MS&Consulting 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MS&Consulting 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MS&Consultingは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」を基幹とする経営コンサルティング事業を展開しています。直近の業績では、価格転嫁やAI活用による収益性改善が奏功し、売上収益が増加するとともに営業利益も黒字転換を果たし、増収増益となっています。


**記事タイトル:MS&Consulting転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、株式会社MS&Consultingの有価証券報告書(第14期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. MS&Consultingってどんな会社?


覆面調査を活用し、企業のサービス品質向上や働きがいを創出するコンサルティングを提供しています。

(1) 会社概要


同社は2000年に顧客満足度覆面調査の提供を開始し、2008年に独立しました。2011年に従業員満足度調査をリリースし、2016年にはタイと台湾へ進出しています。2017年の上場を経て、近年はSaaSの提供や人材紹介事業、LINEを活用した店舗集客支援サービスなどへと事業領域を拡大しています。

同社グループは連結で152名、単体で146名の従業員を擁しています。筆頭株主は業務資本提携先でありDXサービスの導入支援等を手掛けるWizで、第2位と第3位には投資事業有限責任組合が名を連ねています。強固な商品力と提携先の営業力を掛け合わせた事業拡大を推進しています。

氏名 持株比率
Wiz 10.0%
エスアイエル投資事業有限責任組合 7.1%
エヌオーアイ投資事業有限責任組合 7.1%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は辻秀敏氏、代表取締役会長兼経営管理本部長は並木昭憲氏が務めており、社外取締役の比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
並木昭憲 代表取締役会長兼経営管理本部長 日本エル・シー・エー入社後、同社CIS事業部長や専務取締役等を経て、2008年にMS&Consulting代表取締役社長に就任。2023年より現職。
辻秀敏 代表取締役社長 日本エル・シー・エー入社後、同社外食業界支援事業本部長等を経て、2008年にMS&Consulting取締役に就任。2023年より現職。
渋谷行秀 専務取締役 日本エル・シー・エー入社後、システム開発事業部副事業部長等を経て、2016年にMS&Consulting常務執行役員等に就任。2023年より現職。
土田賢志 取締役(常勤監査等委員) 三越入社後、鹿児島三越常務取締役店長やレストラン二幸代表取締役社長等を経て、2015年にMS&Consulting監査役に就任。2016年より現職。
山﨑俊 取締役 光通信にて上級執行役員などを経て、2012年にWiz代表取締役に就任。2025年より現職。


社外取締役は、上村俊之(クリフィックス税理士法人社員)、林康司(林総合法律事務所代表弁護士)、岡本健(ブロックチェーンロック代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ミステリーショッピングリサーチ事業」を展開しています。

ミステリーショッピングリサーチ(MSR)


一般消費者として店舗を訪れる覆面調査員(モニター)を活用し、商品やサービスの評価を行う顧客満足度調査を提供しています。規定通りのサービスができているかのチェックだけでなく、店舗スタッフの働きがいやサービス品質の向上に繋がるレポートを提供し、ナショナルチェーンから地域店舗まで多様な顧客が対象です。

主に外食、小売、自動車、レジャー業界などの顧客企業から調査費用を受け取るストック型の収益モデルです。国内約62万人のモニター基盤を活用し、レポートの品質担保や分析データも提供しており、運営は同社およびタイ・台湾の海外子会社が手掛けています。

従業員満足度調査(チームアンケート)


従業員の働きがいやモチベーションに焦点を当て、リーダーシップやチーム風土など5つの観点から組織の課題を明らかにする調査サービスを提供しています。スマートフォン等から負担なく回答できる仕組みで、業界平均や高スコア企業との比較により自店舗の強みと弱みをタイムリーに把握できることが特徴です。

顧客企業からシステム利用料や調査費用を受け取るモデルとなっています。同サービスはビジネスチャットなどとパッケージ化して「tenpoket」というSaaSとしても展開されており、同社が中心となってサービスを運営しています。

コンサルティング・その他


MSRやチームアンケートの調査結果をもとに、ボトムアップ型でサービス改善を進めるコンサルティングや研修を提供しています。調査の実施に留まらず、現場オペレーションに踏み込んだ改善活動や、従業員エンゲージメントの向上、企業のブランディング強化など幅広い経営課題の解決を支援しています。

コンサルティングフィーとして顧客企業から報酬を受け取るモデルです。近年は、各種補助金や助成金の採択支援、LINEを活用した店舗集客支援代行、有料職業紹介事業といった新たな付加価値サービスのラインナップも拡充しており、同社が運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上収益はコロナ禍の影響から回復しつつあり、右肩上がりで成長を続けています。利益面については、人材投資の拡大や物価上昇に伴う原価高騰により一時的な赤字を計上したものの、顧客企業との価格転嫁交渉やAI活用による生産性向上などの収益性改善策が成果を上げ、直近では黒字へのV字回復を果たしています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上収益 19億円 22億円 24億円 26億円 26億円
税引前利益 3億円 3億円 2億円 -2億円 3億円
利益率(%) 16.2% 14.6% 7.5% -9.4% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 1億円 -3億円 2億円

(2) 損益計算書


売上収益は小幅な増加にとどまったものの、レポート生産コストの抑制や業務効率化が奏功し、売上総利益は大きく改善しています。また、全社的なコスト管理やIT投資の見直しにより販売費及び一般管理費の比率も低減し、営業利益は力強い黒字転換を達成しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 26億円 26億円
売上総利益 7億円 9億円
売上総利益率(%) 29.1% 33.5%
営業利益 -2億円 3億円
営業利益率(%) -9.3% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が4億円(構成比63%)、次いで報酬等が0.5億円(同8%)を占めています。また、売上原価においては、経費(主にモニター謝礼等)が8.5億円(構成比51%)、労務費が7.1億円(同43%)と大きな割合を占めており、調査品質維持等にかかるコスト構造が伺えます。

(3) セグメント収益


同社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントです。国内での通常調査が順調に推移したことに加え、補助金・助成金支援分野などのコンサルティングサービスが大きく伸長しました。プロジェクトの利益率を優先した受注活動や原価抑制策により、大幅な利益改善を実現しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
ミステリーショッピングリサーチ事業 26億円 26億円 -2億円 3億円 9.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入等によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 4億円 4億円
投資CF -1億円 -1億円
財務CF -0億円 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「精神的に豊かな社会の創造」をミッションに掲げています。従業員が働きがいを持つことで高い顧客満足度と業績成果が生まれ、それがさらなる教育や福利厚生への投資へと繋がり、一層の従業員満足に結びつくという「サービス・プロフィット・チェーン(SPC)」の好循環を顧客企業内に形成することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念を実践するための3つの経営指針として「社員第一主義」「顧客中心主義」「社会的に価値ある事業を行う」を掲げています。特に社員第一主義では、従業員の気づきや成長意欲に基づく実行力が顧客満足を生むと信じ、オープンブック経営を通じて全員の企業家精神やオーナーシップを高め、利益や痛みを分かち合う文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値と株主価値の向上を目指し、中長期的な経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標を設定しています。物価上昇等の環境変化に対応しながら、全社的な収益性の改善を推進し、安定した利益成長と資本効率の向上を図る方針です。具体的には以下の数値を目標として掲げています。

* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、店舗の接客改善にとどまらず、企業全体のCX向上やブランディング強化、従業員エンゲージメントの改善へと支援領域を進化させています。今後の成長戦略として、SaaS等への開発投資継続によるサービスの顧客ニーズ適合度向上、高難度調査や海外調査に対応できるモニター基盤の拡充、およびコンサルタントやデータ解析人材の獲得・育成を推進し、安定した収益基盤の確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員が持つ能力を価値創造の源泉と捉え、「人的資本を最大化する組織戦略」を掲げています。環境変化に適応するための自己革新力や創造力を育む組織を目指し、2024年に期待を言語化した新たな等級制度へ刷新しました。また、コンサルタントの成長支援やAI活用の全社推進、心理的安全性を高める専門組織「ミライ創造室」の新設など、社員の能力発揮と生産性向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 37.5歳 9.3年 5,951,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 81.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、AI業務活用率(65%)、アルバイト従業員比率(25.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) モニター謝礼と生産コストの上昇リスク


物価や人手不足に伴う労務費の上昇により、モニターへの謝礼単価やレポートの生産コストが増加するリスクがあります。同社グループは顧客企業との価格転嫁交渉やAI活用等による生産性向上を進めていますが、価格転嫁が想定通りに進まない場合やコスト上昇が予測を超えた場合、利益率が低下し経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 顧客企業の教育投資動向への影響リスク


同社グループの事業は、顧客企業(主にサービス業)の教育研修や顧客満足度向上に対する投資動向に一定の影響を受けます。サービスの付加価値向上や顧客の多様化によって影響の抑制に努めていますが、景気低迷や経済情勢の悪化により顧客の投資意欲が減退した場合、新規案件の低迷や既存契約の減少が生じる可能性があります。

(3) 調査契約の短期化および後ろ倒しリスク


主力サービスであるMSRの利用規約では、顧客企業の意思により事前の申し入れで中途解約や調査実施期間の後ろ倒しが可能な場合があります。同社グループはカスタマーサポートの充実や継続的な改善活動を通じて長期契約の維持に努めていますが、急激な解約増加や実施の延期が生じた場合、安定した収益基盤が揺らぎ業績に悪影響を与えるおそれがあります。

(4) 単一事業への依存リスク


同社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントで展開しています。サービスのラインナップ拡大や海外展開など事業構造の強化に努めていますが、サービス業界の極端な業況悪化などで該当市場への投資が冷え込んだ場合、他の事業分野で補うことが難しく、経営成績や財政状態に大きな影響を受けるリスクを抱えています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。