ジェイドグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイドグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場しており、ファッション通販サイト「LOCONDO.jp」等のECモール事業や、IT・物流インフラを提供するプラットフォーム事業、ブランド事業を展開しています。2025年2月期の業績は、売上高が前期比で大幅な増収となったものの、経常利益は減益となりました。


※本記事は、ジェイドグループ株式会社 の有価証券報告書(第15期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジェイドグループってどんな会社?


ファッションECサイト「LOCONDO.jp」を軸に、IT・物流インフラの提供やブランド運営も行う企業です。

(1) 会社概要


同社は2010年に設立され、2011年に「無料で試着できる」靴の通販サイト「LOCONDO.jp」を開始しました。2017年にマザーズ市場(現グロース市場)へ上場を果たし、2020年にはReebok事業等のD2Cブランド取り扱いを開始しました。2023年にジェイドグループへ商号変更し、2024年にはマガシークを子会社化するなど、M&Aを通じた事業拡大を進めています。

連結従業員数は241名(単体140名)です。筆頭株主は創業者の田中裕輔氏で、第2位は金融商品取引業者のSBI証券、第3位は資産管理業務を行う信託銀行(常任代理人)となっています。

氏名 持株比率
田中 裕輔 7.15%
SBI証券 5.77%
BBH CO FOR ARCUS JAPAN VALUE FUND 4.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は田中裕輔氏が務めています。取締役5名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 裕輔 代表取締役社長 マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2011年同社入社、代表取締役就任。RBKJやマガシークの代表取締役も兼任。2011年より現職。
髙志 成俊 取締役 三和銀行(現三菱UFJ銀行)、デジタルデータソリューションを経て2022年同社入社。RBKJやマガシークの取締役も兼任。2025年より現職。


社外取締役は、鈴木智也(株式会社アコード・ベンチャーズ取締役ゼネラルパートナー)、廣田聡(HCA法律事務所代表弁護士)、落合敦子(株式会社Power of Dialogue創業)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ECモール事業」「プラットフォーム事業」および「ブランド事業」を展開しています。

(1) ECモール事業


「LOCONDO.jp」や「MAGASEEK」等の自社運営サイト、および楽天やYahoo!等の他社モールに出店する「LOCOMALL」を通じて、靴やファッション商品を販売しています。ユーザーに対して「即日出荷」「サイズ交換無料」「返品送料無料」などのサービスを提供している点が特徴です。

収益は、受託型の場合はブランドからの受託販売手数料、買取型の場合は商品の販売代金から得ています。運営は主にジェイドグループや子会社のマガシークが行っています。また、広告掲載料やギフトラッピング等のサービス手数料も収益の一部となっています。

(2) プラットフォーム事業


ECモール事業で構築したIT・物流インフラを活用し、ブランドの自社公式ECサイト支援(BOEM/ECS)、物流受託(e-3PL)、店舗欠品対応(LOCOCHOC)、POSレジ(LOCOPOS)などのサービスを提供しています。ブランドのEC運営やオムニチャネル戦略を支援するBtoB事業です。

収益は、ECサイト構築・運営による受託販売手数料やシステム開発費、物流業務における出荷手数料や保管料、システム利用料などの月額固定収入からなります。運営はジェイドグループおよびマガシークなどが担っています。

(3) ブランド事業


ECモール事業およびプラットフォーム事業のインフラを活用し、自社でブランド運営を行う事業です。「Reebok」「FASCINATE」「MANGO」などのブランドを取り扱い、ECサイトだけでなく実店舗や卸事業も展開しています。

収益は、各ブランド商品の販売代金から得ています。運営は、RBKJ、FASCINATEなどの子会社やジェイドグループが行っており、グループ内のプラットフォームを活用することで効率的な運営を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は第13期以降大きく拡大し、当期(第15期)には192億円に達しています。これはM&Aなどの効果によるものです。一方、経常利益は10億円から17億円の間で推移しており、当期は前期に比べやや減少しました。当期利益については、第14期以降減少傾向にあり、当期は4億円となっています。

項目 2021年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 103億円 105億円 134億円 192億円
経常利益 14億円 10億円 17億円 16億円
利益率(%) 14.1% 9.2% 12.8% 8.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 12億円 10億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の134億円から192億円へと大幅に増加しました。売上総利益も100億円から152億円へ拡大していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益については、前期の17億円から15億円へと減少し、営業利益率も低下しています。事業規模は拡大していますが、利益率の面ではやや低下が見られます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 134億円 192億円
売上総利益 100億円 152億円
売上総利益率(%) 74.9% 78.9%
営業利益 17億円 15億円
営業利益率(%) 12.6% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が27億円(構成比19%)、地代家賃が22億円(同16%)、給料及び手当が18億円(同13%)、支払手数料が15億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで売上が増加しました。特にプラットフォーム事業は売上が倍増しており、M&Aによる顧客基盤の拡大が寄与しています。ECモール事業も堅調に推移し、主力の収益源となっています。ブランド事業も増収となりました。なお、利益情報は開示されていないため売上のみ記載します。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
ECモール事業 63億円 84億円
プラットフォーム事業 25億円 55億円
ブランド事業 45億円 54億円
連結(合計) 134億円 192億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローのパターンは「改善型」と判定されます。本業で得たキャッシュと資産(子会社株式等)に関する収入で、借入金の返済や自己株式の取得を進めています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 8億円 29億円
投資CF -36億円 13億円
財務CF 9億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「HAPPY FOR ALL」という経営理念を掲げています。この理念の下、顧客および取引先企業へ革新的かつ満足度の高いサービスを提供するとともに、企業価値を向上させていくことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、人材育成や社内環境整備において「人材力が重要な競争力」であると位置づけています。事業活動に関わる全ての人々の人権を大切にし、差別やハラスメントのない、自分らしく活躍できる環境づくりに努めています。また、サステナビリティの観点から「電気をだいじに」「資源もだいじに」といった具体的な行動指針を示し、環境負荷低減と業務効率化の両立を図る文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、目標とする経営指標として「商品取扱高(返品後)」を重視しています。中長期的には、グループの認知度向上を通じた国内EC化率の拡大を目指すとともに、M&A等による新規・既存事業投資を積極的に行い、企業価値の向上を図る方針です。

* 商品取扱高(返品後):482億円(2025年2月期実績)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「HAPPY FOR ALL」の実現に向け、全国的な知名度の向上、システム及び物流機能の強化、オムニ戦略基盤の強化に取り組んでいます。特に「自宅で試着、気軽に返品」というサービスコンセプトの浸透や、リアル店舗とECの在庫・情報を一元化するオムニ戦略の推進に注力しています。また、靴や鞄以外の衣料品を含めたトータルコーディネートニーズへの対応や、M&Aを通じた事業拡大も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大及び収益基盤の確立のため、優秀な人材の確保と定着を重要視しています。継続的な採用活動と適正な人事評価を行うとともに、社員の職位・職務に応じた研修を実施し、教育・育成を進める方針です。また、業務の標準化やコンプライアンス徹底を通じて、組織力とオペレーションの強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 36.2歳 5.0年 5,322,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.4%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 48.6%
男女賃金差異(正規) 74.2%
男女賃金差異(非正規) 89.6%


※男性育児休業取得率については、有価証券報告書に数値の記載がありませんでした。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の年間賃金(469.3万円)、女性の平均勤続年数(4.4年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連市場と競合環境


インターネット関連市場の発展が阻害される場合、事業に影響が及ぶ可能性があります。また、大手事業会社の参入や各ブランドの直販強化により競争が激化しており、価格競争や配送費・人件費の高騰が生じた場合、収益力が低下する可能性があります。

(2) 返品コストの増大


同社は「自宅で試着、気軽に返品」を掲げ、原則として全ての返品を受け付けています。返品フローの見直し等でコスト管理を行っていますが、予想を超えて返品が大きく発生した場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) システムトラブルと物流機能


事業運営においてシステムの安定稼働と物流機能の維持が重要です。自然災害や事故等によるシステム障害、あるいは商品取扱高の増加に対して倉庫やスタッフの拡充が適時に行えなかった場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。

(4) 在庫リスク


一部の商品については自社で在庫を持つ「買取型」で仕入れています。流行や顧客の嗜好の変化により販売状況が悪化した場合、棚卸資産の評価減を実施する必要が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。