フォルシア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォルシア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォルシアは東京証券取引所グロース市場に上場する企業です。膨大かつ複雑なデータを高速処理する検索技術「Spook」を基盤に、旅行・観光業界向けSaaS「webコネクト」などのデジタルビジネスプラットフォーム事業を展開しています。直近の業績は売上高、利益ともに伸長し、増収増益となっています。


※本記事は、フォルシア株式会社 の有価証券報告書(第24期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フォルシアってどんな会社?


独自の検索技術「Spook」を強みに、旅行業界等のDXを支援するプラットフォーム事業を展開しています。

(1) 会社概要


2001年に設立され、2005年に独自技術「Spook」の第一号案件を獲得しました。2019年にはSaaS型サービス「webコネクト」の販売を開始し、ビジネスモデルを拡張しました。その後も技術特許の取得や事業拡大を経て、2024年12月に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場しました。

現在の従業員数は連結・単体ともに131名です。筆頭株主は代表取締役COOの屋代哲郎氏で、第2位は代表取締役社長の屋代浩子氏となっており、創業者夫妻が主要株主となっています。

氏名 持株比率
屋代 哲郎 32.20%
屋代 浩子 32.06%
フォルシア社員持株会 9.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は屋代浩子氏です。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
屋代 浩子 代表取締役社長 野村證券、ゴールドマン・サックス証券を経て2001年同社設立、代表取締役社長就任。2018年よりセゾン情報システムズ社外取締役を兼任。同社設立時より現職。
屋代 哲郎 代表取締役COO 野村證券、モルガン・スタンレー証券を経て2001年同社入社。同年12月より現職。
山田 尚紀 常務取締役 全日空商事、ANAセールスを経て2005年同社入社。営業部長、取締役を経て2018年常務取締役就任。2020年より事業戦略統括。
三坂 紀 取締役 全日空商事、ANAセールスを経て2007年同社入社。営業部長、業務本部長を経て2020年より取締役コーポレート統括。
大西 孝明 取締役 日本通運、JTB情報システム、ジェイティービーを経て2011年同社入社。営業本部長を経て2020年より取締役営業統括。
夏目 伸彦 取締役基盤技術部部長 グーグルを経て2009年同社入社。技術本部長、プロダクト部部長などを歴任し、2023年より取締役技術統括兼基盤技術部部長。


社外取締役は、稲岡研士(元全日本空輸上席執行役員・ANAセールス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルビジネスプラットフォーム」事業を展開しています。

(1) ソリューション型サービス


独自の検索技術基盤「Spook」を活用し、膨大かつ複雑なデータを高速処理する検索ソリューションを提供しています。主な顧客は、複雑な旅行データを扱う大手旅行会社や、多数の商品を管理する専門商社などです。顧客ごとにカスタマイズされたシステムを構築し、ユーザーの利便性向上やデジタルビジネスの強化を支援しています。

収益は、システム開発にかかる開発費、リリース後の運用・保守費、および技術・ノウハウの継続使用に対する使用許諾費から構成されています。運営は主に同社が行っており、顧客のサーバーやデータセンターに設置するオンプレミス型で提供されることが多いのが特徴です。

(2) SaaS型サービス


蓄積された技術と知見を活かし、共通課題に対する汎用的な解決策を提供するサービスです。代表的なプロダクトである「webコネクト」は、旅行・観光業界向けの商品販売プラットフォームとして、素材登録、検索、予約管理、電子クーポン発行などの機能を提供しています。また、ECサイト向けデータクレンジングツール「Masstery」なども展開しています。

収益は、初期設定費と月額サービス利用料に加え、顧客要望に応じたカスタマイズ開発費や運用保守費を受け取るハイブリッド型のモデルを採用しています。運営は主に同社が行い、クラウド経由でサービスを提供することで、顧客のシステム導入・管理負担を軽減しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は14億円規模から23億円規模へと拡大傾向にあります。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに黒字を維持しており、特に直近の2025年2月期は売上高、利益ともに過去最高水準となっています。全体として成長基調を維持しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 14.4億円 16.5億円 21.5億円 19.5億円 23.1億円
経常利益 0.5億円 0.5億円 1.1億円 1.4億円 2.0億円
利益率(%) 3.1% 3.3% 5.0% 7.2% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.3億円 0.3億円 1.3億円 1.0億円 1.3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸長しています。営業利益率も向上しており、収益性が高まっていることがわかります。増収効果が利益拡大に寄与している構図が見て取れます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 19.5億円 23.1億円
売上総利益 10.5億円 12.3億円
売上総利益率(%) 54.1% 53.5%
営業利益 1.4億円 2.2億円
営業利益率(%) 7.1% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.2億円(構成比41%)、役員報酬が1.0億円(同9%)を占めています。売上原価においては、経常費が6.8億円(構成比63%)、労務費が5.1億円(同47%)となっています。

(3) セグメント収益


サービス区分別の売上を見ると、主力であるSaaS型サービス(webコネクト等)が大幅に伸長し、全体の成長を牽引しています。一方、ソリューション型サービス(Spook等)は横ばいから微減となっており、ビジネスモデルの軸足がSaaS型へとシフトしつつある状況がうかがえます。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
ソリューション型サービス 8.5億円 8.4億円
SaaS型サービス 10.9億円 14.7億円
連結(合計) 19.5億円 23.1億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、フェアネスを追求する企業として、インターネット上の有益な情報を円滑に流通させ、ユーザーが自信を持って意思決定できる「フェアな世界」の実現を使命としています。検索テクノロジーを基盤としたシステム開発やサービス提供を通じて、顧客の課題解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員同士が互いの貢献を評価し合う独自の制度「3C制度(Contribution/Commitment/Consistency)」を導入しています。個人の努力が正当に評価される環境を整備することで、自律的な成長と健全な競争が両立する組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高および売上高営業利益率を重要な経営指標として位置づけています。また、成長ドライバーであるSaaS型サービス「webコネクト」の拡大を重視しており、その「顧客数(累計)」を重要なKPIとして設定しています。

* webコネクト顧客数:27社(2025年2月期実績)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「データ流通のビジネスハブ」となることを目指し、以下の3ステップで成長を図る戦略を掲げています。まず、大手旅行会社等の既存顧客へのサービス拡充を進めます。次に、そのノウハウを活かして新規参入企業(交通事業者や自治体等)へ展開します。最終的には、業界のステークホルダーをつなぐ「n対n」のマーケットプレイスを構築することを目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な成長のために人材を最も重要な経営資源と位置づけ、高度な専門性を持つ多様な人材の確保と育成に注力しています。新卒・中途採用を積極的に行い、社内研修や資格取得支援制度を通じて能力開発を推進しています。また、社員が能力を最大限発揮できる環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 36.5歳 5.7年 7,149,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の離職率(12.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向及び市場環境に関するリスク


同社ビジネスは企業のIT投資意欲に影響を受けます。国内外の経済情勢や景気動向により顧客企業の投資意欲が減退した場合、新規開拓の低迷や既存受注の減少などが生じ、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、旅行・観光業界以外の他業界への拡販などでリスク分散を図っています。

(2) 大口顧客依存に関わるリスク


売上高の一部は特定の旅行会社等の大口顧客に依存しています(上位3社で約4割)。これらの顧客からの受注集中によるリソース不足や、顧客の方針変更による取引縮小が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。外部パートナーとの協業体制構築や、SaaSプロダクトの拡充による顧客基盤の拡大で対応を進めています。

(3) システムトラブル及び情報セキュリティリスク


地震などの災害やサイバー攻撃、通信障害などによりシステムトラブルが発生した場合、事業活動に影響を与える可能性があります。また、顧客の秘密情報や個人情報を取り扱っているため、情報の紛失や漏洩が生じた場合、損害賠償や信用低下を招く恐れがあります。これに対し、バックアップ体制の確立やセキュリティ認証(ISMS等)の取得など対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。