※本記事は、株式会社スタジオアタオ の有価証券報告書(第21期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スタジオアタオってどんな会社?
神戸発のファッションブランドを展開し、職人技術と独自の世界観を融合したバッグや財布を企画・販売しています。
■(1) 会社概要
同社は2005年に有限会社スタジオアタオとして設立され、2006年に六本木ヒルズ店をオープンしました。2007年に株式会社へ改組し、2016年に東証マザーズへ上場を果たしました。2022年には東証グロース市場へ移行するとともに、モール型新ECサイト「ATAOLAND+」を開設し、オンライン販売を強化しています。
2025年2月末現在、同社の従業員数は単体で67名です。筆頭株主は創業者の瀬尾訓弘氏で、第2位は法人株主、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 瀬尾 訓弘 | 25.40% |
| 株式会社セブンオー | 16.62% |
| 黒越 誠治 | 8.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は瀬尾 訓弘氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀬尾 訓弘 | 代表取締役社長 | ベルシステム24、河合塾を経て2005年に同社を設立し現職。 |
| 籠谷 雅 | 取締役事業部ゼネラルマネージャー | クリケット、イーコンセプトラブを経て2009年に入社。2015年より現職。 |
| 長南 伸明 | 取締役経営戦略室長 | 太田昭和監査法人等を経て2015年に取締役就任。2016年より現職。 |
| 山口 敬之 | 取締役管理部ゼネラルマネージャー | 新日本有限責任監査法人を経て2015年に入社。2020年より現職。 |
社外取締役は、松本 浩介(元時刻表情報サービス代表取締役)、吉羽 真一郎(潮見坂綜合法律事務所パートナー)、中島 由紀子(中島公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファッションブランドビジネス」および「その他」事業を展開しています。
■ファッションブランドビジネス(店舗販売)
オリジナルバッグや財布等の企画・販売を行っています。「ATAO」「IANNE」「ILEMER」「StrawberryMe」の4ブランドを展開し、神戸、東京、大阪等の主要都市にある直営店舗やイベントを通じて、一般消費者に商品を販売しています。
収益は、来店客への商品販売代金として受け取ります。運営は主にスタジオアタオが行っています。
■ファッションブランドビジネス(インターネット販売)
自社直営のモール型ECサイト「ATAOLAND+」や「ILEMER公式オンラインショップ」、および楽天市場やYahoo!ショッピング内の店舗を通じて商品を販売しています。店舗とECの融合(OMO)を進め、ブランドの世界観を発信しています。
収益は、オンラインでの商品購入者からの販売代金となります。運営は主にスタジオアタオが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台後半から30億円台前半で推移していましたが、当期は回復傾向にあります。利益面では第19期に赤字を計上しましたが、第20期以降は黒字転換し、当期も増益基調を維持しています。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 40.1億円 | 36.2億円 | 37.1億円 | 32.4億円 | 37.0億円 |
| 経常利益 | 0.9億円 | 0.1億円 | -2.5億円 | 1.2億円 | 1.8億円 |
| 利益率(%) | 2.3% | 0.3% | -6.6% | 3.8% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | -0.2億円 | -2.3億円 | 0.5億円 | 0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、ブランドビジネスとしての収益性の高さがうかがえます。営業利益率は前期から改善しており、コストコントロールと売上拡大が利益押し上げに寄与しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 32.4億円 | 37.0億円 |
| 売上総利益 | 21.9億円 | 24.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.6% | 66.7% |
| 営業利益 | 1.2億円 | 1.8億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が8.1億円(構成比36%)、地代家賃が2.5億円(同11%)、支払手数料が2.4億円(同11%)、給料及び手当が2.1億円(同9%)を占めています。売上原価は売上高に対して33%程度で推移しています。
■(3) セグメント収益
インターネット販売が前期比23.5%増と大きく伸長し、全体の売上成長を牽引しました。新ECサイトの浸透やモール出店が奏功しています。店舗販売も前期比6.8%増と堅調に推移しており、既存店の売上増加や新規出店が寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| インターネット販売 | 14.5億円 | 17.9億円 |
| 店舗販売 | 17.8億円 | 19.0億円 |
| その他 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 32.4億円 | 37.0億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
スタジオアタオは、営業活動で資金を獲得し、投資活動で設備投資を行い、財務活動で借入金の返済を行っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前当期純利益の計上や棚卸資産の減少により資金が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出がありました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.8億円 | 3.6億円 |
| 投資CF | 0.2億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | -4.7億円 | -4.3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ファッションにエンタテイメントを」を経営理念として掲げています。オリジナルバッグや財布等の提供を通じて、「お客様に非日常のワクワク感を提供すること」を目指しており、テーマパークのように統一された世界観の中で、流行に左右されない「ブランドのファン」を生み出す事業展開を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、店舗の販売スタッフをブランドPRの最前線の広告塔と位置づけています。そのため、販売スタッフは原則として正社員とし、創業者やデザイナーによる継続的な社内研修等を通じてブランドの本質を熟知させることで、質の高いサービス提供とリピーター獲得を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標は記載されていませんが、同社はトレンドに左右されない商品企画と定番商品を人気商品化するノウハウを強みとし、店舗とECの融合(OMO)を活用しながら、長期的・安定的に収益を上げる事業の展開に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、持続的な成長に向けて「新規販売チャネルの展開」「店舗とECのOMOの実現」「生産体制の強化」などを重点課題としています。具体的には、海外進出やキャラクタービジネスの開拓、EC事業の内製化と効率化、技術指導による生産工場の育成などに取り組み、ブランド価値の向上と経営の安定化を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は店舗従業員等の確保・育成を重要な経営課題と捉えています。優秀な人材確保のため、新卒採用の継続や多様な採用チャネルを活用するとともに、転勤のない正社員採用や時短勤務の導入など、雇用形態や働き方の多様化を図っています。また、全スタッフの継続的なスキルアップを目指し、社内研修や工場視察などを実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 34.2歳 | 6.7年 | 4,033千円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ブランド力の維持について
法令違反等の不適切な行為や、SNS等での悪質な風評被害が発生した場合、事実の真偽に関わらずブランドイメージが毀損され、事業や業績に悪影響を与える可能性があります。同社はブランドの世界観を重視しているため、イメージ低下の影響は大きいと考えられます。
■(2) ファッショントレンドについて
ファッションブランド業界は流行の変化が激しく、商品のライフサイクルが短い傾向にあります。同社は流行に左右されにくい商品開発等でリスク低減を図っていますが、急激なトレンド変化が起きた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定人物への依存について
創業者の瀬尾訓弘氏は、経営方針の決定だけでなく、商品企画やブランドプロデュースにおいても重要な役割を担っています。組織体制の強化を進めていますが、何らかの理由で同氏の業務継続が困難になった場合、経営や業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 自然災害、事故、感染症発生等のリスク
生産・販売拠点が主に国内に集約されているため、大地震や台風等の自然災害、予期せぬ事故等が発生した場合、店舗設備への被害や物流・仕入の停滞が生じ、事業活動が困難になる可能性があります。これらは業績に悪影響を及ぼすリスク要因となります。



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