ウイングアーク1st 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウイングアーク1st 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場する企業データ活用支援のリーディングカンパニーです。帳票基盤ソリューションとデータ活用ソリューションを主軸に展開し、売上収益287億円(前期比増)、親会社の所有者に帰属する当期利益59億円(前期比増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、ウイングアーク1st株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ウイングアーク1stってどんな会社?


企業の情報活用を支援するソフトウェアおよびクラウドサービスを展開し、特に帳票基盤ソリューション分野で高い市場シェアを持つ企業です。

(1) 会社概要


同社の源流は1993年に発足した翼システム株式会社の情報企画事業部にあり、1996年に主力製品となる帳票ソフト「SVF」をリリースしました。2004年に事業譲受によりウイングアークテクノロジーズとして独立し、その後2016年に現法人が事業を承継する形で商号変更を行っています。2021年3月に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2024年には公共領域でのサービス強化を目的に株式会社トライサーブを子会社化するなど、事業拡大を続けています。

同グループは連結従業員数1,002名、単体従業員数819名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は伊藤忠商事グループのIW.DXパートナーズで、第2位は資本業務提携先である東芝デジタルソリューションズです。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、大手事業会社との強固なパートナーシップが株主構成にも表れています。

氏名 持株比率
IW.DXパートナーズ 22.02%
東芝デジタルソリューションズ 13.27%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長執行役員CEOは田中 潤氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 潤 代表取締役社長執行役員CEO 2004年同社入社。執行役員、取締役副社長等を経て2018年代表取締役社長に就任。2021年より現職。
内野 弘幸 取締役会長 1979年株式会社多摩ユーザック入社。翼システム株式会社情報企画事業部部長を経て、2004年同社代表取締役社長に就任。2018年より現職。
島澤 甲 取締役執行役員事業統括担当CTO 2009年同社入社。執行役員CTO兼技術本部長、Cloud事業部事業部長等を経て、2021年より現職。
藤本 泰輔 取締役執行役員CFO 2007年同社入社。経理財務部長、管理本部長等を経て2016年執行役員CFO兼管理本部長に就任。2021年より現職。
山澤 光太郎 取締役 1980年日本銀行入行。株式会社大阪証券取引所取締役常務執行役員、株式会社日本取引所グループ常務執行役等を経て2019年より現職。
矢島 孝應 取締役 1979年松下電器産業株式会社入社。三洋ITソリューションズ株式会社代表取締役社長、ヤンマー株式会社取締役等を経て2021年より現職。
岡田 俊輔 取締役 1985年株式会社東芝入社。東芝デジタルソリューションズ株式会社取締役社長、株式会社東芝執行役上席常務等を経て2022年より現職。
飯泉 香 取締役 2001年トレンドマイクロ株式会社入社。同社執行役員コーポレートマーケティング本部長等を経て2023年より現職。


社外取締役は、山澤 光太郎(元日本取引所G専務執行役)、矢島 孝應(元ヤンマー取締役)、岡田 俊輔(東芝上席常務執行役員)、飯泉 香(トレンドマイクロ執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「帳票・文書管理ソリューション」および「データエンパワーメントソリューション」を展開しています。

帳票・文書管理ソリューション(BDS)


請求書や納品書などの業務帳票の設計・運用を行う基盤ソフトウェア「SVF」および文書管理基盤「invoiceAgent」を提供しています。企業の基幹業務を支えるシステムとして多くの企業や公的機関で利用されており、特に「SVF」は国内市場で高いシェアを誇ります。

収益は、顧客企業やパートナー企業(SIer)からのソフトウェアライセンス料、導入支援サービス料、および継続的な保守サポート料、クラウドサービスの利用料から構成されています。運営は主にウイングアーク1stが行っています。

データエンパワーメントソリューション(DE)


大量のデータを高速に集計・分析する「Dr.Sum」や、多様なデータを可視化するダッシュボード「MotionBoard」を提供しています。経営者から現場担当者まで幅広い層の意思決定を支援し、生産性向上や業務効率化に貢献しています。

収益は、ソフトウェアのライセンス販売、クラウドサービスの利用料、および保守サポート料等から構成されています。運営はウイングアーク1stに加え、株式会社Everforthなどのグループ会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年2月期から2025年2月期までの業績推移を見ると、売上収益は183億円から287億円へと順調に拡大しています。税引前利益も32億円から83億円へと増加傾向にあり、利益率は20%台後半の高い水準を維持しています。親会社の所有者に帰属する当期利益も25億円から59億円へと伸長しており、収益性の高いビジネスモデルを背景に持続的な成長を実現しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上収益 183億円 198億円 223億円 258億円 287億円
税引前利益 32億円 59億円 59億円 73億円 83億円
利益率(%) 17.2% 29.8% 26.2% 28.4% 28.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 44億円 44億円 54億円 59億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上収益の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上総利益率は約79%と非常に高い水準で安定しており、ソフトウェアビジネス特有の高収益体質が維持されています。営業利益も順調に増加しており、営業利益率は28%台後半で推移しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上収益 258億円 287億円
売上総利益 210億円 227億円
売上総利益率(%) 81.5% 79.1%
営業利益 73億円 82億円
営業利益率(%) 28.4% 28.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が74億円(構成比36%)、その他の営業費用が56億円(同27%)を占めています。また、研究開発費は33億円計上されており、売上収益の約11%を将来の成長投資に充てています。

(3) セグメント収益


帳票・文書管理ソリューション(BDS)は、基幹システムへの投資継続やクラウドサービスの需要増により売上収益が増加しました。データエンパワーメントソリューション(DE)も、データ活用の需要増やクラウドサービスの好調により増収となりました。両ソリューションともにクラウドサービスの成長が顕著であり、全体として増収基調を維持しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
帳票・文書管理ソリューション 165億円 188億円
データエンパワーメントソリューション 93億円 99億円
連結(合計) 258億円 287億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ウイングアーク1stは、事業活動を通じて安定的に資金を獲得し、将来の成長に向けた投資と株主還元を両立させています。

営業活動では、主力のソリューション事業が堅調に推移し、潤沢な資金を生み出しました。投資活動では、事業基盤強化や新たな成長機会獲得のため、設備投資や関連・子会社取得に資金を使用しました。財務活動では、借入金の返済や株主への配当実施により、資金を外部に流出させました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 78億円 82億円
投資CF -16億円 -17億円
財務CF -45億円 -48億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.(情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。)」というビジョンを掲げています。社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果としてより良い社会を実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Build the Trust(相手の期待を超える結果を出し、信頼される。)」をCore Value(中核となる価値観)としています。顧客やパートナー、共に働く仲間との信頼関係を強みの源泉と捉え、イノベーションマインドとチームワークの醸成を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を柱に据えた中期経営方針を発表しています。2027年2月期をターゲットとした主な数値目標は以下の通りです。

* クラウド売上高成長率(年平均):40%
* リカーリング比率:75%
* クラウド比率:40%
* EBITDA:120億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、企業のDX推進やインボイス制度などの法対応による市場変化を好機と捉え、クラウドビジネスの拡大を最優先課題としています。また、安定収益基盤であるリカーリングビジネスの強化や、公共・自治体領域へのソリューション提供による新たな市場開拓にも注力しています。

* クラウド売上成長率(前期比):22.5%
* 全社売上に占めるクラウド売上比率:18.3%
* リカーリング比率:60.9%
* 契約継続率:93.7%

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「戦略的な人材投資と自律的な成長支援」を掲げ、特にクラウド/DX人材の獲得と育成を重視しています。フルリモートワークや居住地選択の自由化、スーパーフレックス制度など「圧倒的に働きやすい会社」を目指した環境整備を進めるとともに、タレントマネジメントによる中核人材の育成や、1on1を通じたエンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 40.8歳 5.5年 7,559,194円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
※平均勤続年数は、旧ウイングアーク1st株式会社を吸収合併した2016年6月以降の勤続年数です。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.6%
男性育児休業取得率 80.9%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 67.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有休取得率(74.0%)、離職率(4.9%)、ダイバーシティ研修受講率(98.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報通信業における技術革新等への対応


同社が属する情報通信業界は技術革新が激しく、生成AIやIoTなどの新技術への対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、主力製品である「SVF」は帳票類の設計・運用を行うため、企業における帳票類の使用頻度が減少した場合、需要が減少するリスクがあります。

(2) 競合について


同社の主力製品である「SVF」「invoiceAgent」「Dr.Sum」「MotionBoard」は、市場において類似製品と競合状態にあります。市場動向を的確に捉えられなかった場合や、競合各社の価格戦略等により、製品の優位性低下やシェア縮小を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 製品の不具合(バグ等)の発生可能性


ソフトウェアやクラウドサービスにおいて、不具合を完全に解消することは困難です。品質管理に努めていますが、万が一製品やサービスに致命的な不具合が発生した場合、改修コストの発生や信用力の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品開発について


新製品開発や機能強化において、不具合による開発遅延や、市場ニーズとの不一致により製品が受け入れられない可能性があります。また、開発中止によるコスト回収不能のリスクもあり、これらは同社の業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。