日宣 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日宣 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日宣は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ケーブルテレビ局向け情報誌の制作や、住まい・暮らし、外食チェーン等への広告宣伝事業を主力とします。「コミュニティ発想」に基づく独自のマーケティング支援が奏功し、直近の業績は増収増益を達成、売上高や利益面で過去最高を更新して力強い成長を続けています。


※本記事は、株式会社日宣の有価証券報告書(第73期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日宣ってどんな会社?


放送・通信や住まい・暮らし業界向けに、独自の「コミュニティ発想」を用いた広告プロモーションを提供しています。

(1) 会社概要


1947年に宣伝五洋社として創業し、1953年に日本宣伝工業を設立、1993年に日宣へ商号変更しました。1996年よりケーブルテレビ向け番組情報誌「チャンネルガイド」の出版を開始。2017年にJASDAQへ上場し、直近では2024年にアスティを子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で134名、単体で126名です。筆頭株主は創業一族の資産管理会社である有限会社オオツコーポレーションで、第2位は代表取締役会長の大津裕司氏、第3位は専務取締役の村井敏裕氏となっており、経営陣とその関連会社が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社オオツコーポレーション 35.87%
大津 裕司 8.95%
村井 敏裕 4.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは飛川亮氏が務めています。取締役における社外取締役の比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
飛川 亮 取締役社長(代表取締役)CEO 1997年読売広告社入社。2011年同社入社。クリエイティブ部長、統合ソリューションセンター長、CMOなどを経て、2026年3月より現職。
大津 裕司 取締役会長(代表取締役) 1994年富士アドシステム入社。1998年同社入社。2008年代表取締役社長、2019年社長CEO等を経て、2026年3月より現職。
村井 敏裕 専務取締役COO 1992年同社入社。営業2部長、取締役、常務取締役CSOなどを経て、2023年5月より現職。アスティ代表取締役社長。


社外取締役は、川田篤氏(オロ代表取締役社長)、大川容子氏(大川総合法律事務所代表兼弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「広告宣伝事業」および「その他」事業を展開しています。

広告宣伝事業


放送・通信、住まい・暮らし、医療・健康などの業界向けに、経営課題に対してユニークな広告ソリューションを提供しています。メディアニュートラルな視点から、テレビ、WEB、SNS、イベント運営など多岐にわたる施策をワンストップで企画・制作し、顧客企業のプロモーションを支援しています。

収益源は、顧客企業から受け取る広告プロモーションの企画・制作費やプロデュース料などです。全国のケーブルテレビ局向け情報誌の制作や大手住宅メーカーのセールスプロモーションなどを手掛け、本事業の運営は主に日宣および連結子会社のアスティが行っています。

その他


広告宣伝事業に含まれない事業セグメントとして、主に関西地域の企業に対する各種商業印刷事業などを展開していました。

印刷物の納品を履行義務とし、顧客から受け取る印刷代金などを収益としていました。同社グループの印刷事業を担っていましたが、成長領域への経営資源集中のため、運営主体であった日宣印刷の全株式を2026年2月に譲渡しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が48億円台から65億円台へと継続的に拡大しています。経常利益も一時的な踊り場を経て直近では約10.8億円に急拡大し、利益率も16.6%と大幅な改善を見せました。事業成長に加え、投資事業組合運用益の計上なども寄与し、力強い成長トレンドを描いています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 48.4億円 50.6億円 52.2億円 55.3億円 64.8億円
経常利益 3.7億円 3.5億円 2.9億円 4.1億円 10.8億円
利益率(%) 7.7% 6.8% 5.5% 7.4% 16.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.2億円 2.0億円 2.5億円 2.6億円 8.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は55億円から65億円へ約17%増加しました。売上総利益率は25.2%から26.2%へ改善し、営業利益率も7.1%から7.5%へと上昇しており、原価抑制や生産性向上の取り組みが利益水準の押し上げに貢献しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 55.3億円 64.8億円
売上総利益 14.0億円 17.0億円
売上総利益率(%) 25.2% 26.2%
営業利益 3.9億円 4.9億円
営業利益率(%) 7.1% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が4.7億円(構成比38%)、役員報酬が1.6億円(同13%)、減価償却費が1.1億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上推移を見ると、主力の広告宣伝事業が17%以上の大幅な増収を達成し、全体の成長を牽引しています。ケーブルテレビ番組情報誌などの既存サービスに加え、放送・通信業界における大型案件の受注や住まい・暮らし業界でのM&A効果が寄与しました。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
広告宣伝事業 53.8億円 63.1億円
その他 1.5億円 1.7億円
連結(合計) 55.3億円 64.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等による収入で借入の返済等を進める「改善型」の傾向を示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 5.6億円 4.4億円
投資CF -1.1億円 6.1億円
財務CF -2.0億円 -1.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、“コミュニティ発想”をもとに、あらゆるステークホルダーの価値創造パートナーとなる」という経営理念を掲げています。既存の媒体に頼らないユニークな事業やサービスを通じて、顧客の新市場を共に開拓し、社会・地域の幸福や活性化に寄与していくことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、生活者を人と人との小さなつながりである「コミュニティ」として捉える独自の「コミュニティ発想」を企業文化の根底に置いています。高度で多様な人材が集まり創発することを歓迎し、他とは異なる「独自の視座」や「逆張りの視点」を持つユニークなインディペンデント企業としての価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として「連結売上高」および「連結営業利益」を重要な経営指標と捉えています。次の10年に向けたビジョンに基づき、デジタルマーケティングや映像制作などサービス領域の拡大を図りつつ、グループの生産性向上を通じて連結営業利益率の改善を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画における成長戦略として、独自の「コミュニティ発想」に基づく事業成長と、M&A・投資による有望市場の拡張を2本の軸に据えています。ペイドメディアに依存しないマーケティング支援に注力するとともに、人的資本の強化やデジタル領域への戦略的なリソース投入を進め、持続的な成長基盤を構築する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材が創発することで新たな価値を生み出すと考え、人件費をコストではなく「人材への投資」と位置付けています。フレックス制度やリモートワークの導入を含め、全ての社員が自分らしく活躍できる環境整備を進めるとともに、中途採用やシニア社員の積極登用、若手人材の抜擢を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 37.8歳 7.7年 6,273,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 85.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率の目標(6.5%以下)、女性部長比率の目標(30%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 広告市場の事業環境変動リスク


同社の業績は、国内の景気動向や特定業界・企業の広告支出動向に影響を受けやすい傾向があります。そのため、新規取引先の開拓を進め、特定の業界に依存する体制からの転換を図っていますが、景気変動による受注減少や単価の下落が発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 電力小売事業の収益変動リスク


同社の持分法適用関連会社が展開する電力小売事業では、損益分岐点に達するまで費用が先行するビジネスモデルとなっています。また、新規参入による競争激化や電力調達価格の高騰、気温変動による使用量変化などが生じた場合、同社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


同社はプライバシーマークを取得し、厳格な情報管理体制を構築していますが、サイバー攻撃や不正アクセス、コンピューターウイルスの侵入などによりデータの破壊や情報漏洩が生じた場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生につながり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。