※本記事は、株式会社サーバーワークスの有価証券報告書(第27期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サーバーワークスってどんな会社?
クラウドの導入支援から運用、AWSの再販売までを一貫して手掛けるクラウドインテグレーターです。
■(1) 会社概要
サーバーワークスは2000年に設立され、当初は携帯向けECサイト作成サービスを提供していました。2008年にAWSの活用を開始し、2011年には本格的にクラウド事業へ参入しました。2019年に株式上場を果たし、2021年にはGoogle Cloud事業を展開するG-genを設立するなど事業領域を拡大しています。
現在の同社グループは、連結で520名、単体で367名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の大石良氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるBSアセットマネジメント、第3位は資本業務提携を行う事業会社のテラスカイとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大石 良 | 21.32% |
| BSアセットマネジメント | 17.13% |
| テラスカイ | 13.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長社長執行役員は大石良氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大石 良 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1996年丸紅に入社し、2000年に同社の前身であるウェブ専科の代表取締役に就任。2018年に同社代表取締役社長に就任し、2024年より現職。 |
| 羽柴 孝 | 取締役ソリューション管掌執行役員 | 2000年ジーエフシーに入社後、2006年に同社へ入社。営業部長やAWS事業部長を経て、2013年に取締役に就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、井上幹也(元丸紅ネットワークビジネス部長)、田中優子(元ATカーニー消費財プラクティスマネージャー)、藤本ひかり(元トーマツ)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クラウドインテグレーション」「リセール」「MSP」および「その他」の事業を展開しています。
■(1) クラウドインテグレーション
従来のオンプレミス環境で運用されてきた企業の基幹業務系システムを、クラウド環境へ移行する際の基盤デザイン、構築、およびアプリケーション開発を提供しています。IT基盤全体の最適化を見据えた上流のコンサルティングも手掛けています。
主に導入企業へのコンサルティングや基盤構築といった役務提供の対価として、顧客企業の検収時に一過性の売上(フロー売上)を受け取るモデルです。運営は同社および連結子会社のG-genなどが担当しています。
■(2) リセール
AWSやGoogle Cloudなどのクラウドコンピューティングサービスの再販売を行っています。また、クラウド運用の自動化・最適化を実現する自社開発サービスや、セキュリティ対策をはじめとする各種ソフトウェアの仕入れ販売も提供しています。
顧客がクラウドを継続的に利用するにあたり発生する月額利用料やライセンス料を受け取るサブスクリプション型のモデルです。AWSの再販売は同社が、Google Cloudの再販売は連結子会社のG-genが行っています。
■(3) MSP
顧客企業がクラウド環境に展開した仮想サーバーやネットワークの監視、運用、保守等を請け負うマネージドサービスを提供しています。可用性の確保に加え、脅威監視やインシデント対応を含むセキュリティ対応までを包括的に支援しています。
主に利用期間に応じてサービス料金を継続的に課金するサブスクリプション型のモデルとなっており、長期的に安定した収入を見込めます。同社のほか、サーバーワークス・スマートオペレーションズなどが運営を担当しています。
■(4) その他
主にAWSおよびGoogle Cloud上で稼働する特定の顧客企業のサービスにおいて、システムの運用等を行っています。
特定顧客に対するサービスの対価として収益を獲得しています。運営は主に同社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、クラウド需要の拡大を背景に売上高は右肩上がりの持続的な成長を遂げています。一方で、経常利益は成長に向けた先行投資や不採算プロジェクトの影響などにより変動が見られ、直近では減益となりました。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 109億円 | 173億円 | 275億円 | 357億円 | 400億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 6億円 | 10億円 | 11億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 6.0% | 3.6% | 3.8% | 3.0% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 7億円 | 6億円 | 9億円 | -4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加したものの、リセール原価の増加や受注損失引当金の計上などにより売上総利益は減少しました。それに伴い、営業利益および営業利益率も前期を下回る結果となっています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 357億円 | 400億円 |
| 売上総利益 | 41億円 | 36億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.5% | 9.1% |
| 営業利益 | 11億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比44%)、業務委託費が2億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はクラウド事業の単一セグメントですが、サービス別の内訳を見ると、全ての区分で増収となっています。特にリセール分野が大口顧客の利用増により伸長し、全体の売上成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| クラウドインテグレーション | 23億円 | 24億円 |
| リセール | 318億円 | 359億円 |
| MSP | 17億円 | 17億円 |
| その他 | 0.1億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 357億円 | 400億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローがともにプラスで、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっています。これは営業利益や資産売却等で得た資金で借入の返済等を進める「改善型」の局面にあることを示しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 8億円 |
| 投資CF | -15億円 | 2億円 |
| 財務CF | -2億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-5.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も48.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「クラウドで世界をもっとはたらきやすく」をビジョンとして掲げています。高度な技術力に裏付けられたソリューションと顧客視点のサポートを提供することで、顧客のみならず自社においても魅力的な就労環境の整備と生産性の改善を実現し、企業価値向上に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社はクラウドインテグレーションの案件獲得のために、知見を有した人材の採用と教育を重視しています。リモートワークや時短勤務制度の導入など、ダイバーシティに対応した施策を積極的に推進し、ワークライフ・バランスの実現を率先して図ることで、誰もが働きがいを感じられる環境づくりを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは企業価値向上のため、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益を重視しています。優秀な人材の確保やAWSとの戦略的協業による先行コストが発生し短期的には利益率が限定的になることから、利益率よりも売上高や利益額の絶対額の増大を重要な指標として捉え、成長市場における持続的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
生成AIの普及を背景にクラウド基盤の需要が拡大する中、AI活用を前提としたアーキテクチャ設計や構築を推進します。また、既存顧客の利用量拡大やストック型ビジネスの強化を図るとともに、海外展開やセキュリティ領域の拡充など事業ポートフォリオを拡大し、パートナー企業との協業やM&Aを積極的に検討します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、労働力人口の減少や市場の変化に対応するため、多様な人材の確保と組織の生産性向上を重要課題としています。自主学習の支援や資格取得奨励によるスキルアップを推進し、多様な経験を持つ人材が適切に評価される仕組みを構築することで、働きがいを持って能力を発揮できる環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 37.3歳 | 3.5年 | 7,315,129円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.0% |
| 男性育児休業取得率 | 92.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 91.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(4.1%)、AWS認定資格保有数(1,637)、有給休暇取得率(71.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AWS及びGoogleへの依存
同社グループの事業成長はAWSおよびGoogle Cloudの市場拡大に大きく依存しています。両サービスが牽引するパブリッククラウドの市場規模が縮小した場合や、サービス自体にシステム障害などの不測の事態が発生した場合には、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品・サービスの関連性
同社グループはクラウド環境の設計・構築後に、リセールやMSPのサービスを継続して提供することを主体としています。そのため、クラウドインテグレーションの案件獲得が困難になった場合、それに伴ってリセールやMSPの売上成長も鈍化し、収益基盤の拡大に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 優秀な人的資源の確保
提供するサービスは技術者を中心とした役務に依存しているため、優秀な人材の確保と維持が不可欠です。事業拡大に伴い適切な人材を確保できなかった場合や、人材獲得競争の激化により想定以上に人件費が高騰した場合には、事業運営の継続や利益水準に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 通信回線等の外部依存
クラウドサービスの提供にあたり、通信キャリアから通信回線を調達しています。通信キャリア側の電気通信サービスに障害が生じ、代替手段の調達ができずにサービスが長時間中断する事態が発生した場合には、同社グループの信頼が低下し、事業運営および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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