薬王堂ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

薬王堂ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

薬王堂ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、東北エリアを中心にドラッグストア事業を展開する企業です。直近の業績は、売上高1,638億円で前期比増収となる一方、経常利益は55億円で減益となりました。新規出店や店舗の改装を進めつつ、物流の効率化によるローコストオペレーションを推進しています。


※本記事は、株式会社薬王堂ホールディングスの有価証券報告書(第7期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 薬王堂ホールディングスってどんな会社?


ドラッグストア事業を主力とし、東北・関東エリアで店舗を展開する企業です。

(1) 会社概要


1978年に都南プラザドラッグとして創業し、1991年に薬王堂を設立しました。2005年にジャスダック証券取引所へ上場し、2014年には東証一部銘柄に指定されています。2019年に単独株式移転により持株会社である薬王堂ホールディングスを設立しました。近年は関東エリアへの出店も開始しています。

従業員数は連結で1,094名です。筆頭株主は同社と同じ住所に拠点を置くTKコーポレーションで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
TKコーポレーション 38.99%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.23%
日本カストディ銀行(信託口) 5.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は西郷辰弘氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西郷 辰弘 代表取締役社長 1978年都南プラザドラッグ創業。1981年薬王堂設立、代表取締役。1991年同社代表取締役社長。2019年より現職。
西郷 喜代子 代表取締役副社長 1978年都南プラザドラッグ創業。1981年薬王堂設立、専務取締役。2018年同社代表取締役副社長。2019年より現職。
小笠原 康浩 常務取締役コンプライアンス統括部長 1988年アイワ岩手入社。2005年薬王堂入社。2010年同社財務部長。2016年同社常務取締役。2024年より現職。
西郷 孝一 常務取締役 2007年花王入社。2012年薬王堂入社。2019年同社執行役員。2022年同社常務取締役。2024年薬王堂代表取締役社長執行役員に就任し現職。
坂本 篤 取締役(監査等委員) 1985年東北メルコムビジネス平金入社。1997年薬王堂入社。業務システム部長等を経て2017年監査役。2023年より現職。


社外取締役は、小原公一(元日興ビジネスシステムズ社長)、斎藤毅文(元有限責任監査法人トーマツパートナー)、鎌田英樹(元アイビーシー岩手放送社長)、片野圭二(アイカムス・ラボ社長)、滝浦のぞみ(開運橋総合法律事務所開所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ドラッグストア」事業において、主に以下の部門を展開しています。

(1) ヘルス部門


皮膚治療薬等の医薬品や、生理用品等の衛生用品を提供しています。ドラッグストアの来店客を対象とした生活関連商品の販売が中心です。

収益源は、店舗を訪れる一般消費者からの商品代金です。運営は子会社である薬王堂が行っています。

(2) ビューティ部門


基礎化粧品や男性化粧品などの化粧品、およびヘアケアやオーラルケアなどのトイレタリー製品を提供しています。

収益源は、一般消費者への化粧品等の店頭販売による代金です。運営は主に薬王堂が行っています。

(3) ホーム部門


衣料洗剤や柔軟剤などの日用品に加え、ペット関連商品などのバラエティ商品を幅広く提供しています。

収益源は、一般消費者への日用雑貨等の販売による商品代金です。運営は主に薬王堂が行っています。

(4) フード部門


日配品や冷凍食品、嗜好品などの食品類や、ビール類や酎ハイなどの酒類を提供しています。

収益源は、一般消費者への食料品や酒類等の販売代金です。運営は主に薬王堂が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績をみると、売上高は店舗数の増加などを背景に継続して増加傾向にあります。一方、経常利益は一時増加したものの、直近では減益に転じており、利益率もやや低下傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 1203億円 1288億円 1422億円 1520億円 1638億円
経常利益 44億円 50億円 56億円 58億円 55億円
利益率(%) 3.7% 3.9% 4.0% 3.8% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 5億円 5億円 6億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高が前期比で増加していることに伴い、売上総利益も増加していますが、営業費用などの増加により営業利益はやや減少しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 1520億円 1638億円
売上総利益 326億円 352億円
売上総利益率(%) 21.5% 21.5%
営業利益 55億円 53億円
営業利益率(%) 3.6% 3.2%

(3) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金に加えて借入による資金調達を行い、積極的な投資活動を継続している「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 45億円 33億円
投資CF -46億円 -128億円
財務CF 23億円 124億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.0%であり、いずれも非製造業の市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様に喜んで戴ける店をつくる」ことを経営理念として掲げています。この理念を具現化させるため、その実現に必要な知識や経験を持った人材を育成することを基本方針とし、すべてのステークホルダーにとって企業価値を最大化することを目指しています。

(2) 企業文化


「個人の能力向上が組織の能力をより一層向上させる」との信念のもと、学びと挑戦を通じて社内文化とマインドを進化させることを重視しています。多様な人材が成長し活躍できるように、性別や年齢にとらわれず能力に応じた登用や働きやすい環境の整備を進めています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年4月に策定した中期経営計画に基づき、店舗網の拡大による持続的な成長を目指しています。地域ごとの市場シェア分析をもとに最適な出店戦略を実行し、東北エリアでのドミナント強化や関東エリアへの出店を積極的に展開しています。

* 2030年2月期までに累計450店舗の新規出店を実現

(4) 成長戦略と重点施策


出店戦略、店舗戦略、物流戦略、採用とManavi戦略、DX戦略の5つの重点戦略を推進しています。レイアウト標準化や売場固定化で店舗全体の収益性向上を図りつつ、低温物流センターの再構築などで物流改革を進めています。また、AIの開発および業務への実装を進めるなどDXを活用した経営を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長を支える人材育成を重要な経営戦略と位置づけ、「採用と学び」に特化した組織づくりを推進しています。登録販売者資格取得のサポートや外部研修への派遣を通じて専門スキルを向上させるとともに、正社員の65歳への定年延長や育休後の復職支援など、働きやすい環境の整備を行っています。

(2) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全) 71.1%
男女賃金差異(正規) 78.8%
男女賃金差異(非正規) 98.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品等の販売規制に関する法的規制


医薬品等の販売には各種許可や登録が必要であり、今後の法令改正や販売規制緩和によって他業種が参入しやすくなった場合、競争激化により業績に影響を及ぼす可能性があります。また、大規模小売店舗立地法など新規出店に関する規制を受ける可能性もあります。

(2) 店舗網の拡大に伴う出店政策


収益拡大には店舗数の増加が大きく寄与していますが、競合店の出店や法的規制、経済情勢の変動などさまざまな偶発的要因によって計画通りの出店ができない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 薬剤師・登録販売者の資格者確保


医薬品の販売において薬剤師や登録販売者の確保が重要となっており、積極的な社内育成を行っています。しかしながら、これらの資格者を計画通りに確保できない場合、店舗運営に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 災害等に関するリスク


同社グループの出店エリアにおいて、大地震や台風等の災害等が発生した場合には、店舗設備等に損害が発生する可能性があります。また、災害等により販売活動や流通経路等に支障が生じる場合には、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。