※本記事は、株式会社薬王堂ホールディングス の有価証券報告書(第6期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 薬王堂ホールディングスってどんな会社?
同社は、岩手県をはじめとする東北6県でドラッグストア「薬王堂」をドミナント展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
1978年に前身となる都南プラザドラッグが創業され、1991年に薬王堂として設立されました。2019年に単独株式移転により薬王堂ホールディングスが設立され、東証一部に上場しました。2022年には東証プライム市場へ移行し、2024年には南東北地区での食品・非食品一括物流を開始するなど、物流改革やエリア拡大を推進しています。
同社グループは連結従業員数1,000名の体制です。筆頭株主は同社代表取締役社長が関係する資産管理会社のTKコーポレーションで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| TKコーポレーション | 38.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.55% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE FIDELITY FUNDS | 6.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は西郷辰弘氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西郷 辰弘 | 代表取締役社長 | 1978年都南プラザドラッグ創業。1981年薬王堂代表取締役、2019年同社代表取締役社長執行役員を経て現職。 |
| 西郷 喜代子 | 代表取締役副社長 | 1978年都南プラザドラッグ創業。1981年薬王堂専務取締役、2018年同社代表取締役副社長を経て現職。 |
| 小笠原 康浩 | 常務取締役コンプライアンス統括部長 | 2005年薬王堂入社。財務部長、管理本部長、経営戦略本部長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 西郷 孝一 | 常務取締役 | 2007年花王入社。2012年薬王堂入社後、商品部長、経営企画室長等を歴任。2024年薬王堂代表取締役社長執行役員(現任)。 |
| 坂本 篤 | 取締役(監査等委員) | 1997年薬王堂入社。業務システム部長、経営企画室長、内部監査室長、常勤監査役を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、小原公一(元日興ビジネスシステムズ社長)、斎藤毅文(公認会計士)、鎌田英樹(元アイビーシー岩手放送社長)、片野圭二(TOLIMS会長)、滝浦のぞみ(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ドラッグストア事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ドラッグストア事業
岩手県、宮城県、青森県、秋田県、山形県、福島県の東北6県において、医薬品、化粧品、日用雑貨、食料品などを販売するバラエティ型コンビニエンス・ドラッグストアおよび調剤薬局を展開しています。小商圏ドミナント出店を推進し、地域住民の生活インフラとしての役割を担っています。
収益は、一般消費者への商品販売による対価が主な源泉です。運営は連結子会社の薬王堂が行っています。
■(2) その他
ドラッグストア事業以外の事業として、マーケティング事業などを展開しています。
収益は、マーケティング支援等による対価です。運営は連結子会社のMedicaが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大しており、直近5期間で継続的な増収を達成しています。経常利益も安定的に推移しており、利益率は3.8%前後を維持しています。当期は新規出店や既存店の改装効果もあり、過去最高の売上高を更新しました。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,105億円 | 1,203億円 | 1,288億円 | 1,422億円 | 1,520億円 |
| 経常利益 | 53億円 | 44億円 | 50億円 | 56億円 | 58億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 3.7% | 3.9% | 4.0% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 5億円 | 5億円 | 5億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は21.5%前後で安定しており、効率的な店舗運営が継続されています。営業利益も増益基調を維持しており、収益性は底堅く推移しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,422億円 | 1,520億円 |
| 売上総利益 | 307億円 | 326億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.6% | 21.5% |
| 営業利益 | 52億円 | 55億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が93億円(構成比34%)、賃借料が34億円(同13%)、減価償却費が29億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はドラッグストア事業の単一セグメントですが、部門別の販売実績を見ると、食品(フード)部門が売上の約半数を占めており、生活必需品としての需要を取り込んでいます。全カテゴリーで増収となっており、特にホーム部門やフード部門の伸長が寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| ドラッグストア事業等 | 1,422億円 | 1,520億円 |
| 連結(合計) | 1,422億円 | 1,520億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
薬王堂ホールディングスは、ドラッグストア事業を主軸に、地域に根差した店舗展開を進めています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益や減価償却費の計上はあったものの、棚卸資産の増加などにより、前年同期比で減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、新規出店に伴う設備投資の増加により、支出が拡大しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入があったものの、借入金の返済や配当金の支払いにより、前年同期比で支出が減少しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 56億円 | 45億円 |
| 投資CF | -23億円 | -46億円 |
| 財務CF | -37億円 | 23億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客様に喜んで戴ける店をつくる」ことを経営理念として掲げています。この理念を具現化するために、必要な知識や経験を持った人材の育成を基本方針とし、地域社会の生活インフラとして持続可能な企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
「個人の能力向上が組織の能力をより一層向上させる」との信念のもと、人材育成を重視する文化があります。登録販売者資格取得のサポートや職階ごとの研修、外部研修への派遣などを通じて、性別や年齢にとらわれず多様な人材が成長し活躍できる環境づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、東北エリアでの安定的な出店とドミナント強化に加え、関東エリアへの出店も進めることで持続的な成長を目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げています。
* 今後5年間で450店舗の新規出店
* 過去最高出店数を毎年度更新
■(4) 成長戦略と重点施策
環境変化を好機と捉え、新規出店、店舗運営効率化、物流改革、人材育成、DX推進の5つの戦略を軸としています。出店戦略では東北でのドミナント強化と関東進出を推進し、店舗戦略ではレイアウト標準化や売場固定化による生産性向上を図ります。
* 新低温物流センターの稼働(2026年4月予定)
* データサイエンスの実践的活用とAIの業務実装
* MANAVI推進室の新設による教育体制強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長を支えるため、「採用と学び」に特化した組織づくりを推進しています。戦略的な採用で多様な人材を確保し、MANAVI推進室を通じて教育・研修体制を強化することで組織力の向上を図っています。また、正社員の65歳定年延長や育休後の復帰支援など、働きやすい環境整備にも注力しています。
■(2) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 37.6% |
| 男性育児休業取得率 | 78.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 104.1% |
※データは連結子会社のものです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制について
医薬品医療機器等法や食品衛生法などの許認可を受けて営業しており、法令改正が業績に影響する可能性があります。また、登録販売者制度などの規制緩和により他業種からの参入障壁が低下しており、競争環境の変化が影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 出店政策について
東北6県を中心に403店舗を展開しており、店舗数増加が成長の鍵となっています。しかし、大規模小売店舗立地法や自治体の規制、競合店の動向、経済情勢の変動などにより、計画通りの出店ができない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 資格者の確保について
店舗運営において薬剤師や登録販売者の配置が重要ですが、これらの有資格者を計画通りに確保できない場合、出店計画や店舗運営に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。社内育成にも注力していますが、採用競争の激化もリスク要因です。
■(4) 災害等に関するリスク
東北地方を中心に出店しているため、同エリアで大規模な地震や台風などの災害が発生した場合、店舗設備の損壊や物流網の寸断などにより営業活動に支障が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。



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