No.1 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

No.1 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

No.1は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、情報セキュリティ機器の企画開発やOA関連商品の販売などを主力事業として展開しています。直近の業績は、主力商品の好調な販売やM&Aの推進による事業領域の拡大が大きく寄与し、売上高および各段階利益ともに前期を上回り、大幅な増収増益を達成して成長基調を維持しています。


※本記事は、株式会社No.1の有価証券報告書(第37期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. No.1ってどんな会社?


情報セキュリティ機器の企画開発・販売や、OA関連商品の販売・保守などを幅広く展開する企業です。

(1) 会社概要


1989年9月に法人向けソフトウェアの販売会社として設立され、2004年にビッグ・ウィンを吸収合併して現在のNo.1へ社名を変更しました。2017年3月には株式上場を果たし、その後アレクソンやアイ・ステーション、進々堂商光などを相次いで子会社化し、情報セキュリティ分野や事業領域の拡大を積極的に推進しています。

従業員数は連結で957名、単体で547名です。大株主の構成については、筆頭株主が創業者の辰巳崇之氏で、第2位は事業会社であるクレディセゾン、第3位はNo.1従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
辰巳 崇之 16.15%
クレディセゾン 5.48%
No.1従業員持株会 3.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は辰巳崇之氏が務めています。社外取締役比率は20.0%(10名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
辰巳 崇之 代表取締役社長執行役員 1995年同社入社。1999年ジャパン・ビジネス・マシンを設立し代表取締役社長。2008年同社代表取締役社長。2023年代表取締役社長執行役員・グループCEOなどを経て、2024年より現職。
桑島 恭規 取締役副社長執行役員事業推進本部管掌 2000年同社入社。西日本OA機器事業部長や法人事業本部長を歴任。2024年同社取締役副社長執行役員事業統括本部長などを経て、2026年3月より現職。
久松 千尋 取締役常務執行役員グループ成長戦略推進本部長 1999年光通信入社。2002年ビッグ・ウィン入社。2004年同社経営管理本部長。取締役上級執行役員、常務執行役員CFOなどを経て、2026年3月より現職。
平瀬 和宏 取締役上級執行役員経営管理本部長 1987年クレディセゾン入社。同社リース事業部長等を経て、2019年同社取締役上級執行役員パートナー事業本部長に就任。2024年5月より現職。
竹澤 薫 取締役上級執行役員オフィスソリューション本部パートナー事業・ビジネスサポート事業・システムサポート事業管掌 1994年東芝入社。光通信などを経て2010年同社常勤監査役。2016年中小企業診断士登録。2019年上級執行役員などを経て2026年3月より現職。


社外取締役は、吉崎浩一郎(グロース・イニシアティブ代表取締役)、新村和大(名古屋大学ディープテック・シリアルイノベーションセンター特任准教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、情報セキュリティ機器の企画開発・製造・販売およびOA関連商品の販売などを単一セグメント内で展開しています。

情報セキュリティ機器の企画開発・製造・販売事業


中小企業向けに、高度化するサイバー攻撃に対応するための多層防御の仕組み(UTM、セキュリティスイッチ、サーバー等)を企画・開発・製造・販売しています。2025年にはAI技術を活用した個人情報管理ソフトもリリースし、顧客のデータ保護を支援しています。

商品の企画・開発から製造・販売までを一貫して行う「製造卸」の体制を構築しています。事業の運営は、グループの中核であるアレクソンを中心として、同社やClub One Systemsなどが担当し、収益は機器の販売代金として得ています。

OA関連商品販売事業


ペーパーレス化が進む中でも企業活動に不可欠なMFP(多機能プリンタ)やビジネスフォン、パソコン・周辺機器、什器などのOA機器等を販売しています。顧客の要望に合わせた機器の提供や、リユース商品の販売・レンタルも行っています。

顧客とリース会社間でリース契約を締結し、同社がリース会社に商品を販売する形式で販売代金を得ています。また、MFPの使用量に応じたカウンターサービス料(メンテナンス・消耗品費用)がストック収益となります。事業の運営は同社やS.I.T、進々堂商光などが担当しています。

ビジネスサポート事業およびシステムサポート事業


様々な経営課題を抱える顧客に対し、経営やITを中心に「売上拡大」「業務効率改善」「リスク低減」を目指す伴走型支援「No.1ビジネスサポート」を提供しています。また、販売した機器の設置・保守・メンテナンスも行っています。

専任のビジネスコンサルタントによる定期面談や課題解決サービスを通じて、継続的なサービス利用料を受け取るストック型収益モデルです。機器の保守費用と合わせて安定的な収益源となっています。事業の運営は同社やアレクソンが担当しています。

システム開発事業およびその他事業


半導体製造装置業、旅行業、医療などIT開発需要の高い領域を主要顧客とし、システムやソフトウェアの受託開発、保守、運用、エンジニアの派遣などの技術力を提供しています。その他、WEBソリューション事業や法人向け携帯電話等の販売も展開しています。

エンジニアの技術提供やシステム開発の受託に対する対価として収益を得ています。運営は、OZ MODEやアイ・ティ・エンジニアリング、コードなどが担い、その他事業はアイ・ステーションやデジタルソリューションなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は133億円から175億円へと順調に拡大しています。特に直近ではM&A等による事業領域の拡大が寄与し、売上高が大きく伸びました。経常利益率も7%から9%台で推移しており、安定した収益性を確保しながら成長を続けていることがわかります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 139億円 133億円 135億円 142億円 175億円
経常利益 8.8億円 11.4億円 12.2億円 10.4億円 13.9億円
利益率(%) 6.3% 8.6% 9.0% 7.3% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.9億円 5.8億円 6.9億円 3.8億円 10.3億円

(2) 損益計算書


直近2年間の売上高は142億円から175億円へ大幅に成長し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約50%と高い水準に向上しており、営業利益率も7%台後半を維持するなど、効率的な利益創出を実現しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 142億円 175億円
売上総利益 65億円 88億円
売上総利益率(%) 45.6% 50.3%
営業利益 10.4億円 13.3億円
営業利益率(%) 7.3% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が30億円(構成比40.2%)、退職給付費用が0.5億円(同0.6%)を占めています。また、売上原価においては、商品仕入高が35億円(構成比76.1%)、労務費が6.9億円(同14.9%)、経費が5.1億円(同11.0%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で生み出した資金を基に、借入も活用しながら積極的な投資を継続する「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。事業領域拡大に向けたM&Aなどの投資活動を活発に行っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 14.5億円 8.3億円
投資CF -5.8億円 -26.1億円
財務CF -4.3億円 16.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本の会社を元気にする一番の力へ。私たちNo.1はトータルビジネスパートナーとしてお客様を支え、日本経済の原動力になります。」を経営理念として掲げています。また、「皆様のNo.1ビジネスパートナー セキュリティ&ソリューション。 最先端の情報活用で企業成長を支援。」を経営ビジョンに設定し、企業価値の向上とステークホルダーの期待に応える事業活動を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、顧客満足度を超えて顧客を感動させる「感動満足度No.1企業」の実現を目指す文化を重視しています。社員に対しても、働き方を含めた「社員の感動満足度の向上」を重点方針に掲げており、処遇水準の向上や自律的なキャリア形成を支援する制度の導入を進めています。多様な人材が能力を発揮し、個と組織の強化を通じて進化し続けることを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2024年4月に策定した「中期経営計画Evolution2027」において、最終年度である2027年2月期に向けた具体的な数値目標を掲げています。積極的なM&A等により事業ポートフォリオの転換を推進し、持続的な成長に向けた経営基盤の強化に取り組んでいます。

* 売上高:168億円
* 営業利益:18.3億円
* 営業利益率:10.9%
* EBITDA:21.6億円

(4) 成長戦略と重点施策


「For Further Evolution!(さらなる進化に向けて)」をテーマに、4つの重点戦略を推進しています。経営や事業基盤の再強化・構造改革を進めるほか、事業領域の拡大に向けたM&Aやアライアンスへの積極投資を実行しています。また、ストック型ビジネスであるビジネスサポートサービスの拡充により収益構造の安定化を図るとともに、人的資本経営やサステナビリティ経営を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「100年企業にふさわしい企業体として経営基盤・事業基盤を盤石とすべく、「人の成長」が「企業の成長」と考え、人的資本経営の拡充を図る」ことを人事の基本方針としています。次世代経営人材の育成やリスキリングを通じた既存人材の能力強化を進めるほか、社員の感動満足度の向上やダイバーシティの推進を重点方針とし、働きやすい環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 35.1歳 7.9年 5,521,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 37.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の育児休業の平均取得日数(26.8日)、新卒採用における女性社員比率(38.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) リース事業環境の変化について


同社グループは、提携リース会社のリース契約を介してOA関連商品等を販売しています。この販売方法は代金回収リスクを回避できる一方、リース会社の経営方針や審査基準が変更された場合、商品の販売活動が制限され、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) MFPの市場規模縮小と他社との競合について


販売主力であるMFP(多機能プリンタ)は、ペーパーレス化やハイブリッドワークの普及により市場の成長が鈍化しています。また、OA機器販売は参入障壁が低いため、新規参入企業との競争が激化し、同社の優位性が低下した場合には、事業戦略や業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) システム障害と情報セキュリティについて


同社は受発注業務や顧客へのクラウドサービス提供においてコンピューターシステムに依存しています。自然災害やサイバー攻撃によるシステム停止、または保有する顧客情報の漏洩が発生した場合、業務の支障や損害賠償、社会的信用の低下を招き、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。