フュージョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フュージョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

札幌証券取引所アンビシャスに上場する総合マーケティングサービス企業です。顧客データ分析に基づくCRM支援やシステム構築、プロモーション支援を一気通貫で提供します。直近決算は、分析案件やシステム導入が進み増収となったものの、投資有価証券評価損等の計上で最終赤字となりました。


※本記事は、フュージョン株式会社 の有価証券報告書(第34期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フュージョンってどんな会社?


ビッグデータ分析やCRM戦略の立案・実行支援を強みとし、アナログとデジタルを融合したマーケティングソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


1991年に設立され、企画支援システムの開発・販売からスタートしました。2002年にデータウェアハウス専用サーバを導入し、顧客情報分析に基づくダイレクトマーケティング事業を開始。2017年に札幌証券取引所アンビシャスへ株式上場を果たしました。その後も本社拡張やプライバシーマーク、ISMS認証の取得等を通じて体制を強化しています。

2025年2月28日時点で、単体従業員数は75名です。筆頭株主は創業者で現取締役会長の花井秀勝氏であり、第2位は同氏の親族である花井優樹氏、第3位は資産管理会社と思われるプログレスとなっています。また、事業パートナーである印刷大手も大株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
花井 秀勝 15.80%
花井 優樹 15.13%
プログレス 11.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は佐々木卓也氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々木 卓也 代表取締役社長 1997年凸版北海道印刷入社。2000年同社入社、常務取締役、取締役社長を経て2011年より現職。
花井 秀勝 取締役会長 1975年北海道大学工学部勤務。1991年同社設立・代表取締役社長。2024年より現職。
安田 真 専務取締役 1997年札幌銀行(現北洋銀行)入行。2005年同社入社、常務取締役を経て2012年より現職。
木村 達夫 常務取締役 1995年ニトリ入社。日本トイザらスを経て2004年同社入社。2022年より現職。
花井 優樹 取締役 2007年ベルーナ入社。2013年同社入社。ビジネス部門ソリューション第1グループ担当。


社外取締役は、川村秀憲(北海道大学大学院情報科学研究院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合マーケティング支援事業」の単一セグメントで事業を展開しており、サービス内容は大きく3つの分野に区分されています。

(1) CRM支援分野


顧客行動データを保有する企業に対し、データ分析に基づくマーケティング活動(顧客マーケティング)をトータルで支援します。現状分析から戦略策定、施策の立案・運用までを一気通貫で提供する点が特徴です。

収益は、クライアント企業からのコンサルティングフィー、分析費用、クリエイティブ制作費、運用代行費などから構成されます。運営は主にフュージョンが行っています。

(2) サービス運営支援分野


クライアント企業のマーケティング基盤となるシステムの設計・構築や、ECサイトの最適化支援を行います。システム基盤の最適化や機能開発、ECの付加価値向上などを通じ、マーケティングの実効性を技術面から支えます。

収益は、クライアント企業からのシステム開発費、保守運用費、ASPサービス利用料などから構成されます。運営は主にフュージョンが行っています。

(3) 教育支援分野


マーケティング担当者のスキルアップや社内教育を支援するサービスです。データマーケティングに関するeラーニングサービス「DCFM」の提供や、各種セミナーの開催を行っています。

収益は、クライアント企業や受講者からの受講料、セミナー参加費などから構成されます。運営は主にフュージョンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は緩やかな増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近の2025年2月期は増収となったものの、コスト増や評価損の影響により、経常利益は減益、当期純利益は赤字に転落しました。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 12.4億円 14.0億円 14.6億円 14.7億円 15.0億円
経常利益 -0.0億円 0.4億円 0.6億円 0.5億円 0.1億円
利益率(%) -0.0% 3.0% 3.9% 3.4% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.0億円 0.3億円 0.4億円 0.5億円 -0.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。販管費も増加した結果、営業利益は大きく減少しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 14.7億円 15.0億円
売上総利益 6.3億円 6.1億円
売上総利益率(%) 42.8% 40.7%
営業利益 0.5億円 0.2億円
営業利益率(%) 3.4% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.3億円(構成比39%)、役員報酬が0.7億円(同12%)、支払手数料が0.6億円(同11%)を占めています。売上原価においては、外注費が6.2億円(原価構成比70%)と大半を占め、次いで労務費が1.6億円(同18%)となっています。

(3) セグメント収益


全ての分野において前期を上回る、もしくは一定の売上を維持しています。特に主力のCRM支援分野とサービス運営支援分野が堅調に推移し、全社の増収に寄与しました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
CRM支援分野 11.7億円 11.7億円
サービス運営支援分野 3.1億円 3.3億円
教育支援分野 0.1億円 0.0億円
連結(合計) 14.7億円 15.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フュージョン社の当事業年度末の現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べて増加しました。営業活動では、事業活動により資金が増加しました。投資活動では、設備投資や有価証券の取得により資金が減少しました。財務活動では、借入により資金が増加しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 0.2億円 0.3億円
投資CF -0.2億円 -0.3億円
財務CF -0.6億円 1.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「マーケティングカンパニー」を経営理念として掲げています。データだけでは読み取れない「想い」や「現場感」に寄り添い、戦略から戦術まで伴走する「伴走型マーケティングパートナー」として、企業と顧客をつなぐ役割を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


「マーケティングに、体温を。」というスローガンのもと、3つのコアバリュー「The Marketer(プロフェッショナルとしての誇り)」「Fellowship(仲間との協力)」「Breakthrough(現状打破)」を行動指針としています。従業員一人ひとりが自律的に行動し、組織として高いパフォーマンスを発揮することを重視する文化です。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な成長と企業価値向上のため、収益力の強化と経営効率化を目標としています。具体的な経営指標としては、売上高、売上総利益率、および売上高営業利益率を重要視しており、これらの向上に向けた各経営課題に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


既存クライアントとの取引拡大に加え、新業界への進出を成長戦略の柱としています。特に、顧客行動データ分析に基づく「顧客マーケティング」のトータル支援を強化し、提供価値の拡大を図ります。また、プロジェクト管理の強化による業務効率化や、情報管理体制の徹底、人材の確保・育成にも注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員の成長によりビジネスの成長」を実現するため、挑戦機会と学習環境の提供を重視しています。人事評価では多面的な議論によるフィードバックを行い、オンボーディングやメンター制度、資格取得支援などで個人の成長を後押ししています。また、ハイブリッドワークやフレックスタイム制を導入し、多様な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 39.9歳 6.1年 5,005,828円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.8%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.4%
男女賃金差異(正規) 81.4%
男女賃金差異(非正規) 43.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性の割合(47.2%)、有休消化率(58.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境および主要顧客への依存


同社の業績は国内の景気や個人消費動向の影響を受けやすく、クライアント企業の販促費削減等がリスクとなります。また、売上高の約25%を上位2社が占めており、特定顧客との取引縮小や停止が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 外注先の確保と品質維持


制作業務等の多くを専門会社へ外注しています。これまでは安定的に確保できていますが、外注先の事情により取引が継続できなくなったり、品質維持が困難になったりした場合、サービス提供に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 競争の激化


マーケティング業界は拡大傾向にあり、多くの競合企業が存在します。同社はワンストップサービス等で差別化を図っていますが、競争激化により優位性が失われた場合、取引縮小等により業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 情報管理とシステム障害


個人情報を含む機密情報を扱っているため、漏洩や不正利用が発生した場合、損害賠償や信用低下を招く恐れがあります。また、事業が通信ネットワークに依存しているため、災害やサイバー攻撃等によりシステム障害が発生した場合、事業継続に深刻な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。