マーキュリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マーキュリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロースに上場する同社は、不動産ビッグデータとテクノロジーを融合させた「プラットフォーム事業」と「デジタルマーケティング事業」を主力としています。直近の業績は、売上高が前期比22.7%増、営業利益が同199.5%増と大幅な増収増益を達成しています。


株式会社マーキュリー転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社マーキュリーの有価証券報告書(第34期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マーキュリーってどんな会社?


不動産ビッグデータを活用し、デベロッパーや仲介業者向けにマーケティングシステムを提供する企業です。

(1) 会社概要


1991年に株式会社オフィス・キャスターとして設立され、1999年に不動産データ提供サービスを取得して当該事業に参入しました。2003年に株式会社エクスと合併して現商号となり、同年に主力サービス「サマリネット」をリリースしました。2022年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2024年には株式会社GA technologiesの連結子会社となりました。

同社(単体)の従業員数は63名です。筆頭株主は親会社の株式会社GA technologiesで、第2位は代表取締役社長の資産管理会社である株式会社JINXです。

氏名 持株比率
GA technologies 55.38%
JINX 12.29%
森山 一郎 4.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は陣 隆浩氏です。社外取締役比率は約66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
陣 隆浩 代表取締役社長 明和住販、オリエント住販等を経て、2003年3月より現職。JINX代表取締役を兼務。
大寺 利幸 取締役事業部門担当 デジタルウェア等を経て1999年に入社。ソリューション本部長、事業推進本部長等を歴任し、2023年3月より現職。


社外取締役は、樺島 弘明(エル・ティー・エス代表取締役社長)、伊藤 修一(元楽天インサイト代表取締役)、齊藤 悟志(齊藤悟志公認会計士事務所代表)、呉田 将史(呉田公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社は、「プラットフォーム事業」「デジタルマーケティング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) プラットフォーム事業


新築マンション領域ではデベロッパー向けに市場調査システム「サマリネット」や営業支援システム「リアナビ」を、中古マンション領域では仲介業者向けに「データダウンロードサービス」等を提供しています。30年以上にわたり収集した物件パンフレットや価格表などの不動産ビッグデータが基盤となっています。

収益は、新築領域では主にシステム利用ライセンス料としての月額課金(サブスクリプション)により得ています。中古領域では、データのダウンロード数に応じた従量課金を主な収益源としています。運営は同社が行っており、一部データ提供等で株式会社ワンノブアカインド等と連携しています。

(2) デジタルマーケティング事業


マンション販売における集客をWebマーケティングにより支援する事業です。具体的には、マンション購買意欲の高いユーザーが集まるCGMサイトを活用した広告サービスや、リスティング広告の運用代行、物件公式サイトの制作等を行っています。

収益は、顧客である不動産事業者から受け取る広告掲載料や広告運用代行手数料、サイト制作費等からなります。運営は同社が行っています。

(3) その他


上記事業に含まれないサービスとして、不動産データベースを活用したダイレクトメール配送サービス「タウンマンションプラス」や、システムの受託開発を行っています。

収益は、ダイレクトメールの配送サービス料やシステム開発の受託料からなります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大傾向にあります。利益面では、2024年2月期に一時的な落ち込みが見られましたが、直近の2025年2月期にはV字回復し、経常利益・当期純利益ともに過去最高水準に近い数値を記録しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 13億円 14億円 14億円 14億円 18億円
経常利益 0.6億円 1.9億円 1.4億円 0.6億円 1.7億円
利益率(%) 5.0% 14.1% 10.0% 4.1% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.4億円 1.3億円 0.9億円 0.5億円 1.3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の大幅な伸長に伴い、売上総利益率が向上しています。営業利益率は前期間の約4%から約10%へと大きく改善しており、収益性が高まっていることがわかります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 14億円 18億円
売上総利益 6億円 8億円
売上総利益率(%) 39.8% 44.7%
営業利益 0.6億円 1.7億円
営業利益率(%) 4.0% 9.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.8億円(構成比29%)、役員報酬が0.6億円(同10%)を占めています。売上原価においては、支払手数料が5.0億円(構成比51%)、労務費が2.6億円(同26%)となっています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収となっていませんが、主力のプラットフォーム事業とデジタルマーケティング事業が増収を牽引しました。特にプラットフォーム事業は、中古マンション領域での大型ショット収益の計上などにより大きく伸長しました。その他事業はシステム受託開発の受注減により減収となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
プラットフォーム事業 9億円 12億円
デジタルマーケティング事業 4億円 5億円
その他事業 0.9億円 0.6億円
連結(合計) 14億円 18億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示す「健全型」です。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 0.6億円 3.4億円
投資CF -0.7億円 -0.3億円
財務CF -0.3億円 -0.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「報恩」を合言葉に、「不動産IT革命により不動産取引に関わる全ての人の満足を創造する」ことを事業理念としています。30年以上にわたり蓄積した不動産ビッグデータとテクノロジーを活用し、不動産業界に変化を起こすイノベーターを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「喜びや成長の糧となる環境を人々から与えられている事に感謝し、不屈不撓の精神で価値ある未来の創造に挑戦し続ける」ことを経営理念として掲げています。正確な不動産価値分析により顧客の選択に確信を与えるため、正確な裏付けのあるデータベースの整備を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な成長と企業価値向上を目指し、全社的な主要指標として売上高および営業利益を重視しています。また、プラットフォーム事業においては、新築領域で平均顧客単価、平均顧客数、ARR(年間経常収益)、解約率を、中古領域では売上高および平均顧客数を重要な経営指標として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


GAグループ全体との連携強化によるシナジー最大化を図るとともに、安定的な収益基盤の強化に取り組みます。プラットフォーム事業では、既存会員への従量課金サービスの導入によるARPU(ユーザー平均単価)向上や、SaaS型への移行を推進します。中古領域では契約社数の増加と提供コンテンツの拡充に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


システム開発力の強化を重視しており、開発要員の採用を積極的に実施しています。また、従業員が主体的かつ柔軟に勤務できる環境を整備するため、半期ごとの人事評価制度の運用改善や社内研修制度の見直しを推進しています。福利厚生やインセンティブの充実により、優秀な人材の確保と育成に取り組む方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 41.2歳 10.1年 7,133,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界及び顧客の動向


同社の顧客は不動産業界に集中しており、新築マンションデベロッパーや不動産仲介事業者等が中心です。そのため、不動産業界全般の景気動向やシステム投資状況、また業界に対する規制環境の変化等が、同社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) インターネット広告商品の変化


デジタルマーケティング事業で扱うインターネット広告は手法の日々の進化が激しく、リスティング広告やディスプレイ広告等の相対的価値が低下する可能性があります。新規広告商材への対応が遅れた場合、事業及び業績に影響を与える可能性があります。

(3) システムリスク


事業はインターネット環境で行われており、セキュリティ対策を講じていますが、ハードウェアやソフトウェアの不具合、サイバー攻撃、自然災害等によりシステム障害が発生した場合、事業活動に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 新規サービスについて


事業拡大のため新規サービスの開発を進めていますが、収益化までに時間を要し利益率が低下する可能性があります。また、計画通りに推移せず投資回収ができない場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。顧客ニーズの把握と優先順位付けによりリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。