※本記事は、株式会社関通 の有価証券報告書(第39期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 関通ってどんな会社?
EC・通販物流支援サービスと自社開発の倉庫管理システムを提供し、物流現場の改善ノウハウを強みとする企業です。
■(1) 会社概要
1986年に有限会社軽サービスとして設立され、1992年に配送センター代行サービスに本格参入しました。2017年に倉庫管理システム「クラウドトーマス」の販売を開始し、2020年に東京証券取引所マザーズへ上場しました。2023年には子会社の関通ネクストロジを設立し、出版物の物流サービス事業等を譲り受けています。
同グループの従業員数は連結255名、単体222名です。筆頭株主は創業社長の資産管理会社であるロジ・エステートで、第2位は資本業務提携先である楽天グループです。また、キヤノンITソリューションズとも資本業務提携を行っており、第8位株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ロジ・エステート | 43.48% |
| 楽天グループ | 4.95% |
| 吉岡 裕之 | 3.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は達城久裕氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 達城 久裕 | 代表取締役社長 | 1983年個人事業主として軽サービス(運送業)創業。1986年有限会社軽サービス設立、代表取締役。1996年関西商業流通(現同社)代表取締役社長。1996年より現職。 |
| 達城 利卓 | 取締役副社長経営企画本部担当 | 2004年同社入社。取締役物流事業本部長、管理本部長、経営企画本部長等を歴任。2020年常務取締役、2023年取締役副社長。関通ビジネスサービス代表取締役等を兼務。2024年11月より現職。 |
| 朝倉 寛士 | 専務取締役物流事業統括担当 | 1998年同社入社。2004年取締役物流事業担当、2005年常務取締役。2020年専務取締役。関通ネクストロジ代表取締役を兼務。2020年5月より現職。 |
| 松岡 正剛 | 専務取締役営業本部統括担当 | 2000年ワントゥワン入社。2004年同社入社。2011年取締役営業部長、2012年常務取締役営業本部長。2020年専務取締役。2023年3月より現職。 |
| 古川 雄貴 | 常務取締役システム本部、情報システム本部担当 | 2003年鴻池運輸入社。2017年同社入社、首都圏物流事業本部長。2018年取締役。2020年常務取締役。2023年10月より現職。 |
| 河井 章宏 | 取締役関西物流事業本部担当 | 2010年同社入社。物流事業本部第二物流部長、楽天物流事業本部長を経て、2020年関西物流事業本部長。2022年5月より現職。 |
社外取締役は、矢野雅夫(元三菱東京UFJ銀行(中国)副頭取)、草深多計志(元PGMホールディングス社長)、田端晃(弁護士)、紀道治(ビバディジャパン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物流サービス事業」「ITオートメーション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 物流サービス事業
主にEC・通販事業者の販売商品の入庫、在庫管理、出庫等の配送センター業務代行サービスを提供しています。また、受注確認や電子メール対応等の受注管理業務代行サービスや、物流現場改善のためのコンサルティングサービスも行っています。
収益は、顧客であるEC・通販事業者等から受領する業務受託料やコンサルティング料等です。運営は、同社、子会社の関通ビジネスサービスおよび関通ネクストロジが行っています。
■(2) ITオートメーション事業
物流現場での改善活動から生まれたソフトウエアを顧客に提供しています。主な製品には、倉庫管理システム「クラウドトーマス」やチェックリストシステム「アニー」、ECサイトの受注処理自動化システム「e.can」などがあります。
収益は、システムを利用する顧客企業からの月額利用料や導入支援費用、カスタマイズ開発費用等です。運営は主に同社が行っています。
■(3) その他の事業
外国人技能実習生の教育サービスや、障がいを持つ子供向けの放課後等デイサービスの運営、企業主導型保育事業などを行っています。
収益は、実習生受け入れ企業からの教育サービス料や、福祉・保育サービスに係る給付費および利用料等です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第39期は売上高が増加したものの、利益面では赤字に転落しました。これは2024年9月に発生したランサムウェアによるシステム障害の影響で、入出庫処理の停止や遅延が発生し、さらに情報セキュリティ対策費等の特別損失を計上したことが主な要因です。
| 項目 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 105億円 | 119億円 | 153億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 4億円 | -0.9億円 |
| 利益率(%) | 3.4% | 3.4% | -0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 0.5億円 | -9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の業績を見ると、売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費が増加したことで、営業損益は赤字となりました。特に労務費や発送運賃、賃借料の増加が原価率の上昇につながっています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 119億円 | 153億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 11億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.2% | 7.4% |
| 営業利益 | 4億円 | -0.5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | -0.3% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が4.3億円(構成比36%)を占めています。また、売上原価のうち、発送運賃及び運送費用が51億円(構成比36%)、賃借料が36億円(同26%)、労務費が29億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
物流サービス事業は、既存顧客の売上が伸長したものの、サイバー攻撃の影響で新規獲得が中断し、利益面では損失を計上しました。ITオートメーション事業は、システム停止による解約等があったものの、増収増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 物流サービス事業 | 112億円 | 145億円 | 1億円 | -3億円 | -2.3% |
| ITオートメーション事業 | 6億円 | 6億円 | 3億円 | 3億円 | 52.3% |
| その他 | 1億円 | 1億円 | -0.1億円 | -0.5億円 | -49.1% |
| 調整額 | - | - | - | - | - |
| 連結(合計) | 119億円 | 153億円 | 4億円 | -0.5億円 | -0.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**勝負型**
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.5億円 | -1億円 |
| 投資CF | -21億円 | -7億円 |
| 財務CF | 11億円 | 7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「SPIRIT of Kantsu」という理念のもと、「働く人を大切にする」として業界ナンバーワンの報酬・品質・生産性を目指しています。また、「お客様を大切にする」として最高のパートナーシップを築き、最高のスピード・品質・提案を提供することを掲げています。さらに、多様な雇用機会の提供や環境負荷の低減を通じて、具体的な社会貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「環境整備活動」を教育・企業文化形成の柱としています。これは仕事をやりやすくする環境を整える活動であり、毎日決まった時間に全従業員が30分を使って整理・整頓・清掃等を実施します。この活動を通じて、仕事のやり方を学び、気付く感性を育て、円滑なコミュニケーションを図る機会を生み出しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年2月期の連結業績計画として以下の数値を掲げています。情報セキュリティ体制の強化と効率的な物流サービスの提供、IT技術の活用による生産性向上を図り、業績の回復と安定化に取り組む方針です。
* 売上高:15,965百万円
* 営業利益:259百万円
* 経常利益:260百万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:187百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
物流サービスを中心とした改善サービスの提供に経営資源を集中させる戦略を採用しています。今後は、統合物流サービスの提案強化や、ITオートメーション事業の拡大、M&Aによる事業拡大を推進します。また、サイバー攻撃を受けた経験を踏まえ、情報セキュリティ体制の強化と業務復旧、信頼回復に最優先で取り組む方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大には優秀な人材の獲得と育成が不可欠とし、新卒採用や外国人技能実習生の受け入れを継続的に実施しています。育成面では、経営理念の浸透や独自の教育プログラムを実施し、毎月の上司面談による人事評価制度を通じて戦力化を推進しています。また、パート従業員を含む働きやすい環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 39.0歳 | 4.5年 | 4,666,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.5% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 80.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公的規制強化のリスク
倉庫業や貨物利用運送事業などの法的規制を受けており、環境・安全対策の規制強化によるコスト増や、法令違反による許認可取り消し等の可能性があります。
■(2) 設備投資・投資成果・減損等のリスク
物流センターやシステムへの先行投資を行っていますが、顧客の業績不振や事業環境の変化により投資回収が困難になる場合や、減損損失が発生する可能性があります。特に物流施設やITシステムへの投資額は多額であり、財務への影響が大きくなる可能性があります。
■(3) コスト上昇リスク
燃料費高騰やドライバー不足による輸配送コストの上昇、物流センター運営にかかる光熱費や人件費の上昇が業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 情報セキュリティ・システム障害のリスク
物流業務やITサービスにおいて自社開発システムを使用しており、サイバー攻撃や災害等によりシステム障害が発生した場合、業務停止や損害賠償請求等により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。2024年9月には実際にランサムウェア被害が発生し、多額の特別損失を計上しました。



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