フライヤー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フライヤー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するフライヤーは、1冊約10分で読める「本の要約サービス flier」を法人および個人向けに展開する企業です。直近の業績は、主力である法人向けエンタープライズ事業が牽引し、連結売上高は10.7億円、経常利益は0.3億円を計上するなど、順調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社フライヤーの有価証券報告書(第13期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フライヤーってどんな会社?


本の要約サービス「flier」を運営し、個人や法人向けに自己研鑽・人材育成プラットフォームを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2013年6月に設立され、同年10月に本の要約サービス「flier」の提供を開始しました。2016年にメディアドゥの子会社となり、2023年には法人向けサービスを「flier business」としてリニューアルしました。2025年2月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、同年9月にはオンラインAI研修事業を展開するAIStepを完全子会社化するなど、人材育成領域でのサービス拡大を推進しています。

同社グループの従業員数は連結で57名、単体で51名です。筆頭株主は親会社であり電子書籍流通事業を展開するメディアドゥで、第2位は創業者の大賀康史氏、第3位はベンチャーキャピタルであるXTech2号投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
メディアドゥ 56.28%
大賀 康史 5.46%
XTech2号投資事業有限責任組合 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役CEOは大賀康史氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
大賀 康史 代表取締役CEO 2003年アクセンチュア入社、2010年フロンティア・マネジメント入社。2013年同社設立、代表取締役CEOに就任。
望月 剛 取締役CFO 2005年中央青山監査法人入所。Bain & Company、レノボ・ジャパン等を経て、2020年同社入社。2022年より現職。


社外取締役は、服部結花(インクルージョン・ジャパン設立代表取締役)、安田雅彦(We Are The People設立代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンタープライズ事業」および「コンシューマ事業」を展開しています。

(1) エンタープライズ事業


企業における人材育成や福利厚生を目的として、法人向けSaaS「flier business」を提供しています。従業員の自律的学習の推進や学びの文化形成を支援するほか、図書館等の施設向け事業、法人向け研修事業、組織サーベイ「flier成長組織ナビ」なども展開しています。

収益源は、導入企業から提供アカウント数に応じて受け取るサブスクリプション(月額課金)による利用料です。運営は同社が行っており、直近ではAIを活用したお悩み解決サーチ機能の追加や、代理店網の開拓による事業の拡大を推進しています。

(2) コンシューマ事業


話題のビジネス書や名著を1冊約10分で読める個人向け自己研鑽サービス「flier」を提供しています。また、読書好きが集まるオンラインコミュニティの運営や、著名人のインタビュー動画等を配信する動画コンテンツ事業、さらに子会社による生成AIやWebデザインのスクール事業も手掛けています。

個人ユーザーから受け取る定額のサブスクリプション利用料が主な収益源です。「flier」やオンラインコミュニティの運営は同社が行い、スクール事業に関しては子会社のAIStepおよびZealoxがそれぞれサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


連結決算への移行に伴い、当期からの業績を記載しています。主力であるエンタープライズ事業の継続的な成長と、子会社化によるスクール事業の収益上乗せが寄与し、売上高は10億円を突破しました。

項目 2026年2月期
売上高 10.7億円
経常利益 0.3億円
利益率(%) 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.1億円

(2) 損益計算書


当期の損益構成について分析します。売上総利益率は約81%と高い水準を維持しており、SaaSモデル特有の高収益構造が確認できます。

項目 2026年2月期
売上高 10.7億円
売上総利益 8.7億円
売上総利益率(%) 81.0%
営業利益 0.3億円
営業利益率(%) 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が3.6億円(構成比43%)、給与手当が1.8億円(同22%)を占めています。また、売上原価は人件費が1.5億円(構成比76%)、その他が0.4億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期より連結対象となったため、当期の数値のみ記載しています。全体の約3分の2の売上をエンタープライズ事業が占めており、利益率においても同事業が全体の収益を牽引しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
エンタープライズ事業 - 7.1億円 - 3.5億円 49.1%
コンシューマ事業 - 3.5億円 - 1.2億円 35.0%
連結(合計) - 10.7億円 - 0.3億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2026年2月期
営業CF 0.3億円
投資CF -3.8億円
財務CF 4.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ヒラメキあふれる世界をつくる」をミッションとし、「あらゆる『人』と『組織』が成長し、可能性がひらかれるプロダクトをつくる」をビジョンに掲げています。多様かつ信頼できる知のエッセンスを多くの人に届け、知の活用や連鎖による組織能力の向上と個人の活躍を推進するプラットフォームを築くことで、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


行動指針にあたるバリューとして、「楽しむ」「スピード」「Self-starter」「挑戦」「Respect」「三方良し」の6つを掲げています。事業成長を重視した上で、知の流通という社会的価値を追求し、高い倫理観に基づいて行動する企業風土の醸成を目指しています。また、社内運営において採用、育成、カルチャーの浸透に特に力を入れています。

(3) 経営計画・目標


中長期における持続的な企業価値の向上を目指し、KGIとして全社における売上高、営業損益率、売上成長率、MRR(月次経常収益)などを重視しています。また、KPIとしてはエンタープライズ事業の主力サービス「flier business」におけるMRR、契約社数、ARPA(1契約当たりの月次平均単価)、解約率(Net Revenue Churn Rate)を設定し、事業の成長を推し進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


人材育成においてAIとの共存が必須の時代となる中、「flier business」の継続強化とともに、生成AI活用支援や組織開発支援を通じた統合的な人材育成プラットフォームの構築を目指しています。AIを使いこなす力を獲得するためのサービス拡充を図り、M&A等も積極的に活用して事業領域の拡大を進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ミッションの実現に向けて、多様なバックグラウンドや能力、価値観を持つ人材の確保と育成が不可欠だと考えています。個人が持つポテンシャルを最大限に発揮するための学びの機会や、安心して働ける環境づくりに努め、バリューの浸透によるフラットなコミュニケーション環境を整備することで、事業成長の推進力を高めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 35.6歳 4.4年 6,411,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 47.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 86.7%
男女賃金差異(正規雇用) 88.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 97.1%


※男性育児休業取得率は有報に実績の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) AI関連の技術革新について


同社は生成AIの活用を進める一方、AIによる要約作成は著作権保護の観点から課題があると考えています。AI技術において予期しない急激な変化や技術革新があり、対応が遅れた場合、サービスの独自性や競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 出版社や著者との取引関係について


要約の作成・配信にあたり、著作権法を遵守するため出版社や著者から事前許諾を得ています。既存の取引先との良好な関係維持や新規開拓に努めていますが、関係の継続を拒絶・解除された場合、従来通りのサービス提供が困難となり、収益の確保に影響を及ぼす可能性があります。

(3) サブスクリプションサービスの解約について


事業において顧客の継続率は重要な要素です。カスタマーサポートの充実や顧客ニーズを反映した機能改善などにより解約防止に取り組んでいますが、万が一、競合の参入などにより急激に解約数が増加した場合には、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。