BeeX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

BeeX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

BeeXは東証グロースに上場し、SAPシステム等の基幹システムをクラウドへ移行・運用するクラウドソリューション事業を展開しています。2025年2月期は売上高が前期比20.2%増、経常利益が同9.4%増となり、過去最高益を更新するなど堅調な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社BeeX の有価証券報告書(第9期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. BeeXってどんな会社?


SAPシステムのクラウド移行・運用に強みを持つクラウドソリューション企業です。

(1) 会社概要


同社は2016年にSAPシステムのクラウド化を目的として設立され、2019年に親会社であるテラスカイよりAWS事業を承継・統合しました。2022年2月には東証マザーズ(現:グロース市場)へ上場を果たしています。2024年2月にはAWSパートナーの最上位である「AWSプレミアティア サービス」の認定を取得するなど、技術力の高さが特徴です。

同社(単体)の従業員数は184名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は親会社でクラウド事業を展開するテラスカイ、第2位は同社代表取締役社長であり創業メンバーの広木太氏、第3位はAWS専業のインテグレーターであるサーバーワークスとなっています。

氏名 持株比率
テラスカイ 67.99%
広木 太 4.86%
サーバーワークス 3.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は広木太氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
広木 太 代表取締役社長 日本ユニシス、コンパック、デル、クニエ、NTTデータグローバルソリューションを経て、2016年3月同社設立時に取締役副社長就任。2017年3月より現職。
田代 裕樹 取締役副社長ビジネス開発推進本部長 日本IBM、日本マイクロソフトを経て、2017年にテラスカイ入社。スカイ365取締役などを歴任し、2019年3月より現職。
杉山 裕二 取締役経理財務本部長 日本旅行、フューチャー、いい生活、ジャパンエレベーターサービスなどを経て2018年に同社入社。2020年執行役員を経て2023年5月より現職。
塚田 耕一郎 取締役 豊田通商、みずほキャピタル等を経て、テラスカイ取締役CFO専務執行役員。テラスカイベンチャーズ代表取締役等を兼務し、2016年3月より現職。


社外取締役は、徳岡浩(元明治安田システム・テクノロジー社長)、伊藤肇(元AGC情報システム部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウドソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) クラウドインテグレーション


SAPシステムを中心とした基幹システムの基盤環境を、オンプレミスからパブリッククラウド(AWS、Azure、Google Cloud)へ移行するための一連の業務を提供しています。コンサルティング、設計、構築、移行、アプリケーション開発などが含まれます。顧客はクラウド移行を検討するエンタープライズ企業が中心です。

収益は、顧客企業から受け取るコンサルティング料、設計・構築費用などのフロー売上が中心です。運営は主にBeeXが行っています。SAPシステムのクラウド化に精通したコンサルタントと、各クラウドベンダーの認定資格を持つエンジニアが連携してサービスを提供しています。

(2) MSP(マネージドサービスプロバイダ)


顧客企業がクラウド環境に構築したシステムの監視、運用保守を代行するサービスです。24時間365日の監視体制を提供し、リソース不足の予兆検知や改善提案、障害対応などを行います。SAPシステムの基盤(BASIS)運用まで網羅的にサポートできる点が特徴です。

収益は、顧客企業から受け取る月額の運用保守サービス料などのストック売上が中心です。運営は主にBeeXが行っており、一部業務については子会社のスカイ365に委託する体制をとっています。

(3) クラウドライセンスリセール


AWS、Azure、Google Cloudのライセンスを顧客企業に再販し、月額課金代行や請求代行を行うサービスです。日本円での請求書発行や問い合わせ対応などの付加価値を提供しています。また、セキュリティ対策ソフトウェアの仕入販売も行っています。

収益は、顧客企業から受け取るライセンス利用料などのストック売上が中心です。運営は主にBeeXが行っています。クラウドインテグレーションで獲得した顧客をリセール契約につなげることで、継続的な収益基盤を拡大しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 41億円 44億円 58億円 77億円 93億円
経常利益 3.3億円 2.6億円 4.1億円 6.2億円 6.7億円
利益率(%) 8.1% 6.0% 7.1% 8.0% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.5億円 1.9億円 3.0億円 4.4億円 5.0億円


売上高は5期連続で増加しており、特に直近3期は大幅な増収が続いています。経常利益も拡大傾向にあり、利益率も7~8%台で安定的に推移しています。企業のDX需要やクラウド移行案件の増加を背景に、順調に事業規模を拡大させています。

(2) 損益計算書

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 77億円 93億円
売上総利益 15億円 17億円
売上総利益率(%) 19.7% 18.6%
営業利益 6.0億円 6.6億円
営業利益率(%) 7.8% 7.1%


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しました。一方で、利益率は若干低下しています。これは、プロジェクトの大型化に伴う外部リソース利用による業務委託費の増加や、積極的な人材採用による労務費・人件費の増加が影響しています。

販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.3億円(構成比41%)、業務委託費が1.6億円(同15%)を占めています。売上原価においては、経費が16億円(構成比21%)、労務費が10億円(同14%)となっていますが、仕入高(ライセンス料等)が50億円と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


クラウドインテグレーションは大型案件の寄与や官公庁案件により増収となりました。MSPは新規顧客獲得により堅調に推移しています。クラウドライセンスリセールは新規契約数の増加と円安の影響により大幅な増収となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
クラウドインテグレーション 24億円 28億円
MSP 8億円 9億円
クラウドライセンスリセール 45億円 55億円
連結(合計) 77億円 93億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、クラウドソリューション事業の成長を背景に、営業活動により資金を獲得しています。投資活動では、事業拡大に伴う設備投資やサービス開発のための支出が見られます。財務活動による資金の動きはありませんでした。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 7.9億円 5.3億円
投資CF -0.8億円 -0.6億円
財務CF 0億円 0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「先進テクノロジーを利用し、お客様の成長と変革に貢献するビジネスパートナーになる」というミッションを掲げています。また、ビジョンとして「企業の経済活動を活性化し、世の中にポジティブなエネルギーを与え、実りをもたらす存在であり続けることで社会に貢献する」ことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、従業員が共有すべき価値観として4つのバリューを定めています。「わくわく(何事にもポジティブに好奇心をもつ)」、「With Customer(顧客にとっての課題解決へ)」、「プロフェッショナル(価値観や常識を疑い、誠実に行動する)」、「チャレンジ(経験をリセットし、学習し続け、与え、共有する)」です。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業規模の拡大と利益創出基盤の拡大が急務であるとし、当面の重要指標として「売上高」及び「経常利益」を重視しています。また、財務的安定性の指標として「自己資本比率」にも着目しています。非財務指標としては、クラウドインテグレーションのプロジェクト数、MSPの顧客数、クラウドライセンスリセールのアカウント数を活用しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、基幹システムのクラウド移行案件の獲得を主軸としつつ、DX実現のためのプラットフォーム構築支援に注力しています。具体的には、データ分析基盤構築やクラウドアプリ開発の実績を活かし、レガシーシステムの刷新を支援します。また、セキュリティソリューションの提供拡大や、将来的なグローバル市場への進出も検討しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


深刻な技術者不足に対応するため、リモートワークやフレックスタイム制度など多様な働き方を推進し、優秀な人材の獲得・定着を図っています。また、社員の能力開発のため、パブリッククラウドやSAP関連の認定資格取得補助や研修を実施し、従業員の能力を最大限に発揮させる仕組みの確立を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 40.6歳 3.1年 7,592,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.9%
男性育児休業取得率 200.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※労働者の男女の賃金の差異は、女性活躍推進法の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(25.0%)、有給休暇取得率(69.7%)、社員一人あたり月平均残業時間(17時間51分)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) クラウド基盤事業者への依存


同社の事業はAWS、Azure等のパブリッククラウド基盤に依存しています。これらの市場規模が縮小する場合や、各ベンダーの経営戦略変更、契約解除等が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。特にAWS及びAzureの市場拡大に大きく依存している状況です。

(2) 人材の確保・育成


同社のサービスは技術者の能力に大きく依存しています。市場拡大に伴い人材不足が深刻化する中、優秀な技術者を適切な時期に確保・育成できなかった場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。また、想定以上の人件費高騰が発生した場合は、利益率の低下につながるリスクがあります。

(3) システム障害・サービス中断


クラウドサービス提供において、サイバー攻撃、人的過失、通信障害、自然災害等によりサービスが中断・停止する可能性があります。これにより顧客の信頼を失い、損害賠償責任が発生した場合、同社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。