フュージョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フュージョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フュージョンは札幌証券取引所アンビシャスに上場する総合マーケティングサービスプロバイダ企業です。企業のマーケティング課題の明確化から施策運用を支援するCRM支援分野などを展開しています。直近の業績は、前年比で減収となったものの、経常利益は増益となり、最終利益も黒字転換を果たしました。


※本記事は、フュージョン株式会社の有価証券報告書(第35期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. フュージョンってどんな会社?


企業のビッグデータ分析やマーケティング活動をトータルに支援するマーケティングカンパニーです。

(1) 会社概要


1991年に北海道企画事業協同組合の研究開発の成果物を普及させる目的で設立されました。2002年にはデータウェアハウス専用サーバを導入し、顧客情報分析に基づくダイレクトマーケティング事業を開始しました。2005年にPOSデータ分析ASPサービスをリリースし、2017年には札幌証券取引所アンビシャスへ上場しました。

現在は単体で77名の従業員を抱える体制で事業を展開しています。主要株主の状況としては、筆頭株主が創業者の花井秀勝氏で、第2位も創業家であり同社役員の花井優樹氏が名を連ねています。第3位にはプログレスが位置しています。

氏名 持株比率
花井秀勝 15.80%
花井優樹 15.13%
プログレス 11.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は佐々木卓也氏が務めています。社外取締役は1名(比率11.1%)です。

氏名 役職 主な経歴
花井秀勝 取締役会長 北海道大学工学部、マル花札幌凸版印刷社長等を経て1991年同社設立、代表取締役社長就任。2008年代表取締役会長となり、2024年5月より現職。
佐々木卓也 代表取締役社長 凸版北海道印刷を経て2000年同社入社。常務取締役、取締役社長を歴任し、2011年5月より現職。
安田真 専務取締役バックオフィス担当 札幌銀行(現北洋銀行)を経て2005年同社入社。執行役員、常務取締役を歴任し、2012年5月より現職。
木村達夫 常務取締役フロントオフィス部門担当 ニトリ、日本トイザらスを経て2004年同社入社。執行役員、取締役を経て2022年5月より現職。
花井優樹 取締役 ベルーナ、エンパイヤ自動車を経て2013年同社入社。執行役員を経て2024年3月より現職。


社外取締役は、川村秀憲(北海道大学大学院情報科学研究院教授)です。

2. 事業内容


同社は、「総合マーケティング支援事業」の単一セグメントで展開していますが、主に以下の3つの分野に分けてサービスを提供しています。

(1) CRM支援分野


顧客行動データを保有するクライアント企業に対して、顧客行動データの分析に基づき実施する顧客マーケティング活動に関するトータル支援を提供しています。マーケティング面の課題の明確化、戦略策定から施策の立案や運用までをコンサルティングします。

企業が抱える顧客データ漏洩リスクや展開スピードの課題に対し、システム構築からプロモーションまで複数の機能を融合して継続的に課題解決を支援することで収益を得ています。運営は同社が行っています。

(2) サービス運営支援分野


クライアント企業に対して、システム基盤の最適化および機能開発の支援を行っています。加えて、ECの最適化や付加価値を向上させるためのサポートも展開しています。

顧客企業のニーズに合わせて既存のシステム環境を改善し、ECサイトの構築から運営までを伴走型で支援することによる対価を収益源としています。同社がサービス運営支援を提供しています。

(3) 教育支援分野


クライアント企業の社内教育やマーケターのスキルアップを支援するためのサービスを展開しています。主に各種セミナーの開催などを通じて、マーケティングに関する知識やノウハウの共有を行っています。

企業のマーケティング担当者向けにスキルアップの機会を提供し、教育プログラムやセミナーの受講料等を収益源としています。同社がクライアントの体制やニーズに応じて柔軟にサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は概ね14億円から15億円の範囲で安定して推移しています。経常利益は2023年2月期をピークに一度減少しましたが、直近の2026年2月期では増益へと転じ、当期純利益についても黒字回復を果たしています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 14.0億円 14.6億円 14.7億円 15.0億円 14.9億円
経常利益 0.4億円 0.6億円 0.5億円 0.1億円 0.2億円
利益率(%) 2.9% 3.9% 3.4% 0.9% 1.1%
当期純利益 0.3億円 0.4億円 0.5億円 -0.2億円 -

(2) 損益計算書


売上高は前事業年度から微減となったものの、売上総利益は増加し、売上総利益率も40.7%から42.3%へと改善しています。営業利益についても前年並みの水準を確保しており、コストコントロールの効果が表れています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 15.0億円 14.9億円
売上総利益 6.1億円 6.3億円
売上総利益率(%) 40.7% 42.3%
営業利益 0.2億円 0.2億円
営業利益率(%) 1.1% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.5億円(構成比41%)、役員報酬が0.7億円(同12%)、支払手数料が0.6億円(同9%)を占めています。売上原価の内訳については、外注費が5.7億円(構成比66%)、労務費が1.8億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は総合マーケティング支援事業の単一セグメントであるため、事業全体の状況を分析します。CRM支援分野では案件の業務縮小がありましたが、サービス運営支援分野におけるPOSデータ開示システムの運用継続や、教育支援分野における新規研修案件の受注などが売上を支えています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
総合マーケティング支援事業 15.0億円 14.9億円
連結(合計) 15.0億円 14.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.3%で市場平均を上回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 0.3億円 0.2億円
投資CF -0.3億円 -0.3億円
財務CF 1.7億円 -0.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「マーケティングカンパニー」を経営理念として掲げています。また、「マーケティングの力で、企業をもっと顧客の近くへ。」というミッションを組織の存在目的として最重要視し、伴走型マーケティングパートナーとしてクライアント企業の活動を支援することで、社会の持続可能な発展への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、ミッションを達成するための従業員の行動指針として「The Marketer」「Fellowship」「Breakthrough」の3つのコアバリューを掲げています。個々の強みを活かしながら自律的に行動を起こすことや、全メンバーが一致団結して高いパフォーマンスを発揮し続ける組織風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画「Rising2028」の初年度として、「伴走型マーケティングパートナーとして、個別最適のソリューションから成果を再現するサービスへ進化する」という指針を掲げています。経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標としては、以下の項目を重要な経営指標として位置づけています。

* 売上高
* 売上総利益率
* 売上高営業利益率

(4) 成長戦略と重点施策


CRM領域における「Marketing as a Service(MaaS)」モデルの構築を推進しています。既存の小売・メーカー・通販業界でのナレッジを転用し、新業界開拓への投資活動を積極的に展開する方針です。ストック型ビジネスへの転換やAIの業務プロセスへの組み込みを通じ、収益性を伴う成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、継続的な人材育成を経営の重要課題と位置づけ、従業員の成長がビジネスの成長を実現するという考えのもと人事制度を設計しています。入社時のオンボーディングやメンター制度、誰でも学習できる「フュージョンWEB寺子屋」の展開など、多様な人材が活躍できるための成長支援と環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 40.2歳 6.4年 4,961,460円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 29.4%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 44.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性の割合(50.0%)、有休消化率(64.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内BtoC企業への業績依存


同社の取引先は日本国内の流通小売業や製造小売業などのBtoC企業に依存しているため、国内の景気動向や個人消費の冷え込み等の影響を受けやすい傾向があります。特定の業界に依存している状況からの転換を進めていますが、クライアント企業における販売促進費の抑制などが業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の主要顧客への取引依存


同社の売上高に占める特定の主要クライアント企業の割合が大きく、当該クライアント企業との取引の継続が困難な事態に陥った場合や、取引額が大幅に減少した場合には、業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。新規クライアントの開拓を通じた依存度の低減に努めています。

(3) 個人情報の取扱いに伴う情報漏洩


クライアント企業から預かる膨大な顧客の個人情報を取り扱っているため、関係者や業務提携先の故意・過失等により情報漏洩や悪用が発生した場合、損害賠償を含む法的責任を追及される可能性があります。プライバシーマークを取得するなど、情報セキュリティシステムの強化に努めています。

(4) 業務委託先の品質と安定確保


ダイレクトメールの制作等の実作業の多くを外部の専門会社に外注しています。そのため、外注先の事情によって取引が継続できなくなったり、求められる品質の維持が困難になったりした場合には、クライアントからの信頼低下を招き、業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。