No.1 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

No.1 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の情報セキュリティ機器・OA機器販売会社。子会社で機器の企画開発・製造も行う「製造卸」体制や、エンジニア派遣等のSES事業も展開。直近決算では、情報セキュリティ機器販売やSES事業の寄与で増収となるも、人件費等の増加により減益となりました。


※本記事は、株式会社No.1 の有価証券報告書(第36期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. No.1ってどんな会社?


情報セキュリティ機器やOA関連商品の販売・保守、WEBソリューション等をワンストップで提供する企業です。

(1) 会社概要


1989年に前身となる会社が設立され、2004年の合併を経て現在の商号となりました。2017年にジャスダック(現スタンダード)へ上場し、2020年には株式会社アレクソンを子会社化して製販一体体制を構築しました。2024年にはOZ MODE株式会社等を子会社化し、SES事業へ進出するなど業容を拡大しています。

連結従業員数は680名(単体500名)です。筆頭株主は代表取締役社長の辰巳崇之氏で、第2位は主要な取引先である株式会社クレディセゾン、第3位は光通信株式会社です。クレディセゾンとはOA関連商品のリース販売において、顧客とのリース契約締結を仲介する販売ルートとしての関係があります。

氏名 持株比率
辰巳 崇之 15.57%
クレディセゾン 5.29%
光通信 5.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表者は代表取締役社長執行役員の辰巳崇之氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
辰巳 崇之 代表取締役社長執行役員 1995年ジェー・ビー・エム(現同社)入社。副社長を経て2008年代表取締役社長に就任。現在はグループCEOとして経営全般を指揮。2024年5月より現職。
桑島 恭規 取締役副社長執行役員事業統括本部長 2000年入社。西日本OA機器事業部長、法人事業本部長などを歴任。事業統括本部長として事業全般を管掌。2024年5月より現職。
久松 千尋 取締役常務執行役員グループ成長戦略推進担当 1999年光通信入社。2004年同社経営管理本部長。CFO、グループコーポレート本部長などを経て、現在はグループ成長戦略推進を担当。2024年5月より現職。
平瀬 和宏 取締役上級執行役員経営管理本部長 1987年クレディセゾン入社。同社取締役などを経て、2019年同社取締役就任。パートナー事業本部長などを歴任し、現在は経営管理本部長。2024年5月より現職。
竹澤 薫 取締役上級執行役員事業統括本部 ビジネスサポート事業・システムサポート事業管掌 1994年東芝入社。光通信、NESTAGE代表取締役副社長などを経て、2010年同社常勤監査役。現在はビジネスサポート事業等を管掌。2023年3月より現職。


社外取締役は、吉崎浩一郎(グロース・イニシアティブ代表取締役)、新村和大(名古屋大学特任准教授)です。

2. 事業内容


同社グループは単一セグメントですが、以下の主要事業を展開しています。

(1) 情報セキュリティ機器事業


アレクソン社が企画開発・製造するUTM(統合脅威管理)やセキュリティスイッチ、サーバー等を販売しています。サイバー攻撃への対策として、社内ネットワークの入口・出口を守る多層防御ソリューションを提供しており、中小企業のセキュリティ需要に対応しています。

収益は機器の販売代金が主ですが、自社グループで企画・開発から販売まで行う「製造卸」体制により収益性を高めています。運営は主に同社および株式会社アレクソン、株式会社Club One Systemsが行っています。

(2) OA関連商品販売事業


MFP(複合機)やビジネスフォン、パソコン等のOA機器を中小企業向けに販売しています。主要な仕入先はNTT東日本・西日本やシャープ、キヤノン等で、顧客の要望に応じた最適な商品を提供しています。

収益は機器の販売代金に加え、MFPの保守やトナー交換に伴うカウンターサービス料を得ています。販売においては顧客とリース会社間で契約を結び、同社はリース会社へ販売する形式をとることで、代金回収リスクを低減しています。運営は主に同社が行っています。

(3) ビジネスサポート・システムサポート事業


「No.1ビジネスサポート」として、経営やITに関する課題解決を支援するコンサルティングサービスを提供しています。また、販売した機器の設置・保守・メンテナンスを行うシステムサポートも展開しています。

収益は、ビジネスサポートにおける定期的なコンサルティング料や、機器保守に伴うメンテナンス料などのストック型収益が中心です。運営は同社および株式会社アレクソン、株式会社Club One Systemsが行っています。

(4) WEBソリューション・情報通信端末事業


Webサイトの制作やSEO対策などのWEBソリューション、および法人向けモバイルWi-Fiやスマートフォン等の情報通信端末の販売を行っています。

収益はWebサイト制作費や運用サポート費、通信端末の販売代金等です。運営はWEBソリューションを株式会社No.1デジタルソリューション等が、通信端末販売を同社および株式会社No.1パートナーが行っています。

(5) SES事業


IT開発需要の高い半導体製造装置業や医療等の顧客に対し、システムやソフトウェアの開発・保守・運用を行うエンジニアを派遣しています。

収益は、派遣したエンジニアの技術提供に対する対価(技術料)です。2024年にグループ入りしたOZ MODE株式会社が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、直近5期間で拡大を続けています。一方、利益面では34期・35期と高水準を維持していましたが、当期は減益となりました。当期純利益も前期比で減少しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 118億円 139億円 133億円 135億円 142億円
経常利益 7億円 9億円 11億円 12億円 10億円
利益率(%) 5.9% 6.3% 8.6% 9.0% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 6億円 6億円 7億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回り、売上総利益率は低下しました。販管費も増加しており、結果として営業利益率は低下しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 135億円 142億円
売上総利益 63億円 65億円
売上総利益率(%) 47.0% 45.6%
営業利益 12億円 10億円
営業利益率(%) 9.1% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が23億円(構成比43%)と最も大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力の自社企画商品及びOA関連商品は堅調に推移しました。ビジネスサポートは大幅な増収となり、新規のSES事業も売上に寄与しました。一方、システムサポートやホームページ制作は減収となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
自社企画商品及びOA関連商品 111億円 111億円
情報通信端末 1億円 1億円
ホームページ制作 4億円 3億円
システムサポート 16億円 14億円
ビジネスサポート 5億円 8億円
SES - 2億円
その他 - 0.2億円
連結(合計) 135億円 142億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 6億円 14億円
投資CF -2億円 -6億円
財務CF -4億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「日本の会社を元気にする一番の力へ。」を経営理念として掲げています。トータルビジネスパートナーとして顧客企業を支え、日本経済の原動力になることを目指しています。また、「皆様のNo.1ビジネスパートナー セキュリティ&ソリューション 最先端の情報活用で企業成長を支援。」を経営ビジョンとしています。

(2) 企業文化


「顧客満足度No.1企業から、感動満足度No.1企業」を目指し、顧客を感動させる人材の育成を重視しています。また、100年企業にふさわしい盤石な経営基盤・事業基盤を築くため、「人の成長」こそが「企業の成長」であると考え、人的資本経営の拡充を図る文化があります。

(3) 経営計画・目標


2024年4月に中期経営計画「Evolution2027」を策定し、最終年度である2027年2月期に向けた数値目標を掲げています。

* 売上高:168億円
* 営業利益:18.3億円
* 営業利益率:10.9%
* EBITDA:21.6億円

(4) 成長戦略と重点施策


「経営基盤、事業基盤の再強化、構造改革」「事業領域拡大に向けた積極投資」「収益構造の安定化」「サステナビリティ経営 人的資本経営の推進」を重点戦略としています。M&Aやアライアンスによる事業領域の拡大、特にIT関連やDX企業のグループ化を推進します。

* 情報セキュリティ領域の拡大:自社開発製品の強化や他社技術との連携による新商品投入。
* 収益構造の安定化:ビジネスコンサルタントによる伴走支援など、ストック型ビジネスの拡大。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人の成長」が「企業の成長」であるとし、人的資本経営の拡充を進めています。「社員の感動満足度の向上」「次世代経営人財の育成」「ダイバーシティの推進」を重点方針とし、給与水準の向上や教育体系の再構築、女性活躍推進などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 35.2歳 8.1年 5,373,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 64.6%
男女賃金差異(正規雇用) 65.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) リース事業環境の変化


同社グループの連結売上高の42.5%はリース販売によるものです。顧客とリース会社間で契約を結び、同社がリース会社に商品を販売する形式のため回収リスクは低いものの、リース会社の経営方針や審査基準の変更があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) MFP市場規模の縮小


販売シェアの約30%を占めるMFP(複合機)において、テレワークの普及やオフィスの統廃合、ペーパーレス化の進展により市場規模が縮小する可能性があります。入替サイクルの長期化などで販売が計画通り進まない場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 優秀な人財の確保・育成


事業拡大や技術革新に対応するためには優秀な人材の確保と育成が不可欠です。労働人口の減少に伴う獲得競争の激化により人材確保が困難になったり、既存人材の流出やエンゲージメント低下が生じた場合、事業運営や成長戦略に支障をきたす可能性があります。

(4) 情報セキュリティ


業務に関連して多くの企業情報を保有しているため、サイバー攻撃や不正アクセス等による情報漏洩のリスクがあります。また、自社製品やWebサービスの提供においてシステム障害が発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。