PR TIMES 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PR TIMES 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場するPR TIMESは、国内トップクラスのプレスリリース配信事業「PR TIMES」を中核に、タスク管理等のSaaSサービスも展開しています。直近の業績は売上高95億円、経常利益36億円と大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社PR TIMESの有価証券報告書(第21期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. PR TIMESってどんな会社?


同社グループは、行動者発の情報を社会へ届けるプレスリリース配信事業を中心としたサービスを展開しています。

(1) 会社概要


2005年12月、ベクトルの100%子会社として設立されました。2007年4月に「PR TIMES」の運営を開始し、2016年に東証マザーズに上場、2018年には東証一部へ市場変更しました。その後も2023年にグルコースやNAVICUSを買収するなど、事業領域を拡大しています。

同社の従業員数は連結で215名、単体で128名です。筆頭株主は事業会社であり親会社のベクトルで、第2位は代表取締役社長である山口拓己氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
ベクトル 52.53%
山口拓己 6.14%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は山口拓己氏が務めています。社外取締役比率は約44%(4名/9名)です。

氏名 役職 主な経歴
山口 拓己 代表取締役社長 山一證券等を経て、2006年にベクトルに入社し取締役に就任。2007年に同社取締役に就任し、2009年より現職。
三島 映拓 取締役コーポレートコミュニケーション部長 2005年にベクトルに入社し、2007年に同社へ入社。経営企画本部長、PR・HR本部長等を経て2026年より現職。


社外取締役は、鈴木啓太(AuB代表取締役)、小澤浩子(ソニーグループ出身)、杉本哲哉(グライダーアソシエイツ代表取締役社長)、福谷尚久(PwCアドバイザリーシニアアドバイザー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プレスリリース配信事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) プレスリリース配信事業


利用企業が事業や組織の新情報をプレスリリースとして発表し、メディアや生活者へ届ける「PR TIMES」を運営しています。また、PR効果の向上を図るパートナーサービスや、タスク管理「Jooto」、カスタマーサポート「Tayori」等のSaaSサービスも提供しています。

収益源は、利用企業から受け取るプレスリリース1件あたりの従量課金や月額定額プランの利用料です。SaaSサービスも利用量に応じた月額収入を得ています。事業の運営は主にPR TIMESが単体で行い、一部メディア運営等を子会社のTHE BRIDGEが担っています。

(2) その他


中核事業を補完・拡張する事業として、Webサービスやモバイルアプリ等の受託開発・コンサルティングを行うシステム開発事業と、企業のSNSマーケティング支援やコミュニティ支援を通じたプロモーション支援事業を展開しています。

それぞれの顧客企業から受け取るシステム開発の受託費用やマーケティング支援のコンサルティングフィーが主な収益源です。システム開発事業は子会社のグルコースが、SNSマーケティング支援事業は子会社のNAVICUSが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、直近の当期には95億円規模に達しています。経常利益も投資フェーズによる一時的な減益を経つつ、直近では大きく飛躍して36億円を超えるなど、利益率37%以上の高収益体質を実現しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 49億円 57億円 68億円 80億円 95億円
経常利益 18億円 12億円 17億円 19億円 36億円
利益率(%) 37.8% 20.8% 25.1% 23.4% 37.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 8億円 12億円 11億円 23億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、売上総利益率は84%台を維持しています。販売費及び一般管理費を適正にコントロールしたことで営業利益が大きく伸び、営業利益率は38.0%へと改善しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 80億円 95億円
売上総利益 67億円 81億円
売上総利益率(%) 84.0% 84.4%
営業利益 19億円 36億円
営業利益率(%) 23.5% 38.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比23%)、支払手数料が7億円(同15%)を占めています。広告宣伝費については前年の9億円から5億円(同10%)へと抑制し、費用の適正化を図っています。

(3) セグメント収益


主力のプレスリリース配信事業は、利用企業数や配信件数の順調な拡大により前年比で大幅な増収を達成しました。その他事業についても、システム開発およびSNSマーケティング支援が寄与し、着実に売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
プレスリリース配信事業 73億円 86億円
その他 7億円 10億円
連結(合計) 80億円 95億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入返済や自己株式取得を行いつつ投資も手元資金で賄う、優良企業に見られる健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 14億円 34億円
投資CF -3億円 -6億円
財務CF 0.1億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げています。人の行動や頑張りの結晶を紡いで発表することがプレスリリースであると考え、地域や企業規模を問わず行動者が自らポジティブな情報を発信し、一人ひとりの行動から社会が動く実感を持てる社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


ミッションの実現に向けて全力最善で相互に協力し合える組織となるよう、「Act now, Think big」「Open and Flat for breakthrough」「One's commitment, Public first」という3つのバリュー(行動指針)を定めています。ミッションに立脚したサービス設計と組織づくりが、同社の高い参入障壁や競争優位性を生み出しています。

(3) 経営計画・目標


2030年度までの中期経営目標「Milestone2030」を策定し、中核事業を社会的な情報インフラへと育て、世界有数のインターネットサービスにすることを目指しています。また、積極的な投資による持続的な成長を前提に、DOE(株主資本配当率)2%以上を基準とした累進配当の継続も掲げています。

* 営業利益目標 70億円
* EBITDA目標 77億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存の配信市場の拡大を自ら牽引しつつ、周辺の国内PR業市場を次なるターゲットに据え、AIやSaaSなどテクノロジーへの投資により事業成長と新規サービスの開発を推進します。さらに、北米市場への進出を通じてグローバルな存在意義の確立を図るほか、AIエージェント等の新技術も好機と捉えて投資を強化していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業成長には「人」が最も重要であると考え、ミッションに共感する人材を育み、再挑戦を歓迎する仕組みを持つことで組織にエネルギーを充填しています。「過去最高を更新する働きがい」「背中を預け合える同志との結束」「持続も停滞も支える安心の土台」を3つの組織テーマに掲げ、抜擢と交代を柔軟に行うフラットな組織運営を追求しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 30.8歳 3.9年 6,630,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 95.5%
男女賃金差異(正規雇用) 94.6%
男女賃金差異(非正規等) 142.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(76.6%)、正社員の女性社員の割合(39.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 広告宣伝・広報関連予算の変動

企業のPR予算は景気動向に影響を受けやすく、景況感が著しく悪化した場合や、電力インフラの障害、社会不安等が発生した場合には、企業の広告活動が縮小され、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) メディアとの信頼関係の毀損

プレスリリース配信事業においては、メディアとの親密なネットワークが重要な経営資源です。誤った情報の提供等でメディアからの信頼を失った場合や、紙媒体を中心に企業の情報発信先が減少した場合には、事業展開に悪影響が及ぶリスクがあります。

(3) 新技術への対応と競合の台頭

インターネット関連技術の急速な変化に対し、対応が遅れた場合は競争力が低下するほか、システム投資や人的投資が予想以上に増大する可能性があります。また、企画力や開発力を持つ同業他社の参入により顧客獲得競争が激化するリスクも認識しています。

(4) サービスインフラのシステム障害

アクセス過多やサイバー攻撃、自然災害等によるサーバー停止・システムトラブルは、顧客への情報提供に直接的な障害をもたらします。不正アクセス等による情報流出が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償等により業績に影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。