ベルシステム24ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ベルシステム24ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ベルシステム24ホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、コンタクトセンター業務を中心としたCRM事業を主力とする企業です。人とテクノロジーを掛け合わせた幅広いアウトソーシングサービスを展開しています。直近の業績は、売上収益および営業利益ともに前期を上回り、増収増益を達成しています。


※本記事は、ベルシステム24ホールディングスの有価証券報告書(第12期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ベルシステム24ホールディングスってどんな会社?


コンタクトセンター運営を主力に、AI等の先進技術を活用したCRM事業を展開するアウトソーシング企業です。

(1) 会社概要


1982年にテレマーケティング・エージェンシーとして創業しました。2014年の持株会社体制への移行を経て、2015年に現在のベルシステム24ホールディングスへ商号変更し、同年東京証券取引所市場第一部へ上場しました。近年は台湾やベトナムでの拠点設立など、海外への事業展開も積極的に進めています。

従業員数は連結で2,500名、単体で242名です。筆頭株主は事業会社の伊藤忠商事で、第2位も事業会社のTOPPAN、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
伊藤忠商事 40.30%
TOPPAN 14.28%
日本カストディ銀行(信託口) 14.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長執行役員CEOは梶原浩氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
梶原浩 代表取締役社長執行役員CEO 伊藤忠商事に入社後、情報・通信部門長などを歴任。伊藤忠テクノソリューションズ取締役を経て、2024年4月より現職。
辻豊久 取締役常務執行役員 伊藤忠商事に入社後、関連会社の代表等を歴任。2014年に旧ベルシステム24の執行役員に就任し、2021年3月より現職。
呉岳彦 取締役常務執行役員 大阪中央青果を経て旧ベルシステム24に入社。関連会社の代表取締役社長や常務執行役員COOを経て、2022年5月より現職。


社外取締役は、堀内真人(伊藤忠商事執行役員情報・通信部門長)、梅川健児(TOPPAN執行役員マーケティングDX事業部長)、石坂信也(ゴルフダイジェスト・オンライン代表取締役社長)、鶴巻暁(上條・鶴巻法律事務所共同代表)、高橋真木子(金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、CRM事業およびその他事業を展開しています。

CRM事業


主にコンタクトセンター運営およびその付帯業務を取り扱っています。電話を主とした従来型の顧客サポートやセールスサポートに加え、AIをはじめとする先進テクノロジーを活用し、業務プロセスの可視化から自動化までを支援する高度なBPOソリューションを幅広い企業に提供しています。

クライアント企業から受け取る業務委託料やコンサルティング費用が主な収益源です。運営は主にベルシステム24が担うほか、スカパー・カスタマーリレーションズやHorizon One、さらに台湾やベトナムの海外子会社など複数社で事業を展開しています。

その他事業


モバイルやPCなどを通じて、一般消費者向けに月額課金制のコンテンツ販売を行っています。また、障害者の雇用促進を目的とした特例子会社によるグループ内の総務業務や事務代行の受託なども含まれています。

一般消費者からのコンテンツ利用料およびグループ企業からの事務代行手数料が主な収益源です。運営はベルシステム24およびベル・ソレイユが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は1,400億円から1,500億円台で安定して推移しています。利益面では一時的な変動は見られるものの、継続して黒字を維持しており、着実な収益確保がうかがえます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上収益 1,465億円 1,561億円 1,487億円 1,436億円 1,458億円
税引前利益 135億円 142億円 112億円 112億円 123億円
利益率(%) 9.2% 9.1% 7.5% 7.8% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 89億円 93億円 75億円 80億円 82億円

(2) 損益計算書


収益性の推移を見ると、売上収益の拡大に加えて売上総利益および営業利益も改善しています。利益率も上昇傾向にあり、コストコントロールやオペレーションの効率化といった収益改善施策が着実に成果を上げていることが読み取れます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上収益 1,436億円 1,458億円
売上総利益 254億円 275億円
売上総利益率(%) 17.7% 18.9%
営業利益 116億円 127億円
営業利益率(%) 8.1% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が75億円(構成比48%)、減価償却費及び償却費が22億円(同14%)を占めています。また、売上原価においては、従業員給付費用が843億円(構成比71%)、外注費が186億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるCRM事業は、通信キャリア案件や公共系案件の着実な増加により売上収益が伸長しました。一方でその他事業はコンテンツ販売収入の減少などにより減収となりましたが、事業の一部譲渡等の影響により利益面では黒字転換を果たしています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
CRM事業 1,432億円 1,456億円 121億円 117億円 8.0%
その他 7億円 5億円 -9億円 6億円 109.8%
調整額 -3億円 -3億円 -億円 -億円 -%
連結(合計) 1,436億円 1,458億円 112億円 123億円 8.4%


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も42.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスであることから、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良な健全型であると言えます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 174億円 165億円
投資CF -37億円 -6億円
財務CF -139億円 -158億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」という企業理念(PURPOSE)の下、お客様に最適なソリューションを提供し、新たなビジネス価値を創造するとともに、多様化への取り組みも推進しています。社会の持続可能な成長を実現するための価値創出を目指しています。

(2) 企業文化


コーポレートボイス「その声に、どうこたえるか。」を策定し、これを体現する取り組みを推進しています。また、従業員の行動理念として5つのバリューを定義しており、社会や地域コミュニティの一員としての意識を醸成し、多様性を尊重しながら誠実に行動する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年4月に「中期経営計画2028」を策定しました。労働人口の減少やIT技術の進化によるビジネス環境の変化に対応し、AIを掛け合わせることで「ヒトとAIの好循環」を創り出し、全方位でビジネスを進化させる「Hybrid Intelligence for All」をコンセプトに、持続的で健全な成長の実現を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


3つの重点施策として「データ活用の拡張」「ヒトの価値最大化」「パートナー資本の深化」を掲げています。コンタクトセンターの自動化モデルの推進により高収益なビジネスモデルへ転換を図るとともに、AI導入を推進する人材を増強し、高度なコンサルティングなど高付加価値サービスの拡大を目指しています。また、アライアンスを強化し、事業ポートフォリオの拡張と多角化を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を最も重要な経営資本と位置づけ、「“プロフェッショナル”が集う、“働きがい”のある職場の実現」を人的資本戦略として掲げています。ジョブ型人事制度の導入やキャリアマップ制度による自律的なキャリア形成の支援に加え、コアタイムのないフルフレックス制度やテレオフィス申請など、働き方の多様性を拡大する環境整備に積極的に投資しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 46.7歳 15.3年 6,973,990円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 85.0%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 79.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.45%)、女性役員比率(18.2%)、勤務地限定型社員数(19.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保・育成に関するリスク


持続的な成長には優秀な人材やオペレーターの確保とエンゲージメントの最大化が不可欠です。計画通りの採用・育成ができない場合や、人材の流出を防げない場合、事業成長や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報漏洩・サイバー攻撃に関するリスク


クライアント企業から預託された個人情報を含む多くの機密情報を取り扱っています。サイバー攻撃などによりシステム障害や情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) システム・業務停止に関するリスク


業務の遂行においてインターネット通信網やシステムに大きく依存しています。自然災害や予測を超えた不正アクセスなどにより通信網やシステムに障害が生じ、事業が停止・遅延した場合は、信頼の喪失や業績への悪影響が生じる可能性があります。

(4) 事業戦略・新ビジネスモデルに関するリスク


CRM事業において生成AI等の新技術活用やパートナー企業との連携を進めていますが、デジタル技術の急速な進化への対応遅れや、従来の電話対応業務の急減、新規事業の不振が起きた場合、成長戦略の実現に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。