関通ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関通ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関通ホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場し、主にECや通信販売事業者向けの物流サービス事業と、倉庫管理システム等を提供するITオートメーション事業を展開しています。直近の業績は、売上高183億円(前期比20.1%増)、営業利益3.2億円(前期は赤字)で増収、黒字転換を果たしています。


※本記事は、関通ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第40期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 関通ホールディングスってどんな会社?


同社は、ECや通信販売事業者向けの物流支援サービスと、倉庫管理システムなどのITオートメーション事業を展開しています。

(1) 会社概要


1983年に軽貨物の輸送サービスとして創業し、1992年に配送センター代行サービスへ本格参入しました。2020年には東京証券取引所マザーズへ上場しています。2023年に関通ネクストロジを設立して出版物流分野へ進出し、2026年に関通ホールディングスへ商号変更して持株会社体制へ移行しました。

現在の従業員数は連結で243名、単体で230名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長を務める達城久裕氏の資産管理会社であるロジ・エステートで、第2位は個人の吉岡裕之氏、第3位は資本業務提携関係にある楽天グループとなっています。

氏名 持株比率
ロジ・エステート 42.87%
吉岡 裕之 4.91%
楽天グループ 4.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は達城久裕氏、代表取締役社長は達城利卓氏です。社外取締役は4名で、社外取締役比率は約33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
達城 久裕 代表取締役会長 1983年に軽サービス(現同社)を創業、代表取締役に就任。その後、関西商業流通(現同社)代表取締役社長を経て、2026年より現職。
達城 利卓 代表取締役社長 2004年に同社へ入社。物流事業本部長、経営企画本部長などの要職を歴任し、2023年に関通ネクストロジ取締役に就任。2026年より現職。
松岡 正剛 専務取締役マーケティング担当 ワントゥワンを経て2004年に同社へ入社。営業本部長や教育事業本部担当などの要職を務め、2023年に専務取締役営業本部統括担当に就任。2026年より現職。
朝倉 寛士 取締役関西物流担当 1998年に同社へ入社。物流事業部長や物流事業統括担当などを歴任。2023年に関通ネクストロジ代表取締役に就任。2026年より現職。
古川 雄貴 取締役WMS開発担当 鴻池運輸などを経て2017年に同社へ入社。首都圏物流事業本部長やシステム開発担当などを歴任し、NewsNyx代表取締役を経て2026年より現職。
河井 章宏 取締役関東物流担当 2010年に同社へ入社。楽天物流事業本部長や関西物流事業本部長などを務め、関通EastLogistics代表取締役を経て2026年より現職。
西川 良樹 取締役 三和銀行(現三菱UFJ銀行)を経て2023年に同社へ入社。社長戦略室長や経営管理本部長を歴任し、2026年より財務戦略本部長および現職。
杉本 佳映 取締役(常勤監査等委員) 2016年に同社へ入社。各物流センター長や購買・設備管理部長、内部監査室長、総務部長、情報システム部を歴任。


社外取締役は草深多計志氏(デンタルサポート代表取締役社長など)、田端晃氏(弁護士法人田端綜合法律事務所代表など)、紀道治氏(ビバディジャパン代表取締役社長など)、那須慎二氏(船井総研ホールディングスなどを経る)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流サービス事業」および「ITオートメーション事業」、「その他」事業を展開しています。

物流サービス事業


主にEコマースや通信販売事業者に対して、商品の入庫、在庫管理、出庫といった配送センター業務を代行するEC・通販物流支援サービス等を提供しています。そのほか、受注管理業務代行サービスや物流コンサルティングサービスなども展開しています。

顧客から物流業務の委託費やシステム利用料などを受け取って収益を得ています。主な運営は関通ホールディングスをはじめ、関通ネクストロジや関通ビジネスサービスなどの子会社が行っています。

ITオートメーション事業


同社の物流現場で培ったノウハウをもとに開発されたソフトウエアを提供しています。具体的には、正確な在庫管理を実現する倉庫管理システム「クラウドトーマス」や、業務の標準化を図るチェックリストシステム「アニー」などがあります。

顧客からソフトウエアの利用料やカスタマイズ開発の受託費用、導入支援費用などを受け取って収益を得ています。当事業の運営は同社や持株会社体制のもとでIT事業を担うNewsNyxが行っています。

その他


外国人技能実習生の受け入れ時に、現地ミャンマーで行った教育カリキュラムを顧客に提供する外国人技能実習生教育サービスや、障がいを持つ児童向けの放課後等デイサービス、保育園の運営といった福祉・教育サービスを展開しています。

各種サービスの利用者や受託先から利用料等の対価を受け取って収益を得ています。教育サービスや福祉施設の運営などは同社グループの各事業主体が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4年間の連結業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業規模の拡大がうかがえます。一方で利益面においては、前々期から前期にかけて一時的に赤字に落ち込みましたが、当期には経常利益および当期利益ともに黒字への回復を果たしています。継続的な事業拡大とともに、収益性の改善が進んでいる状況です。

項目 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 105億円 119億円 153億円 183億円
経常利益 4億円 4億円 -1億円 3億円
利益率(%) 3.4% 3.4% -0.6% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 0.5億円 -9億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から当期にかけて約30億円増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率も改善傾向にあり、前期の営業赤字から当期は営業黒字へと転換しました。業務の効率化やサービス品質の向上に向けた取り組みが奏功し、トップラインの成長が利益の確保に結びつく収益構造へと良化しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 153億円 183億円
売上総利益 11億円 15億円
売上総利益率(%) 7.4% 8.4%
営業利益 -0.5億円 3億円
営業利益率(%) -0.3% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比16%)、減価償却費が0.3億円(同2%)を占めています。また、売上原価においては、発送運賃及び運送費用が72億円(構成比43%)、賃借料および労務費がそれぞれ41億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である物流サービス事業は、既存顧客の拡大や新規獲得が進んだことにより大幅な増収となり、利益面でも黒字転換を果たしました。また、ITオートメーション事業も売上が伸長しているものの、新バージョンの開発やセキュリティ強化等の投資が影響し減益となっています。全体として主力事業の成長が業績を牽引しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
物流サービス事業 145億円 173億円 -3億円 3億円 1.9%
ITオートメーション事業 6億円 9億円 3億円 0.4億円 4.2%
その他 1億円 2億円 -0.5億円 -0.5億円 -33.7%
連結(合計) 153億円 183億円 -0.5億円 3億円 1.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で生み出した資金に加えて外部からの借入も活用し、積極的な投資を行っている状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.2%で市場平均を下回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF -1億円 5億円
投資CF -7億円 -11億円
財務CF 7億円 10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、物流で培った知恵とデータを起点とし、AIおよびテクノロジーの活用によって経営の再現性を高め、事業と経営者を量産できる経営への高度化を目指しています。分野を問わず成長できる企業群を継続的に創出し、その取り組みの積み重ねによって、産業の持続的発展と社会インフラを支え続けることを企業使命として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念を実現するための判断基準として、「お客様と現場を起点とした本質思考」「データと構造に基づく経営判断」「行動優先と失敗からの学習」などの価値観を重視しています。また、毎日決まった時間に全従業員で整理・整頓・清掃を行う「環境整備活動」を通じて、気付く感性を育て、円滑なコミュニケーションを図るなど、学習する組織としての企業文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な企業価値の向上を図るため、自己資本利益率(ROE)を中核的な経営指標として位置付けており、中長期的にROE15%以上の水準を維持・向上させることを目標としています。労働集約型ビジネスからの構造転換を進め、収益力の改善を目指しています。

* 売上高:200億円
* 営業利益:4.8億円
* 経常利益:4.1億円
* 当期純利益:2.7億円

(※2027年2月期計画)

(4) 成長戦略と重点施策


従来の労働集約型モデルから、テクノロジーとノウハウを提供する高付加価値モデル(Tech・BPaaS)への構造転換を進める「集中戦略」を採用しています。具体的には、受注から出荷までのバックオフィス業務全体を自動化するBPaaS型サービスの展開や、物流倉庫などのハード資産への投資を抑制し、ソフトウエア開発および人的資本へ経営資源を集中させるアセット・ライト経営を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は事業拡大と品質維持に不可欠な優秀な人材の獲得と育成に注力しています。新卒採用や外国人技能実習生の受け入れを継続するとともに、独自の教育プログラムや生成AIを活用するデジタル・リスキリングを実施しています。現場の知見とデジタル技術を融合させた「ハイブリッド人材」や次世代の経営者の育成を目指し、成果志向の人事評価制度の導入を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 39.0歳 5.7年 4,552,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 83.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客情報等のセキュリティおよびシステム障害


同社グループは物流業務の受託やソフトウエア提供において、顧客の機密情報を多数取り扱っています。そのため、外部からのサイバー攻撃や災害等によって自社開発の倉庫管理システムが停止・破壊された場合や、情報の外部流出が発生した場合には、社会的信用の低下や多額の損害賠償請求に繋がる可能性があります。

(2) 輸配送費や人件費等のコスト上昇


物流業務において輸配送サービスを外部の専門業者に委託しているため、燃料費の高騰やドライバー不足、関連法令の改正に伴って輸配送コストが上昇するリスクがあります。また、水道光熱費や従業員の賃金上昇も収益を圧迫する要因となります。これらのコスト増に対して適切な価格改定や生産性向上が図れない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 物流施設やITシステムへの先行投資


顧客の物流業務を受託する際、物流センターの開設や設備機器、情報システムに対して先行的な設備投資を行う場合があります。経済状況の悪化等により顧客の業績不振や支払停止が生じた場合、投下資金の回収が困難となるリスクがあります。また、期待した投資効果が得られない場合、多額の減損損失が発生し、財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。