中本パックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中本パックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の印刷関連企業です。グラビア印刷やコーティング技術を核に、食品包装やIT・工業材、生活資材などを製造・販売しています。直近の業績は、売上高491億円(前期比10.8%増)、経常利益29億円(同24.2%増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、中本パックス株式会社 の有価証券報告書(第37期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中本パックスってどんな会社?


グラビア印刷やラミネート加工技術を軸に、食品包装からIT・自動車部材まで幅広い分野に製品を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1941年に台湾で創業し、1950年に大阪で山本洋紙店として設立されました。その後、中本洋紙店への商号変更を経て、1988年に関東中本印刷(現 中本パックス)が設立されています。2016年に東証二部へ上場し、翌年には東証一部へ指定替えとなりました。2024年にはMICS化学(現 中本アドバンストフィルム)を完全子会社化するなど、事業拡大を進めています。

現在の従業員数は連結922名、単体473名です。筆頭株主は株式会社中本で、創業家の資産管理会社と推察されます。第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位には従業員持株会が名を連ねています。その他、サカタインクスや日本紙パルプ商事といった事業会社も大株主として安定的な関係を築いています。

氏名 持株比率
株式会社中本 8.00%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 4.60%
中本パックス従業員持株会 3.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名、計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は河田淳氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河田淳 代表取締役社長 日製産業(現 日立ハイテク)を経て同社入社。中国現地法人董事長、海外事業本部副本部長、常務取締役などを歴任し2017年より現職。
中本髙志 取締役会長 住友スリーエム(現 スリーエムジャパン)を経て同社入社。常務、専務を経て1991年より代表取締役社長、2017年より代表取締役会長。2025年より現職。
栗山浩幸 取締役常務執行役員プロダクト事業本部生産事業部長 同社入社後、名張工場長、カスタマーサービス室長、生産事業部副事業部長などを経て2025年より現職。


社外取締役は、芦田一志(弁護士)、久保俊裕(元クボタ代表取締役副社長)、古谷礼理(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品関連事業


乳製品や加工食品向けのシュリンクフィルム、蓋材、袋などの包装資材を提供しています。コンビニエンスストア向けの弁当容器や、自社開発した環境対応・高機能シート(NAK-A-PETなど)を使用したトレーなども主力製品です。

収益は、食品メーカーやコンビニエンスストアベンダーなどの顧客から、製品の販売代金を受け取ることで発生します。運営は主に中本パックスや連結子会社の中本Fine Pack、中本アドバンストフィルムなどが行っています。

(2) IT・工業材関連事業


モバイル機器や液晶ディスプレイ製造工程で使用される微粘着フィルム(NSセパ)や、自動車の内装部材、リチウムイオン電池関連のコーティング加工品などを提供しています。

収益は、IT部材メーカーや自動車部材メーカーへの製品販売や、顧客製品へのコーティング等の受託加工料から得ています。運営は主に中本パックスや海外子会社が行っています。

(3) 生活資材関連事業


布団や衣類用の圧縮袋、DIY用の壁・床装飾シート、キッチンマットなどの日用雑貨を製造・販売しています。ホームセンターやドラッグストアなどで販売される製品が中心です。

収益は、ホームセンター等の小売店や卸売業者への製品販売代金となります。運営は主に中国の連結子会社で製造を行い、国内では中本パックスおよび連結子会社の株式会社アールが販売を担当しています。

(4) 建材・医療・医薬関連事業


建材分野では壁紙や家具用の化粧板紙などの印刷加工品を、医療・医薬分野では湿布薬用フィルムや医薬品包装、病院向け医療用資材などを提供しています。

収益は、建装材メーカーや医薬品メーカー等への製品販売代金となります。運営は中本パックスのほか、建材関連では連結子会社の中本印書館などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は360億円から491億円へと着実に成長しています。経常利益も18億円から29億円へと拡大傾向にあり、利益率も5〜6%台で安定的に推移しています。特に直近は増収増益基調が続いており、事業規模の拡大と収益性の向上が進んでいます。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 360億円 405億円 431億円 444億円 491億円
経常利益 18億円 26億円 22億円 23億円 29億円
利益率(%) 4.9% 6.4% 5.1% 5.3% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 15億円 13億円 11億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は15.0%から17.5%へと改善しました。営業利益率も4.1%から5.8%へと上昇しており、コストコントロールや高付加価値製品へのシフトが進んでいることが伺えます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 444億円 491億円
売上総利益 66億円 86億円
売上総利益率(%) 15.0% 17.5%
営業利益 18億円 29億円
営業利益率(%) 4.1% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が18億円(構成比31%)、運賃及び荷造費が13億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


各用途別の売上高を見ると、主力の食品関連は新子会社の寄与もあり堅調に拡大しています。IT・工業材関連はスマートフォン用途や半導体関連が好調で大幅な増収となりました。一方、生活資材関連や建材関連は需要減少の影響を受け減収となっています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
食品関連 287億円 313億円
IT・工業材関連 68億円 90億円
生活資材関連 47億円 43億円
建材関連 20億円 19億円
医療・医薬関連 14億円 16億円
その他 8億円 11億円
連結(合計) 444億円 491億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

中本パックスの当連結会計年度における現金及び現金同等物は増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費等による増加が、売上債権や棚卸資産の増加、法人税等の支払いによる減少を上回ったことで増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出が売却収入を上回ったため減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入があったものの、短期借入金の純減や長期借入金の返済、配当金の支払い等による減少がそれを上回ったため減少しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 35億円 24億円
投資CF -25億円 -12億円
財務CF -0.3億円 -12億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「クリーン&セイフティ」を合言葉に、自然環境や労働環境に配慮した製品開発や素材改良を通じて、社会が必要とするものづくりに取り組んでいます。顧客満足の追求と同時に、「人にやさしい、地球にやさしい」社会的価値を高め、あらゆるステークホルダーから信頼される「全天候型グローバル企業」の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「事業は人なり」を社是とし、人材を重要な経営資源と捉えています。多様な個性を持つ従業員の成長を促す教育制度の継続と、コンプライアンス遵守体制の構築を重視しています。性別や国籍等を問わず多様な個性を認め合い、従業員が安心して働き、仕事と私生活を充実させられる環境づくりを進めています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するため、収益性の改善と資本効率の向上に取り組んでいます。具体的には、以下のような経営指標を目標として掲げています。

* 連結ROE(自己資本当期純利益率):13.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「全天候型経営」を掲げ、特定分野に偏らない事業ポートフォリオの構築を進めています。食品包装材を主力としつつ、IT・工業材、医療・医薬、自動車、建材など多分野へ展開し、グローバル化も推進します。また、環境対応製品(NAK-A-PET等)の拡販や新素材開発、生産効率向上による原価低減にも注力し、顧客満足度の最大化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「事業は人なり」の考えのもと、多様な個性を持つ従業員の成長をサポートし、社内外で活躍できる環境整備を進めています。各部門責任者による採用プロジェクトで課題を抽出し、戦略を検討しています。人材育成においては、階層別研修やスキルマップを活用し、従業員の能力開発を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 42.0歳 14.6年 5,439,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 8.9%
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 62.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 61.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 56.7%


※同社は公表義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率は有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員への教育投資額(698万円/年)、管理職登用人材の外部研修受講者数(45名)、女性従業員比率(17.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内景気と消費動向に関するリスク


同社グループは国内市場を中心に事業を展開しており、幅広い業種の顧客と取引しています。国内需要の減退や物価高による個人消費の低迷、主要顧客のシェア縮小などが生じた場合、受注量の減少や単価下落により、経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 資源・原材料の市況に関するリスク


主な原材料である樹脂やフィルムなどの価格は、原油価格や国際商品市況、為替の影響を受けます。これらが大きく変動したり、サプライチェーンの混乱により原材料調達が困難になり価格が高騰した場合には、コスト増により経営成績に影響が生じる可能性があります。

(3) 為替の変動に関するリスク


生活資材やIT・工業材、自動車内装材を中心に海外販売の拡大を計画しており、為替変動の影響は大きくなると予想されます。急激な変動があった場合、輸出入価格への影響や外貨建債権債務の評価損益発生により、経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 海外事業に関するリスク


中国、米国、ベトナムに連結子会社を有しており、各国の政治経済情勢や法的規制、商慣習の違いなどのリスクがあります。貿易摩擦や紛争、感染症拡大などで生産・販売活動が停滞した場合、経営成績に影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。