※本記事は、綜合警備保障株式会社 の有価証券報告書(第55期、自 2019年4月1日 至 2020年3月31日、2020年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 綜合警備保障ってどんな会社?
警備業界のリーディングカンパニーとして、機械警備や常駐警備、警備輸送などのセキュリティサービスを全国で提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1965年に警備請負業を主たる目的として設立され、1970年には日本万国博覧会の常駐警備を実施しました。2002年に東京証券取引所市場第一部に上場し、翌2003年には新コーポレートブランド「ALSOK」を制定しています。2012年には個人向けブランド「HOME ALSOK」を立ち上げ、2020年には介護事業の強化に向けて株式会社らいふホールディングスを子会社化するなど、事業領域を拡大しています。
同社グループは連結子会社75社、持分法適用会社10社で構成され、連結従業員数は37,902名、単体では11,704名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の綜合商事であり、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は資産管理会社の埼玉機器です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 綜合商事 | 7.29% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.52% |
| 埼玉機器 | 5.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性1名(監査役含む)の計16名で構成され、女性役員比率は6.3%です。代表取締役会長最高経営責任者(CEO)は村井温氏、代表取締役社長(社長執行役員)最高執行責任者(COO)は青山幸恭氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村井 温 | 代表取締役会長最高経営責任者(CEO) | 警察庁中部管区警察局長等を経て、1997年同社顧問。1998年代表取締役副社長、2001年社長を経て、2011年より最高経営責任者(CEO)。2012年より現職。 |
| 青山 幸恭 | 代表取締役社長(社長執行役員)最高執行責任者(COO) | 財務省関税局長等を経て、2008年同社常務執行役員。2010年代表取締役副社長執行役員。2011年最高執行責任者(COO)、2012年より現職。 |
| 栢木 伊久二 | 代表取締役副社長(副社長執行役員)ALSOKカンパニー長東日本担当営業本部長法人担当東日本営業担当 | 1982年同社入社。第四地域本部長、常務執行役員運用総括担当等を経て、2018年代表取締役専務執行役員。2019年より現職。 |
| 穂苅 裕久 | 取締役(専務執行役員)海外事業担当営業本部副本部長営業企画・管理担当営業推進担当金融担当海外事業本部長 | 日本銀行業務局長を経て、2011年同社執行役員。常務執行役員営業本部副本部長等を経て、2018年より取締役専務執行役員。 |
| 村井 豪 | 取締役(専務執行役員)人事総括担当総務・広報担当東京オリンピック・パラリンピック推進本部推進担当企業倫理担当コンプライアンス担当リスク管理担当情報資産管理担当統括カンパニー担当 | 1999年同社入社。執行役員第一地域本部長、常務執行役員等を経て、2019年取締役専務執行役員。2020年より統括カンパニー担当等を兼務。 |
| 野村 茂樹 | 取締役(常務執行役員)関西駐在西日本担当第二地域本部長営業本部副本部長西日本営業担当 | 1984年同社入社。執行役員人事担当、常務執行役員中日本担当等を経て、2017年より取締役常務執行役員。 |
| 鈴木 基久 | 取締役(常務執行役員)運用総括担当警送構造改革担当東京オリンピック・パラリンピック推進本部長 | 警察庁交通局長を経て、2016年同社常務執行役員。2018年運用総括担当等を務め、2019年より取締役常務執行役員。 |
| 岸本 孝治 | 取締役(常務執行役員)経理担当内部統制担当調達担当 | 1985年同社入社。経理部長、執行役員経理副担当を経て、2018年常務執行役員。2020年より取締役常務執行役員。 |
社外取締役は、小野誠英(元三菱総合研究所代表取締役副社長)、門脇英晴(元三井住友フィナンシャルグループ代表取締役副社長)、安藤豊明(元東京海上日動火災保険常務取締役)、末続博友(元新日本製鐵執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「セキュリティ事業」「綜合管理・防災事業」「介護事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) セキュリティ事業
機械警備、常駐警備、警備輸送の3つの業務で構成されています。機械警備は法人・個人向けに警報機器を設置し遠隔監視・緊急対処を行うサービス、常駐警備は施設に警備員を配置するサービス、警備輸送は現金等の貴重品輸送やATM管理などを行います。
主な収益源は、契約先からの警備料金やシステム利用料、管理手数料です。運営は主に綜合警備保障が中心となり、ALSOK北海道などの地域子会社や、ALSOK常駐警備などの専門子会社と連携して行っています。
■(2) 綜合管理・防災事業
ビルの設備管理、清掃、電話対応、リニューアル工事などの施設維持管理運営や、消防用設備の点検・工事、AEDや災害対策用品の販売を行っています。顧客はビルオーナーやマンション管理組合、一般企業など多岐にわたります。
収益源は、施設管理業務の委託料や工事代金、物品販売代金などです。運営は綜合警備保障のほか、日本ファシリオや日本ビル・メンテナンス、ALSOKビルサービスなどのグループ会社が担っています。
■(3) 介護事業
訪問介護、デイサービス、有料老人ホーム、グループホームの運営、福祉用具のレンタルなどを提供しています。高齢者を対象としたサービスで、在宅から施設介護まで幅広いニーズに対応しています。
収益源は、利用者からの介護サービス利用料や介護保険給付費などです。運営は、株式会社ウイズネット、株式会社HCM、ALSOKあんしんケアサポート株式会社などの子会社が行っており、2020年4月からは株式会社らいふホールディングスも加わりました。
■(4) その他
情報セキュリティ事業として、PC管理サービスやホームページ改ざん検知サービスなどを提供するほか、携帯端末による見守りサービス「まもるっく」、QRコード決済を中心としたキャッシュレス決済サービスなどを展開しています。
収益源は、サービスの利用料や手数料収入などです。運営は綜合警備保障および関連子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加しており、安定した成長を続けています。経常利益も増加傾向にあり、利益率も8%前後で推移しています。当期純利益も順調に伸長しており、収益性が維持・向上されていることが読み取れます。
| 項目 | 2016年3月期 | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,818億円 | 4,133億円 | 4,360億円 | 4,435億円 | 4,601億円 |
| 経常利益 | 307億円 | 303億円 | 319億円 | 323億円 | 377億円 |
| 利益率(%) | 8.0% | 7.3% | 7.3% | 7.3% | 8.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 167億円 | 166億円 | 180億円 | 183億円 | 212億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約24%で安定しており、営業利益率は前期より改善し7.7%となりました。増収効果に加え、利益率の改善も進んでいることがわかります。
| 項目 | 2019年3月期 | 2020年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,435億円 | 4,601億円 |
| 売上総利益 | 1,084億円 | 1,143億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.4% | 24.8% |
| 営業利益 | 307億円 | 356億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 7.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当が396億円(構成比50%)、福利厚生費が73億円(同9%)を占めています。売上原価においては、労務費や外注費が主要な項目となっています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収となりました。主力のセキュリティ事業は堅調に推移し、利益も増加しました。綜合管理・防災事業は売上が10%以上伸長し、利益も増加しました。介護事業も増収増益を達成しており、全セグメントで収益性が確保されています。
| 区分 | 売上(2019年3月期) | 売上(2020年3月期) | 利益(2019年3月期) | 利益(2020年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| セキュリティ事業 | 3,497億円 | 3,581億円 | 328億円 | 372億円 | 10.4% |
| 綜合管理・防災事業 | 630億円 | 693億円 | 64億円 | 66億円 | 9.6% |
| 介護事業 | 266億円 | 281億円 | 3億円 | 4億円 | 1.4% |
| その他 | 43億円 | 46億円 | 9億円 | 10億円 | 21.8% |
| 調整額 | - | - | -97億円 | -96億円 | - |
| 連結(合計) | 4,435億円 | 4,601億円 | 307億円 | 356億円 | 7.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2019年3月期 | 2020年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 288億円 | 339億円 |
| 投資CF | -149億円 | -134億円 |
| 財務CF | -109億円 | -151億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均(9.4%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.8%で市場平均(非製造業24.2%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ありがとうの心」と「武士の精神」をもって社業を推進し、お客様と社会の安全・安心の確保のために最善を尽くすことを経営理念としています。これに基づき、最高の商品・サービスの提供を最優先とし、社員にとって働きがいのある会社の実現、収益拡大、警備業を中核とした新分野への展開、社会発展への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「社徳の確立」を基本精神とし、日本の警備業におけるリーディングカンパニーとして、法令順守と社徳のある会社を目指しています。お客様からの信頼を第一に考え、安全安心に係る社会インフラの一翼を担う企業として、従来の警備業の枠を超えたあらゆる分野でのビジネスチャンス拡大を図る姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Grand Design 2020」において、収益性の向上と株主資本の最適活用を目指しています。具体的には以下の数値目標を重視しています。
* ROE(連結自己資本当期純利益率):10%
* 経営指標:「売上高経常利益率」を重視
■(4) 成長戦略と重点施策
セキュリティ事業を中心に、綜合管理・防災事業、介護事業などを強化し、顧客のリスクやアウトソースニーズに応える方針です。少子高齢化に対応したコスト構造改革による収益基盤の強化、AIやIoT等の新技術を活用した商品・サービス開発、海外展開などを推進します。
* 新型コロナウイルス感染症への対応と新しい生活様式への適合
* 高齢者等の見守り、BCPソリューション、アウトソース対応等のニーズへの対応
* ICT・IoTを活用した警備の高度化と効率化
* 介護事業や施設管理等、セキュリティ事業とシナジーのある領域の拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
労働集約型事業である警備業及び介護業において、働き方改革を推進し、労働生産性の向上と処遇改善に取り組みながら、離職防止と採用体制の強化を図っています。グループ全体での人事交流、女性社員の配置先拡大、マルチタスク化等による柔軟な人事管理や、定年退職者が活躍可能な仕組みの導入などにより、質の高い人材の確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2020年3月期 | 40.2歳 | 17.2年 | 5,747,080円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 感染症の流行に関するリスク
新型コロナウイルス等の感染症に対し、対策本部を設置し感染拡大防止に努めていますが、警備員や介護施設での集団感染が発生した場合、サービス提供に影響を及ぼす可能性があります。また、イベント中止や休業による契約への影響も予想されますが、新たな安全安心ニーズへの対応を進めています。
■(2) 大規模災害等の発生に関するリスク
大規模災害により社員や施設が被災した場合、業務運営に支障が出る可能性があります。また、長期間の停電等によりネットワーク機能が停止した場合、サービス提供に影響が及ぶ恐れがあります。これに備え、BCPの策定やデータセンターのバックアップ体制構築を行っています。
■(3) 人材の確保・育成に関するリスク
労働集約型事業であるため、生産年齢人口の減少下で質の高い人材確保が困難になった場合、業績に影響する可能性があります。これに対し、働き方改革による処遇改善、採用強化、女性活躍推進、定年後再雇用制度の活用等により、人材の確保と育成に努めています。
■(4) 技術環境の変化に関するリスク
AI、5G、IoT等の技術革新に適切に対応できない場合、新たな商品・サービス開発が遅れ、競争力を失う可能性があります。最新技術の動向把握と積極的な活用、デジタルトランスフォーメーションの推進により、このリスクへの対応を図っています。



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