎賢二(元東京海上ホールディングス取締役副社長)、森田宏之(元日鉄ソリューションズ代表取締役社長)、田中里沙(事業構想大学院大学学長)です。

2. 事業内容


同社グループは、セキュリティ事業、FM事業等、介護事業、海外事業の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) セキュリティ事業


法人向けの機械警備サービス「ALSOK-G7」や各種駆けつけサービス、個人向けのホームセキュリティ「HOME ALSOK」、施設における常駐警備、現金や有価証券を安全に輸送する警備輸送事業など、多様な安全・安心ニーズに応えるサービスを展開しています。
収益は、ご契約先である法人および個人からの警備サービス利用料等から得ています。運営は同社および、ALSOK東京やALSOK常駐警備などの各地域の連結子会社が行っています。

(2) FM事業等


各種建物設備の修繕・リニューアル工事、電気工事、防火・防災業務、清掃や設備管理など、建物の運営・管理を総合的にサポートするファシリティマネジメント事業を展開しています。また、災害対策用品やAEDのレンタル・販売等も行っています。
収益は、各種施設を所有・運営する顧客からの工事代金や設備管理料などから得ています。運営は同社や、ALSOKファシリティーズ、日本ファシリオなどの連結子会社が行っています。

(3) 介護事業


居宅介護支援や訪問介護、訪問看護などの在宅介護サービスから、介護付き有料老人ホームやグループホームといった施設介護サービスまで、幅広い介護・生活支援サービスを提供しています。また、福祉用具の販売・レンタルも手掛けています。
収益は、介護保険を通じた給付や利用者からのサービス利用料から得ています。運営は、ALSOK介護、ALSOKジョイライフ、ALSOKらいふケアなどの連結子会社が行っています。

(4) 海外事業


日系企業の進出が多い東南アジアを中心に、タイ、ベトナム、インドネシアなど7か国において事業を展開しています。常駐警備や機械警備にとどまらず、防災、清掃、ビル施設管理などのファシリティマネジメント分野にも事業領域を広げています。
収益は、現地に進出する日系企業や現地企業からのサービス利用料から得ています。運営は、PT.Shield-On Service Tbkをはじめとする各国の現地連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に成長を続けており、堅調な拡大基調にあります。経常利益についても一時的な増減はあったものの、当期は過去最高を更新するなど高い水準で推移しており、安定した収益基盤と持続的な成長力がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4891億円 4922億円 5214億円 5519億円 5970億円
経常利益 437億円 382億円 412億円 431億円 499億円
利益率(%) 8.9% 7.8% 7.9% 7.8% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 239億円 238億円 258億円 246億円 271億円

(2) 損益計算書


売上高の伸長に伴い、売上総利益および営業利益ともに前年を上回る実績となっています。特に営業利益は前年同期比で大幅な増益を達成しており、利益率の改善も確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5519億円 5970億円
売上総利益 1310億円 1431億円
売上総利益率(%) 23.7% 24.0%
営業利益 402億円 469億円
営業利益率(%) 7.3% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当が473億円(構成比49%)、福利厚生費が86億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて前年同期比で増収を達成しています。特に中核となるセキュリティ事業が着実に成長を牽引しているほか、FM事業等や介護事業、海外事業も順調に事業規模を拡大しており、多角的な事業展開が奏功しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
セキュリティ事業 3919億円 4208億円
FM事業等 797億円 930億円
介護事業 534億円 552億円
海外事業 268億円 280億円
連結(合計) 5519億円 5970億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業活動で安定的な資金を稼得し、その資金で投資を行いながら借入の返済も進めている状態であり、堅実な「健全型」となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 426億円 538億円
投資CF -156億円 -392億円
財務CF -363億円 -78億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.8%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社の経営理念は、『我々は、「ありがとうの心」と「武士の精神」をもって事業を推進し、お客様と社会の安全・安心の確保のために最善を尽くす。』です。これをパーパスとして掲げ、顧客に対して最高の商品・サービスを提供することを最優先とするとともに、社会の発展に貢献するサービスの展開を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念にも掲げられている「ありがとうの心」と「武士の精神」を重視しています。また、企業倫理を確立するための「ALSOK憲章」や「ALSOKの企業倫理」をすべての役員・社員に配付し、高い倫理観に基づいた行動を実践する文化を醸成しています。「自ら、必ずやり遂げる」という強い覚悟をもって進化への挑戦を続ける企業風土も特徴です。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益性の向上と株主資本の最適活用を図るため、中期的な経営指標として「連結売上高経常利益率」および「ROE(連結自己資本当期純利益率)」を重視しています。具体的には、中期的には両指標とも以下の水準を目標として掲げています。

* 連結売上高経常利益率:10%以上
* ROE(連結自己資本当期純利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、多様化する社会のリスクに対し、セキュリティ分野にとどまらない幅広い領域で事業を推進する成長戦略を掲げています。具体的には以下の施策に注力しています。

* ホームセキュリティ等の成長市場開拓による事業拡大
* 自然災害リスク等に対応するサービス領域の拡充
* DXやAIを活用した業務プロセスの変革(BPR)の推進
* 多様な人材の確保と育成による人的資本の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、企業の成長の源泉は人財であるとの考えのもと、個々の働き手が能力を最大限に発揮できる環境整備に取り組んでいます。新入社員向けの初任研修から専門研修、DX教育まで充実したプログラムを用意し、資格取得や人事交流を通じて社員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、多様な人材が活躍できる職場づくりや健康経営の推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 18.3年 6,221,418円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 48.1%
男女賃金差異(全労働者) 74.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 82.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 81.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、専門研修受講者数(8770名)、eラーニング受講者数(26万8246名)、デジタル教育受講者数(4万7169名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 物価変動・供給不足に関するリスク


賃上げ等の生産コスト上昇や、米国通商政策等の内外情勢の変化が、継続的なサービス提供に影響を及ぼす可能性があります。同社は適正な価格改定や調達先の拡大等で対応しています。

(2) 人材の確保・育成に関するリスク


国内の生産年齢人口減少が続く中、幅広い業務領域を担う質の高い人材の確保が困難となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は処遇改善や多様な働き方の提供により人材定着を推進しています。

(3) 情報管理に関するリスク


個人情報や機密情報の流出等が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は情報セキュリティ基本方針を定め、全社的な管理体制とインシデント対応体制を整えています。

(4) 技術環境の変化に関するリスク


ドローン、AI、5G等を活用した新たな商品・サービス開発が求められる中、技術環境の変化に適切に対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はDXの積極的な推進によりリスク回避に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。