マーキュリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マーキュリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マーキュリーは東京証券取引所グロース市場に上場し、不動産ビッグデータを活用したプラットフォーム事業と不動産業界向けのデジタルマーケティング事業を展開しています。直近の業績は、売上高が約16億円、経常利益が約0.8億円と減収減益となった一方で、投資有価証券売却等により当期純利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社マーキュリーの有価証券報告書(第35期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. マーキュリーってどんな会社?


不動産ビッグデータとテクノロジーを活用し、不動産業界向けのマーケティング支援や集客支援を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1991年に設立され、1999年に新築分譲マンションマーケティングシステム「MAPS」をリリースしました。その後、2012年にデジタルマーケティング事業を開始するなど事業領域を拡大し、2022年に東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)へ上場しました。2024年にはGA technologiesによる公開買付けにより、同社の連結子会社となっています。

従業員数は単体で59名体制です。筆頭株主は親会社であり資本業務提携を結ぶGA technologiesで、第2位は代表取締役の資産管理会社であるJINX、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
GA technologies 53.34%
JINX 11.84%
光通信KK投資事業有限責任組合 5.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは陣隆浩氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
陣 隆浩 代表取締役社長CEO 明和住販、東京都市開発などを経て、2003年3月より現職。
大寺 利幸 代表取締役COO デジタルウェアなどを経て1999年に同社入社。ソリューション本部長などを歴任し、2025年5月より現職。


社外取締役は、樺島弘明氏(エル・ティー・エス代表取締役社長執行役員)、伊藤修一氏(メディカル・コミュニケーションズ取締役)、齊藤悟志氏(齊藤悟志公認会計士事務所代表)、呉田将史氏(呉田公認会計士事務所開業)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プラットフォーム事業」「デジタルマーケティング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) プラットフォーム事業


不動産ビッグデータを活用し、新築マンションデベロッパーや仲介業者向けに市場調査・分析システム「サマリシリーズ」や営業支援データを提供するプラットフォーム「Realnet」を展開しています。

主にSaaS型の定額課金(サブスクリプション)を基本とし、一部従量課金を含みます。運営は同社が中心となり、一部サービスはワンノブアカインドと共同運営しています。

(2) デジタルマーケティング事業


新築分譲マンションや分譲戸建ての販売集客に特化し、CGM広告の企画販売やリスティング広告の運用代行、物件サイトの制作などを行っています。

顧客から広告掲載料や運用代行手数料、制作料を受け取るモデルです。運営は同社が行っています。

(3) その他


世帯属性を想定したセグメント配信を行うダイレクトメール配送サービス「タウンマンションプラス」や、データベース構築のノウハウを活かしたシステム開発受託を展開しています。

広告主や開発委託元となる企業から配送手数料やシステム開発料を受け取るモデルです。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は概ね14億円から17億円のレンジで推移しています。経常利益は期によって変動がありますが、直近では大型案件の反動により減益となりました。一方、当期純利益は投資有価証券の売却益などにより直近で増加傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 13.7億円 14.1億円 14.4億円 17.6億円 16.0億円
経常利益 1.9億円 1.4億円 0.6億円 1.7億円 0.8億円
利益率(%) 14.1% 10.0% 4.1% 9.4% 5.2%
当期純利益 1.3億円 0.9億円 0.5億円 1.3億円 1.6億円

(2) 損益計算書


前期から当期にかけて、売上高が減少したことに伴い、売上総利益および営業利益も減少しました。特に大型収益の剥落が響き、利益率も低下する結果となりました。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 17.6億円 16.0億円
売上総利益 7.9億円 6.3億円
売上総利益率(%) 44.7% 39.5%
営業利益 1.7億円 0.7億円
営業利益率(%) 9.6% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.9億円(構成比34%)、役員報酬が0.5億円(同10%)を占めています。売上原価では支払手数料が5.5億円(構成比57%)、外注加工費が0.7億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


プラットフォーム事業は前期の大型収益の反動減等により減収となりました。一方、デジタルマーケティング事業はリスティング広告の深耕やCGM広告の堅調な推移により増収となり、その他事業もシステム開発受託の増加により増収を確保しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
プラットフォーム事業 12.4億円 10.1億円
デジタルマーケティング事業 4.7億円 5.2億円
その他事業 0.6億円 0.7億円
連結(合計) 17.6億円 16.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CF、投資CF、財務CFのすべてがプラスとなる「再建・転換型」の傾向を示しており、営業CFや資金調達を基に事業転換などのための投資を行う局面にあると考えられます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 3.4億円 0.3億円
投資CF -0.3億円 1.4億円
財務CF -0.7億円 0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「報恩」を合言葉に「喜びや成長の糧となる環境を人々から与えられている事に感謝し、不屈不撓の精神で価値ある未来の創造に挑戦し続ける」ことを経営理念として掲げています。また、「不動産IT革命により不動産取引に関わる全ての人の満足を創造する」ことを事業理念として位置づけ、正確な裏付けのある不動産データベースを通じて顧客の確信ある選択を支援しています。

(2) 企業文化


同社は、不動産業界に変化を起こすイノベーターを目指し、AI(人工知能)や画像解析等のテクノロジーを活用して新たな付加価値の創造に向けたチャレンジを続ける文化を重視しています。また、従業員が主体的かつ柔軟に勤務できる魅力ある職場づくりや、多様な人材が活躍できる環境整備を推進し、不屈不撓の精神で未来を創造する姿勢を根付かせています。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な成長と企業価値向上を目指しており、全社的な主要な指標として売上高および営業利益を重視しています。また、主力であるプラットフォーム事業の新築マンション領域では、安定した収益基盤としてARR(年間経常収益)を目標指標に設定し、その構成要素である平均顧客単価、平均顧客数、解約率を注視しながら事業を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


新築マンション領域ではSaaS型サービスへの切り替えや新価格体系への移行により、ライセンス追加やリカーリング商材の利用促進を図り顧客単価(ARPU)の向上を目指しています。中古マンション領域では契約社数の増加とサービス拡張を推進し、さらに新たに賃貸管理・仲介会社向けの「賃料査定DX」をリリースするなど、利用領域の拡大と親会社グループとの連携シナジーの最大化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は多様な人材が活躍できる環境づくりに取り組み、人材の育成や働きやすい職場づくりに注力しています。資格取得のための全額補助や動画研修などによるスキルアップの支援に加え、フレックス制度やリモートワークの活用を通じた柔軟な働き方を推進しています。採用・育成・評価報酬の各施策を展開し、一人ひとりがパフォーマンスを最大化できる土台構築を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 43.1歳 11.2年 6,477,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

**(1) 業界および顧客の動向に関するリスク**
同社の顧客は不動産業界に集中しているため、不動産業界全般の景気やシステム投資の動向、法規制環境の変化などが同社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

**(2) インターネット広告商品の変化**
リスティング広告やディスプレイ広告など、取り扱うインターネット広告商品の相対的価値が低下するリスクがあります。新たな広告商材への対応が著しく遅れた場合、事業に影響を与える可能性があります。

**(3) データベース構築のための情報収集リスク**
プラットフォーム事業で提供する新築マンションのパンフレット画像等は契約に基づき収集していますが、契約の解消や変更によりデータが利用できなくなった場合、サービスの提供に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。