※本記事は、株式会社 日宣 の有価証券報告書(第72期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日宣ってどんな会社?
放送・通信業界や住まい関連業界向けに、独自のメディアやマーケティング支援を提供する広告会社です。
■(1) 会社概要
同社は1947年に宣伝五洋社として創業し、1953年に設立されました。1996年には主力となるケーブルテレビ加入者向け番組情報誌「チャンネルガイド」を創刊しました。2017年にJASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2024年12月には株式会社アスティを子会社化するなど、事業拡大を進めています。
連結従業員数は142名、単体では123名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社である有限会社オオツコーポレーションで、第2位は同社代表取締役社長の大津裕司氏、第3位は情報通信サービス等を手掛ける光通信です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社オオツコーポレーション | 37.10% |
| 大津 裕司 | 8.21% |
| 光通信 | 5.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは大津 裕司氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大津 裕司 | 取締役社長(代表取締役)CEO | 1994年クオラス入社を経て1998年同社入社。2008年社長就任。グループ会社社長等を歴任し、2019年より現職。 |
| 村井 敏裕 | 専務取締役COO | 1992年同社入社。営業部長、AH事業長などを経て、2023年より現職。2024年よりアスティ社長を兼任。 |
| 飛川 亮 | 常務取締役CMO | 1997年読売広告社入社。2011年同社入社。クリエイティブ部長、統合ソリューションセンター長などを経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、川田 篤(オロ代表取締役)、大川 容子(大川総合法律事務所代表兼弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「広告宣伝事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 広告宣伝事業
全国のケーブルテレビ局向け番組情報誌「チャンネルガイド」の企画・制作や、放送・通信、住まい・暮らし、医療・健康業界等の顧客に対し、各種販促サービスやデジタルマーケティング等のソリューションを提供しています。また、独自のメディア企画・開発も行っています。
収益は、顧客企業からの広告制作費、プロモーション企画費、媒体掲載料などから構成されています。運営は主に同社が行っていますが、都心の高級マンションを中心とした広告プロモーションについては、2024年に子会社化した株式会社アスティが担っています。
■(2) その他事業
広告宣伝事業に含まれない領域として、関西圏を中心にカタログ、パンフレット、チラシ、ポスター等の各種商業印刷や、オリジナル紙うちわ「エコ紙うちわ」の製造・販売を行っています。
収益は、顧客からの印刷物等の受注・製造による対価として得ています。運営は、連結子会社である株式会社日宣印刷が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、第72期には55億円を超えました。利益面では、第71期に一時的な減少が見られましたが、第72期には経常利益4.1億円と回復・成長し、利益率も7.4%に改善しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 48億円 | 51億円 | 52億円 | 55億円 |
| 経常利益 | 3.2億円 | 3.7億円 | 3.5億円 | 2.9億円 | 4.1億円 |
| 利益率(%) | 6.7% | 7.7% | 6.8% | 5.5% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.7億円 | 2.2億円 | 2.0億円 | 2.5億円 | 2.6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、売上総利益率は23.1%から25.2%へと改善しました。営業利益率も向上しており、収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 55億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 14億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.1% | 25.2% |
| 営業利益 | 3.0億円 | 3.9億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が3.9億円(構成比38%)、役員報酬が1.1億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の広告宣伝事業は、ケーブルテレビ局向け情報誌が堅調に推移したほか、デジタル関連案件の受注増やM&Aの効果により増収となりました。その他事業(印刷等)は、売上高が横ばいで推移しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| 広告宣伝事業 | 51億円 | 54億円 |
| その他 | 1.5億円 | 1.5億円 |
| 連結(合計) | 52億円 | 55億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日宣は、広告宣伝事業を中心に、堅調な営業活動により資金を生み出しています。投資活動では、将来の成長に向けた投資を行いつつ、財務活動では、株主への還元や借入金の返済を進めています。これらの活動の結果、手元資金は増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.9億円 | 5.6億円 |
| 投資CF | -3.4億円 | -1.1億円 |
| 財務CF | -1.4億円 | -2.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私たちは、“コミュニティ発想”をもとに、あらゆるステークホルダーの価値創造パートナーとなる」という経営理念を掲げています。既存の媒体に頼らないユニークな事業やサービスを通じて顧客の新市場を開拓し、社会・地域の幸福や活性化に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
独立系広告会社というインディペンデントな立場から、独自の成長戦略とブランディングを推進する文化があります。広告やメディアに依存せず、独自のポジションと強みを持ち、ターゲット市場にフォーカスすることで、メディアではなく「コミュニティ」をベースにしたマーケティング支援会社としての進化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画における成長戦略として、独自の「コミュニティ発想」に基づく成長の実現を掲げています。具体的には、「事業成長・創造」と「M&A・投資」を成長戦略の軸とし、それを支える戦略として「人的資本の強化」と「ESG経営への取り組み」に注力しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の有料広告枠に依存しないマーケティング支援に注力するとともに、有望市場や領域の拡張のためにM&Aや投資を活用する方針です。また、デジタル領域での事業拡大のため、デジタル戦略本部を設立し、技術活用や専門人材の確保を進めています。経営資源の最適化を図り、需要が見込まれる領域へ戦略的に資源を投入します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高度で多様な人材が集まり創発することで価値を創造するため、多様な人材が活躍できる環境整備、中途・シニア採用、若手優秀人材の管理職登用を推進しています。また、人材育成プログラム「日宣Next Leaders Project(NLP)」を導入し、成長支援とインセンティブ付与を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 38.2歳 | 7.7年 | 6,016,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 89.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境に関するリスク
広告業界は景気や企業の広告支出動向の影響を受けやすく、特定業界や企業の景況に業績が左右される傾向があります。同社は新規取引先の開拓により特定業界への依存度を下げる方針ですが、国内景気の変動による広告費減少や受注単価の低下が、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新及びメディアの構造変化への対応
スマートフォンの普及やSNSの浸透により、消費者のメディア接触行動が大きく変化しています。同社はインターネット技術を活用したマーケティング手法への対応を進めていますが、技術革新やメディアの構造変化に適切に対応できない場合、競争力が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定の取引先への依存
同社グループは、旭化成ホームズグループに対して幅広い広告宣伝サービスを提供しており、売上高の約18%を占めています。安定的な取引関係にありますが、同社グループからの受注状況や取引関係の変化、広告宣伝政策の変更があった場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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