PR TIMES 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PR TIMES 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」の運営企業です。主力事業の利用企業数が10万社を突破し、創業以来18期連続の増収と過去最高の売上高を更新しました。営業利益も前期比で増加した一方、特別損失の計上等により当期純利益は微減となりました。


※本記事は、株式会社PR TIMES の有価証券報告書(第20期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. PR TIMESってどんな会社?


国内シェアトップクラスのプレスリリース配信プラットフォームを運営し、企業の広報活動を支援する企業です。

(1) 会社概要


2005年に株式会社キジネタコムとして設立され、2007年に現在の「PR TIMES」を開始しました。2016年に東証マザーズへ上場し、2018年に市場第一部へ変更、その後プライム市場へ移行しています。近年では2023年に株式会社グルコースや株式会社NAVICUSを子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は218名、単体では129名体制です。筆頭株主は親会社でPR事業を展開するベクトル、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は代表取締役社長の山口拓己氏です。安定した親会社を持ちつつ、創業者も主要株主として経営に関与する株主構成となっています。

氏名 持株比率
ベクトル 55.39%
日本カストディ銀行(信託口) 7.54%
山口拓己 6.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は山口拓己氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 拓己 代表取締役社長 山一證券、アビームコンサルティングを経てベクトル入社。2007年同社取締役、2009年より現職。複数の子会社役員も兼任。
三島 映拓 取締役PR本部長 ベクトル入社後、2007年同社入社。サービス本部長、経営企画本部長、経営管理本部長などを歴任し、2025年4月より現職。


社外取締役は、鈴木啓太(AuB代表取締役・元浦和レッズ選手)、小澤浩子(元スター・チャンネル代表取締役副社長)、杉本哲哉(グライダーアソシエイツ代表取締役社長)、福谷尚久(PwCアドバイザリーシニアアドバイザー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プレスリリース配信事業」および「その他」事業を展開しています。

プレスリリース配信事業


主力サービス「PR TIMES」を中心に、企業の新商品やイベント情報をメディアや生活者へ届けるプラットフォームを運営しています。また、タスク管理ツール「Jooto」やカスタマーサポートツール「Tayori」といったビジネス向けSaaSサービス、およびニュースメディアの運営も行っています。

収益は主に「PR TIMES」を利用する企業からの配信料(従量課金または定額プラン)や、SaaSサービスの月額利用料から構成されています。運営は同社が中心となり、連結子会社のTHE BRIDGEがスタートアップ向けメディア運営を担っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、Webサービスやアプリの受託開発、コンサルティング、およびSNSマーケティング支援を行っています。

収益は、顧客企業からのシステム開発受託費やコンサルティングフィー、SNS運用代行費などが主となります。運営は主に連結子会社のグルコース(開発領域)およびNAVICUS(SNSマーケティング領域)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 - 49億円 57億円 68億円 80億円
経常利益 - 18億円 12億円 17億円 19億円
利益率(%) - 37.8% 20.8% 25.1% 23.4%
当期利益(親会社所有者帰属) - 13億円 8億円 12億円 11億円


※2021年2月期は連結財務諸表を作成していないため記載なし。
売上高は順調に拡大を続け、毎期増収を達成しています。利益面では投資等により変動が見られますが、20%を超える高い経常利益率を維持しています。当期は売上高80億円、経常利益19億円と成長を持続しています。

(2) 損益計算書

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 68億円 80億円
売上総利益 59億円 67億円
売上総利益率(%) 86.2% 84.0%
営業利益 17億円 19億円
営業利益率(%) 25.5% 23.5%


売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しました。売上総利益率は80%台後半と極めて高い水準を維持しています。営業利益率は20%台前半で推移しており、成長投資を行いながらも高い収益性を確保していることが読み取れます。

販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比20%)、支払手数料が9億円(同19%)を占めています。売上原価においては、人件費やシステム関連費用等が計上されていますが、原価率は低水準です。

(3) セグメント収益


プレスリリース配信事業が全社売上の大半を占めており、増収増益の牽引役となっています。その他事業もM&A効果等により売上規模が拡大し、黒字転換を果たしています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
プレスリリース配信事業 66億円 73億円 18億円 19億円 25.6%
その他 3億円 7億円 -0.3億円 0.03億円 0.4%
調整額 - - - - -
連結(合計) 68億円 80億円 17億円 19億円 23.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、内部資金または短期借入により資金調達を行っています。

営業活動では、事業活動を通じて潤沢な資金を生み出しており、これは主に主力事業の成長によるものです。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資や無形資産の取得等を行っています。財務活動では、新株予約権の行使による資金調達がありました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 15億円 14億円
投資CF -6億円 -3億円
財務CF -1億円 0.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げています。人の行動や頑張りの結晶を「プレスリリース」として紡ぎ発表することで、ポジティブな情報がニュースの中心となり、個人を勇気づけ前向きにする社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


ミッション実現に向けて、行動指針として「Act now, Think big」「Open and Flat for breakthrough」「One's commitment, Public first」の3つのバリューを定めています。また、統制強化のための組織ルールを整備し、全員の遵守を徹底しています。

(3) 経営計画・目標


長期的な経営目標として、「PR TIMES」を社会的な情報インフラとし、世界有数のインターネットサービスにすること、また同事業を超える事業を生み出す人材が台頭する組織になることを掲げています。2025年度までの中期経営目標「Milestone2025」では、以下の指標を設定しています。

* 営業利益目標:35億円
* PR TIMES 日本国内利用企業数:150,000社
* Jooto 有料利用企業社数:100,000社
* Tayori 有料アカウント数:6,000アカウント

(4) 成長戦略と重点施策


ミッション実現のため、「PR TIMES」の地方金融機関や自治体との提携拡大による利用促進を進めています。また、米国を中心とした英語圏への進出機会を追求するとともに、SaaS事業(Jooto、Tayori)やメディア事業への投資を行い、新たな事業の柱の創出を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を最も重要な資産と捉え、ミッションに共感し、価値観を体現できる人材の採用と育成に注力しています。意思決定できる人材を増やすための権限委譲や、失敗しても再挑戦を歓迎する環境づくりを推進し、多様なバックグラウンドを持つ社員が働きがいを感じられる組織を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 30.8歳 3.3年 6,517,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 37.5%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 95.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 94.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 141.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(72.1%)、女性社員の割合(54.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) メディアとの関係性について

テレビや新聞、Webメディア等は情報流通の重要なインフラですが、誤った情報の提供等により信頼関係を失った場合や、メディア数の減少が進んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報管理およびシステムセキュリティ

顧客の未公開情報等を扱う事業特性上、情報漏えいは重大なリスクです。実際に2025年4月に第三者によるサーバーへの不正アクセスが発生し、情報漏えいの可能性が判明しました。これによる社会的信用の低下等は業績に影響を与える可能性があります。

(3) 親会社との関係について

親会社のベクトルはPR事業を主力としており、同社はグループ内でテクノロジーカンパニーと位置付けられています。現在競合関係はありませんが、グループの方針変更等により競合サービスが創出された場合、事業に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。