※本記事は、バリオセキュアの有価証券報告書(第11期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. バリオセキュアってどんな会社?
同社は、自社開発の国産製品をベースに、企業のネットワークセキュリティの導入から運用管理までを包括的に提供しています。
■(1) 会社概要
2001年に情報・通信システムなどの開発・運用を目的として設立され、マネージドセキュリティサービスの提供を開始しました。2006年にヘラクレス市場へ上場しましたが、2009年に上場廃止となりました。その後、ファンドの資本参加や組織再編を経て、2020年に東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ再上場を果たしました。2022年にはHEROZの子会社となっています。
同社(単体)の従業員数は83名です。筆頭株主は親会社でありAI事業を展開するHEROZで、第2位にはファンドである光通信KK投資事業有限責任組合が名を連ねています。第3位は金融機関の楽天証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| HEROZ | 42.80% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.67% |
| 楽天証券 | 3.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。
代表取締役社長は髙橋知裕氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙橋 知裕 | 代表取締役社長 | 1999年日本電気入社。2009年HEROZ設立、代表取締役COO。VOIQ取締役などを経て、2026年5月より現職。 |
| 林 隆弘 | 取締役 | 1999年日本電気入社。2009年HEROZ設立、代表取締役CEO。ストラテジット取締役などを経て、2022年11月より現職。 |
| 井口 圭一 | 取締役 | 2003年日本電気入社。Donuts開発部長、Ginger取締役を経て2013年HEROZ入社、取締役CTO。2022年11月より現職。 |
| 森 博也 | 取締役 | 1996年センチュリー監査法人入所。インテリジェンス等を経て2021年HEROZ入社、執行役員CFO。2022年11月より現職。 |
社外取締役は、畑敬子(HOP代表取締役CEO)、髙橋可奈(ひふみ総合法律事務所)、森脇基(BuySell Technologies IR部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「インターネットセキュリティサービス」事業を展開しています。
■(1) セキュリティBPOサービス
主に中堅・中小企業を対象に、インターネットからの攻撃や内部ネットワークへの侵入行為を防ぐ統合型インターネットセキュリティサービスを提供しています。自社開発のネットワークセキュリティ機器と監視システムを連携させ、データのバックアップやエンドポイントのセキュリティ対策、オフィス内ネットワークの安全維持までを幅広くサポートしています。
収益源は、機器のレンタルと運用保守を含む定額の月額費用であり、契約企業が増えるほど収益が積み上がるリカーリングレベニューモデルを構築しています。販売代理店を介した間接販売を中心に全国へ展開しており、同社がサービスの運用やサポートを一元的に担っています。
■(2) インテグレーションサービス
より小規模な事業者やクリニックなどを対象に、海外メーカーから輸入した中小企業向け統合セキュリティ機器の販売や、ネットワーク機器の調達、設定、構築を行うネットワークインテグレーションサービスを提供しています。セキュリティ導入に伴うインターネット接続全般の設計ニーズに応え、事業領域の拡大を図っています。
収益源は、セキュリティ機器の販売代金およびライセンス費用のほか、ネットワークの設計や構築に伴う役務提供の対価です。販売代理店を通じて顧客に製品を提供しており、機器の運用や障害対応等のサポートはメーカーの保証を活用しつつ同社や代理店が窓口として運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は安定的に成長を続けています。利益面では一時的に減少した時期があったものの、当期は価格改定の効果や高単価案件の増加により税引前利益が回復しました。利益率も約18%〜27%の間で推移しており、月額課金モデルによる底堅い収益力を維持しています。
| 項目 | 第7期 | 第8期 | 第9期 | 第10期 | 第11期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 26億円 | 26億円 | 26億円 | 27億円 | 28億円 |
| 税引前利益 | 7.0億円 | 5.4億円 | 5.1億円 | 4.8億円 | 5.5億円 |
| 利益率(%) | 27.3% | 20.6% | 19.3% | 17.9% | 19.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.0億円 | 3.8億円 | 3.5億円 | 3.4億円 | 3.8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、主力のセキュリティサービスの価格改定やライセンス数の増加が寄与し、売上高は増加しています。売上総利益や営業利益もそれに伴って成長しており、安定した利益率を確保していることが読み取れます。
| 項目 | 第10期 | 第11期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 27億円 | 28億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.4% | 51.1% |
| 営業利益 | 4.9億円 | 5.6億円 |
| 営業利益率(%) | 18.4% | 19.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.5億円(構成比30.0%)、のれん償却額が2.6億円(同22.6%)を占めています。売上原価においては、業務委託費が3.6億円(構成比26.2%)、支払手数料が2.9億円(同20.9%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社はインターネットセキュリティサービス事業の単一セグメントです。主力サービスにおける既存顧客への価格改定や高単価案件の納品が増加したことで、売上・利益ともに前期を上回る結果となりました。
| 区分 | 売上(第10期) | 売上(第11期) | 利益(第10期) | 利益(第11期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| インターネットセキュリティサービス | 27億円 | 28億円 | 4.9億円 | 5.6億円 | 19.8% |
| 連結(合計) | 27億円 | 28億円 | 4.9億円 | 5.6億円 | 19.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で安定した資金を生み出し、その範囲内で必要な投資を行いつつ借入金の返済を進めている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 第10期 | 第11期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.6億円 | 6.2億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | -1.0億円 |
| 財務CF | -3.0億円 | -3.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「“Your NET Guardian, alongside your invaluable Future.”(企業のネットセキュリティに伴走し、安心・安全なビジネスを支えます)」をミッションとして掲げています。インターネットを利用する全ての企業が安心で快適にビジネスを遂行できるよう、社会の安全安心を支える存在となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社はバリューとして「“Justice for your NET”(企業のネットインフラに正義の味方を常駐派遣する)」を掲げています。高度なセキュリティ対策を誰もが容易に導入できる環境を提供し、お客様が本業に集中できるよう、複雑な技術的課題を同社が裏側で吸収するという姿勢を重視して事業を運営しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、IFRSに基づく売上収益および営業利益を重視しています。ストック型のビジネスモデルを強みとし、新規契約の獲得と解約の抑止を通じて、安定した収益とキャッシュ・フローを継続的に拡大させることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は、セキュリティサービスの提供基盤を見直し、業務プロセスの自動化を進めることでサービスの提供範囲を拡大する方針です。また、親会社であるHEROZのAI技術を活用し、ゼロトラスト領域へのサービス拡大や社内業務の効率化を推進します。これらに対応するため、即戦力となる専門人材の確保と育成を最重要課題として取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な企業価値の向上のため、多様な人材の確保と育成を最重要課題と位置づけています。親会社が提供するAIを用いたデータ分析による採用精度の向上やターゲット層への最適なアプローチを推進し、即戦力となる専門人材の獲得を加速させています。また、エンゲージメントサーベイを通じた課題解決により、従業員の定着率向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第11期 | 40.1歳 | 6.1年 | 7,360,972円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報管理体制の不備によるリスク
同社は顧客の機密情報を含む重要なデータを扱っており、社内ネットワークやサーバーのセキュリティ対策を厳重に行っています。しかし、外部からのサイバー攻撃や意図せざるシステム障害、誤操作によって情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の販売代理店への依存
同社の提供するセキュリティサービスは販売代理店を経由した取引が中心であり、売上の多くを上位の販売代理店に依存しています。各販売代理店とは継続的な契約を結び良好な関係構築に努めていますが、代理店の販売方針の変更や他社とのM&Aによって取り扱い商品が見直された場合、同社の業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 機器の調達リスク
セキュリティサービスの基盤となる自社開発の機器は海外のメーカーに製造を委託しており、一部の中小企業向け機器も海外メーカーから調達しています。これらの製造委託先や調達先において、地政学的リスクや原材料価格の高騰、経営方針の変更が生じて調達が困難となった場合、計画通りの事業遂行に支障をきたす可能性があります。



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