※本記事は、バリオセキュア株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. バリオセキュアってどんな会社?
インターネットセキュリティ機器の導入から運用監視までを一貫して提供するセキュリティサービス企業です。
■(1) 会社概要
2001年に前身となるアンビシスが設立され、2002年にマネージドセキュリティサービスを開始しました。2006年に旧バリオセキュア・ネットワークスがヘラクレスに上場しましたが、その後M&Aを経て、2016年に株式会社BAF5が旧バリオセキュアを吸収合併し、現商号に変更しました。2020年11月に東証二部(現スタンダード)へ上場を果たしています。
同社(単体)の従業員数は93名です。大株主の構成は、筆頭株主はAI技術の開発・提供を行うHEROZで、第2位は通信事業や電力事業などを展開する事業会社の光通信となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| HEROZ | 42.79% |
| 光通信 | 4.45% |
| 楽天証券 | 2.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は山森郷司氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山森 郷司 | 代表取締役社長 | SCSK、ネットドリーマーズ等を経てフリービット執行役員を歴任。2018年より同社取締役を務め、2024年より現職。 |
| 永井 秀俊 | 取締役管理本部長 | コニカミノルタジャパン、パーソルホールディングス等を経て2024年同社入社。2025年より現職。 |
| 斧江 章一 | 取締役営業本部長 | トレンドマイクロ執行役員、日本電気、キヤノンMJ等を経て2025年同社入社。2025年より現職。 |
| 林 隆弘 | 取締役 | HEROZ代表取締役CEO。2022年より現職。 |
| 井口 圭一 | 取締役 | HEROZ取締役CTO。2022年より現職。 |
| 森 博也 | 取締役 | HEROZ取締役CFO。2022年より現職。 |
社外取締役は、畑敬子(HOP代表取締役CEO)、髙橋可奈(弁護士)、森脇基(BuySell Technologies CFO室長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「インターネットセキュリティサービス事業」の単一セグメントですが、提供サービスにより「マネージドセキュリティサービス」および「インテグレーションサービス」に区分して事業を展開しています。
■(1) マネージドセキュリティサービス
自社開発の統合型セキュリティ機器「VSR」を利用し、インターネットゲートウェイでの不正侵入検知・防御やウイルス対策などを提供しています。また、データバックアップサービス(VDaP)やエンドポイントセキュリティ(EDR)、LAN/Wi-Fi管理サービスも展開し、主に中堅・中小企業のセキュリティ対策を支援しています。
収益は、機器のレンタル、監視・運用サービス、サポート等に対する月額費用(リカーリングレベニュー)を顧客から受領するモデルです。販売代理店経由の間接販売が中心ですが、エンドユーザーへのサービス提供・運営は同社が行っています。
■(2) インテグレーションサービス
従業員数50名未満の小規模事業者向けに、他社製(SOPHOS社)の統合セキュリティ機器(UTM)である「VCR」の販売を行っています。また、企業のネットワーク機器の調達、設計、構築を行うネットワークインテグレーションサービス(IS)も提供しています。
収益は、機器の販売代金およびライセンス付きソフトウェアの利用料等を顧客から受領しています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は過去5期間を通じて25億円台から26億円台へと安定的に推移しており、リカーリングビジネスによる収益基盤の堅固さがうかがえます。一方、利益面では、税引前利益が7億円台から4億円台へと徐々に低下傾向にあり、利益率は20%前後で推移しています。当期利益も5億円台から3億円台へと減少トレンドにあります。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 25.5億円 | 25.7億円 | 26.3億円 | 26.4億円 | 26.7億円 |
| 税引前利益 | 7.1億円 | 7.0億円 | 5.4億円 | 5.1億円 | 4.8億円 |
| 利益率(%) | 27.8% | 27.3% | 20.6% | 19.3% | 17.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.9億円 | 5.0億円 | 3.8億円 | 3.5億円 | 3.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上収益は微増しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。売上総利益率は55.4%から51.3%へ低下しており、原価率の上昇が見られます。営業利益率は約19%前後を維持していますが、前年比ではやや低下しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26.4億円 | 26.7億円 |
| 売上総利益 | 14.6億円 | 13.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.4% | 51.3% |
| 営業利益 | 5.2億円 | 4.9億円 |
| 営業利益率(%) | 19.7% | 18.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.7億円(構成比42%)、その他費用が3.6億円(同41%)を占めています。
■(3) セグメント収益
マネージドセキュリティサービスは、エンドポイントセキュリティ(EDR)のライセンス数増加等が寄与し増収となりました。インテグレーションサービスは、高単価なネットワーク構築案件が増加したものの、VCRの販売数が競合激化により伸び悩み、全体では減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| マネージドセキュリティサービス | 23.1億円 | 23.4億円 |
| インテグレーションサービス | 3.3億円 | 3.2億円 |
| 連結(合計) | 26.4億円 | 26.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
バリオセキュア社のキャッシュ・フローの状況について解説します。
同社は、インターネットセキュリティサービス事業を展開しており、営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前利益やのれんの償却等により資金を得ていますが、法人税等の支払等で減少しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出が主な要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済等により資金が使用されています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.1億円 | 3.6億円 |
| 投資CF | -1.7億円 | -1.3億円 |
| 財務CF | -4.6億円 | -3.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Your NET Guardian, alongside your invaluable Future.(企業のネットセキュリティに伴走し、安心・安全なビジネスを支えます)」をミッションとして掲げています。セキュリティ対策の常時監視・運用を請け負うことで、顧客のビジネスを支える存在となることを目指しています。
■(2) 企業文化
「Justice for your NET(企業のネットインフラに正義の味方を常駐派遣する)」をバリューとしています。セキュリティ対策の「24/365 WORK」を請け負い、自社開発の国産製品をベースとしたサービスを提供することで、顧客のネットインフラを守る「正義の味方」としての役割を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、IFRSに基づく「売上収益」および「営業利益」を、経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標として重視しています。安定的な収益基盤であるリカーリングレベニューの積み上げにより、持続的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
マネージドセキュリティサービスの提供基盤刷新によるサービス範囲の拡大や、顧客の課題解決を行う提案型営業への転換を掲げています。また、将来を見据えたテクノロジー人材の育成・強化にも注力しています。
* マネージドセキュリティサービスの範囲拡大:業務プロセスの自動化推進
* 提案型営業への転換:顧客ニーズの把握と課題解決提案
* 人材育成強化:テクノロジーを理解し事業を推進できる人材の育成
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
労働人口減少による人材獲得競争の激化を見据え、従業員のエンゲージメントサーベイを実施し、定着率向上のための施策を行っています。若手や意欲ある人材の要職への登用、中間管理職の研修や能力開発等を通じて人的資本への投資を行い、人材力の強化を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 40.1歳 | 5.8年 | 6,785,599円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の販売代理店への依存
同社のサービスは主に販売代理店を通じて提供されており、売上高の約67%を上位5社の代理店に依存しています。各代理店とは良好な関係維持に努めていますが、代理店の販売方針の変更や関係悪化、あるいはM&Aによる統合等があった場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報管理体制のリスク
ISO認証やプライバシーマークを取得し、厳重な情報管理体制を構築していますが、システム障害、誤操作、外部からのサイバー攻撃等により情報漏洩が発生する可能性は完全に排除できません。万が一事故が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 機器の調達リスク
サービスの基幹となるセキュリティ機器の製造は台湾等の海外メーカーに委託しています。地政学的リスクや原材料価格の高騰、委託先の経営方針変更等により調達が困難になった場合、業績に影響が出る可能性があります。また、最低購入保証契約に基づく過剰在庫のリスクもあります。
■(4) 競合他社や技術革新の影響
ネットワークセキュリティ市場は技術革新が速く、競合他社の新規参入や新技術の登場により競争環境が激化する可能性があります。同社が技術的・価格的優位性を維持できない場合や、市場の技術革新に適切に対応できない場合、既存製品の陳腐化や開発コスト増大を招く恐れがあります。



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