※本記事は、株式会社フライヤー の有価証券報告書(第12期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フライヤーってどんな会社?
本の要約サービス「flier」を運営し、効率的なインプットを支援する時短読書・人材育成サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
2013年に設立され、同年10月に本の要約サービス「flier」を開始しました。2016年に電子書籍流通を行うメディアドゥのグループに入り、子会社となりました。その後、法人向けサービスや音声版アプリ、オンラインコミュニティなどを順次展開し、事業を拡大しています。2025年2月には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。
同社に連結子会社はなく、単体での従業員数は58名です。筆頭株主は親会社であり電子書籍流通事業を展開するメディアドゥです。第2位はベンチャーキャピタルのファンド、第3位は同社創業者の大賀康史氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| メディアドゥ | 57.99% |
| XTech2号投資事業有限責任組合 | 4.85% |
| 大賀 康史 | 2.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役CEOは大賀康史氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大賀 康史 | 代表取締役CEO | アクセンチュア、フロンティア・マネジメントを経て、2013年6月同社設立、代表取締役CEOに就任。2019年よりREAH Technologies取締役も務める。 |
| 望月 剛 | 取締役CFO | 公認会計士。Bain & Company、レノボ・ジャパン、Qrio経営本部長、ビズリーチを経て、2020年同社執行役員CFO就任。2022年より現職。 |
社外取締役は、服部結花(インクルージョン・ジャパン代表取締役)、安田雅彦(We Are The People代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンタープライズ事業」および「コンシューマ事業」を展開しています。
■(1) エンタープライズ事業
企業の人材育成や福利厚生を目的とした法人向けサービス「flier business」を提供しています。また、インターネットカフェや図書館等の施設向けサービス、法人研修事業、組織スコアリングサービス「flier成長組織ナビ」も展開しています。
収益は、主に法人顧客から受け取る月額固定の利用料(SaaS型サブスクリプション)により構成されています。また、研修事業では実施ごとの料金が発生します。運営は主にフライヤーが行っています。
■(2) コンシューマ事業
ビジネスパーソンを中心とした個人向けに、本の要約サービス「flier」を提供しています。ビジネス書や教養書の要約、著名人のインタビュー動画などを配信し、スキマ時間での自己研鑽を支援しています。オンライン読書コミュニティ「flier book labo」も運営しています。
収益は、個人ユーザーから受け取る月額課金のサブスクリプション利用料が主軸となっています。要約読み放題のゴールドプランや月5冊までのシルバープランなどを提供しています。運営は主にフライヤーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に右肩上がりで成長を続けており、第8期の4.2億円から第12期には9.5億円まで拡大しています。利益面では、先行投資により赤字が続いていましたが、直近の第12期において黒字化を達成しました。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4.2億円 | 5.2億円 | 6.3億円 | 7.9億円 | 9.5億円 |
| 経常利益 | -1.1億円 | -2.7億円 | -2.7億円 | -1.4億円 | 0.02億円 |
| 利益率(%) | -27.5% | -51.7% | -42.8% | -17.3% | 0.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.2億円 | -2.8億円 | -2.7億円 | -1.4億円 | 0.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約2割増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。販管費の伸びを売上の伸びが上回ったことで、営業利益および経常利益が黒字に転換しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7.9億円 | 9.5億円 |
| 売上総利益 | 5.9億円 | 7.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 74.7% | 80.3% |
| 営業利益 | -1.3億円 | 0.1億円 |
| 営業利益率(%) | -16.9% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が2.8億円(構成比37%)、給料手当が1.8億円(同25%)を占めています。売上原価においては、人件費が1.4億円で構成比の約74%を占めています。
■(3) セグメント収益
エンタープライズ事業は売上が大きく伸長し、利益率も高い水準を維持しています。コンシューマ事業は売上が微減となりましたが、利益は増加しました。全社費用(調整額)の影響を除くと、両セグメントともに黒字を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンタープライズ事業 | 5.0億円 | 6.6億円 | 1.7億円 | 2.9億円 | 43.2% |
| コンシューマ事業 | 2.9億円 | 2.9億円 | 0.9億円 | 1.1億円 | 38.8% |
| 調整額 | - | - | -3.9億円 | -3.9億円 | - |
| 連結(合計) | 7.9億円 | 9.5億円 | -1.3億円 | 0.1億円 | 0.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、株式発行による収入を主な増加要因として、財務活動により資金を調達しました。営業活動では、契約負債の増加などが寄与し、資金を生み出しました。投資活動では、敷金及び保証金の回収により、わずかながら資金を得ました。これらの結果、当事業年度末の現金及び現金同等物は、前事業年度末と比較して増加しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.3億円 | 0.6億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | 0.0億円 |
| 財務CF | 0.9億円 | 1.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ヒラメキあふれる世界をつくる」をミッションに掲げ、「あらゆる『人』と『組織』が成長し、可能性がひらかれるプロダクトをつくる」をビジョンとしています。多様かつ信頼できる「知」を多くの人に届け、組織能力の向上と個人の活躍を促すプラットフォームを構築することで社会貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は行動指針として「楽しむ」「スピード」「Self-starter」「挑戦」「Respect」「三方良し」の6つのバリューを掲げています。事業成長を重視しつつ、知の流通という社会的価値も追求し、採用や育成、カルチャーの浸透に特に力を入れた運営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な企業価値向上を目指し、KGIとして全社およびエンタープライズ事業の売上高、営業損益、MRR(月次経常収益)等を重視しています。特に主力サービス「flier business」においては、契約社数、ARPA(1アカウント当たり平均単価)、Net Revenue Churn Rate(解約率)を重要指標(KPI)として設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期戦略の軸として、エンタープライズ事業セグメントの拡大を掲げています。「flier business」の顧客基盤拡大に向け、従業員500名以上の大企業開拓や代理店網の構築による中小企業への展開を進めます。また、新規事業「flier 成長組織ナビ」の有償化や、両サービスのクロスセルにより新たな収益の柱を確立することを目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ミッション実現のため、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材の採用と育成を重視しています。社員が能力を最大限発揮できるよう、バリューの浸透やフラットなコミュニケーション環境の整備に努めています。また、AI等の先端技術活用スキル向上のため、資格取得支援制度も設けています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 35.0歳 | 3.7年 | 6,341,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 50.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 91.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 86.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 480.6% |
※男性労働者の育児休業取得率は、該当者がいない等の理由により算出されていません。また、パート・有期労働者の男女賃金差異については、時給賃金は等しく、差異は労働時間の差によるものです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 財務体質について
同社は現在、財務安定性の向上を図っていますが、自己資本比率は38.3%とさらなる強化が必要と認識しています。事業環境によっては追加の資金調達が必要となる可能性があり、その場合、株式希薄化や財務状態への影響が生じるリスクがあります。
■(2) 人材の確保について
事業成長には、専門能力に加え企業理念や行動指針を理解・実践できる人材の確保と定着が不可欠です。有能な人材を十分に確保できない場合や、育成・活用が十分に進まない場合、事業の成長が阻害され、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競合優位性について
同社は質の高い要約や出版社との関係性により独自の地位を築いていますが、他社によるサービスの模倣や、資本力のある企業の参入により競争が激化する可能性があります。これによりユーザー流出や獲得コストが増加した場合、事業展開や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) AI関連の技術革新について
同社はAI技術の活用を進めていますが、予期せぬ急激な技術革新が発生し、それへの対応が遅れた場合、サービスの独自性や競争力が低下する恐れがあります。また、AIによる要約生成と著作権の関係など、権利処理に関する課題が生じる可能性もあります。



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