エスエルディー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスエルディー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、「kawara CAFE&DINING」などの飲食店舗運営や、IPコンテンツを活用したコラボカフェ等のコンテンツ企画サービスを展開しています。直近の業績は売上高が前期比2.1%増、経常利益が同3.4%増と、増収増益で推移しています。


※本記事は、株式会社エスエルディー の有価証券報告書(第22期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エスエルディーってどんな会社?


同社は「To Entertain People」を理念に、カフェダイニングの運営や空間プロデュースを行う企業です。

(1) 会社概要


2004年にイベント企画等を目的として設立され、翌2005年にカフェ業態1号店をオープンしました。2015年にJASDAQ(現スタンダード市場)へ上場を果たし、飲食とカルチャーを融合させた店舗展開を進めています。2017年にはDDグループ(現・親会社)と資本業務提携を締結し、グループ入りしました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社(単体)の従業員数は133名です。大株主構成については、筆頭株主は親会社であり飲食・アミューズメント事業等を展開するDDグループ、第2位は大手証券会社である野村證券となっています。

氏名 持株比率
DDグループ 42.96%
野村證券 3.47%
SB・A2号投資事業有限責任組合 2.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は有村 譲氏が務めています。取締役5名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
有村 譲 代表取締役社長 フードスコープ、ダイヤモンドダイニング等を経て2020年より現職。
刑部 孝一 取締役 フードスコープ、ダイヤモンドダイニング等を経て2025年より現職。


社外取締役は、木下 一(元仙台博報堂代表取締役社長)、吉井 一浩(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー)、山村 嘉克(元Candee代表取締役)です。

2. 事業内容


同社は、「飲食サービス」および「コンテンツ企画サービス」を展開しています。

飲食サービス


関東や主要都市の繁華街を中心に、「kawara CAFE&DINING」などのカフェダイニング業態や、「ワイン酒場 GabuLicious」などの飲食店舗を直営で展開しています。また、IPコンテンツを活用した期間限定コラボレーションイベントを実施する店舗運営も行っています。

収益は、店舗利用者からの飲食代金等が主な源泉です。運営は同社が行っています。

コンテンツ企画サービス


飲食事業で培ったノウハウを活用し、他社店舗の開業支援や運営受託などのBtoBビジネスを展開しています。また、直営専門店舗でのコラボカフェ運営もこのサービスに含まれ、アニメやゲーム等のIPコンテンツを活用した企画を行っています。

収益は、プロデュース業務や運営受託に対する対価、およびコラボカフェでの売上等が源泉となります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高はコロナ禍の影響を受けた時期を経て回復傾向にあり、直近では37億円規模まで伸長しています。利益面でも、経常損益および当期純損益ともに黒字化を達成し、安定した収益基盤の構築が進んでいます。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 23億円 24億円 31億円 36億円 37億円
経常利益 -6億円 0.6億円 -2億円 1億円 1億円
利益率(%) -26.8% 2.4% -6.1% 3.9% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -7億円 0.1億円 -2億円 2億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。営業利益についても増益を確保しており、利益率も改善傾向にあります。全体として収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 36億円 37億円
売上総利益 29億円 29億円
売上総利益率(%) 80.0% 80.6%
営業利益 1億円 1億円
営業利益率(%) 3.7% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、雑給が9億円(構成比32%)、給料手当が5億円(同18%)、支払家賃が4億円(同13%)を占めています。売上原価においては、材料費が7億円(構成比98%)を占めています。

(3) セグメント収益


飲食サービスは店舗集客の改善やコラボカフェの好調により増収となりました。コンテンツ企画サービスは運営受託店舗等が貢献したものの、全体では若干の減収となっています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
飲食サービス 25億円 26億円
コンテンツ企画サービス 11億円 10億円
連結(合計) 36億円 37億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得たキャッシュを借入金の返済に充てつつ、投資は抑制的に行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 0.1億円 1.2億円
投資CF 0.0億円 -0.1億円
財務CF -0.3億円 -1.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は32.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.2%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「To Entertain People~より多くの人々を楽しませるために~」という企業理念を掲げています。この理念のもと、音楽、アート、食などのカルチャーコンテンツを企画・融合させ、「楽しみに溢れた豊かなライフスタイルをより多くの人々に提案する」ことを経営方針としています。

(2) 企業文化


同社では、変化が実際に発生する現場(店舗)における情報収集や企画立案が重要であると考えています。そのため、柔軟かつ主導的なサービス提供が行われるボトムアップ経営「全員企画=全員現場主義」を掲げており、社員一丸となって事業拡大を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な経営戦略として、既存事業である飲食サービス事業の売上拡大に加え、プロデュース事業(コンテンツ企画サービス)の強化を図る方針です。また、経営合理化施策の推進により、一層の営業利益増加を達成する計画としています。具体的な数値目標等は有価証券報告書には記載されていません。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、これまで蓄積したメニュー開発力や店舗運営ノウハウを活用し、プロデュース事業の強化に取り組みます。具体的には、コラボカフェの実施店舗拡大や他社店舗の運営受託などを通じて消費者ニーズを取り込む方針です。また、既存事業においてはブランディング強化による集客向上やコスト削減による高収益体質化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材育成と確保を成長に不可欠な要素と位置づけています。人材確保については、親会社であるDDグループ全体での採用に加え、自社サイトや新卒・中途採用を強化しています。育成面では、グループ全体の研修に加え、独自の研修プログラムや店舗でのOJTを実施し、企業理念の理解や店舗マネジメント手法の習得を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 32.0歳 4.9年 4,074,853円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.4%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規) 85.3%
男女賃金差異(非正規) 99.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品衛生管理について


同社は飲食店営業を行っており、食中毒などの衛生問題が発生するリスクがあります。万が一発生した場合、営業停止処分や損害賠償請求、風評被害などにより、同社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) コンテンツホルダー等との契約について


コラボカフェ等の運営において、アニメやゲーム等のIPコンテンツの許諾契約が重要となります。同社の責めに帰さない事由により商品化許諾権等の使用が停止された場合、関連事業の売上減少等により、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保と育成及びコスト増加


積極的な事業展開には十分な人材確保が不可欠ですが、少子化等により雇用環境は厳しさを増しています。人材確保や育成が計画通り進まない場合や、社会保険適用拡大・最低賃金引き上げ等による人件費の増加があった場合、事業展開の制約や利益圧迫の要因となる可能性があります。

(4) 競合について


飲食業界は参入障壁が低く、厳しい競争環境にあります。同社はカルチャーコンテンツ等で差別化を図っていますが、類似コンセプトを持つ他社との競争激化や、顧客嗜好の変化に対応できない場合、顧客数減少等により経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。