スローガン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スローガン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するスローガンは、新産業領域向けの新卒・中途採用支援プラットフォームやビジネスメディア、SaaS型HRサービスなどを展開しています。直近の業績では、主力の学生向けサービスが好調に推移し、大幅な増収増益を達成して過去最高の売上高を更新するなど、堅調な成長を続けています。


※本記事は、スローガン株式会社の有価証券報告書(第21期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スローガンってどんな会社?


スローガンは、新産業領域の企業と挑戦意欲の高い人材をつなぐ採用支援プラットフォームを展開しています。

(1) 会社概要


2005年10月に設立され、翌年6月に新卒学生向け厳選就活プラットフォーム「Goodfind」を開始しました。2016年にSaaS型HRサービス「TeamUp」、2017年にビジネスメディア「FastGrow」の運営を開始して事業を拡大。2021年11月に東京証券取引所に上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で107名、単体で107名となっています。筆頭株主は創業者である伊藤豊氏で、第2位にはベンチャーキャピタル等の投資事業を行う法人が続いており、上位3名で株式の過半数を保有する安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
伊藤 豊 23.05%
Reapra Ventures Pte. Ltd. 21.48%
織田 一彰 11.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長は仁平理斗氏が務めています。社外取締役の割合は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
仁平 理斗 代表取締役社長 2010年にディー・エヌ・エーに入社後、2016年に同社入社。2021年に取締役執行役員COOを経て、2023年より現職。
北川 裕憲 取締役副社長 2011年に新創監査法人に入所後、2015年に同社入社。同年公認会計士登録。2017年に取締役執行役員CFOを経て、2023年より現職。


社外取締役は、杉之原明子(みんなのコード代表理事CEO)、渡辺千賀(BSGP, Inc. プリンシパル)です。

2. 事業内容


同社グループは、キャリアサービス分野およびメディア・SaaS分野の事業を展開しています。

キャリアサービス分野


新卒学生向け厳選就活プラットフォーム「Goodfind」やコンサル就活サービス「FactLogic」、長期インターン紹介「Intern Street」、社会人向けキャリア支援「G3」等を提供しています。成長意欲の高い人材に対し、スキルアップセミナーや面談等のキャリア構築支援を実施しています。

顧客企業からは、入社人数に応じた成功報酬や、採用目標達成に向けたコンサルティングの年間基本料金、メディア掲載やイベント運営の利用料を受け取ります。運営は主に同社が行っています。

メディア・SaaS分野


新産業領域の情報を発信する若手イノベーション人材向けビジネスメディア「FastGrow」や、1on1の仕組みで人材育成を支援するSaaS型HRサービス「TeamUp」を提供しています。企業の採用広報や組織内の才能の最適配置を支援します。

顧客からは、メディアを通じた採用ブランディング等の各種支援サービスの利用料や、SaaSサービスのシステム利用料を期間に応じて受け取ります。運営は同社およびチームアップが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一時的な伸び悩みが見られたものの、直近の決算では大きく持ち直し過去最高を更新しています。利益面でも同様に減少傾向から一転して大幅な増益を達成しており、収益基盤の強化と事業の再構築が奏功していることがうかがえます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 14億円 15億円 14億円 14億円 16億円
経常利益 3億円 2億円 2億円 1億円 3億円
利益率(%) 20.0% 14.3% 10.7% 8.8% 17.6%
当期利益 3億円 1億円 0.9億円 0.9億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高が堅調に増加する中で、高い売上総利益率を維持しています。また、売上高の成長が費用の増加を大きく上回ったことにより、営業利益が前年比で2倍以上に拡大し、営業利益率も大幅な改善を見せています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 14億円 16億円
売上総利益 13億円 16億円
売上総利益率(%) 97.7% 98.2%
営業利益 1億円 3億円
営業利益率(%) 9.2% 17.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比56%)、業務委託費が1億円(同11%)を占めています。売上原価については、施設賃借料が0.2億円(同77%)、外注費が0.1億円(同23%)となっています。

(3) セグメント収益


主力のキャリアサービス分野は、学生向けサービスの収益基盤強化や社会人向けサービスの成長により大幅な増収となりました。一方、メディア・SaaS分野については、事業モデルの再構築やポートフォリオ最適化を進める中で減収となっています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
キャリアサービス分野 11億円 14億円
メディア・SaaS分野 2億円 2億円
連結(合計) 14億円 16億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動はマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 2億円 3億円
投資CF -0.3億円 -0.1億円
財務CF -0.5億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。」というミッションを掲げています。これは、世代を跨いで問い続ける根源的な約束であり、「人の持つ可能性を引き出せれば、未来はどれほど良くなるだろうか」という問いこそがすべての活動の原点です。一人ひとりの可能性と豊かさがめぐる未来を共にかたちづくるため、個人の内発的動機が社会の経済合理性と統合される世界の構築に挑戦し続けています。

(2) 企業文化


同社は独自の経営パラダイムとして「内発的動機と営業利益の循環経営(循環経営)」を組織の核心に据えています。一人ひとりの「らしさ」や「願い」に基づく内発的動機を組織のビジョンと重ね合わせ、自律的に自己変容(学習変容)を続けることを重視しています。この実践から生み出された付加価値(営業利益)をさらなる人の可能性に再投資し、次なる事業を創出するスノーボール型の利益成長を志向する文化が特徴です。

(3) 経営計画・目標


同社は、「循環経営」の実効性を客観的に評価するため、売上高、営業利益、営業利益率を重要な経営指標として位置づけています。また、持続的な成長に向けて、営業利益が複利的に成長する高付加価値な事業の構築を目指しています。

* 売上高:16.2億円(2027年2月期目標)
* 営業利益:3億円(2027年2月期目標)
* 営業利益率:18.7%(2027年2月期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


中期的な成長の牽引役として、創業からの原点である「若手人材と新産業領域」への価値提供を深化させる戦略を描いています。伝統的な雇用慣行などの労働市場の「歪み」を解消し、意欲の高い人材が才能を最も発揮できる新産業領域へ挑戦できる環境を整備します。また、価値創造の純度を測る「財務規律」を徹底し、不採算事業からの機動的な撤退と有望な成長領域への経営資源の集中投下を進めていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を持続的な競争優位と産業創造の源泉と位置づけ、一人ひとりの「内発的動機」に基づく自己変容を促す人材育成方針を掲げています。個人の探求心に根ざした「不慣れ」な領域への挑戦を含む学習プロセスを組織の核心に据え、固定化した視点に縛られず新たな価値を創造できる体制を構築します。また、生み出された利益を人材に還元・再投資し、可能性がめぐる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 31.6歳 4.0年 5,605,786円

※平均年間給与は基準外賃金及びその他諸手当を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -

※労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ベンチャー企業の投資環境と市場動向


人材関連ビジネス市場は景気動向や雇用情勢の影響を受けやすく、特に主要取引先であるスタートアップ・ベンチャー企業を取り巻く投資環境が「質の高い企業」を厳選する局面へ移行しています。顧客企業の採用意欲が想定を超えて減退した場合や、新産業領域の拡大が制約された場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 就職・採用活動ルールの変更


主力事業である新卒学生向けキャリアサービスは、政府や経済団体、大学等による就職・採用活動の日程ルールの影響を受けます。広報活動や採用選考活動の開始時期等に関する方針が同社の予測を大きく超えて変化した場合、事業活動に制約が生じ、業績にマイナスの影響を与える可能性があります。

(3) 求職者の確保と人材マッチングの維持


人材紹介事業の特性上、質の高い求職者の継続的な確保が不可欠です。少子高齢化による将来の労働人口の減少や労働市場の変化によって企業側の求人ニーズが変容し、それを満たす求職者を確保できなかった場合、十分なマッチングサービスを提供できず、同社の事業運営や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。