MS&Consulting 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MS&Consulting 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。顧客満足度覆面調査(ミステリーショッピングリサーチ)を主力とする経営コンサルティング企業です。2025年2月期は、主力事業の復調により売上収益は増収となりましたが、のれん減損損失の計上により営業損益および当期損益は赤字となりました。


※本記事は、株式会社MS&Consulting の有価証券報告書(第13期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. MS&Consultingってどんな会社?


顧客満足度や従業員満足度の向上を目的とした覆面調査やコンサルティングサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


2008年、経営コンサルティング会社から分社・独立する形で設立されました。2016年にタイと台湾に現地法人を設立し海外展開を開始。2017年10月に東京証券取引所マザーズへ上場し、2019年に市場第一部へ変更しました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

2025年2月末時点の連結従業員数は151名、単体従業員数は145名です。筆頭株主は投資事業を行うUH Partners2、第2位も同系列のUH Partners3であり、第3位には光通信が名を連ねています。

氏名 持株比率
UH Partners2 10.00%
UH Partners3 8.52%
光通信 8.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は辻 秀敏氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
並木 昭憲 代表取締役会長兼経営管理本部長 1986年4月日本エル・シー・エー入社。2008年5月同社代表取締役社長を経て、2023年5月より現職。
辻 秀敏 代表取締役社長 1993年4月日本エル・シー・エー入社。2013年7月同社専務取締役リレーション事業本部長などを経て、2023年5月より現職。
渋谷 行秀 専務取締役 1996年4月日本エル・シー・エー入社。2018年4月同社常務取締役TRI本部長などを経て、2023年5月より現職。
山﨑 俊 取締役 2001年1月光通信入社。2012年4月Wiz代表取締役(現任)。2025年5月より現職。


社外取締役は、上村 俊之(クリフィックス税理士法人社員)、林 康司(林総合法律事務所代表弁護士)、岡本 健(KPI Trust社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ミステリーショッピングリサーチ」および「その他」事業を展開しています。

(1) ミステリーショッピングリサーチ(MSR)


一般消費者のモニターが顧客企業の店舗等を訪れ、実際の購買活動を通じて商品やサービスの評価を行う覆面調査サービスです。外食、小売、美容業界などを主な顧客とし、店舗スタッフの働きがいを高め、サービス品質の向上を実現することを目的としています。

収益は、依頼主である顧客企業から受け取る調査費用等です。運営は主に同社が行っていますが、海外展開においてはタイおよび台湾の連結子会社(MS&Consulting(Thailand)Co.,Ltd.、台灣密思服務顧問有限公司)も事業を行っています。

(2) チームアンケート(tenpoket)


従業員の働きがいやモチベーションに焦点を当て、組織が抱える問題点を明らかにする従業員満足度調査サービスです。SaaS形式で提供され、スマートフォンアプリ等を通じてタイムリーに診断結果を確認できる仕組みとなっています。

収益は、顧客企業から受け取るシステム利用料や調査費用です。運営は同社が行っています。

(3) コンサルティング・研修


MSRやチームアンケートの調査結果を活用し、店舗運営に関する現場オペレーションの改善や従業員エンゲージメントの向上を支援するサービスです。「HERBプログラム」などのノウハウを提供し、ボトムアップ型の改善活動を促進します。

収益は、顧客企業から受け取るコンサルティングフィーや研修費用です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5期間を通じて増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方で利益面では、前期までは黒字を維持していましたが、当期は大幅な赤字に転落しました。これは主にのれんの減損損失を計上したことによるものです。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上収益 13億円 19億円 22億円 24億円 26億円
税引前利益 -3.1億円 3.1億円 3.2億円 1.8億円 -2.4億円
利益率(%) -23.5% 16.2% 14.6% 7.5% -9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.4億円 2.1億円 2.2億円 1.1億円 -2.8億円

(2) 損益計算書


売上収益は増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は横ばいとなりました。販売費及び一般管理費は微減となったものの、その他の費用として多額の減損損失を計上した結果、営業損益は赤字となりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 24億円 26億円
売上総利益 8.0億円 8.0億円
売上総利益率(%) 33.4% 31.4%
営業利益 1.8億円 -2.4億円
営業利益率(%) 7.5% -9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.3億円(構成比35%)、のれん償却額が1.4億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


全社売上収益は前期比で増加しましたが、セグメント利益(営業利益)は赤字に転じました。これは主力のミステリーショッピングリサーチ事業において売上が伸長したものの、のれんの減損損失計上が響いたためです。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
Total 24億円 26億円 1.8億円 -2.4億円 -9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

MS&Consultingは、ミステリーショッピングリサーチ事業を展開しており、当連結会計年度は営業活動により資金が増加しました。これは、税引前損失の計上はあったものの、減損損失の計上や営業債権の減少などが要因です。投資活動では、無形資産の取得等により資金が支出されました。財務活動では、リース負債の返済等により資金が支出されました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 0.1億円 4.1億円
投資CF -1.8億円 -1.3億円
財務CF -1.7億円 -0.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、顧客企業においてサービスプロフィットチェーン(SPC)経営を実現することで、従業員と消費者、消費者と企業、企業と従業員を最適に結び付けるサービス提供を通じ、「精神的に豊かな社会の創造」に貢献することをミッションとしています。

(2) 企業文化


ミッションの実践のために「社員第一主義」「顧客中心主義」「社会的に価値ある事業を行う」という3つの経営指針を設けています。社員の気づき・成長意欲に基づく実行力が顧客満足を生むと信じ、創造性と情熱を掻き立てるサーバントリーダーシップの実践やオープンブック経営を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、企業価値と株主価値の向上を目指し、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、「営業利益率」、「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)」を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹サービスであるミステリーショッピングリサーチの回復と成長を目指し、顧客ニーズへの適合度向上や難度の高い調査への対応力を強化します。また、従業員エンゲージメント調査を中心としたSaaSサービス群「tenpoket」の提供や、人材紹介などの新規サービスによる収益源の多角化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員第一主義」を掲げ、SPC経営の実現に向けて、経営システムのインフラ構築と定着化を担う人材の育成に注力しています。成長のボトルネックとならないよう採用を強化するとともに、早期の成長を促す教育やOJT機会の充実を図り、専門性の高い人材の確保・育成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 36.6歳 8.6年 6,120,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 45.7%
男女賃金差異(正規雇用) 70.9%
男女賃金差異(非正規) 67.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性構成比(61.6%)、正社員における女性構成比(52.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) モニターの確保


ミステリーショッピングリサーチ事業の成長には、適切な地域・属性のモニター確保が不可欠です。需要の急増等が原因で、顧客ニーズに適合したモニターを十分に確保できない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) モニター謝礼及びレポート生産コストの上昇


物価や人手不足による労務費の上昇に伴い、モニター謝礼やレポート生産コストが増加傾向にあります。顧客企業への価格転嫁や生産性向上に努めていますが、想定以上にコストが上昇した場合、利益率が低下するリスクがあります。

(3) 単一事業であることのリスク


同社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一事業であり、サービスの多角化に努めていますが、顧客企業の教育研修投資の抑制など市場環境が極端に悪化した場合、経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。