※本記事は、中本パックス株式会社の有価証券報告書(第38期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中本パックスってどんな会社?
グラビア印刷やコーティング加工技術を軸に、食品包材から工業材まで多様な製品を提供する加工メーカーです。
■(1) 会社概要
1950年に中本洋紙店として設立され、その後グラビア印刷加工へ事業転換しました。1988年に関東中本印刷が設立され、1991年に中本パックスへ商号変更しています。2005年に中本を吸収合併してグループを集約し、2016年に東京証券取引所市場第二部へ上場。市場再編を経て現在はスタンダード市場に上場しています。
同社の従業員数は連結で883名、単体で476名体制です。大株主は、筆頭株主が事業会社の中本で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は事業会社のナカモト・セカンドとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中本 | 8.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.60% |
| ナカモト・セカンド | 3.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は河田淳氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河田淳 | 代表取締役社長 | 日製産業入社後、2004年に同社入社。管理本部部長、海外子会社の董事長等を経て、2017年4月より現職。 |
| 中本髙志 | 取締役会長 | 住友スリーエムを経て、1975年に同社入社。専務取締役を経て1991年に代表取締役社長、2025年5月より現職。 |
| 栗山浩幸 | 取締役常務執行役員プロダクト事業本部生産事業部長 | 1989年に同社入社。執行役員生産事業部名張工場長、子会社の代表取締役会長等を経て2025年5月より現職。 |
社外取締役は、芦田一志(小野・芦田法律事務所開設)、久保俊裕(元クボタ代表取締役副社長執行役員)、古谷礼理(古谷公認会計士事務所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、印刷関連事業の単一セグメントにおいて様々な製品を展開しています。
■(1) 食品・生活資材関連
シュリンクフィルムや弁当用容器フィルム、自社開発の環境対応シートの食品包装材から、布団圧縮袋やキッチンマットなどの生活資材まで幅広く提供しています。国内外の食品メーカーやコンビニエンスストア、ホームセンターなどが主な顧客です。
包装資材や生活資材の販売対価として収益を得ています。運営は主に同社が行うほか、シート成型加工は中本Fine Pack、生活資材の製造・販売は中本包装(蘇州)やアールなどが担っています。
■(2) IT・工業材・医療・建材関連
スマートフォン等の製造工程で使われる離型フィルム(NSセパ)や自動車内装材、半導体関連の導電シートのほか、医療用セパレーターやフェイスシールド、住宅・家具用の建材コーティング品などを提供しています。
機能性フィルムや建材印刷品の販売および委託加工(コーティング加工等)により収益を得ています。運営は主に同社が行い、建材関連の印刷加工は中本印書館、フィルム製造は中本アドバンストフィルムなどが担っています。
■(3) その他事業
自社で排出されるプラスチック廃材を再生したリサイクルペレット(ポリスチレン、ポリプロピレン等)の販売や、自社特許技術を搭載したグラビア印刷機・ドライラミネーター機などの販売を行っています。
リサイクル製品や機械設備の販売代金として収益を得ています。これらの事業の運営および開発・販売は主に同社が担い、環境負荷低減と資源の有効活用に貢献しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は405億円から496億円へと順調に拡大しています。経常利益も26億円から31億円へと成長し、特に直近2年間は高い利益水準を維持しています。当期利益も増益基調にあり、底堅い収益力を示しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 405億円 | 431億円 | 444億円 | 491億円 | 496億円 |
| 経常利益 | 26億円 | 22億円 | 23億円 | 29億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 5.1% | 5.3% | 5.9% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 10億円 | 0.7億円 | 12億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は491億円から496億円へ増加し、売上総利益・営業利益ともに堅調に伸びています。利益率も改善傾向にあり、製造コスト上昇の中でも価格転嫁や生産効率の改善が奏功し、安定した収益構造を維持しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 491億円 | 496億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 91億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.5% | 18.4% |
| 営業利益 | 29億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 5.8% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が19億円(構成比31%)、運賃及び荷造費が14億円(同22%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動のキャッシュ・フローがマイナスのため、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型に分類されます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 24億円 | 26億円 |
| 投資CF | -12億円 | -13億円 |
| 財務CF | -12億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「クリーン&セイフティ」を合言葉に、自然環境や労働環境に配慮した製品・技術の開発を通じ、社会が必要とするものづくりに努めています。「人にやさしい、地球にやさしい」社会的な企業価値を高め、あらゆるステークホルダーから信頼される「全天候型グローバル企業」を理想の企業像として掲げています。
■(2) 企業文化
常に顧客に満足いただけるものを供給し続けるとともに、新しい技術に挑戦し、顧客に密着したマーケティング活動を展開する文化があります。また、「事業は人なり」の社是のもと、従業員の成長を促す教育制度を重視し、多様な個性を認め合うことで組織の成長を促進する働きやすい環境づくりを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、収益性の改善と資本効率の向上を推進しています。
* 連結ROE(自己資本当期純利益率)10.0%~12.0%以上を中期経営計画の目標に設定
* 長期的にはROE13.0%以上を目標として設定
■(4) 成長戦略と重点施策
特定分野に偏らない事業ポートフォリオを構築する「全天候型経営」を推進しています。食品関連での自社開発品(環境対応素材など)の販売強化や、IT・工業材分野での技術力強化、複数国に生産拠点を持つグローバルなサプライチェーンの構築を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な個性を持つ従業員の成長をサポートし、社内外で活躍できる環境を整えることを基本方針としています。性別や国籍などに関係なく多様な個性を認め合うことで新たな価値を生み出し、組織の成長を促進させるため、階層別研修の実施や仕事と私生活の充実を図る制度整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 41.9歳 | 14.4年 | 5,455,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.0% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 48.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(17.8%)、管理職登用人材の外部研修受講者数(266名)、従業員への教育投資額(8,614千円/年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 資源・原材料の市況リスク
主要原材料である樹脂やフィルムなどプラスチック素材の価格は、原油やナフサなどの国際市況や為替変動の影響を受けます。原油価格の高騰やサプライチェーンの混乱による調達困難が生じた場合、製造コストの上昇や工場の操業低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 環境規制等の影響によるリスク
地球環境保全を重視し、環境配慮型製品の開発や石化由来材料の削減を進めていますが、今後環境に関する法規制の強化や社会的責任への要請が高まった場合、計画外の設備投資や環境対策費用の追加負担が発生し、事業活動が制約を受ける可能性があります。
■(3) 海外事業におけるカントリーリスク
中国、米国、ベトナムに生産・販売拠点を持っており、各国の通商政策や地政学リスク、為替変動の影響を受けやすい環境にあります。労務問題や商慣習の違い、国際的な経済情勢の急変などによりサプライチェーンが混乱した場合、海外での生産や販売が停滞するリスクがあります。
■(4) 販売価格や市場シェア低下のリスク
厚物シート印刷やラミネート加工などで独自のノウハウを有していますが、競合他社による低価格戦略や模倣技術が市場に浸透した場合、同社の独自性や優位性が発揮できなくなり、販売価格の下落やシェアの低下につながるリスクがあります。



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