※本記事は、株式会社エスエルディーの有価証券報告書(第23期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エスエルディーってどんな会社?
カフェダイニング等の飲食店舗運営と、コラボカフェ等のコンテンツ企画サービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
2004年に音楽イベントの企画等を目的に設立され、2005年にカフェ業態1号店をオープンしました。2008年にはライブレストラン業態を開業し、2015年に東京証券取引所JASDAQに上場しました。その後、2017年にDDグループと資本業務提携を結び、現在はコラボカフェ等の運営受託も推進しています。
従業員数は単体で137名となっています。筆頭株主は親会社であり資本業務提携を結ぶDDグループで、第2位は証券業務を行う野村證券、第3位は個人の上遠野俊一氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| DDグループ | 42.96% |
| 野村證券 | 3.47% |
| 上遠野 俊一 | 1.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は有村譲氏です。社外取締役比率は60%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 有村 譲 | 代表取締役社長 | 2006年フードスコープ入社。2011年ダイヤモンドダイニング(現DDグループ)へ転籍し事業部長等を歴任。2018年エスエルディー取締役COOに就任し、2020年5月より現職。 |
| 刑部 孝一 | 取締役 | 2006年フードスコープ入社。ダイヤモンドダイニング(現DDグループ)ブランドサポート部部長などを経て、2025年5月より現職。 |
社外取締役は、木下一(元仙台博報堂社長)、吉井一浩(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、山村嘉克(Candee代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、店舗の運営等を通したカルチャーコンテンツの提供を行う事業を展開しています。
■(1) 飲食サービス
「kawara CAFE&DINING」などのカフェダイニング業態を中心に、店舗物件の立地や空間特性に合わせた様々なブランドの開発・運営を行っています。音楽やアートなどのカルチャーコンテンツを取り入れ、現場参加型のメニュー開発により顧客ニーズを反映した店舗づくりを提供しています。
収益は、店舗に来店する顧客に対する飲食の提供対価から得ています。運営はエスエルディーが行っており、関東から九州地域の主要都市繁華街エリアを中心に直営店舗を展開しています。
■(2) コンテンツ企画サービス
飲食サービスで蓄積したノウハウや実績を活用し、アニメやゲーム、アイドルなどのIPコンテンツを活用した期間限定コラボレーションイベント等の実施に特化した業態を展開しています。また、他社店舗の開業支援業務なども行っています。
収益は、直営専門店舗でのコラボカフェにおける飲食や物販の売上、および顧客との受託業務契約に基づく店舗運営業務等の対価として得ています。運営やプロデュース業務はエスエルディーが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の売上高は35億円から36億円台で安定的に推移していますが、経常利益および当期利益は減少傾向にあります。原材料費等の高騰が利益を圧迫している状況が窺えます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 35.9億円 | 36.6億円 | 36.6億円 |
| 経常利益 | 1.4億円 | 1.4億円 | 1.3億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 3.9% | 3.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.8億円 | 1.4億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は概ね横ばいですが、売上原価の負担増などにより売上総利益がわずかに減少しています。また、販売費及び一般管理費が増加したことで営業利益も減少傾向にあります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 36.6億円 | 36.6億円 |
| 売上総利益 | 29.5億円 | 29.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 80.6% | 80.6% |
| 営業利益 | 1.4億円 | 1.3億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が14.8億円(構成比52%)、支払家賃が3.5億円(同12%)を占めています。売上原価については、材料費が6.9億円(構成比97%)を占めています。
■(3) セグメント収益
飲食サービスは既存店舗の退店等により売上高が減少していますが、コンテンツ企画サービスはインバウンド需要等によるコラボカフェの好調により売上高が増加し、全体として売上規模を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 飲食サービス | 26.3億円 | 24.9億円 |
| コンテンツ企画サービス | 10.3億円 | 11.7億円 |
| 合計 | 36.6億円 | 36.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスの「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.2億円 | 0.9億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | -1.2億円 | -1.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.8%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「To Entertain People~より多くの人々を楽しませるために~」という企業理念のもと、「音楽」「アート」「食」等をはじめとする様々なカルチャーコンテンツを企画・融合させ、「楽しみに溢れた豊かなライフスタイルをより多くの人々に提案する」ことを経営方針として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、業界環境や消費者ニーズの変化に迅速に対応する環境適応力を重視し、「変化」が実際に発生する現場(店舗)における情報収集、企画立案、サービス提供が主導的に行われる「全員企画=全員現場主義」というボトムアップ経営の文化を根付かせています。これによりお客様一人ひとりのための感動体験を提供しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は具体的な数値目標等については有価証券報告書内で公表していません。既存事業の高収益化によるキャッシュ・フローの増大を目指し、親会社グループのスケールメリットを最大限活用したコスト削減や経営資源の効率的活用による収益構造の改善を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、メニュー開発力や店舗運営等のノウハウを活用し、飲食サービスの売上拡大に加え、コラボカフェや他社店舗の運営受託等のプロデュース事業を強化します。また、新コンテンツの開発による創造力の強化、顧客企業との関係充実によるアライアンスの構築、衛生管理体制や人材の確保・育成の強化を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材育成を成長エンジンと位置づけ、「社員一人一人が経営目線を養うことで、自立した『個』自立した『組織』を創造する」という意識のもと、社内研修制度「SLDアカデミー」等を通じた重層的な育成を行っています。また、多様な人材が長期に活躍できるよう、フレックスタイム制や短時間勤務制度など柔軟な働き方を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 32.4歳 | 5.2年 | 4,217,490円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.9% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 88.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 84.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 104.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グループ経営方針による影響
同社はDDグループより出資を受けており、親会社グループの知見やノウハウを事業基盤に活用しています。しかし、今後親会社グループの経営戦略や資本方針に変更が生じた場合、事業運営や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 独立性の確保と利益相反のリスク
同社は上場企業としての独立性を確保するため、社外取締役を中心としたガバナンス体制を機能させています。しかし、親会社グループの役職員が同社の取締役を兼務しており、両者間で利益相反が生じた場合、意思決定や事業活動に制約が生じるリスクがあります。
■(3) 支配株主との取引等に関するリスク
支配株主との取引にあたっては、取締役会において条件の妥当性を検討し、少数株主の利益を害さないよう対応しています。しかし、将来的に一般株主の利益と相容れない取引や資本政策が要請された場合、同社の企業価値に影響を及ぼす可能性があります。



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