※本記事は、スローガン株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スローガンってどんな会社?
新産業領域における人材創出を軸に、学生・社会人向けのキャリア支援サービスやメディア運営を行う企業です。
■(1) 会社概要
2005年に設立され、翌2006年に主要サービスである新卒学生向けプラットフォーム「Goodfind」の運営を開始しました。その後、2016年にSaaS型HRサービス「TeamUp」を開始するなど事業を多角化し、2021年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2023年には経営体制を刷新し、仁平理斗氏が社長に就任しています。
連結従業員数は109名、単体では108名です。大株主構成については、筆頭株主は創業者の伊藤豊氏で、第2位はシンガポールを拠点とするベンチャーキャピタル、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤 豊 | 22.30% |
| Reapra Ventures Pte. Ltd. | 20.78% |
| 織田 一彰 | 11.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長は仁平理斗氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 仁平 理斗 | 代表取締役社長 | ディー・エヌ・エーを経て2016年スローガン入社。執行役員、取締役COOを経て2023年3月より現職。 |
| 北川 裕憲 | 取締役副社長 | 新創監査法人を経て2015年スローガン入社。執行役員、取締役CFOを経て2023年3月より現職。公認会計士。 |
| 杉之原 明子 | 取締役 | ガイアックス、アディッシュ取締役を経て2021年5月より現職。みんなのコードCOO、Kaizen Platform社外取締役を兼任。 |
| 渡辺 千賀 | 取締役 | 三菱商事、マッキンゼー等を経てBSGP, Inc.プリンシパル。2023年5月より現職。G.U.テクノロジーズ取締役等を兼任。 |
社外取締役は、杉之原明子(みんなのコードCOO)、渡辺千賀(BSGP, Inc.プリンシパル)です。
2. 事業内容
同社グループは、「新産業領域における人材創出事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) キャリアサービス分野
学生向けには「Goodfind」等の就活プラットフォームや長期インターン紹介、社会人向けには転職エージェント「Goodfind Career」等を提供しています。成長意欲の高い人材と、新産業領域(スタートアップ・ベンチャー等)の企業をマッチングさせることが特徴です。
収益は、企業からの成功報酬型の人材紹介手数料や、採用コンサルティング料、イベント・メディア掲載料等から得ています。運営は主にスローガンが行っています。
■(2) メディア・SaaS分野
若手イノベーション人材向けメディア「FastGrow」や、1on1支援SaaS「TeamUp」などを展開しています。新産業領域の情報発信によるブランディング支援や、組織内での人材育成・配置の最適化を支援しています。
収益は、メディアへの記事掲載料や広告料、SaaSサービスの月額利用料等から得ています。運営はスローガンおよび子会社のチームアップが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は13億円から14億円台で推移しています。2023年2月期までは利益率が2桁台を維持していましたが、直近2期間は減益傾向にあり、利益率は1桁台となっています。特に2025年2月期は減収減益となり、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 13.1億円 | 14.2億円 | 14.7億円 | 14.2億円 | 13.5億円 |
| 経常利益 | 0.4億円 | 2.8億円 | 2.1億円 | 1.5億円 | 1.2億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 20.0% | 14.3% | 10.7% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | 2.1億円 | 1.4億円 | 0.9億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しており、それに伴い売上総利益、営業利益ともに減少しています。売上総利益率は依然として90%を超える高い水準を維持していますが、販管費の負担により営業利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 14.2億円 | 13.5億円 |
| 売上総利益 | 13.5億円 | 13.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 95.5% | 97.7% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 1.2億円 |
| 営業利益率(%) | 11.0% | 9.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比56%)、業務委託費が1億円(同12%)を占めています。売上原価は売上高に対して非常に小さく、人件費等の販管費がコストの大部分を占める構造です。
■(3) セグメント収益
キャリアサービス分野は、主力の学生向けサービスが堅調で微増収となりましたが、社会人向けサービスの苦戦が影響しました。メディア・SaaS分野は、受注活動の苦戦により大幅な減収となりました。全体としては、学生向けサービスの伸びが他分野の減少を補いきれず、連結で減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| キャリアサービス分野 | 11.3億円 | 11.4億円 |
| メディア・SaaS分野 | 2.9億円 | 2.1億円 |
| 連結(合計) | 14.2億円 | 13.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.2億円 | 1.8億円 |
| 投資CF | -0.6億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | -0.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均(グロース市場2.9%)を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均(グロース市場非製造業43.3%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける。」というミッションを掲げています。人の創造性と生産性を最大化させる配置(労働市場におけるマッチングおよび組織内配置)を通じてイノベーションを創出し、新産業領域の人と組織が活気づく社会を目指しています。
■(2) 企業文化
同社では、役職員一人ひとりの日々の行動や判断の拠り所となる具体的な心構えとして「スローガンウェイ」を策定しています。これを組織全体に浸透させることで、再現性のあるリーダー輩出や組織文化の明確化に取り組んでおり、自社での実践を通じて得られた知見を顧客や社会へ還元することも重視しています。
■(3) 経営計画・目標
ミッションおよび長期ビジョンの実現に向け、現在は「営業利益が持続成長する付加価値の高い事業」の構築を目指す「大改革期」と位置付けています。経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、以下の数値を重視しています。
* 売上高
* 営業利益
* 営業利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
「大改革期」として、収益基盤の強化と事業モデルの変革を推進しています。主力事業の「Goodfind」ではマッチング精度の向上による収益性改善を図るとともに、経営陣自らが新規事業の探索と仕組化を主導し、組織全体へ展開することで、持続的な高収益体質への転換を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の激しい新産業領域においてミッションを実現するため、主体的に変化へ対応できる人材の採用と育成を重視しています。また、自らが「新産業領域の人と組織に関する専門性とテクノロジーを有したプロフェッショナルカンパニー」となることを目指し、良質なリーダーを輩出するためのリーダーシップ開発等に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 30.8歳 | 3.5年 | 5,468,160円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の動向
人材関連ビジネス市場は景気や雇用情勢の影響を受けやすい特性があります。同社は新産業領域に特化することで影響の最小化に努めていますが、景気後退等により主要顧客であるスタートアップ・ベンチャー企業の成長が鈍化した場合は、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 競合他社の動向
同社は新産業領域の企業選定や人材目利き力を強みとしていますが、既存事業者のシェア拡大や新規参入により競争が激化した場合には、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 新卒採用環境の動向
主力である新卒学生向けサービスは、政府や経済団体等による就職・採用活動に関する要請や申合せの影響を受ける可能性があります。今後これらの方針が大きく変更された場合、事業活動の調整が必要となり、業績に影響が及ぶ可能性があります。



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