サインポスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サインポスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のサインポストは、金融機関向けのシステムコンサルティングを主力事業とする企業です。AI搭載レジやDX支援などの新規事業も展開しています。直近の業績は、主力事業の堅調な推移により売上高・利益ともに増加し、増収増益を達成しています。


※本記事は、サインポスト株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サインポストってどんな会社?


サインポストは、金融業界を中心としたコンサルティング事業と、AI技術を活用したイノベーション事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2007年に設立され、銀行向けのコンサルティング業務を開始しました。同年には金融業界全般へ対象を広げ、2017年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。2019年にはJR東日本スタートアップと合弁でTOUCH TO GOを設立し、無人決済システムの開発を加速させました。2023年には東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

同社(単体)の従業員数は172名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業者で代表取締役社長の蒲原寧氏で、第2位は法人株主、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
蒲原 寧 21.74%
道しるべ株式会社 10.56%
奥井 裕介 4.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は蒲原寧氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
蒲原 寧 代表取締役社長 三和銀行(現三菱UFJ銀行)を経て、2007年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2019年よりイノベーション事業、2023年よりDX・地方共創事業を管掌。
西島 康隆 代表取締役専務取締役コンサルティング事業管掌DX・地方共創事業管掌生成AI担当役員 フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャー)、日本振興銀行等を経て2007年に入社。金融システム事業部長等を歴任し、2025年5月より現職。
西島 雄一 常務取締役コーポレート本部長 電通計算センター(現電通コーポレートワン)等を経て2012年に入社。総合企画部長、品質管理部長等を歴任し、2019年5月より現職。
鵜飼 篤 取締役イノベーション事業部長 2008年に入社。金融システム第二部部長代理、コーポレート本部部長代理等を経て、2019年8月よりイノベーション事業部長、2024年5月より現職。


社外取締役は、植田俊道(公認会計士)、小林弘明(元池田泉州銀行専務執行役員)、藤田明久(元ぐるなび代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」、「イノベーション事業」、「DX・地方共創事業」を展開しています。

コンサルティング事業

金融機関を中心に、経営・業務課題の解決を目的としたコンサルティングサービスを提供しています。プロジェクトマネジメント支援やIT部門のプロジェクト推進支援を行い、課題特定から解決策の実行までを一貫してサポートします。

収益は、顧客である金融機関等から、準委任契約や派遣契約に基づき対価を受け取ります。運営は主に同社が行っています。

イノベーション事業

独自開発の人工知能「SPAI」等を活用し、設置型AI搭載レジ「ワンダーレジ」などの製品・サービスを開発、販売しています。また、無人決済システム「TTG-SENSE」等の開発も行っています。

収益は、製品の販売代金やライセンス料等を顧客から受け取ります。運営は同社および関連会社の株式会社TOUCH TO GOが行っています。

DX・地方共創事業

同社のDX技術やオープンイノベーションを活用した製品・ソリューションの販売や、IT・DXに関するコンサルティングサービスを提供しています。

収益は、製品・ソリューションの販売代金やコンサルティング料を顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間において増加傾向にあり、特に直近の2025年2月期は30億円を超えています。利益面では、2023年2月期までは損失を計上していましたが、2024年2月期に黒字転換し、2025年2月期には経常利益約2.0億円、当期利益約2.6億円と利益拡大が続いています。利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 20億円 21億円 26億円 29億円 30億円
経常利益 -6.1億円 -3.8億円 -1.2億円 0.9億円 2.0億円
利益率(%) -30.0% -18.1% -4.6% 3.2% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -7.9億円 -2.9億円 -1.3億円 1.3億円 2.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上総利益率は27.4%から30.9%へ改善しました。販管費も増加していますが、売上総利益の増加幅がそれを上回り、営業利益は前期比で約2倍の2.0億円となりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 29億円 30億円
売上総利益 8.0億円 9.3億円
売上総利益率(%) 27.4% 30.9%
営業利益 1.0億円 2.0億円
営業利益率(%) 3.5% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.7億円(構成比23%)、役員報酬が1.1億円(同15%)を占めています。売上原価においては、労務費が12億円(構成比56%)、経費が9億円(同43%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のコンサルティング事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。イノベーション事業とDX・地方共創事業は、先行投資や開発費用の影響等により営業損失となっていますが、DX・地方共創事業は売上高が増加しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
コンサルティング事業 28億円 29億円 5.0億円 6.3億円 21.6%
イノベーション事業 0.8億円 0.5億円 -1.5億円 -1.5億円 -281.7%
DX・地方共創事業 0.3億円 0.6億円 -0.0億円 -0.1億円 -23.5%
調整額 - - -2.4億円 -2.7億円 -
連結(合計) 29億円 30億円 1.0億円 2.0億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

サインポストは、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、事業の健全性が向上しています。これは、税引前当期純利益の計上や売上債権及び契約資産の減少が主な要因です。投資活動では、前事業年度に比べて支出が抑制されました。財務活動では、長期借入金の収入が借入金の返済を上回り、資金が増加しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 0.5億円 3.2億円
投資CF -0.3億円 -0.2億円
財務CF 0.4億円 0.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業理念として「孫の代まで豊かな社会を創る一翼を担う」を掲げ、事業活動の最上位概念に置いています。また、「お客さまの一員として、時代のその先に」を使命とし、顧客の経営・業務課題の解決に道しるべを示し、サービス・製品を創造することで社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「ご満足いただけるソリューションを提供、社会の一隅を照らす存在でありたい」という企業理念のもと、社会に新たな価値を創出し続けること、顧客と社会に感謝される仕事をすること、社員の成長を支援し社員とその家族を幸せにすることを重視しています。一人ひとりの権利と価値観を尊重する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年2月までの経営方針を「安心と挑戦、そして飛躍へ」とし、2030年に日本を代表する企業になることを長期的な目標としています。2026年2月期の業績見通しとして、以下の数値を掲げています。

* 売上高:34億円
* 営業利益:2.2億円
* 経常利益:2.1億円
* 当期純利益:2.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、人的資本の強化、事業領域の拡大、およびAI時代への対応を重点施策として掲げています。具体的には、中途採用活動の強化やエンゲージメント向上、コンサルティング事業でのプロジェクト推進支援ニーズへの対応、地域銀行間の連携支援などに取り組みます。また、全社的な生成AIの活用による生産性向上や新ソリューション開発にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員が長期間能力を発揮し続けることを企業価値向上の基盤とし、中途採用の強化とエンゲージメント向上を最重要事項としています。多様な経験や価値観を持つ従業員が協働し社会課題を解決するため、個人の意欲に応じた制度改定、キャリア形成支援、組織開発、ダイバーシティ推進などの施策を実行しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 36.5歳 5.2年 7,301,719円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.6%
男女賃金差異(正規雇用) 68.6%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異(非正規雇用)は、対象者がいないため記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動によるIT投資への影響

同社の主要顧客である金融機関が、景気動向等の影響でIT投資を抑制した場合、受注案件に対応する職員の稼働率が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は、顧客状況のヒアリングや経営会議等でのモニタリングにより、ニーズとのミスマッチ防止や稼働率維持に努めています。

(2) 人材の確保・育成に関するリスク

人材獲得競争の激化により、優秀な人材の採用難や流出、育成計画の未達成が生じた場合、競争力の低下やサービスレベルの低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。同社は採用活動、従業員の定着、育成に対して優先的に経営資源を投下することで対処しています。

(3) 情報セキュリティリスク

業務遂行において顧客の機密情報や個人情報を取り扱うため、情報漏洩が発生した場合は社会的信用の失墜や多額の対応費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はISO27001認証やプライバシーマークを取得し、情報管理の徹底と環境構築を進めています。

(4) 棚卸資産の評価損リスク

製品製造において、受注生産を行いつつも材料や仕掛品を在庫として保有しており、収益性の低下により評価損を計上する場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は毎月、収益や在庫状況をモニタリングし、営業活動を促進する施策を実行することでリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。